【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は160,294百万円であり、前連結会計年度末に比べ12,350百万円増加しております。流動資産は100,357百万円と前連結会計年度末に比べ12,831百万円増加しました。これは主に、売上の増加による売上債権の増加及び安定供給に向けた政策的な在庫の積み増し等に伴う棚卸資産の増加によるものです。固定資産は59,936百万円と前連結会計年度末に比べ480百万円減少しました。
負債合計は67,617百万円であり、前連結会計年度末に比べ8,001百万円増加しております。これは主に、仕入債務の増加及び短期借入金の増加によるものです。
純資産合計は92,676百万円であり、前連結会計年度末に比べ4,349百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益による利益剰余金の増加及び配当金の支払いによる利益剰余金の減少、並びに子会社株式の追加取得による資本剰余金の減少によるものです。
これらにより当社グループの流動比率は178.4%、自己資本比率は57.8%となり、その他の要素も含め、健全な財政状態を維持しております。
②経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、ウィズコロナに向けた社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しの動きが見られました。しかしながら、ウクライナ情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの混乱や、世界各国の金融引き締め政策による急激な為替の変動など、景気の先行きは不透明な状況が継続しました。
当社事業に関連の深い国内建設市場におきましては、原材料価格や輸送費の高騰といった供給面の制約が長期化する中で、依然として力強い回復には至っておらず、新設住宅着工戸数が伸び悩むなど、経営環境は予断を許さない状況です。
このような状況下で、当社グループは、最終年度である中期経営計画[ D.C.2022 ]に基づく施策を着実に実行しました。商品開発においては、持続可能な社会の実現に貢献する低環境負荷商品や、国内外のグループ各社の連携による海外向け商品の開発を進めたほか、特に国内事業においては、内装材のみならず空間全体を提案するスペースクリエーション事業の展開を強化しました。一方、原材料価格の高騰や物流コストの上昇等を背景に、2021年9月、2022年4月に実施した商品取引価格の改定に続き、10月1日受注分より第三次取引価格改定を行い、インテリア事業における収益性の改善を進めました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高127,029百万円(前年同期比18.2%増)、営業利益14,622百万円(同200.8%増)、経常利益15,006百万円(同197.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は10,373百万円(同243.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(インテリアセグメント)
壁装事業では、ガラスフィルム見本帳「クレアス」や粘着剤付化粧フィルム見本帳「リアテック」の売上が、オフィスリニューアル市場を中心に好調に推移しました。また、5月に発売した住宅リフォーム向け壁紙見本帳「リフォームセレクション」においても、営業部門と商品開発部門とが連携した市場起点の商品開発や営業活動が奏功し、売上が伸長しました。また、11月に非住宅施設向け不燃認定壁紙見本帳「FAITH」を発刊し、展示会への出展等を通じた積極的な営業活動を行いました。これらの結果、壁装材の売上高は53,536百万円(前年同期比17.7%増)となりました。
床材事業では、カーペットタイル「NT700」や「DT」、置敷き帯電防止ビニル床タイル「OT」の市場への浸透が進み、売上が伸長したほか、ビニル床タイル見本帳「フロアタイル」も堅調を維持しました。また、10月には住宅から店舗まで使用できるクッションフロア見本帳「Hフロア」を発刊し、オンラインセミナー等を通じ市場への浸透を図ったほか、11月にはマンションの共用部やバルコニーに使用される防滑性ビニル床シート見本帳「ノンスキッド」を発刊し、マンションの大規模修繕等を見据えた積極的な販促活動を進めました。これらの結果、床材の売上高は37,231百万円(同15.4%増)となりました。
ファブリック事業では、新設住宅においてロールスクリーンやブラインドといったメカタイプ商品への需要が高まっていることや、コロナ禍による巣ごもり需要からの反動等の影響もあり、オーダーカーテン市場全体に縮小傾向が見られました。こうした状況下で、上質で意匠性に優れたカーテン見本帳「ストリングス」やワンプライスによる選びやすさを追求したカーテン見本帳「シンプルオーダー」が売上をけん引したほか、メカタイプの窓まわり商品見本帳「RB COLLECTION」の売上が拡大しました。これらの結果、カーテンと椅子生地を合わせたファブリックの売上高は6,936百万円(同12.9%増)となりました。
インテリアセグメントにおいては、壁装事業、床材事業、ファブリック事業の各事業において4月1日及び10月1日受注分より実施した取引価格改定の浸透により、売上高・営業利益ともに伸長しました。施工費や接着剤等を含むその他の売上5,044百万円(同1.0%増)を加え、インテリアセグメントにおける売上高は102,747百万円(同15.6%増)、営業利益は14,776百万円(同174.1%増)となりました。
(エクステリアセグメント)
エクステリアセグメントを担う株式会社サングリーンにおいては、ハウスメーカーを中心に住宅用エクステリア商材が好調に推移するとともに、メイン商材であるアルミ商品の値上げ前の駆け込み需要により売上が伸長しました。非住宅市場では、サングリーンのスペースクリエーション事業本部において、取引先との協業や展示会出展等を通じた新規顧客・物件の獲得に努めました。また、事業の拡大に向けた施策として、専門人材の拡充や部署間の連携強化による体制整備を進めました。
これらの結果、エクステリアセグメントの売上高は4,547百万円(前年同期比4.7%増)となりましたが、人材拡充施策等による販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は293百万円(同27.8%減)となりました。
(海外セグメント)
海外セグメントでは、海外関係会社の2022年1月から9月までの実績を、第3四半期連結累計期間の業績に算入しております。
北米市場では、経済全体の回復傾向の中で、事業と関わりの深い非住宅建設市場も復調を維持しました。これにより、主要マーケットであるホテル市場をはじめ、オフィス・医療分野での売上が好調に推移したほか、継続的に開発・発売している自社製造壁紙が市場の評価を得て伸長しました。さらに、取引価格改定の浸透や不採算事業からの一部商品の撤退も奏功し、収益性が改善しました。
東南アジア市場では、一部で新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、各国の経済活動は総じて回復傾向となりました。これにより、停滞していた建設工事も再開し始め、主力のホテル市場をはじめ、ターゲット市場である住宅市場や医療・福祉市場での売上が伸長しました。また、新たな営業支援・顧客管理システムの導入により顧客・現場情報の共有を効率化し、営業管理機能の強化を図りました。中国・香港市場では、各地での厳格なロックダウン及び観光客の制限の影響が継続し、物件の竣工延期が発生するなど、依然として厳しい状況となりました。このような状況下で、当社グループの壁紙製造メーカーであるクレアネイト社製の海外向け商品開発に着手するなど、アフターコロナに向けた事業基盤の強化に努めました。
これらの結果、海外セグメントにおける売上高は15,455百万円(前年同期比38.2%増)、営業損失は640百万円(前年同期は営業損失926百万円)となりました。
(スペースクリエーションセグメント)
スペースクリエーションセグメントのうち、主に施工部門を担うフェアトーン株式会社においては、当社と連携した営業活動が奏功し、メインのオフィス案件に加え医療福祉施設や宿泊・ホテル施設での実績が伸長しました。また、成長戦略の一環として、10月には九州営業所を開設し施工力の地理的拡大を行ったほか、管理機能の強化に向けた施策を進め、2023年1月には品質管理部門を新設しました。
主にデザイン部門を担う当社のスペースクリエーション事業部においては、オフィスリニューアル市場の復調傾向を背景として、既存顧客からの継続的な受注案件が増加し、売上に貢献しました。また、部署やセグメントを超えた営業活動の連携を進め、グループ全体でのスペースクリエーション事業の強化を図りました。
これらの結果、スペースクリエーションセグメントの売上高は5,452百万円(前年同期比19.3%増)、営業利益は190百万円(前年同期は営業利益8百万円)となりました。
(サステナビリティの取り組み)
当社グループは、サステナビリティを事業と一体として考え、事業活動を通じて持続可能な社会を実現するため、長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]において「みんなで(Inclusive) いつまでも(Sustainable) 楽しさあふれる(Enjoyable)社会の実現」を掲げ、注力しています。
環境に関する取り組みでは、低環境負荷商品の拡大を進め、10月に100%リサイクル糸を使用した低環境負荷カーペットタイル「NT700 Fiber Eco」を発売したほか、2023年2月には再生糸を使用した環境にやさしいカーテン「&ECO」シリーズに、エコマーク取得の商品をラインアップしました。また11月より、パナソニッククリエイティブミュージアムAkeruE(アケルエ)への、使用済み商品サンプルチップの提供を開始しました。同ミュージアムでは、子ども達のクリエイティブな力を育む創作ワークショップが行われており、提供したサンプルチップはその素材として活用されます。また、愛知県の学生が企業とともに環境課題の解決に取り組む産学官連携プロジェクト「かがやけ☆あいちサスティナ研究所」にパートナー企業として参加し、12月にその成果を発表しました。当プロジェクトでは、当社見本帳のリサイクルを通じ、廃材を楽しく活用できるワークショップイベントの企画を行い、審査員から高い評価を得ました。さらに12月には、環境面におけるマテリアリティを特定し、2021年度の実績と主な取り組みをまとめた環境レポート「Environmental Report 2022」を発刊しました。
社会参画に関する取り組みでは、各地で継続している児童養護施設の内装リフォーム支援を着実に実施しました。また、障がいのあるアーティストを支援するアートフェスティバル「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」への協賛や、開発途上国の子どもたちに給食を提供するNPO法人TABLE FOR TWO International主催の「おにぎりアクション2022」への参加、貧困などにより教育を充分に受けられない国の子ども達に絵本を届ける、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会主催の「アジアの子どもたちに絵本を届ける運動」を実施しました。さらに、継続的なダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが評価され、LGBTQに関する評価指標「PRIDE指標2022」で4度目のシルバー認定を受けました。
人材価値の向上に向けた取り組みにおいては、持続的に成長し続ける組織体制の構築に向けた人事制度改革を行い、ジョブ型を導入することで、職務と報酬の公平性を重視するとともに、社員のキャリアの幅を広げる制度としました。また、当改訂に伴う人材評価の考え方を浸透させるための評価者研修を実施し、新人事制度で目指す企業風土の醸成促進を図りました。
なお、サステナビリティ情報に関する積極的な情報開示が評価され、2023年1月には当社のサステナビリティサイトが、一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会が実施する「サステナビリティサイト・アワード2023」においてシルバー(優秀賞)を受賞しました。当社グループはこれからも、サステイナブルな社会の実現に向けた取り組みを強化し、全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合える企業になることを目指してまいります。
環境レポート「Environmental Report 2022」
www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/report/report_environmental.html
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、289百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。