【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況 当第3四半期累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の鎮静化に伴う需要急増とは別に、コロナ危機による半導体などの供給不足、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格急騰を主因とした高インフレにより、世界全体として需要と供給の両面で回復が進んだものの、米欧を中心とした高インフレと金融引き締めが世界規模で経済成長を下振れさせることとなりました。一方、我が国においては、全国旅行支援の影響もあり継続する個人消費の増加や底堅い投資意欲を背景とした設備投資、水際対策緩和によるインバウンド需要の増加を経済のプラス要因として、感染第8波の拡大が懸念されながらも行動制限が課されないうえ、感染症対策も進展しており、景気下押し効果は限定的であると考えられます。しかしながら、資源価格上昇や円安による物価上昇が消費者マインドの悪化を招いたことや、年末の日銀による金融政策の修正により今後は円高が懸念されるといった不透明感が漂うなど、景気下振れリスクが顕在化すれば、景気回復テンポが大幅に鈍る可能性があることには注意が必要であると思われます。 当社が属するヘルスケア分野は、高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に需要期待が高まっております。政府も成長戦略の一つと位置付けており、ヘルスケア産業の活性化は今後も引き続き見込まれております。バイオ業界では、がんゲノム医療時代の幕開けと言える話題として、2019年6月に患者のがん細胞の遺伝子変異を調べて、最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」の遺伝子検査システムに公的医療保険が適用になりました。対象になるのは、原発不明がん、標準治療を終えたがんや希少がんの患者で、これまでは限られた医療機関において、自費で高額の費用をかけ、わずかな可能性にかけて検査を受け、使える薬を探っていたものが、公的医療保険を利用して全国の医療機関で広く検査を受けられるようになりました。 このような環境下において、当社は、経営方針を「開発力強化と事業化加速」と定め、既存の研究事業の成長と、新しい診断事業におけるEGFRリキッド及び肺がんコンパクトパネルといった製品を中心に、オンコロジー分野でのコンパニオン診断の事業化に取り組んでおります。現在、血液を用いて肺がんの遺伝子変異検査を行う、EGFRリキッドをコンパニオン診断として、2019年7月10日に厚生労働省へ承認申請を行い、2020年7月31日に高度管理医療機器製造販売承認(以降薬事承認といいます)を取得し、2021年5月21日に未固定組織を対象とした検査を、同年8月1日には血漿を対象とした検査の保険算定が開始となりました。薬事試験・申請・承認プロセスにおける経験・ノウハウを活かし、オンコロジーを中心とした診断分野での検査開発をさらに加速してまいります。また、次の主力検査として、複数の肺がんドライバー遺伝子変異を、高感度かつ一括で検査可能な肺がんコンパクトパネルを開発し、薬事試験を進めてきておりました。本製品は、2021年10月28日に薬事申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得、2023年1月16日に保険適用の申請を行いました。当社は、EGFRリキッドの市場への普及、及び肺がんコンパクトパネルの薬事承認・公的医療保険適用による早期事業化を最優先事項として取り組んでおります。これらの結果、経営成績におきましては、当第3四半期累計期間の売上高は、167百万円(前年同四半期比76.1%)となりました。利益面では、営業損失322百万円(前年同四半期営業損失187百万円)、経常損失322百万円(前年同四半期経常損失187百万円)、第3四半期純損失315百万円(前年同四半期四半期純損失171百万円)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
① 研究事業研究事業におきましては、主な事業として受託解析サービスを行っております。大学や公的研究機関、製薬会社等の企業を主要な顧客として、遺伝子関連解析の各種サービスを提供しております。主なサービスは、マイクロアレイ受託解析サービスと次世代シークエンス受託解析サービスがあります。両サービスのどちらも大学や公的研究機関、製薬会社等の企業に対し積極的な提案型営業を行い、きめ細やかなフォローを推進しております。また、各種受託解析の実績から顧客の目的に合わせた実験デザインの提案、データ解析及びサポートに力を入れるとともに、顧客ニーズに合わせた新規サービスメニューの拡充を図っております。
特に国の施策としても注目されている次世代シークエンスを活用した、「がんゲノム解析」や「網羅的な遺伝子解析」を行う受託サービスにも注力しております。また「デジタルPCR受託サービス」等、多様化する研究ニーズに合わせた遺伝子解析メニューを展開しております。
いずれのサービスにつきましても、他社との差別化を意識し、各種ニーズに答えることができる体制の構築と、クオリティの高いサービス内容をお客様に提供すべく取り組んでおります。
次世代シークエンス受託解析については引き続き遺伝子解析の主流としてニーズが高まっており、受託件数も増加傾向にあります。一方マイクロアレイ受託解析サービスについては、次世代シークエンス受託解析へ移行する等の理由で受託件数が前年度を下回りました。 当第3四半期累計期間の売上高は159百万円(前年同四半期比78.1%)、セグメント損失は52百万円(前年同四半期セグメント損失は8百万円)となりました。
② 診断事業診断事業におきましては、血液を用いて肺がんの遺伝子変異を検査する、EGFRリキッド及び肺がんの分子標的薬の適用となる遺伝子異常を一括検査可能な肺がんコンパクトパネルの市場への普及を当社の最優先事項として取り組んでおります。EGFRリキッドは、2020年7月31日に薬事承認を取得し、2021年5月21日に未固定組織を対象とした検査を、同年8月1日には血漿を対象とした検査の保険算定が開始となりました。この検査は、低侵襲的な血液遺伝子検査により、血中に微量に存在する血中腫瘍DNA上のEGFR変異を次世代シークエンス法により高感度に検出するリキッドバイオプシー検査です。肺がん組織の生検(気管支鏡検査、CTガイド下生検)は、侵襲性が高く患者さんへの負担も大きいことから、リキッドバイオプシー検査への期待が高まっています。また、EGFRリキッドに続いて、肺がん組織検査に特化した高感度な一括遺伝子検査パネル(肺がんコンパクトパネル)を開発し、2021年10月28日に薬事申請を行い、2022年11月16日に薬事承認を取得しました。肺がんコンパクトパネルは、EGFR・ALK・ROS1・BRAF・METの薬剤適用の対象となっている遺伝子変異に加え、ごく最近に分子標的薬が上市されたRET融合遺伝子やKRAS遺伝子、さらには近い将来分子標的治療薬の上市が見込まれているHER2などのターゲット遺伝子の変異を検出します。今回の申請ではまず、EGFR・ALK・ROS1・METの4つの遺伝子変異に対応する分子標的治療薬のコンパニオン診断システムとして薬事申請を行い、薬事承認を得ました。また、2022年12月16日にBRAF(V600E)、RET融合遺伝子及びKRAS遺伝子(G12C)への適用を追加申請したことで、今後のコンパニオン診断対象を拡大していく予定です。現在本製品は、保険収載と検査開始に向けて準備を進めております。本手法は、高感度であることから細胞診(液性)を対象とした解析も可能であり、学校法人聖マリアンナ医科大学との共同研究でその有用性を示してきました。現在、多施設での評価を目的としたcPANEL多機関共同研究(学校法人聖マリアンナ医科大学及び地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンターを主幹施設とした全国から7施設)を実施しており、細胞診を対象とした肺がんコンパクトパネルの有用性評価と検体採取の標準化を進めています。2022年9月30日までに集積した検体を対象に中間解析評価を実施しており、2022年12月の肺癌学会学術集会にて成果を発表し、多機関の検証においても高い成功率が示されました。本多機関共同試験の症例エントリー及び検体集積は順調に進行しており、年度内に目標症例数に到達する見込みです。 2022年10月3日より臨床検査サービスの強化の一環として神奈川県川崎市に新ラボラトリーを開設し、肺がんコンパクトパネルを中心とした臨床検査を全国から検体を収集し、一括集約型Laboratory Developped Test(LDT)ラボとして検査サービスを提供する準備を進めております。各種自動化及びシステム化による検体・情報管理システムLaboratory Information Management System(LIMS)を導入し、効率的でトレース可能かつ頑健な臨床検査システムの構築を進めております。診断事業の新規検査メニューとして、今年度より着床前胚染色体検査(PGT-A/PGT-SR)の準備を開始しております。「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」における研究分担施設(解析実施施設)として日本産科婦人科学会倫理委員会により承認されております。2022年4月より不妊治療の保険適用が始まり、PGT-Aは先進医療での試験を経て保険適用を目指すという方針が示されています。日本産科婦人科学会が主導する検査の枠組みに準拠した形で、検査サービスを提供していく予定としております。また、希少変異検出の技術を発展させたNOIR-SS技術(分子バーコード技術を用いて高感度かつ正確な分子数測定が可能となる超低頻度変異DNAの検出技術)により、高感度に複数遺伝子を一括解析可能なリキッドバイオプシー検査サービスを研究用検査として提供しております。希少変異検出の独自特許技術及び薬事試験を通して培ったノウハウ、クリニカルシークエンスグレードでの精度管理・レポートシステムを活用し、リキッドバイオプシー分野・免疫プロファイル/バイオマーカー開発・抗体医薬開発分野での研究推進・医療現場での遺伝子解析の普及促進に貢献してまいります。また、大規模な解析結果から有益な情報を効率的に導き出すビッグデータ解析、AI技術開発も進めており、次世代型診断技術開発への応用やシーズ探索の効率化、検査系システムの頑健化・効率化に繋げていきます。以上のように診断事業はコンパクトパネル事業の稼働準備に注力したため、当第3四半期累計期間の売上高は、7百万円(前年同四半期比49.0%)、セグメント損失は149百万円(前年同四半期セグメント損失は74百万円)となりました。
当第3四半期会計期間末における財政状態につきましては、総資産が631百万円となり、前事業年度末に比べ258百万円減少しております。主な要因は次のとおりであります。
(流動資産)当第3四半期会計期間末における流動資産の残高は272百万円で、前事業年度末に比べ437百万円減少しております。主な要因は、現金及び預金が368百万円、受取手形及び売掛金が95百万円それぞれ減少し、貯蔵品が11百万円増加したことなどによるものです。
(固定資産)固定資産は、前事業年度末に比べて179百万円増加し、358百万円となりました。これは、有形固定資産のうち診断事業部の新規検査ラボラトリーに係る建設工事代及び備品購入代119百万円、投資その他の資産のうち当該ラボラトリーに係る敷金29百万円がそれぞれ増加し、無形固定資産のうち薬事申請によるソフトウエア仮勘定31百万円が増加、ソフトウエアが減価償却により6百万円減少したことなどによるものです。
(流動負債)当第3四半期会計期間末における流動負債の残高は114百万円で、前事業年度末に比べ14百万円増加しております。主な要因は、買掛金が6百万円減少し、賞与引当金が10百万円増加したことなどによるものです。
(固定負債)固定負債は、前事業年度末に比べて29百万円増加し、39百万円となりました。主な要因は、新規検査ラボラトリーの将来の原状回復費に係る資産除去債務が28百万円増加したことによるものです。
(純資産)当第3四半期会計期間末における純資産の残高は477百万円で、前事業年度末に比べ303百万円減少しております。これは、四半期純損失による利益剰余金315百万円の減少などによるものです。
(2)事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期累計期間において、当社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(3)研究開発活動当第3四半期累計期間の研究開発費の総額は、59百万円であります。なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4)従業員数当第3四半期累計期間において、従業員数の重要な変動はありません。
(5)生産、受注及び販売の実績当第3四半期累計期間における生産、受注及び販売の実績は、ほぼ予定通りとなっており、著しい変動はありません。
(6)主要な設備前事業年度末において計画中であった主要な設備の新設、更新計画のうち、当第3四半期累計期間に完了したものは次のとおりです。
事業所名(所在地)
セグメントの名称
設備の内容
完了年月
研究施設及び事務所(神奈川県川崎市)
診断事業
診断事業部ラボ新築工事
2022年7月
当第3四半期累計期間において、主要な設備の新設は次の通りです。
事業所名(所在地)
セグメントの名称
設備の内容
投資額
資金調達方法
着手年月
完了年月
総額(千円)
既支払額(千円)
研究施設及び事務所(神奈川県川崎市)
診断事業
ラボ居室工事
36,270
36,270
自己資金
2022年8月
2022年10月
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