【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための活動制限の緩和などにより一部回復は見られたものの、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景にエネルギーや食料品の価格高騰が見られ、また、欧米を中心にインフレ抑制のための金融政策により景気下振れ懸念が増しました。一方、我が国においては、円安影響による物価上昇が続いていることもあり個人消費に伸びを欠くなど景気回復は極めて緩やかなものとなりました。このような情勢の下、当社グループの事業環境につきましては、電子・光学関連製品の市況低迷による需要の急激な減少が続いたほか、原燃料価格高騰の影響を大きく受けたことにより非常に厳しい状況が続きました。この結果、売上高は米国子会社での買収効果や円安影響も加わり前期比10.8%増の284,603百万円となりましたが、利益面では徹底したコスト削減やお客様の理解を得ながら価格改定に取り組んだものの、パルプをはじめとする原燃料価格の大幅な上昇や受注減少による生産設備の稼働率低下に伴う操業損失が増加したこともあり、営業利益は前期比36.1%減の13,796百万円、経常利益は前期比31.3%減の15,602百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比30.8%減の11,512百万円となりました。
セグメント別の概況は以下のとおりです。
〔印刷材・産業工材関連〕
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
増減額
増減率
百万円
百万円
百万円
%
売上高
132,421
173,324
40,903
30.9
印刷・情報材事業部門
101,276
140,010
38,734
38.2
産業工材事業部門
31,145
33,314
2,169
7.0
営業利益
1,373
2,958
1,584
115.4
当セグメントの売上高は173,324百万円(前期比30.9%増)、営業利益は諸原材料価格や物流コストが上昇したものの、米国子会社の損益が大幅に改善したこともあり、2,958百万円(同115.4%増)となりました。当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。(印刷・情報材事業部門)シール・ラベル用粘着製品は、国内では食品や飲料キャンペーン用などの需要は低調であったものの、各種環境配慮製品の新規採用が進んだほか、物流や医薬関連の需要が堅調に推移しました。海外では米国での買収効果もあり大きく伸長したほか、アセアン地域でも堅調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は140,010百万円(前期比38.2%増)となりました。(産業工材事業部門)国内ではウインドーフィルムが堅調に推移したほか、装飾用フィルムの需要が増加しました。海外では米国、アセアン地域においてウインドーフィルムや自動車用粘着製品などが堅調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は33,314百万円(前期比7.0%増)となりました。
〔電子・光学関連〕
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
増減額
増減率
百万円
百万円
百万円
%
売上高
91,379
78,053
△13,326
△14.6
アドバンストマテリアルズ事業部門
67,429
61,455
△5,973
△8.9
オプティカル材事業部門
23,950
16,597
△7,353
△30.7
営業利益
19,176
12,463
△6,713
△35.0
当セグメントは需要減少の影響を受けたことで、売上高は78,053百万円(前期比14.6%減)、営業利益は12,463百万円(同35.0%減)となりました。当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。(アドバンストマテリアルズ事業部門)半導体関連粘着テープおよび関連装置、積層セラミックコンデンサ関連テープは秋口以降、スマートフォン、パソコン用などの需要減少の影響を大きく受け低調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は61,455百万円(前期比8.9%減)となりました。(オプティカル材事業部門)車載用タッチパネル製品が伸長したものの、光学ディスプレイ関連粘着製品は大型テレビやスマートフォン用などの需要減少の影響を大きく受け低調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は16,597百万円(前期比30.7%減)となりました。 〔洋紙・加工材関連〕
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
増減額
増減率
百万円
百万円
百万円
%
売上高
33,035
33,225
189
0.6
洋紙事業部門
15,341
16,134
792
5.2
加工材事業部門
17,694
17,090
△603
△3.4
営業利益又は営業損失(△)
971
△1,688
△2,659
-
当セグメントの売上高は33,225百万円(前期比0.6%増)、利益面においてはパルプを中心とした原燃料価格上昇などの影響を大きく受け、1,688百万円(同-%)の営業損失となりました。当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。
(洋紙事業部門)主力のカラー封筒用紙は前年同期並みとなったほか、ファストフード向けの耐油耐水紙や学童向けの色画用紙が堅調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は16,134百万円(前期比5.2%増)となりました。(加工材事業部門)炭素繊維複合材料用工程紙はスポーツ・レジャー用が堅調に推移しましたが、電子材料用剥離紙、光学関連製品用剥離フィルムは秋口以降、需要減少の影響を大きく受け低調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は17,090百万円(前期比3.4%減)となりました。
2024年3月期の見通しにつきましては、世界経済は高インフレ抑制のための金融政策、米中対立やウクライナ情勢の長期化、資源コストの上昇などによって景気減速懸念が強まっています。一方、我が国においては新型コロナウイルス感染症による入国制限が解除されることでインバウンド効果が期待されるものの、食料品などの物価上昇による買い控えなどもあり先行き不透明感が増しています。当社グループにおいても、半導体および電子部品市場の低迷、原燃料価格などの高止まりが継続することによって業績に大きな影響を及ぼすと見ていますが、長期ビジョン「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030」の基本方針の下、重点テーマに掲げた諸施策に積極的に取り組んでまいります。このような経営環境の下、2024年3月期の連結業績予想は、売上高は2,900億円(当期比1.9%増)、営業利益は135億円(同2.1%減)、経常利益は135億円(同13.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は95億円(同17.5%減)を予想しております。
(2)財政状態の状況〔資産〕当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産、有形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて2,016百万円増加の304,881百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「現金及び預金」の減少
△17,383百万円
・「売掛金」の減少
△3,600百万円
・「棚卸資産」の増加
14,541百万円
・「流動資産その他」の減少
△3,672百万円
・「有形固定資産」の増加
11,071百万円
・「のれん」の減少
△1,634百万円
・「繰延税金資産」の減少
△2,248百万円
・「退職給付に係る資産」の増加
3,773百万円
〔負債〕当連結会計年度末の負債は、支払手形及び買掛金や未払金の減少などにより、前連結会計年度末に比べて15,376百万円減少の77,730百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「支払手形及び買掛金」の減少
△7,329百万円
・「未払法人税等」の減少
△2,920百万円
・「流動負債その他」の減少
△2,097百万円
・「長期借入金」の減少
△1,468百万円
・「退職給付に係る負債」の減少
△3,005百万円
・「固定負債その他」の増加
1,656百万円
〔純資産〕当連結会計年度末の純資産は、自己株式の取得による減少がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益や為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末に比べて17,392百万円増加の227,150百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「利益剰余金」の増加
5,083百万円
・「自己株式」の減少
△3,544百万円
・「為替換算調整勘定」の増加
10,444百万円
・「退職給付に係る調整累計額」の増加
5,193百万円
(3)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は33,857百万円となり、前連結会計年度末に比べて16,746百万円の減少となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して18,706百万円減少の5,936百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「税金等調整前当期純利益」の減少
△7,368百万円
・「棚卸資産の増減額」の減少
△3,204百万円
・「仕入債務の増減額」の減少
△6,195百万円
・「法人税等の支払額又は還付額」の減少
△1,042百万円
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して7,506百万円増加の△12,138百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「定期預金の預入による支出」の増加
1,199百万円
・「有形固定資産の取得による支出」の減少
△4,026百万円
・「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得 による支出」の増加
6,349百万円
・「事業譲受による支出」の増加
4,347百万円
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して1,679百万円増加の△12,775百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。
・「自己株式の取得による支出」の増加
2,983百万円
また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、営業キャッシュ・フロー内において、主な設備投資や借入金の返済などを実施しており、自己キャッシュ・フローにより流動性は確保できております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定〔のれんの減損及び子会社株式の評価〕当連結会計年度末ののれん残高は15,013百万円であります。主なものは2016年12月に買収したMACTAC AMERICAS, LLCにおいて13,854百万円の残高を計上しており、同社は、米国におけるTopic350「無形資産-のれん及びその他」を適用し、のれんを10年間の定額法で償却しています。また、年4回(四半期決算期末)減損の兆候の判定をおこなっております。減損の兆候の判定には、将来の事業計画、米国経済や同社製品の市場の動向、事業戦略の見直しなどを判断材料としており、これらの判断材料が大きく変化した場合、のれんの減損損失を認識する可能性があります。当連結会計年度における減損の兆候を判定した結果、減損の兆候はなく、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。また、当事業年度末の子会社株式残高は63,047百万円であり、主なものは当社の米国子会社であるLINTEC USA HOLDING, INC.の48,731百万円であります。LINTEC USA HOLDING, INC.は、上記のMACTAC AMERICAS, LLCの持分を100%所有しており、MACTAC AMERICAS, LLCがのれんの減損損失を認識した場合、子会社株式の評価損を認識する可能性があります。
〔固定資産の減損〕当連結会計年度において、洋紙・加工材関連セグメントのうち、洋紙事業で主要な原材料であるパルプ価格上昇の影響を大きく受けたことにより収益性が低下したため減損の兆候があると判断し、洋紙事業の固定資産に係る資産グループ9,519百万円について、減損損失の認識の要否判定を行いました。判定の結果、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がその帳簿価額を上回ったことから、減損損失を認識しておりません。なお、当該見積りに用いた仮定などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)生産、受注及び販売の実績〔生産実績〕当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
印刷材・産業工材関連
134,596
35.7
電子・光学関連
53,165
△15.0
洋紙・加工材関連
43,571
8.6
合計
231,333
14.6
(注) 1 セグメント間およびセグメント内の取引が多様で、各セグメントの生産高を正確に算出することが困難であるため、概算金額を表示しております。また、セグメント間の内部振替高に伴う生産高を含めております。 2 金額は、製造原価によっております。
〔受注実績〕製品及び商品の大部分が受注即出荷となりますので、受注状況は販売実績とほぼ同じであります。
〔販売実績〕当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
印刷材・産業工材関連
173,324
30.9
電子・光学関連
78,053
△14.6
洋紙・加工材関連
33,225
0.6
合計
284,603
10.8
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
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