【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、本書提出末日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営成績の状況当第2四半期累計期間において当社は、新規がん免疫治療薬の創出を目指して研究開発を推進いたしました。
細胞医薬〔iPS-NKT:iPS細胞由来再生NKT細胞療法〕iPS-NKTは、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬です。多面的な抗腫瘍効果を持つものの血中に僅かしか存在しないため、細胞医薬へは適用困難と考えられていたNKT細胞が、iPS細胞技術によって、健常人ドナーの血液由来のマスターiPSセルバンクから大量かつ均質に製造可能になりました。
2020年6月より世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が頭頸部がんを対象として国立大学法人千葉大学で進められています。当社は2018年に、国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めてきました。2022年11月、当社は理研に対してiPS-NKTにかかわる独占的開発製造販売権の導入オプションを行使し、同プロジェクトを全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを獲得しました。
当社はiPS-NKTを幅広いがん種・地域へ展開するため、プラットフォームの構築を目指しています。今回のライセンス獲得により、1)iPS由来NKT細胞の活動領域を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)本治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞への「分化誘導法」、以上3つの構成要素を擁することになり、同プラットフォームの世界展開を図ってまいります。また、当社はキメラ抗原受容体(CAR)導入等の遺伝子改変技術を組み合わせることによって、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬への展開も可能とみており、同テーマでの研究も推進しています。
〔HER2 CAR-T:BP2301〕BP2301は、さまざまな固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法*2です。2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする非ウイルス遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が開始されました。
これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果をもってグローバルで承認されてきました。HER2を標的とするBP2301は、より多くの患者がいる固形がんへとCAR-T細胞療法の適用を拡げる可能性をもっています。しかし、固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し、十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。
抗体 抗体医薬では、PD-1/PD-L1の次に来る有望な標的として、T細胞の疲弊や機能抑制に関する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整因子の機能を阻害する抗体の開発を進めています。抗CD73抗体(BP1200)、抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)については、先行開発品と機能的に差別化されたリード抗体を有し、担がんマウスモデルでの有効性を確認し非臨床コンセプト証明に至っています。今後はこれらの非臨床試験を進めるとともに、まだ非臨床コンセプト証明に至っていない抗体をその段階へ到達させます。
また、これらの1つの標的抗原に対する抗体を基に、免疫抑制性の腫瘍微小環境でより高い抗腫瘍免疫を発揮させることを目的として、2つの標的抗原に対する二重特異性を付与したバイスペシフィック抗体を作製し、付加価値を高めていく展開を想定しています。
他社先行抗体とスペックにおいて差別化されたシングル標的抗体の抗CD39抗体(BP1202)、抗TIM-3抗体(BP1210)に、BP1210開発過程において樹立した二重特異性抗体化技術を掛け合わせることにより、抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体(BP1212)を創出しました。
がんワクチン 〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン(BP1209)〕 BP1209は、腫瘍特異的で高い免疫原性を持つネオアンチゲンを標的にした抗腫瘍免疫を、患者1人ひとりに対応して惹起するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。これまで開発を進めてきたBP1101のモダリティ(医薬品形態)はペプチドワクチンであるのに対し、BP1209は免疫チェックポイント抗体とネオアンチゲン・ペプチドの複合体ワクチンです。BP1101ペプチドに免疫チェックポイント抗体への結合が可能となる当社オリジナルのリンカー技術を付加し、免疫チェックポイント抗体がワクチン抗原を樹状細胞へ送達するとともに、ワクチンによる腫瘍特異的T細胞誘導を促進する、新規の薬効メカニズムを織り込みました。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、腫瘍抗原を標的とする細胞性免疫をBP1101よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。
〔がんペプチドワクチンGRN-1201〕GRN-1201は、欧米人に多いHLA*5-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。2022年5月に米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-1抗体併用第Ⅱ相臨床試験の早期中止を決定し、現在は当初の治験対象と試験プロトコルを見直し新しい開発パートナーと新しく臨床試験を開始する道を模索しています。
この結果、当第2四半期累計期間におきましては、営業損失は805,068千円(前年同期の営業損失は721,471千円)、経常損失は809,792千円(前年同期の経常損失は723,461千円)、四半期純損失は810,742千円(前年同期の四半期純損失は723,920千円)となりました。
なお、当社は単一事業であり、セグメントは「医薬品開発事業」でありますので、セグメントごとの記載はしておりません。
<語句説明>*1(NKT細胞) がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。
*2(CAR-T細胞療法) Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。
*3(免疫チェックポイント分子) 免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。
*4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン) 個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われている。
*5(HLA) Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。
(2)財政状態の状況(資産)当第2四半期会計期間末における総資産は前事業年度末より653,854千円減少し2,117,347千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発に関連する支出等で391,113千円減少したことが主な要因であります。
(負債)当第2四半期会計期間末における負債は前事業年度末より129,176千円減少し110,550千円となりました。これは、未払法人税等が30,603千円減少したことが主な要因であります。
(純資産)当第2四半期会計期間末における純資産は前事業年度末より524,677千円減少し2,006,797千円となりました。これは、新株予約権の行使により、資本金が143,671千円、資本準備金が143,671千円増加したものの、四半期純損失810,742千円を計上したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の90.5%から93.8%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況当第2四半期累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて391,113千円減少し、1,913,913千円となりました。当第2四半期累計期間末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果使用した資金は588,604千円(前年同期は751,928千円の支出)となりました。これは、主に税引前四半期純損失809,792千円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動による資金の変動はありません(前年同期は11,293千円の支出)。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果得られた資金は197,491千円(前年同期は228,683千円の収入)となりました。これは、主に新株予約権の行使による株式の発行による収入284,991千円、社債の償還による支出87,500千円によるものであります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第2四半期累計期間において、重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(5)研究開発活動当第2四半期累計期間における研究開発費の総額は643,726千円であります。なお、当第2四半期累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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