【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績
[全般]
当第3四半期連結累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)においては、足元では中国のゼロコロナ政策緩和により、景気の下振れ懸念は後退しつつありますが、総じて同国における経済活動抑制の影響や世界的な物価上昇を背景とした米欧の金融引き締め等を受け、世界経済の回復ペースは鈍化しています。
わが国経済については、物価上昇による家計や企業への影響や世界経済の下振れ等下押し懸念はあるものの、新型コロナウイルス感染のピークアウトにより経済社会活動の正常化が進む等、緩やかに持ち直しています。
同期間における原油価格(ドバイ原油)は、期初は1バーレル当たり102ドルから始まり、期末には79ドル、期平均では前年同期比25ドル高の97ドルとなりました。EUのロシア産原油禁輸措置の導入による供給不足感等を受け6月には119ドルまで上昇しましたが、各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念や中国のコロナウイルス感染拡大等の影響を受けて下落に転じ、11月以降は80ドル前後で推移しています。
銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり465セントから始まり、期末には380セント、期平均では前年同期比53セント安の382セントとなりました。中国経済の減速や世界的な景気後退懸念の高まりを受け7月にかけて310セント台まで大きく下落しましたが、中国のゼロコロナ政策緩和への期待や米国の利上げペース緩和観測等により、11月以降は380セント前後で推移しています。
円の対米ドル相場は、日米の金利差拡大を背景に10月には150円台まで円安が進行しましたが、12月に日銀の政策修正を受けて130円台前半まで急速に円高が進行し、期平均では前年同期比26円円安の137円となりました。
こうした状況のもと、当第3四半期連結累計期間の連結売上高は、原油価格の上昇に伴う石油製品販売価格の上昇や円安の進行等により、前年同期比48.5%増の11兆3,351億円となりました。また、営業利益は、前年同期比2,803億円減益の2,498億円となりました。在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、前年同期比1,019億円減益の1,714億円となりました。
金融収益と金融費用の純額170億円を差し引いた結果、税引前四半期利益は、前年同期比2,824億円減益の2,328億円となり、法人所得税費用892億円を差し引いた四半期利益は、前年同期比2,273億円減益の1,436億円となりました。
なお、四半期利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が960億円、非支配持分に帰属する四半期利益が476億円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
[エネルギーセグメント]
エネルギーセグメントについては、自動車の低燃費化を主因とする構造的な国内石油製品需要の減少はあるものの、新型コロナウイルス感染症の影響緩和及び好調な輸出市況を受けて輸出数量が増加したことにより、販売数量は前年同期比7.3%増となりました。一方、石油化学製品は、中国におけるロックダウンの影響により、パラキシレン、ベンゼンともに市況は前年同期に比べ悪化しました。
こうした状況のもと、エネルギーセグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は、原油価格の上昇等により、前年同期比56.0%増の9兆6,211億円となりました。営業利益は前年同期比2,986億円減益の21億円となりました。これには円安を主因とする在庫影響による会計上の利益が784億円(前年同期は2,568億円)含まれており、在庫影響を除いた営業損失相当額は、前年同期比1,202億円減益の763億円となりました。
[石油・天然ガス開発セグメント]
原油及び天然ガスの生産量については、英国事業の売却(2022年3月完了)の影響等により、前年同期に比べ減少しました。一方、原油及び天然ガスの販売価格は、原油市況を反映し前年同期に比べ大幅に上昇しました。
こうした状況のもと、石油・天然ガス開発セグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は前年同期比3.5%減の1,558億円、営業利益は前年同期比240億円増益の956億円となりました。
[金属セグメント]
機能材料・薄膜材料事業については、中国のゼロコロナ政策等による影響で一部製品の販売環境の悪化があったものの、サーバー、通信インフラ等高機能IT分野での需要の増加に加えて、為替が円安に推移したことで増益となりました。
資源事業については、チリのカセロネス銅鉱山における生産量は、前年同期に比べて増加したものの、銅価格の下落を主因に減益となりました。なお、同鉱山においては、引き続き生産性の向上とコスト削減に取り組んでいます。
製錬・リサイクル事業については、硫酸国際市況の改善及び為替が円安に推移したことで増益となりました。
こうした状況のもと、金属セグメントの当第3四半期連結累計期間における売上高は前年同期比23.7%増の1兆2,163億円、営業利益は前年同期比58億円減益の1,169億円となりました。
[その他]
その他の事業の当第3四半期連結累計期間における売上高は前年同期比7.6%増の3,781億円、営業利益は前年同期比20億円増益の341億円となりました。
建設事業については、公共投資が底堅く推移し、民間設備投資も持ち直しているものの、原材料価格の高騰により、厳しい経営環境が続いています。こうした状況のもと、アスファルト合材等の製品販売における原材料価格の上昇に対し、適正価格での販売を推進するとともに、技術の優位性を活かした受注活動や、コスト削減・業務効率化に努めました。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高が合計361億円(前年同期は337億円)含まれています。
(2)財政状態
①資産 当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比1兆389億円増加の10兆6,871億円となりました。
②負債 当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、棚卸資産の増加に伴う運転資金の増加等により、前連結会計年度末比1兆480億円増加の7兆4,621億円となりました。有利子負債残高は、前連結会計年度末比8,768億円増加の3兆6,123億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は9,724億円増加の3兆1,574億円となりました。
③資本 当第3四半期連結会計期間末における資本合計は、四半期利益の計上等があったものの、配当金の支払や自己株式の取得による減少等により、前連結会計年度末比91億円減少の3兆2,250億円となりました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比3.4ポイント減少し26.3%、1株当たり親会社の所有者帰属持分は前連結会計年度末比40.55円増加の931.43円、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は前連結会計年度末比0.30ポイント悪化し、0.98倍となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は4,437億円となり、期首に比べ803億円減少しました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、次のとおりです。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果、資金は4,610億円減少しました(前年同期は211億円の減少)。これは、税引前四半期利益や減価償却費等の資金増加要因があったものの、運転資金の増加や法人税の支払等の資金減少要因が上回ったことによるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果、資金は1,622億円減少しました(前年同期は2,523億円の減少)。これは、資産売却収入等の資金増加要因があったものの、JSR株式会社からのエラストマー事業の買収等の戦略的投資等の資金減少要因が上回ったことによるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果、資金は5,116億円増加しました(前年同期は3,215億円の増加)。これは、配当金の支払や自己株式の取得等の資金減少要因があったものの、借入金の増加や社債(トランジション・リンク・ボンド)の発行等の資金増加要因が上回ったことによるものです。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費は、23,852百万円です。
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