【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の行動制限および入国に係る水際措置の緩和に伴い、インバウンド需要の増加も相俟って経済活動の回復が鮮明になってきましたが、国際情勢や円安基調を背景とした広範囲な物価の上昇が続いて、先行きは不透明な状況となっております。当社グループが関連するアパレル・ファッション業界は、まだら模様ながら衣料品の消費回復に伴い、日本向け衣料品の生産は回復基調が続きましたが、手芸関連業界は、いわゆる巣ごもり消費からお出かけ消費への変化や、諸物価上昇の影響も受けて総じて低迷が続きました。当社グループにおきましては、これらの状況に加えて、昨春以降の中国・上海地域におけるロックダウンを含む同国の新型コロナウイルス感染症の防疫措置や解除後の感染拡大により、工業用縫い糸の生産および販売両面において大きな影響を受け、その後遺症も続いたため、日本国内での販売価格の改正効果や為替換算レートの円安基調など、増収要因もありましたが、当連結会計年度の売上高は、5,742百万円(前期比6.0%増)にとどまりました。一方利益面につきましては、原材料やエネルギー価格を始め、製造コスト全般の予想以上の上昇に加えて、販売品目構成の変化などもあって、昨秋以降、販売価格改正を実施したにもかかわらず、売上高総利益率が低下し、営業損失は208百万円(前期は212百万円の損失)、経常損失は124百万円(前期は168百万円の損失)と、回復の見られぬ結果となりました。また、上述の中国・上海地域のロックダウンによるおよそ2ヶ月間にわたる中国子会社4社の操業停止期間の固定費80百万円および、中国生産子会社の使用見込みのない遊休資産の減損損失47百万円を特別損失に計上したことから、親会社株主に帰属する当期純損失は188百万円(前期は164百万円の損失)となりました。
当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
日本当社グループにおきましては、事業年度の末日を、当社は3月末日、国内子会社は1月末日と定めております。当期は、昨秋以降、新型コロナウイルス感染症対策の行動制限や入国に係る水際措置の緩和に伴い、衣料品消費も持ち直しが見られ、その生産も回復基調が続いたことや、中国における新型コロナウイルス感染症に対する防疫措置や円安基調の影響で、一部ながら国内生産への回帰も見られるなど、衣料用縫い糸の需要は回復傾向となったものの、中国・上海地域におけるロックダウンによる中国生産子会社の操業停止の影響を受けて、当社の受注回復は鈍いものとなりました。またカーシート向けなど、車輛内装用縫い糸は、半導体不足や海外からの部品の調達難による自動車生産の減産の影響を受けました。
さらに国内が主な販売市場である手芸関連分野は、巣ごもり消費からお出かけ消費への変化や、諸物価上昇の影響で節約志向も高まるなど、総じて低迷が続き、家庭用縫い糸の受注も回復が見られませんでした。このような状況のなか、製造コスト全般の上昇を受けて、昨秋以降には国内販売価格の改正を実施しましたが、当セグメントの売上高は4,497百万円(前期比5.5%増)にとどまりました。一方利益面につきましては、増収には転じているものの、当社における原材料やエネルギー価格を始め、製造コスト全般の予想以上の上昇に加え、販売品目構成の変化による売上高総利益率の低下が響いて、販売価格改正を実施したにもかかわらず、セグメント損失は155百万円(前期は191百万円の損失)となり、回復が遅れております。
アジア当セグメントに属する全ての海外子会社は、事業年度の末日を12月末日と定めており、当連結会計年度には、2022年1月から12月までの業績が連結されております。当期におきましては、日本向け衣料品の生産は回復基調が続きましたが、昨春以降およそ2ヶ月にわたる中国・上海地域のロックダウンに伴う中国子会社の操業停止により、中国や日本のみならず、当セグメントに属するベトナムおよびタイ国の各子会社におきましても、販売機会損失を余儀なくされるなど、大きな影響を受けました。また操業再開後、一時生産高は回復しましたが、中国での防疫措置緩和後の新型コロナウイルス感染症の拡大等の影響もあり、再び減産を余儀なくされました。これらの状況から当セグメントの売上高は、為替換算レート変動による増収要因があったにもかかわらず、1,244百万円(前期比7.8%増)にとどまりました。また、利益面につきましては、上述の通り、中国子会社4社の2ヶ月にわたる操業停止の影響に加え、原材料やエネルギー価格、輸送費等の高止まりに加えて、販売価格への転嫁が困難なアジア市場の状況もあって、セグメント損失は49百万円(前年は20百万円の損失)となりました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
資産の部については、流動資産は、前連結会計年度末に比べて1百万円増加し、6,750百万円となりました。これは、主として商品及び製品が225百万円減少したものの、売掛金が77百万円、仕掛品が93百万円、原材料及び貯蔵品が110百万円増加したことなどによります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて140百万円増加し、4,166百万円となりました。これは、主として建物及び構築物(純額)が81百万円減少したものの、投資有価証券が210百万円増加したことなどによります。 これらの結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて141百万円増加し、10,917百万円となりました。
負債の部については、流動負債は、前連結会計年度末に比べて85百万円増加し、674百万円となりました。これは、主として買掛金が90百万円増加したことなどによります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて37百万円増加し、779百万円となりました。これは、主として繰延税金負債が30百万円増加したことなどによります。 これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて123百万円増加し、1,453百万円となりました。
純資産の部については、前連結会計年度末に比べて18百万円増加し、9,464百万円となりました。これは、主として利益剰余金が257百万円減少したものの、その他有価証券評価差額金が144百万円、為替換算調整勘定が166百万円増加したことなどによります。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,974百万円となり、前連結会計年度末より196百万円減少いたしました。活動別キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失254百万円(前期は169百万円)があったものの、減価償却費をはじめとする非資金項目が269百万円(前期は223百万円)、棚卸資産の減少額89百万円(前期は9百万円の増加)となったことなどにより、87百万円の流入(前期は127百万円の流入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入458百万円(前期は667百万円)があったものの、定期預金の預入による支出558百万円(前期は634百万円)、有形固定資産の取得による支出153百万円(前期は44百万円)となったことなどにより、266百万円の流出(前期は13百万円の流出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額が68百万円(前期は96百万円)となったことなどにより、76百万円の流出(前期は103百万円の流出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前期比(%)
日 本
2,476,708
△3.4
アジア
1,243,747
1.3
合 計
3,720,456
△1.9
b. 受注実績当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前期比(%)
日 本
4,497,414
5.5
アジア
1,244,605
7.8
合 計
5,742,019
6.0
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り、判断及び仮定を必要としております。これらの見積りについて過去の実績や合理的と判断される入手可能な情報等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、今後も国際情勢の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に連結財務諸表の作成を行っております。② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、売上高5,742百万円(前期比6.0%増)、営業損失208百万円(前期は212百万円の損失)、経常損失124百万円(前期は168百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は188百万円(前期は164百万円の損失)となりました。 この経営成績等の状況に関する経営者の認識につきましては、増収ながら利益面では回復の見られぬ結果となり、次期の見通しにおきましても、新型コロナウイルスとの共生の時代になり、経済の回復が期待される一方で、物価高を背景に国内における衣料品や手芸関連商品の個人消費の先行きが懸念されるうえ、国際情勢や円安基調を背景とした原材料価格やエネルギー価格の高止まりで当社グループの経営環境は国内外ともに厳しさが続くものと予想されます。 現時点での中長期の経営環境の見通しは上述の通りであり、引き続き対処すべき課題に取り組んでまいりますが、先ずはグループとして現状の大幅な損失の縮小が重要な課題であると認識しております。また上記より、今後の業績と課題に重要な影響を与える要因といたしましては、以下の点があると認識しております。・不透明な世界情勢を背景とした原油を始めエネルギー価格や原材料価格の動向・わが国における今後の個人消費の動向(とりわけ衣料品や手芸関連品の消費マインドや消費志向、購買行動)・消費動向に伴う衣料品の国内外の生産と縫製業の動向・関連業界におけるサステナブル対策とアジア各国の環境保全対策の動向・為替レートの今後の推移・海外合弁先企業の動向なお、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況」及び「第5 経理の状況1 連結財務諸表等注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。③ キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、外部借入に依存しない財務体質を基盤として、自己資金を財源に今後の事業投資を考えており、また、流動性については現金及び預金の保有状況からみて十分に確保されているものと考えております。当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。