【経営者による財政状態及び経営成績の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期累計期間(2022年4月1日から2022年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大の波が繰り返し起こりつつも、水際対策の緩和等、ウィズコロナ政策の下で社会経済活動の正常化が進み、個人消費を中心に緩やかな景気回復が見られました。その一方で、長期化するウクライナ情勢を背景とした世界的な原材料価格の高騰が続く中、米国における急速な利上げなど欧米で加速する金融引締めの動き、中国におけるコロナ感染動向などにより、世界的な景気後退懸念が高まっています。
再生医療・細胞治療分野では、歴史的な発見から10年が過ぎたiPS細胞による基礎研究や臨床応用が活発に行われています。さらに、岸田内閣の下「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が提唱されました。なかでも再生・細胞治療・遺伝子治療等を含む科学技術・イノベーションへの重点的投資を含む、バイオテクノロジー領域への成長を促す政策が注目されています。医療応用はもとより、エネルギーや食糧、環境問題など、種々の社会課題に対してバイオテクノロジーを通じた解決を試みる本格的な活動が開始されました。一方、2022年9月には、多発性骨髄腫を対象とするCAR-T細胞製品(ヤンセンファーマ販売名:カービクティ点滴静注)が製造販売承認され、わが国の再生医療等製品(細胞加工製品及び遺伝子治療用製品)は、当社4製品を含む17品目となりました。
医療現場においては、これまでのコロナ感染拡大に比べ、第7波・第8波は重症化率が低い一方、変異株の感染力は非常に強く、医師や医療スタッフへの感染が拡大し、人的リソースが逼迫しました。その結果、自家の再生医療等製品を用いた治療のように、医療機関における人手が必要な治療が敬遠・延期される傾向が顕著になりました。
このような状況の下、財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当第3四半期会計期間末の総資産は、現金及び預金ならびに売上債権等の減少により前事業年度末と比べ680,588千円減の6,917,567千円となりました。負債は、賞与引当金の減少等により前事業年度末と比べ54,938千円減の876,725千円となりました。純資産は、利益剰余金の減少により前事業年度末と比べ625,649千円減の6,040,841千円となり、自己資本比率は87.3%となりました。
b. 経営成績
当第3四半期累計期間における売上高は、再生医療製品事業の自家培養軟骨ジャック、自家培養口腔粘膜上皮オキュラルの売上が拡大した一方、自家培養表皮ジェイスの売上が減少した影響等により、1,443,615千円(前年同期比9.5%減)となりました。営業損失は624,460千円(前年同期は339,645千円の営業損失)、経常損失は622,797千円(前年同期は337,552千円の経常損失)、四半期純損失は625,649千円(前年同期は340,601千円の四半期純損失)となりました。
再生医療製品事業の売上高は、1,035,019千円(前年同期比6.8%減)となり、セグメント利益は9,457千円(前年同期比92.0%減)となりました。
再生医療受託事業の売上高は、262,151千円(前年同期比15.2%減)となり、セグメント利益は83,238千円(前年同期比54.6%減)となりました。
研究開発支援事業の売上高は、146,445千円(前年同期比16.6%減)となり、セグメント損失は7,955千円(前年同期は13,701千円のセグメント利益)となりました。
各セグメントにおける概況、及び新規パイプライン開発に関する特記事項は、以下のとおりです(□内は当四半期累計期間における主な成果です)。
[再生医療製品事業]
当社は再生医療製品事業として自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャック、自家培養角膜上皮ネピック及び自家培養口腔粘膜上皮オキュラルの製造販売を行っています。
・自家培養表皮ジェイス
自家培養表皮ジェイスは、2009年1月に重症熱傷を適応として保険収載された国内初の再生医療等製品であり、先天性巨大色素性母斑及び表皮水疱症(栄養障害型と接合部型)にも適応を拡大しています。ジェイスの保険適用に関しては、患者さんの一連の製造につき保険算定できる枚数の上限が設定されており、熱傷治療は40枚(医学的に必要がある場合に限り50枚)、先天性巨大色素性母斑治療は30枚、表皮水疱症(栄養障害型と接合部型)治療は50枚が保険算定限度となっています。
・自家培養軟骨ジャック
自家培養軟骨ジャックは、2013年4月に保険収載された国内第2号の再生医療等製品であり、膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)を適応としています。2019年1月には、ジャックの移植時に用いていた患者さん自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更承認を取得して、手術侵襲の低減と手術の簡便化を実現しました。2022年6月には、承認後の使用成績調査について再審査が終了し、承認時の有効性及び安全性が改めて確認されました。
・自家培養角膜上皮ネピック
自家培養角膜上皮ネピックは、2020年6月に保険収載された眼科領域では国内初となる再生医療等製品であり、角膜上皮幹細胞疲弊症(スティーヴンス・ジョンソン症候群・眼類天疱瘡・移植片対宿主病・無虹彩症等の先天的に角膜上皮幹細胞に形成異常を来す疾患・再発翼状片・特発性の角膜上皮幹細胞疲弊症の患者さんを除く)を適応としています。
・自家培養口腔粘膜上皮オキュラル
自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、角膜上皮幹細胞疲弊症を適応としており、2021年12月に保険収載されました。口腔粘膜上皮細胞を用いて両眼性の角膜上皮幹細胞疲弊症を治療することが可能な、世界初の再生医療等製品です。
当第3四半期累計期間における再生医療製品事業の売上は、1,035,019千円(前年同期比6.8%減)となりました。新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和等に対応して売上拡大に努めてきましたが、これまでのコロナ感染拡大に比べ、第7波・第8波は重症化率が低い一方、変異株の感染力は非常に強く、医師や医療スタッフの感染により人的リソースが逼迫しました。その結果、これまで以上に、計画された手術の中止が発生したのみならず、医療機関における人手が必要な当社製品を用いた治療全般が敬遠・延期される影響も顕著になりました。売上の主な内訳は以下のとおりです。
当累計期間におけるジェイスの売上は、588,106千円(前年同期比23.5%減)となりました。重症熱傷では、患者の発生が想定以上に少ない状況が続きました。また、先天性巨大色素性母斑と表皮水疱症では待機患者の治療一巡やコロナによる通院手控えにより、前年同期に対して売上高が減少しました。医療機関に対する新型コロナウイルスの影響を十分に鑑み、種々の変化を捉えた営業活動を実施するとともに、重症熱傷治療における新たな施設へのジェイス価値提供を通じて売上の挽回を図ります。また、先天性巨大色素性母斑においては拠点施設の醸成を通じて新規候補患者の獲得に努め、表皮水疱症では潜在患者への周知と治療意欲向上に向けて患者会との連携を一層強化し、売上拡大を目指します。
当累計期間におけるジャックの売上は、295,412千円(前年同期比4.6%増)となりました。大口顧客である基幹施設からの受注が堅調であり、前年同期に対して売上高が増加しました。一方で、その他の一般施設からの受注が鈍化しており、販促活動の強化を進めています。今後も当社は、膝の軟骨欠損症例に対してエビデンスに基づく治療成績向上を訴求し、事業の成長につなげます。また、当社は外傷に起因する二次性の変形性膝関節症への適応拡大を目指し、治験を実施しています。当該治験は計画通り進んでおり、速やかにデータをまとめて申請準備を行います。
当累計期間における眼科領域・その他の売上は、151,500千円(前年同期比156.1%増)となりました。ネピックに続きオキュラルの販売が開始され、順調に売上を伸ばしました。また販売を担う株式会社ニデックと協働して眼科の主要学会にてランチョンセミナーを開催するなど、製品の認知度向上に努めました。当社は、根治療法の存在しなかった角膜上皮疾患に対して再生医療という新たな選択肢を設け、眼科領域の治療発展に貢献します。
[再生医療受託事業]
当社は再生医療受託事業において、再生医療等製品の受託開発及びコンサルティング・特定細胞加工物製造受託を行っています。
・再生医療等製品の受託開発
当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富な実績及びノウハウを生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しています。
・コンサルティング及び特定細胞加工物製造受託
当社は、再生医療等安全性確保法のもと、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しています。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しています。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞培養加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しています。
当第3四半期累計期間における再生医療受託事業の売上は、262,151千円(前年同期比15.2%減)となりました。親会社である帝人株式会社(以下、「帝人」)からの受託は増加した一方、新規案件の獲得が新型コロナウイルスの影響などで遅れており、前年同期に対して売上が減少しました。当社は、今後第三者からの新規受託を拡充し、また帝人からの受託を進めることで、再生医療受託事業の再拡大を目指します。
また、当社は、帝人、国立研究開発法人国立がん研究センター、三井不動産株式会社とともに、再生医療等製品の研究・開発から、事業計画策定、商用生産までの過程をワンストップで実現する「柏の葉 再生医療プラットフォーム」を推進します。当社が培ってきたノウハウを活用することで、再生医療等製品の事業化を加速し、日本発の革新的な治療法の提供を通じて社会に貢献することを目指します。
[研究開発支援事業]
当社は研究開発支援事業において、自社製品の開発で蓄積した高度な培養技術を応用した研究用ヒト培養組織の製造販売を行っています。
・ラボサイトシリーズ
研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズは、動物実験を代替する試薬です。日用品、医薬品、化粧品、化学品メーカーなど、化学物質を扱う企業向けに販売しています。
当第3四半期累計期間における研究開発支援事業の売上は、146,445千円(前年同期比16.6%減)となりました。研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズは、オンライン面談による営業活動の強化により、コロナ禍で顧客が研究開発費を削減する動きがある中でも受注を獲得しました。しかしながら、ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIEC」の販売終了に伴う売上高の減少をカバーするには至らず、前年同期に対して売上が減少しました。経済協力開発機構(OECD)のテストガイドラインには、エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験法及び皮膚腐食性試験法、ならびに角膜モデル24を用いた眼刺激性試験法が標準法の一つとして収載されており、国内外からの引き合いの増加に寄与しています。
当社は引き続き、ラボサイトシリーズが信頼性の高い動物実験代替材料として活用できることを訴求し、顧客ニーズの把握ならびに新規顧客獲得を通じて売上増加を目指します。
[新規パイプラインの開発]
当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでいます。
当第3四半期累計期間における特記事項は以下のとおりです。
– 尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的とするメラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)については、2022年4月27日付で製造販売承認申請を行いました。今後、皮膚科領域の事業拡大を目指します。
– わが国で初となる他人の皮膚組織を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品である他家(同種)培養表皮(開発名:Allo-JaCE03)については、2021年8月に日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として「同種培養表皮の開発・事業化」に関する案件が採択され、2021年11月に治験計画届書を提出しました。さらに、「再生医療等製品の原材料となるヒト(同種)細胞の安定供給体制の構築」に関する案件が2021年6月にAMEDの委託事業として採択されており、他家(同種)細胞を用いた再生医療の産業化を進めています。
– ジャックの適応拡大に向けて、外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とした治験を実施しています。治験は計画通り進んでおり、速やかにデータをまとめて申請準備を行います。本適応拡大を通じて、対象患者の多い市場への展開を目指します。
– CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia)の治療を目的とする自家CAR-T細胞製剤については、2019年から「piggyBacトランスポゾンベクターを用いた自家CD19CAR-T療法の企業治験開始に向けた研究開発」(ウイルスベクターを用いない新技術による国産のCAR-T細胞製剤の開発)に関する3年間のAMEDの補助事業として開発を進めてきました。並行して、技術導入元である名古屋大学において同技術を用いた急性リンパ性白血病に対する臨床研究が実施されており、企業治験に向けた評価データが集積されています。今後、企業治験の開始を目指します。これに加え、当社は本品の開発で得た知見やノウハウを生かし、柏の葉スマートシティ内に構築する「再生医療プラットフォーム」において帝人、国立研究開発法人国立がん研究センター、三井不動産株式会社と協働し、がん領域における本格的な事業展開に繋げていきます。
(2) 会計上の見積り及び当期見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期累計期間における研究開発活動の金額は、452,352千円であります。なお、研究開発費の金額は助成金の対象となる費用(76,858千円)控除後の金額であります。
当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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