【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は164,454百万円であり、前連結会計年度末に比べ16,511百万円増加しております。流動資産は104,843百万円と前連結会計年度末に比べ17,317百万円増加しました。これは主に、売上の増加による現金及び預金並びに売上債権の増加や、安定供給に向けた政策的な在庫の積み増し等に伴う棚卸資産の増加によるものです。固定資産は59,610百万円と前連結会計年度末に比べ806百万円減少しました。
負債合計は68,629百万円であり、前連結会計年度末に比べ9,012百万円増加しております。これは主に、仕入債務の増加及び未払法人税等の増加によるものです。
純資産合計は95,825百万円であり、前連結会計年度末に比べ7,498百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加及び配当金の支払による利益剰余金の減少、並びに子会社株式の追加取得による資本剰余金の減少によるものです。
これらにより当社グループの流動比率は185.3%、自己資本比率は58.2%となり、その他の要素も含め、健全な財政状態を維持しております。
②経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和以降、ウィズコロナに向けた社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しの動きが見られました。しかしながら、地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの混乱や、これを一因とするエネルギー資源・原材料価格の高騰が継続する一方、欧米金融市場における一部銀行の破綻等、先行きの不透明感が高まっています。当社事業に関連の深い国内建設市場におきましては、経済活動の回復の一方で、原材料価格や輸送費の高止まり等の影響はさらに拡大しております。さらに、経済全体が新型コロナウイルス感染症による落ち込みから回復する中で、新設住宅着工戸数が伸び悩むなど、経営環境は予断を許さない状況です。
このような状況下で、当社グループは、最終年度である中期経営計画[ D.C.2022 ]に基づく施策を着実に実行しました。「スペースクリエーション企業」に向けたバリューチェーン上のポジション強化として、壁紙製造メーカーであるクレアネイト株式会社の株式の残り49%を追加取得し、完全子会社化したほか、九州エリアの有力配送企業である有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)を新たに子会社化しました。商品開発においては、持続可能な社会の実現に貢献する低環境負荷商品や、建材価格が上昇する中で低価格帯の戦略商品を拡充したほか、国内外のグループ会社の連携による海外向け商品の開発を進めるなど、各市場やニーズに合わせた商品戦略を実行しました。一方、原材料価格の高騰や物流コストの上昇等を背景に、2021年9月、2022年4月に実施した商品取引価格の改定に続き、10月1日受注分より第三次取引価格改定を行い、インテリア事業における収益性の改善を進めました。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高176,022百万円(前年同期比17.8%増)、営業利益20,280百万円(同154.8%増)、経常利益20,690百万円(同152.2%増)となりました。なお、前年同期には米国の子会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.関連の商標権の減損を行っていたこともあり、親会社株主に帰属する当期純利益は14,005百万円(前年同期は276百万円)と大幅な増加になりました。
(参考)
個別業績につきましては、売上高140,052百万円(前年同期比15.8%増)、営業利益19,726百万円(同128.8%増)、経常利益20,690百万円(同128.3%増)、当期純利益は14,754百万円(前年同期は当期純損失1,436百万円)となりました。売上高、営業利益、経常利益が前年実績と比べ増加した主な要因は、上記の通りインテリア事業における収益性の改善を進めたことによるものです。加えて、当期純利益については、前年同期には当社の連結子会社でありKoroseal社の親会社であるSangetsu USA, Inc.に対する子会社株式評価損及びKoroseal社への貸付に対する貸倒引当金繰入額を特別損失として計上したことなどにより、大幅な増加となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(インテリアセグメント)
壁装事業では、新設住宅着工床面積の減少により市場全体が弱含みで推移する中、住宅向け量産壁紙「SP」が引き続き堅調を維持したほか、11月に発刊した非住宅施設向け不燃認定壁紙見本帳「FAITH」が非住宅のみならず住宅での採用が進み、発刊直後から売上が伸長しました。また、ガラスフィルム見本帳「クレアス」や粘着剤付化粧フィルム見本帳「リアテック」において、営業部門間での連携が奏功し、好調に推移した結果、壁装材の売上高は73,503百万円(前年同期比17.9%増)となりました。
床材事業では、都市圏における商業・飲食需要や底堅い住宅リニューアル市場を背景として、住宅・非住宅で幅広く使用できるビニル床タイル見本帳「フロアタイル」の売上が堅調に推移しました。また、低環境負荷商品を収録したカーペットタイル見本帳「NT700」が、環境配慮に向けた市場のニーズを捉え、オフィスを中心に採用が進んだほか、ホテル需要の回復基調を追い風として、「DT」や「カーペット」の売上も伸長しました。さらに、1月には施設用床材見本帳「Sフロア」を発刊し、低価格帯の戦略商品を拡充しました。これらの結果、床材の売上高は52,154百万円(同16.2%増)となりました。
ファブリック事業では、カーテン市場全体に縮小傾向が見られ、厳しい環境となったものの、住宅市場において、カーテン見本帳「ストリングス」が売上をけん引したほか、2月には住宅向けカーテン見本帳「AC」を発刊し、市場浸透に向けた販促活動を行いました。新見本帳「AC」においては、上代価格の改定を行い、収益性の改善も図っております。一方、B to C事業を担う株式会社サンゲツヴォーヌにおいては、EC事業やビルダー向け販売事業を通じた積極的な営業活動に努めました。これらの結果、カーテンと椅子生地を合わせたファブリックの売上高は9,514百万円(同10.5%増)となりました。
インテリアセグメントにおいては、壁装事業、床材事業、ファブリック事業の各事業において4月1日及び10月1日受注分より実施した取引価格改定の浸透により、売上高・営業利益ともに伸長しました。施工費や接着剤等を含むその他の売上6,776百万円(同6.0%減)を加え、インテリアセグメントにおける売上高は141,949百万円(同15.4%増)、営業利益は20,504百万円(同125.4%増)となりました。
(エクステリアセグメント)
エクステリアセグメントにおいては、住宅部門では、新設住宅着工戸数の伸び悩みにより厳しい状況となる中、グループ会社である株式会社サングリーンの創立50周年を記念した販促施策や、リフォームに重点を置いた営業活動等が奏功し、売上が伸長しました。一方、非住宅部門は、年度末の需要期を迎え好調に推移し、大型フェンスや外周フェンス等が数多く完工し、スペースクリエーション分野においても進展が見られました。また、成長戦略に基づく人員の拡充や専門人材の登用を進めた結果、エクステリアセグメントの売上高は6,293百万円(前年同期比8.1%増)、営業利益は450百万円(同16.8%減)となりました。
(海外セグメント)
海外セグメントでは、海外関係会社の2022年1月から12月までの実績を、当連結会計年度の業績に算入しております。
北米市場では、市場環境は経済活動の回復を背景として復調傾向となったものの、足元では金利の上昇による建設市場の弱含みといった影響が見られました。こうした環境下で、デザイン開発を強化している自社製造壁紙が市場の評価を得て好調に推移したほか、一部商品からの撤退を行った壁面保護材料事業の収益の改善が見られ、海外の大型医療物件への納品も売上に貢献しました。一方、在庫調整のための製造量減少による生産効率の低下や、業績連動賞与の増加に伴う販管費の増加等が、収益の減少要因となりました。
東南アジア市場では、新型コロナウイルス感染症による移動制限の撤廃等により、各国の経済活動は総じて回復基調となりました。これにより、停滞していた建設工事も再開し、2020年に100%現地法人としたタイやベトナムでの売上が大きく伸長するなど、各拠点で堅調に推移しました。また、新たな営業支援・顧客管理システムの導入や、国をまたいだグローバルスペック営業の強化といった各地域の連携強化を図りました。
中国・香港市場では、各地での厳格なロックダウン及び観光客の制限の影響が継続し、物件の竣工延期が発生するなど、依然として厳しい状況となりました。このような状況下で、収益性を意識した営業体制の見直しや北米のグループ会社であるKoroseal社の新商品発表会をオンラインで開催するなど、コロナ終息後を見据えた施策を着実に実行しました。
これらの結果、海外セグメントにおける売上高は21,670百万円(前年同期比36.0%増)、営業損失は1,065百万円(前年同期は営業損失1,821百万円)となりました。
(スペースクリエーションセグメント)
スペースクリエーションセグメントのうち、主に施工部門を担うフェアトーン株式会社においては、首都圏や関西エリアにおける大型物件が完工し、売上に寄与しました。また、当社との連携した営業活動が確実に進展し、メインのオフィス案件に加え、医療福祉施設や宿泊・ホテル施設での実績が伸長しました。また、2023年1月には品質管理部門を新設し、管理機能の強化に向けた施策を進めました。
主にデザイン部門を担う当社のスペースクリエーション事業部においては、首都圏を中心とするオフィスリニューアル需要を背景として、売上が堅調に推移しました。また、当社の営業部門との連携による人材の拡充が奏功し、新規顧客の開拓が進みました。
これらの結果、スペースクリエーションセグメントの売上高は7,746百万円(前年同期比17.8%増)、営業利益は391百万円(同179.9%増)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7,878百万円増加し、24,765百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は17,373百万円(前年同期は5,718百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益20,442百万円、減価償却費3,579百万円、仕入債務の増加額3,055百万円、売上債権の増加額5,550百万円及び法人税等の支払額4,582百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は408百万円(前年同期は827百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,827百万円、定期預金の払戻による収入1,517百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入848百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は9,355百万円(前年同期は13,341百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額4,398百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出2,763百万円及び借入金の返済による支出2,236百万円などによるものです。
④仕入及び販売の状況
a.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
インテリア
(百万円)
100,538
108.6
エクステリア
(百万円)
3,961
111.3
海外
(百万円)
14,224
140.1
スペースクリエーション
(百万円)
6,094
113.4
調整額
(百万円)
△1,628
-
合計
(百万円)
123,190
112.2
(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、海外セグメントの仕入実績に著しい変動がありました。これは、為替相場が円安で推移したことによる仕入価格の上昇等によるものです。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
インテリア
(百万円)
141,949
115.4
エクステリア
(百万円)
6,293
108.1
海外
(百万円)
21,670
136.0
スペースクリエーション
(百万円)
7,746
117.8
調整額
(百万円)
△1,638
-
合計
(百万円)
176,022
117.8
(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
2.総販売実績の10%以上の割合を占める主要な取引先はありません。
3.当連結会計年度において、海外セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、為替相場が円安で推移したことによる販売価格の上昇等によるものです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(インテリアセグメント)
インテリアセグメントにおいては、国内の建設市場の状況は、住宅市場の新築・リフォーム、非住宅市場の新築・リニューアルともマイナスで推移し、市場全体として厳しい状況でありました。
そのような市場環境下で、販売価格の改定として、2021年9月に引き続き、2022年4月及び10月に実施した2回の値上げにより売上高が伸長、全ての商品で総利益増となりました。値上げにおける数量面の影響は、商品によって様々であります。当社推計で、数量・業界シェアとも増加したのは、粘着剤付化粧フィルム「リアテック」、ガラスフィルム「クレアス」、カーペットタイルの3つの商品群であります。一方で、当社が主力とする壁紙と塩ビシート床材については、数量・業界シェアとも減少しております。値上げによる業界シェアの低下を想定していたものの、全ての商品において一定程度の低下に留めており、適正な値上げと業界シェアの維持に繋げられたと認識しております。しかしながら、同業他社からの価格攻勢を受けており、機能やサービスといった価値提供を更に推し進め、収益性を維持しながら数量の回復を実現していくことが重要な課題であります。
(エクステリアセグメント)
エクステリアセグメントを担う株式会社サングリーンにおいては、売上高に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準程度まで回復したものの、スペースクリエーション事業の強化を中心とする成長戦略に基づく各施策を実行する中で、先行投資としての販売費及び一般管理費が増加したため、セグメント利益は減益となりました。エクステリアセグメントの業績は総じて安定しているものの、更に伸ばしていく必要があると強く認識しております。事業の地理的・規模的拡大と高度化を実現するため、インテリアとエクステリアの協業を更に進め、営業活動の活発化と空間デザインの連携によるデザイン提案力強化を進めるとともに、全国展開の推進による市場シェア拡大も目指してまいります。
(海外セグメント)
北米市場においては、Koroseal Interior Products Holdings,Inc.が主力とする市場では、依然として新型コロナウイルス感染症拡大前の水準まで回復していないものの、急激な円安も影響し、売上高は前年を大きく上回りました。利益に関しては、前年から改善したものの、マイナスが継続しております。コスト上昇に対する販売価格改定や低利益商品からの一部撤退といった収益改善策を着実に実行しているものの、米国経済におけるインフレは根強く、自社製造壁紙の生産効率の向上といった収益性の強化に向けた施策を更に実行していくことが求められます。
東南アジア市場においては、各国における経済活動の回復により、売上高、利益とも大幅に改善しました。海外セグメントにおける3市場においては、東南アジアが最も早いペースで回復しております。
中国・香港市場においては、新型コロナウイルス感染症による厳格なロックダウンなどの制限が影響し、売上高・利益とも大きく前年を下回りました。
海外セグメント全体では、前年から改善しているものの、セグメント損失が継続しております。日本国内における収益力向上に継続して取り組む一方、将来的な国内市場の数量限界は避けられず、海外における事業展開の必要性は更に高まっております。海外セグメントの各社において、各地域に応じて他社と差別化した機能や価値を提供できる事業モデルを構築し、収益化実現に取り組んでまいります。
(スペースクリエーションセグメント)
フェアトーン株式会社では、首都圏などの大型物件が完工したことにより、売上高が好調に推移しました。当社と連携した営業活動も着実に進み、売上高が年々伸長しております。また、原材料価格の高騰や物流コストの上昇等を背景に、材料費や施工代の価格改定を実施して収益性の改善を進め、セグメント利益が大幅に増加しました。2022年10月に九州営業所を開設、また、グループ会社である株式会社壁装においても2022年9月に東京支店を開設し、地理的拡大を通じた施工体制の構築を進めております。
当社のスペースクリエーション事業部では、将来のスペースクリエーション事業拡大に向けて、空間デザイン力や施工管理能力などを有した専門人員の獲得を更に積極的に進めており、必要な人的投資として引き続きコストが先行しました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは17,373百万円となり、前年同期から11,655百万円増加しました。仕入価格や物流関連費用などの上昇に対して、2021年9月に引き続き、2022年4月と10月における2回の販売価格の改定で収益性の改善を図り、営業利益が前年同期から12,320百万円増加、154.8%増となったことが大きく影響しております。商品の販売のみを通じた価値ではなく、配送体制やデザイン提案といったサービス機能を含めた価値提供を更に強化し、収益力の改善に繋げました。
投資活動によるキャッシュ・フローにおいては、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]で掲げた基本方針に基づく施策は着実に実行することとしており、将来の収益拡大に向けて必要な投資を実施しました。インテリアセグメントにおける投資として、壁紙の持続的な安定供給を実現するため、クレアネイト株式会社の新工場建設(広島県東広島市)を着工しました(2024年7月竣工予定)。また、九州エリアにおけるロジスティクス体制の地理的・機能的な拡充と強化を目的に、有力な配送企業である有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)の株式を取得し、連結子会社としました。
一方で、コーポレートガバナンス・コードに基づき、保有意義がなくなった政策保有株式の売却を進めており、当該株式の売却による収入が発生しました。また、海外セグメントにおいて、中国・香港市場の事業体制再編として、中国蘇州の連結子会社の株式を売却したことによる収入も発生しました。
財務活動によるキャッシュ・フローにおいては、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における資本政策及び2021年12月公表の株主還元方針に基づき、安定増配を実施しました。
当社グループは、連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物に換金性の高い金融資産を加えた資金を、現金及び現金同等物として認識しております。現金及び現金同等物をベースに、営業キャッシュ・フローの獲得による資金創出及び借入による外部資金調達で得られた資金を財源とし、様々な成長投資及び資本政策を通じた株主還元に使用しております。また、手許資金と有利子負債のバランスを維持するため、ネットキャッシュ残高にも留意しております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物、ネットキャッシュの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2022年3月31日)
当連結会計年度
(2023年3月31日)
(1)連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物
16,886
24,765
(2)預入期間が3ヶ月を超える定期預金
1,460
52
(3)有価証券
300
300
(4)投資有価証券(株式除く)
1,894
1,885
現金及び現金同等物 残高
20,541
27,002
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2022年3月31日)
当連結会計年度
(2023年3月31日)
(1)現金及び現金同等物
20,541
27,002
(2)短期借入金
△862
△801
(3)1年内返済予定の長期借入金
△1,101
△7,801
(4)長期借入金
△7,734
-
ネットキャッシュ 残高
10,842
18,400
中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における3年間の資金配分の計画及び実績は以下のとおりであります。
資金創出及び調達は計画に近い水準であったものの、資金配分の成長投資が施策実行時期の見直し等により15,860百万円に留まり、計画を下回る実績となりました。株主還元においても、配当の比重を高め、且つ安定的増配を行いつつ、機動的に自己株式取得を行う基本方針に基づいた還元策を実施したものの、配当総額11,741百万円、自己株式取得3,121百万円、計14,863百万円に留まり、計画を下回る実績となりました。3年間トータルで連結総還元性向を略100%とする目標に対しても、実績は88.8%となっております。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物27,002百万円については、計画内の金額で収まっている一方、ネットキャッシュ残高が大きく増加しました。
中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]期間中の資金配分計画及び実績 (単位:億円)
資金創出
資金配分
目標
実績
目標
実績
2020年3月末保有現金同等物
368.1
368.1
成長投資
200~260
158.6
中計期間中の
営業キャッシュ・フロー
280~300
327.8
⇒
株主還元
170~190
148.6
中計期間中の借入金増減
▲50~100
▲118.7
2023年3月末保有現金同等物
250~300
270.0
合計
577.2
合計
577.2
中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]における3年間の資金配分の計画は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]を見据え、将来の事業拡大に向け必要な成長投資及び資本政策に基づく株主還元は着実に実施する方針であります。原資となる資金については収益拡大による営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、成長投資における資金需要に応じて外部借入を柔軟に活用します。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、経営者による会計基準の選択及び適用、資産及び負債並びに収益及び費用の見積りを必要とします。経営者は、見積りについて過去の実績や状況を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果や将来の見込みは見積り特有の不確実性により、見積りと差異が生じる可能性があります。
当連結会計年度において、当社グループが重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定として認識しているものは次のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(固定資産の減損に係る見積り)
米国の子会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.及びSangetsu USA, Inc.は米国会計基準に準拠して財務諸表を作成しており、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」により、当社グループの連結決算手続上、当該財務諸表を利用しております。当社グループは、固定資産について減損の兆候の有無の判定を行い、その帳簿価額が回収不能となる兆候がある場合、減損テストを行っております。
a.有形固定資産及び償却無形資産
有形固定資産及び償却無形資産に関する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b.非償却無形資産
対象となる非償却無形資産は、商標権であります。商標権については、減損の兆候が生じるような状況の変化が生じた場合、減損の兆候判定を行っております。減損の兆候判定において、経済状況や市場環境、会社の経営成績や財務状況等の定性的な要素及び公正価値決定のための重要な情報を総合的に評価した結果、減損の兆候があると判断された場合及び最低年1回、減損テストを実施しております。減損テストでは商標権の公正価値と帳簿価額を比較しております。公正価値の算定は企業結合時に採用した評価モデルを継続適用しております。当社グループが想定する今後の事業計画に基づき、主に商標権が帰属する売上高及び商標権のロイヤリティ料率からロイヤリティ免除法を用いて、公正価値を見積っております。
公正価値計算のための割引率は、税引後の加重平均資本コスト(WACC)の水準及び不確実性リスクを考慮して設定しております。WACCは決算日現在の米国における実効税率、国債や社債利回り等を勘案して算定しております。米国内外の経済状況や金融・資本市場、国際情勢に予期せぬ変化が生じた場合、割引率が著しく変動する可能性があります。
ロイヤリティ免除法による計算においては、主に以下の仮定を用いております。ロイヤリティ料率は、関連する業種のロイヤリティ料率、商標権の収益性及び事業用資産の公正価値を考慮して設定しております。商標権に帰属する売上割合は、過去の実績及び今後の事業計画見通しを基に設定しております。永続成長率は、米国のGDP成長率見通しやインフレ率等を考慮して設定しております。実効税率は、米国における税率水準を考慮して設定しております。
当連結会計年度において、商標権に係る減損の兆候は確認されておらず、最低年1回実施する減損テストの結果においても、商標権の公正価値が帳簿価額を上回ったため、減損損失は認識しておりません。
(3) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標と位置付けております。中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における定量目標(KPI)として、最終年度となる2022年度のROE9.0%の達成を目指し、企業価値の向上に取り組みました。
中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]に掲げる資本政策に基づき、安定的な増配と機動的な自己株式取得を実行し、当連結会計年度末の自己資本は95,741百万円となりました。目標とした自己資本900~950億円を上回ったものの、ほぼ目標に近い水準を維持することができました。インテリアセグメントにおける収益性の改善が大きく影響し、親会社株主に帰属する当期純利益が14,005百万円と過去最高益を達成したことにより、ROE実績は15.3%となり、定量目標を達成しました。しかしながら、セグメント別においては、海外セグメントの損失が続いており、早期の収益化が課題と認識しております。
また、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)においては、目標65日に対し、当連結会計年度末における実績は77.1日(2020年3月期比4.7日悪化)となり、目標達成には至りませんでした。CCCの内訳は売上債権回転期間110.4日(同3.9日悪化)、棚卸資産回転期間57.9日(同5.5日悪化)、仕入債務回転期間91.2日(同4.7日改善)であります。販売価格改定に伴う売上高の増加による売上債権の大幅な増加、商品の安定供給に向けた政策的な在庫の積み増し等に伴う棚卸資産の増加により、回転期間が悪化しました。中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]において、改めてCCCの短縮を目標とし、資金効率の改善に繋げていく所存です。
当社グループは、中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]における定量目標として、2026年3月期の連結売上高1,950億円、連結営業利益205億円、連結当期純利益145億円、ROE14.0%、ROIC14.0%、CCC65日の達成を目指します。定量目標のROE14.0%は当連結会計年度実績の15.3%を下回りますが、中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]の3ヶ年は、Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]を見据えて、将来の更なる事業拡大と成長を実現するための先行投資、特に人的資本への投資を積極的に進める期間と位置付けております。必要な投資は確実に実施しながらも収益性を維持することを目指し、スペースクリエーション企業への転換を進めるとともに、定量目標の達成に向けた各施策を実行してまいります。