【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進み、景気に持ち直しの動きがみられましたが、ウクライナ情勢の長期化、原材料費・エネルギー価格の高騰や円安の進行など先行きが不透明な状況が続きました。
工業分野では、自動車関連産業においてEV関連を中心に堅調な設備投資需要が続きました。一方で、半導体関連産業では期の後半にかけてPC・スマートフォン向けの半導体需要の充足感から設備投資計画の見直しなどの影響がみられました。建設・住宅分野では、公共設備投資やマンションを中心とした新築着工戸数は堅調に推移しました。
海外では、部品・資材の価格や人件費の上昇がみられましたが、米国やタイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジア諸国の景気は緩やかな持ち直しが続きました。中国では「ゼロ・コロナ」政策は終了したものの、経済成長は伸び悩みました。
このような状況の中、当社グループは「ユアサビジョン360」の第2ステージである中期経営計画「Growing Together 2023」の最終年度にあたり、『つなぐ 複合専門商社グループ』への進化を目指し、「成長事業戦略」「コア事業戦略」「経営基盤の強化」を基本方針に諸施策を実行しました。
「成長事業戦略」では、社会課題の解決=成長事業と捉え、建設現場の品質確保と省力化(生産性向上)を図るための「MR(Mixed Reality)によるコンクリート締固め管理システム」、サプライチェーンリスクを可視化する災害危機管理システム「リスクセイバー」、災害時に非常用電源として利用可能な「V2H(Vehicle to Home)機器搭載 宅配ボックス付門柱」、建設現場におけるCO2排出量の正確かつリアルタイムな可視化を実現するクラウドサービス「zeroboard construction(ゼロボード コンストラクション)」や画像認識による仮設資材の数量管理システムなど自社及び共同での新しい商品・サービスの開発・実用化に注力し、気候変動対策、自動化・省人化などの提案を行いました。
「コア事業戦略」では、ワンストップで総合力を発揮できる『つなぐ 複合専門商社グループ』に向け、AIを活用した取り組みを強化・拡大しております。お客様の「モノづくり」「すまいづくり」「環境づくり」「まちづくり」の現場とAIをつなぎ、お客様の現場作業の高度化・効率化に向けた提案営業を推進しました。
「経営基盤の強化」では、株主還元及び資本効率の向上と経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能とするため、自己株式の取得を進めました。また、グループ会社を集約し、総合力・チャレンジ・コミュニケーションを推進できるオフィス環境の整備による風土改革とさらなる企業価値向上の実現、ならびに経済・社会環境の変化への柔軟な対応を可能とすることを目的として、東京都港区に新本社建設用地の取得を決定しました。
「ESG」「SDGs」に向けた取り組みとして、ユアサ商事グループ「サステナビリティ宣言」に基づき、2030年までに当社グループ全体のカーボンニュートラルを目指すとともに、ESGやCO2排出量などの気候変動に係る情報開示を積極的に行い、事業活動を通じた持続的な社会の構築に向け貢献してまいります。その一環として、マレーシアでマングローブの植樹をメインとする環境保全活動「ユアサ商事の森プロジェクト」を開始するとともに、国内では当社グループの森林整備活動が「J-クレジット制度」の認証を取得しました。
これらの結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、5,048億6百万円(前連結会計年度比 9.1%増)となりました。営業利益は145億99百万円(前連結会計年度比22.9%増)、経常利益は153億82百万円(前連結会計年度比31.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億79百万円(前連結会計年度比25.1%増)となりました。
セグメント別の売上高の詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しております。
当連結会計年度において、当社の連結子会社であるユアサクオビス株式会社は、同社を存続会社として、当社の連結子会社である東洋産業株式会社を吸収合併しております。これに伴い、従来「建築・エクステリア」のセグメントに区分しておりました東洋産業株式会社の事業を、「住設・管材・空調」の報告セグメントに含めて記載する方法に変更しております。なお、前連結会計年度のセグメント情報については変更後の区分により作成したものを記載しております。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて118億4百万円増加し、2,712億18百万円となりました。これは電子記録債権が73億57百万円、棚卸資産が23億32百万円増加した一方で、現金及び預金が12億95百万円減少したことなどによります。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて91億69百万円増加し、1,759億77百万円となりました。これは、電子記録債務が56億28百万円、未払法人税等が28億11百万円、支払手形及び買掛金が25億72百万円増加した一方で、繰延税金負債が24億21百万円減少したことなどによります。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて26億35百万円増加し、952億40百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が71億17百万円増加した一方で、自己株式の取得等により36億9百万円減少したことなどによります。この結果、自己資本比率は、34.9%(前連結会計年度末は35.5%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、523億95百万円となり、前連結会計年度末より11億40百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動の結果得られた資金は、83億38百万円(前連結会計年度比18億75百万円の収入減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益152億47百万円、仕入債務の増加額79億60百万円を計上した一方、売上債権の増加額69億20百万円を計上したことなどによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は、28億45百万円(前連結会計年度比76億22百万円の支出増)となりました。これは有形固定資産の取得による支出23億61百万円を計上したことなどによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動の結果使用した資金は、68億90百万円(前連結会計年度比33億37百万円の支出増)となりました。これは主に自己株式の取得による支出37億41百万円、配当金の支払額29億62百万円を計上したことなどによります。
④販売、仕入及び受注の実績
a.販売実績
期間
前連結会計年度
自 2021年4月1日
至 2022年3月31日
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
セグメントの名称
金額
(百万円)
前年同期比
(%)
構成比率
(%)
金額
(百万円)
前年同期比
(%)
構成比率
(%)
産業機器
74,115
-
16.0
77,440
4.5
15.3
工業機械
102,258
-
22.1
118,515
15.9
23.5
住設・管材・空調
164,212
-
35.5
177,915
8.3
35.3
建築・エクステリア
46,560
-
10.1
51,638
10.9
10.2
建設機械
33,528
-
7.2
36,533
9.0
7.2
エネルギー
18,888
-
4.1
19,109
1.2
3.8
その他
23,161
-
5.0
23,654
2.1
4.7
合計
462,725
-
100.0
504,806
9.1
100.0
(注)前連結会計年度期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、前連結会計年度の販売実績について前年同期比(%)を記載をしておりません。
b.仕入実績
仕入実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
c.受注実績
受注実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識・検討内容
当連結会計年度の売上高は、5,048億6百万円(前連結会計年度比 9.1%増)となりました。営業利益は145億99百万円(前連結会計年度比22.9%増)、経常利益は153億82百万円(前連結会計年度比31.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億79百万円(前連結会計年度比25.1%増)となりました。
《産業機器部門》
産業機器部門につきましては、自動車関連産業の一部では車載半導体不足の影響が続いたものの、工場稼働率は堅調に推移し、制御関連機器を中心に販売が伸長しました。
このような状況の中、在庫・物流機能を拡充するとともに、カーボンニュートラルへの関心の高まりに対応した省エネ商材の拡販に努めました。また、スマートファクトリーの実現に向けた生産現場の自動化・合理化やローカル5Gを活用した新商材の提案営業に注力した結果、売上高は774億40百万円(前連結会計年度比4.5%増)となりました。
《工業機械部門》
工業機械部門につきましては、自動車関連産業ではEV用モーターなど関連部品が好調に推移し、建機・農機、航空機関連産業にも回復の兆しがみられ、ロボットなど省人化・省力化需要も堅調に推移しました。また、環境意識の高まりにより、カーボンニュートラル商品の需要も増加しました。海外では東南アジア諸国を中心に、景気は緩やかに回復しており、原材料費などの高騰の影響があったものの、生産設備の大型案件が増加しました。
このような状況の中、多関節ロボットを使用したロボットシステム「Robo Combo」などの当社が開発した商品・システムの販売に注力するとともに、各種補助金を活用した無人化・コストダウン・安定加工、カーボンニュートラルへの対応に向けた省エネ推進や工場内環境改善のシステム提案に取り組んだ結果、売上高は1,185億15百万円(前連結会計年度比15.9%増)となりました。
《住設・管材・空調部門》
住設・管材・空調部門につきましては、持家の新築着工戸数は弱含みで推移する中、分譲住宅やリフォームの需要は堅調に推移しました。水廻りを中心とした住宅設備機器、バルブ、ポンプなどの管材商品の一部には納期遅れなどがみられましたが、底堅い動きとなりました。また、省エネに対するニーズは高く、空調関連機器の販売も伸長しました。再生可能エネルギー分野では、エネルギーコストの上昇やカーボンニュートラルを見据えた需要が増加し、太陽光パネル、蓄電池などの販売は堅調に推移しました。
このような状況の中、非住宅向けの管材、空調機器などの商品販売と、カーボンニュートラルに向けたシステム提案やエンジニアリング機能の強化に努めた結果、売上高は1,779億15百万円(前連結会計年度比8.3%増)となりました。
《建築・エクステリア部門》
建築・エクステリア部門につきましては、物流施設やマンション建設が増加し、エクステリア商材及び建築金物商材が首都圏・東海圏を中心に堅調に推移するとともに、物置や宅配ボックスのニーズは引き続き高く、販売が増加しました。また、公共設備投資では自然災害対策や交通事故対策関連商品が堅調に推移しました。
このような状況の中、転倒リスクのあるコンクリート塀に代わるアルミ目隠しフェンス、ゲリラ豪雨被害対策として冠水センサー付き車止め、止水板などのレジリエンス製品やセキュリティ向上・省人化を図る車番認証ゲートの提案・拡販に注力した結果、売上高は516億38百万円(前連結会計年度比10.9%増)となりました。
《建設機械部門》
建設機械部門につきましては、インフラ整備、防災・減災工事などの公共工事とともに、民間設備投資も堅調に推移しました。レンタル会社の建設機械需要や土木系商材の需要は底堅い動きとなりましたが、引き続き資材・エネルギー価格の高騰、建設技能者不足の影響がみられました。
このような状況の中、工事現場の安全対策を重視した商品の拡充、高所作業車や新たな輸入商品として油圧ショベルやキャリアダンプの拡販に注力しました。また、中古建機オークション事業をはじめ、コンテナハウス製造や建設機械の整備・レンタル機能の拡充に努めた結果、売上高は365億33百万円(前連結会計年度比9.0%増)となりました。
《エネルギー部門》
エネルギー部門につきましては、経済活動の正常化が進み、需要に回復がみられましたが、ウクライナ情勢の長期化による影響からガソリン・軽油などの石油製品価格は依然として高値で推移しました。
このような状況の中、東海地方を中心に展開しているガソリンスタンドの小売事業では、洗車、車検、コーティングなどのカーケアサービスの強化に努めました。また、京浜地区における船舶用燃料の販売強化に取り組みました結果、売上高は191億9百万円(前連結会計年度比1.2%増)となりました。
《その他》
その他部門につきましては、消費財事業では、原材料費の高騰や円安の影響がみられたものの、季節家電の新商品開発と拡販に努めました。ネット販売事業におきましては、多様化する顧客ニーズに対応し、SNS等を活用した販売サイト運営に注力しました。木材事業では、新設住宅着工戸数が低調に推移したことにより国内需要が低迷するとともに円安の進行により厳しい販売状況が続きましたが、新規仕入先の開拓や国産材を活用した商品開発及び拡販に努めました。
この結果、売上高は236億54百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。
当社グループは創業360周年を迎える2026年を見据えた「ユアサビジョン360」実現の第3ステージとして、2023年4月から2026年3月までの3カ年を対象とする新中期経営計画「Growing Together 2026」をスタートさせました。当連結会計年度の経営成績等を踏まえた、具体的な施策等は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要
②財政状態の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要
③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
なお、中期経営計画に定める定量目標の進捗状況は下記のとおりであります。
指標
2023年3月期実績
2023年3月期(計画値)
2026年3月期(目標)
売上高
5,238億75百万円
5,450億円
6,000億円
経常利益
153億82百万円
164億円
200億円
経常利益率
3.0%
3.0%
3.3%
(注)2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しておりますが、上記の売上高は「収益認識に関する会計基準」等を適用しない場合の売上高を記載しております。
③当社グループの資本財源及び資金の流動性
当社グループの資本財源及び資金の流動性については、運転資金、設備投資等の資金需要に対して、短期借入金及び自己資金を充当することを基本方針としております。
また、当社グループ内でキャッシュ・マネジメント・システムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の充実を図っております。
当連結会計年度末の「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末より11億40百万円減少し、523億95百万円となっており、充分な流動性を確保していると考えております。
なお、将来当社グループの成長のために多額の資金需要が生じた場合には借入金の増額も検討いたしますが、財務の健全性を維持しつつ、事業活動を通じて創出した利益を成長分野へ投資することにより、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値の向上を図ってまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。