【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症における行動制限の緩和により、個人消費を中心に緩やかに持ち直してまいりました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による物価上昇や世界的な金融引締めなど、依然として先行き不透明な状況が懸念されます。当社グループの主力事業である鉄鋼業界におきましては、製造業向け需要は、産業機械向けは一部で内外需要の回復による増加が見られましたが、自動車向けは半導体など部品の供給制約から年度後半まで減少基調が続きました。建築向け需要は大型案件は堅調でしたが、中小案件は資材価格の高騰の影響等から低迷するなど、総じて鉄鋼需要は弱含みで推移しました。このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2022年度~2024年度)の重点方針に沿って、当社グループが掲げた目標の達成を目指して施策を推進してまいりました。「“中山らしさ”の追求、グループ一体での付加価値向上による連結収益最大化」においては、昨年4月1日に完全子会社の中山三星建材株式会社を合併し、母材のホットコイルから加工製品までの一貫メーカーとしての強みを発揮することによりグループ総合力の強化に努めております。また、縞鋼板の加工能力を増強させるため、完全子会社の三泉シヤー株式会社の第2工場を当社構内に建設し、本年4月より本格的に稼働しました。これらによりグループ全体で加工分野を強化し付加価値の高い加工品の拡販を図ります。「カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けた取り組み強化」においては、電気炉生産量の増加や各工場でのコスト・品質の改善などに注力するとともに、「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」のもとで特定されたマテリアリティとその推進方針に従い、サステナビリティへの取り組みを一層強化してまいりました。これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,885億14百万円(前期比218億13百万円増)、営業利益136億44百万円(前期比63億94百万円の増益)、経常利益133億71百万円(前期比67億16百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益102億27百万円(前期比54億11百万円の増益)となりました。
当連結会計年度における各セグメントの業績は、次のとおりであります。鉄鋼につきましては、鋼材販売数量の減少、資源価格の上昇及び円安の進行に伴いスクラップ・鋼片などの主原料価格や電力・ガスなどのエネルギー価格が高騰したことにより製造コストが増加しましたが、鋼材販売価格の改善により鋼材スプレッドが拡大しましたので、前期比で増収増益となりました。これらの結果、売上高は1,855億42百万円(前期比213億95百万円増)、経常利益は129億79百万円(前期比61億30百万円の増益)となりました。エンジニアリングにつきましては、海洋部門及び鋳機部門の受注が増加しましたが、資材価格の高騰が響き増収ながら減益となり、売上高は19億7百万円(前期比1億29百万円増)、経常利益は2百万円(前期比56百万円の減益)となりました。不動産につきましては、賃貸収入を中心に安定した収益を確保し、売上高は10億64百万円(前期比2億87百万円増)、経常利益は6億97百万円(前期比1億96百万円の増益)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,487億87百万円となり、前連結会計年度末と比べ51億68百万円増加しました。これは主として、受取手形、売掛金及び契約資産、電子記録債権が増加したことによるものであります。負債については519億27百万円となり、前連結会計年度末と比べ27億59百万円減少しました。これは主として、未払法人税等が増加しましたが、短期借入金が減少したことによるものであります。純資産については968億59百万円となり、前連結会計年度末と比べ79億28百万円増加しました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと及び配当金の支払いによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、167億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億10百万円増加(+6.4%)しました。当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得られた資金は、130億12百万円(前期87億56百万円の支出)となりました。これは、主として、売上債権の増額64億52百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益136億53百万円、減価償却費27億51百万円、未払消費税等の増額28億93百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果支出した資金は、34億60百万円(前期23億8百万円の支出)となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出37億34百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果支出した資金は、85億41百万円(前期83億88百万円の収入)となりました。これは、主として短期借入金の純減額50億円、長期借入金の返済による支出6億74百万円、配当金の支払額24億31百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
セグメントの名称
品名
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
生産高(千トン)
前期比(%)
鉄鋼
粗鋼
548
1.9
圧延鋼材
1,036
△7.1
加工鋼材
345
△3.4
(注) 上記以外については、役務の提供や重要性のないものであるため記載を省略しております。
b.受注実績
セグメントの名称
品名
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
鉄鋼
鋼材
95,588
7.2
16,882
1.2
エンジニアリング
魚礁等
3,238
90.0
2,248
145.0
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。2 鉄鋼セグメントについては、製造会社である当社、三泉シヤ―㈱の2社の受注高及び受注残高を記載しております。また、当該2社の中山通商㈱、三星商事㈱を介した外部顧客に対する受注高及び受注残高については、実務上算定が困難であるため、上記には含めておりません。3 当連結会計年度において、エンジニアリングの受注高及び受注残高は著しく増加しました。これは、ロール受注の増加や魚礁の大型物件受注によるものであります。
c.販売実績
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
金額(百万円)
前期比(%)
鉄鋼
185,542
13.0
エンジニアリング
1,907
7.3
不動産
1,064
37.1
合計
188,514
13.1
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
阪和興業㈱
30,263
18.2
34,687
18.4
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、以下のとおりであります。
経営成績の分析(売上高)当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ218億13百万円増加し、1,885億14百万円(前年度比13.1%増)となりました。これは、主に鋼材販売価格の大幅な上昇によるものであります。各報告セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、鉄鋼が98.4%、エンジニアリングが1.0%、不動産が0.6%となりました。
(営業利益)当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度に比べ63億94百万円増加し、136億44百万円(前年度比88.2%増)となりました。これは、鋼片や合金鉄などの主副原料価格の高騰やエネルギーコストの増加がありましたが、鋼材販売価格が大幅に上昇し鋼材スプレッドが改善したことなどによるものであります。
(経常利益)当連結会計年度における営業外収益は、受取配当金や持分法による投資利益の増加などにより、前連結会計年度に比べ42百万円増加し、4億81百万円(前年度比9.6%増)となりました。営業外費用は、シンジケートローン手数料や補修費用などその他の営業外費用の減少などにより、前連結会計年度に比べ2億80百万円減少し、7億54百万円(前年度比27.1%減)となりました。以上の結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ67億16百万円増加し、133億71百万円(前年度比100.9%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)特別利益は、前連結会計年度では、抱合せ株式消滅差益2億20百万円などを計上し、当連結会計年度では、スクラップ売却益9億59百万円、受取保険金1億52百万円などを計上したため、前連結会計年度に比べ8億55百万円増加し、11億71百万円(前年度比269.8%増)となりました。特別損失は、前連結会計年度では、固定資産除却損1億81百万円などを計上し、当連結会計年度では、固定資産除却損5億80百万円、損害賠償金1億52百万円などを計上したため、前連結会計年度に比べ6億86百万円増加し、8億89百万円(前年度比337.6%増)となりました。税金費用は、課税所得の増加などにより法人税、住民税及び事業税が前連結会計年度に比べ21億96百万円増加し、繰延税金資産の回収可能性の見直しなどにより法人税等調整額が前連結会計年度に比べ7億23百万円減少したため、法人税等合計では前連結会計年度に比べ14億73百万円増加し、34億26百万円(前年度比75.5%増)となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ54億11百万円増加し、102億27百万円(前年度比112.4%増)となりました。
財政状態の分析(流動資産)当連結会計年度末における流動資産の残高は、975億82百万円(前連結会計年度末926億88百万円)となり、48億94百万円増加しました。これは主として、在庫数量を減少させたことなどにより棚卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品)が減少(364億38百万円から348億3百万円へ16億35百万円減少)しましたが、鋼材販売価格の上昇などに伴い受取手形、売掛金及び契約資産が増加(315億38百万円から359億8百万円へ43億70百万円増加)し、電子記録債権も増加(73億86百万円から94億72百万円へ20億85百万円増加)したことによるものであります。
(固定資産)当連結会計年度末における固定資産の残高は、512億4百万円(前連結会計年度末509億29百万円)となり、2億74百万円増加しました。これは主として、設備投資(40億44百万円)による増加、減価償却(27億51百万円)による減少、市場価格の上昇などにより投資有価証券が増加(27億85百万円から31億50百万円へ3億65百万円増加)したこと、及び営業保証に係る差入保証金が減少(23億52百万円から13億64百万円へ9億87百万円減少)したことによるものであります。
(流動負債及び固定負債)当連結会計年度末における負債合計(流動負債及び固定負債)の残高は、519億27百万円(前連結会計年度末546億86百万円)となり、27億59百万円減少しました。これは主として、未払法人税等が増加(15億65百万円から32億70百万円へ17億5百万円増加)し、未払消費税等も増加(54百万円から19億75百万円へ19億21百万円増加)しましたが、有利子負債(短期借入金、社債(1年内償還予定を含む)、長期借入金)が減少(159億93百万円から102億76百万円へ57億16百万円減少)したことによるものであります。
(純資産)当連結会計年度末における純資産の残高は、968億59百万円(前連結会計年度末889億31百万円)となり、79億28百万円増加し、自己資本比率は65.1%となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと(102億27百万円増加)、及び剰余金の配当(24億36百万円減少)によるものであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報キャッシュ・フローの分析当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び貯蔵品の仕入や製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入などによる調達を基本としており、設備投資につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、当社グループは、資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的としてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ内の資金管理の一元化を行い、グループ全体の資金効率化を進めております。なお、当連結会計年度末における借入金及び社債を含む有利子負債の残高は102億76百万円、現金及び現金同等物の残高は167億55百万円となっております。