【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
当事業年度における我が国経済は、夏場と年末年始に新型コロナウイルス感染症の急激な拡大が見られたもののその後は影響が和らぎ、経済活動の正常化に向けた動きとなりました。一方で、資源価格の高騰による物価上昇や世界的な金融引き締めなどが景気回復の重しとなり、依然として先行きの不透明感が漂っています。そのような中でも、政府が推進するデジタル田園都市国家構想やマイナンバーの普及・推進とともに、2023年4月3日に公表された日銀短観で企業の積極的なソフトウエアへの投資意欲が見られるなど、IT投資に向けた取り組みは官民を問わず底堅く推移しております。
このような状況の下、当社は「顧客ターゲット別の営業推進」「ソリューション強化」「新人事制度定着による生産性向上」を重点施策に掲げ、製品開発ならびにサービス開発の強化に取り組んでまいりました。
「顧客ターゲット別の営業推進」においては、顧客深耕営業(第1営業部)、純新規営業(第2営業部)、ビジネス協業営業(パートナー営業部)に加え、戦略的パートナーである株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対応した機能を独立させて戦略営業部を新設いたしました。4つの顧客ターゲット別の営業組織に対して、プリセールスやサポート部門の担当SEをバーチャルで組織することにより営業推進を図ってまいりました。また、4年振りにイベント出展を再開するなどマーケティング活動にも注力し、新規営業リード獲得や認知度向上に努め、これらの活動の成果として、製品採用累計社数は、700社を達成いたしました。
「ソリューション強化」においては、すべてが新しくなった最新バージョン「ESS REC 6」を本年4月にリリースいたしました。アーキテクチャを刷新し、システム操作者の常時認証と操作環境の監視・記録を行うことで多様な働き方にも対応し、安全なシステム運用業務を実現いたします。また、特権ID管理製品「ESS AdminONE」はAPI拡張により管理対象を拡大することで競争力強化を図っておりますが、昨年11月の新オプション販売開始に続き、本年3月に新バージョン「ESS AdminONE V1.2」をリリースいたしました。
「新人事制度定着による生産性向上」においては、新制度の大幅な運用の見直しを行い、社員とその管理者にとって活動計画の立案と実績評価が容易になりました。これにより多様な働き方が一層定着し、新制度の開始からのべ8名の社員が子育てや介護をしながら仕事を続けております。また、計画的な就業時間を組むことで大学院でのIT研究を実現し、海外で開催されたデータマイニング学会で研究発表を行うなど、先端技術を製品に取り込む礎を築く動きも出ております。当事業年度は「ESS REC 6」と「ESS AdminONE V1.2」の開発に多くのリソースを投入したため、平均残業時間が前事業年度の29.1時間/月から32.6時間/月に増加いたしました。しかし、在宅勤務や就業時間のシフトなど柔軟で自律的な働き方が肉体的・精神的な負荷を軽減したとみられ、離職率は前事業年度の17.0%から当事業年度は5.2%に大幅に減少しております。こうした取り組みの結果として経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人認定制度」において、今年度も「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定されました。
以上の結果、当事業年度の売上高は、2,120,306千円(前年同期比2.5%増)となりました。ライセンス売上は、特権ID管理製品の販売が前年同期比で大きく増加しているものの、下半期に見込み案件の先送りが発生したことや代理店を経由した提案が想定どおりに進まなかった影響により、前年同期比12.7%減少いたしました。また、ライセンス売上に付随するコンサルティング売上も遅延が発生いたしました。一方、「ストックビジネス」である保守サポートサービス売上は、保守更新率が95.9%と高い更新率であったことにより前年同期比8.0%増加しました。売上原価ならびに販売費および一般管理費においては、「ESS REC 6」の開発や「ESS AdminONE V1.2」の大型機能拡張などを計画どおりに実行したことにより、研究開発費が前年同期比229,423千円増の383,577千円と大幅に増加しました。なお、売上高に対する研究開発費率は18.1%(前年同期比10.6ポイント増)となっております。
これにより、営業利益は243,492千円(前年同期比30.1%減)、経常利益は244,587千円(同30.2%減)、当期純利益は174,765千円(同29.7%減)となりました。
(財政状態)
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ234,374千円減少し、4,208,056千円(前事業年度末比5.3%減)となりました。主として現金及び預金の減少343,651千円、ソフトウエアの増加129,065千円によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ283,428千円減少し、866,136千円(前事業年度末比24.7%減)となりました。主として未払法人税等の減少121,567千円、賞与引当金の減少85,820千円によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ49,054千円増加し、3,341,919千円(前事業年度末比1.5%増)となりました。主として当期純利益174,765千円、剰余金の配当120,865千円によるものであります。
②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、パッケージソフトウエア事業を主たる事業としており、生産の概念を有しないため生産実績の記載を省略しております。
b.受注実績
当社は、受注確定から売上日までの期間は1ヶ月程度であります。よって、期末日現在の受注残高は、年間売上高に比して僅かであるため、その記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績を区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
製品・サービスの名称
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
うちESS REC(REC)
383,618
298,114
△22.3%
うちその他ライセンス
191,655
204,252
6.6%
ライセンス
575,273
502,367
△12.7%
保守サポートサービス
1,197,994
1,293,837
8.0%
クラウドサービス
81,013
87,699
8.3%
コンサルティングサービス
176,281
200,022
13.5%
SIO常駐サービス
21,537
24,673
14.6%
その他
16,403
11,706
△28.6%
パッケージソフトウエア
事業合計
2,068,504
2,120,306
2.5%
(注)1.その他の主なものはレンタル・ハードウエア売上等であります。
2.当社の報告セグメントは「パッケージソフトウエア事業」の単一セグメントであります。
3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
466,401
22.5
416,641
19.7
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。財務諸表の作成に当たっては決算日における財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積りおよび予測を必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
②経営成績の分析
当社は、2022年3月期より ① 顧客ターゲット別の営業推進、② ソリューション強化、③ 新人事制度定着による生産性向上 の3点を重点項目と位置付け、2024年3月期も継続して取り組んでおります。2023年3月期における当該施策の分析と結果は以下の通りです。
重点施策
活動結果と分析(改善に向けた取り組み)
①顧客ターゲット別の営業推進
当事業年度の取組み
顧客ターゲット別バーチャル組織
顧客ターゲット別のバーチャルな組織を編制し、それぞれに戦略の立案、実施によるPDCAを回すマネジメントに取り組みました。
2022年3月期には、従来ひとつの部であった営業部門を、
・既存の顧客を中心により深く直販関係を築く営業組織
・インバウンドセールスなど純新規の顧客開拓を行う営業組織
・大手SIerなどビジネスパートナー(代理店)と協業する営業組織
に分割いたしました。
2023年3月期には、戦略的パートナーである株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対応した機能を独立させて戦略営業部を新設いたしました。
こうした営業部門とともに、顧客の技術的課題に対して解決提案するプリセールス部門、製品導入後の保守とともに追加商談を獲得するサポート部門のそれぞれの担当SEが営業部門とバーチャルな組織として連携することにより売上拡大を図りました。
当事業年度の成果
バーチャル組織の活動により以下の成果となりました。
・純新規顧客獲得が2022年3月期に比べて114%拡大しました。
・特権ID管理製品「ESS AdminONE」の売上高が2022年3月期に比べて39%超の伸長となりました。
・サポート部門によるポストセールスの貢献もあり「ESS AdminONE」の導入が累計で100件を達成しました。
・顧客とのコミュニケーションが密になった結果として保守更新率が3年連続で95%を達成しました。
今後の課題
当期以降の課題として以下を認識し、その解決に取り組んでおります。
・「ESS AdminONE」「ESS REC 6」の販売促進、新規開拓
・マーケティングプロモーションならびに代理店販売強化により純新規顧客を獲得
・既存顧客への営業、技術部門一体化により新規商談を獲得
・大口保守契約の解約未然防止
・営業力強化のための増員
②ソリューション強化
当事業年度の取組み
研究開発分野のソリューションの強化と協業ソリューション強化により、それぞれの活動内容と目標を明確にして売上の向上に取り組みました。
研究開発におけるソリューション強化
・次世代型システム証跡管理ソフトウエア開発(「ESS REC」新SIO統合基盤新製品)
・本人確認によるなりすまし防止(AI搭載)ソフトウエア開発
・「ESS AdminONE」管理対象開発強化
協業ソリューション分野の強化
・「ESS REC Cloud」(SaaS)サービス強化
・「ESS AdminONE」OpenAPIによる協業ソフトウエアの連携強化
・代理店ソリューション連携強化
当事業年度の成果
研究開発/協業両面のソリューション強化によって以下の成果となりました。
・「ESS REC 6」においてLinuxをベースとしたコンテナ技術を採用したアーキテクチャに刷新し、OSに依存しないプラットフォームとなりました。
・「ESS REC 6」にAI技術を応用したシステム操作者の常時本人確認・操作環境の監視と記録機能を導入しました。
・「ESS AdminONE V1.2」においてAPI公開範囲と認証の仕組みを改善し、より安全で広範なシステム連携が可能になりました。
・大手パートナー企業とコミットした売上計画に対して120%の実績を上げました。
なお、「ESS REC 6」の販売開始は本年4月26日です。
今後の課題
当期以降の課題として以下を認識し、その解決に取り組んでおります。
・「ESS REC 6」によるリモート運用市場開拓
・「ESS AdminONE」IDaaS、SaaSへの対応、大規模ユーザー対応強化
・「ESS REC 6」UNIX/Linuxへの対応、リモート運用市場創出のための機能強化
・品質向上とテスト業務の最適化、効率化
③新人事制度定着による生産性向上
当事業年度の取組み
新人事制度
・「働き方改革」の推進
生産性向上、社員の意欲・能力の発揮、価値観の多様性に対応
・新制度導入2年目における制度定着、見直し
・柔軟に対応する業務内容・プロセスの見直しとこれを評価する仕組み作り
・リモート環境でも十分なコミュニケーションによるマネジメント手法の確立
当事業年度の成果
新人事制度の定着、見直しにより以下の効果がありました。
・新人事制度とともに導入した評価システムや勤怠管理システムのユーザーインターフェイスの修正や運用ルールの改善を行い、新制度の定着が進みました。
・子育てや介護を理由に休職や離職をせず就業を継続することが標準となりました。
・柔軟で自律的な働き方が実現したことにより、離職率が2022年3月期の17.0%から5.2%へ大幅に減少いたしました。
今後の課題
変化を続ける事業環境と就業環境においては、社員が自律的な働き方により恒常的に生産性を向上させ、これを客観的に測定する方法を模索することは継続的な課題であると認識しております。
当期におきましては、新人事制度の定着とともに人材の確保と組織力の向上が喫緊の課題と捉え、以下の取り組みを行っております。
賃上げによる人材の安定確保と採用の強化
・若手ならびに中堅社員 平均9.2%ベースアップ
・新卒初任給 11.1%ベースアップ
次期リーダー層の実践によるマネジメント力の育成
・グループ編制から機能単位の小規模な多チーム編制の組織へ変更
・次期中核人材となる新任チームリーダーのマネジメント能力開発
以下は、前年度実績対比及び2022年5月12日に公表の業績予想対比の分析を記載しています。
(売上高の状況)
当事業年度の実績値
比較年度
増減金額
増減率
2,120百万円
前事業年度実績対比
51百万円
2.5%の増加
業績予想対比
△280百万円
11.7%の減少
前事業年度の実績対比につきましては、ライセンス売上が12.7%減少するも保守サポートサービス売上が95百
万円(8%)増加したため51百万円(2.5%)の増加となりました。
業績予想比におきましては、ライセンス売上における見込案件の翌期へのディレイや代理店施策の遅れによ
り期中案件発掘が計画を下回ったことなどにより280百万円(11.7%)の減少となりました。
(営業利益の状況)
当事業年度の実績値
比較年度
増減金額
増減率
243百万円
前事業年度実績対比
△104百万円
30.1%の減少
業績予想対比
△107百万円
30.6%の減少
前事業年度の実績対比につきましては、「ESS REC 6」の開発による研究開発費の増加229百万円等により営業
利益は104百万円(30.1%)の減少となりました。
業績予想対比におきましては、人件費や広告宣伝費等が減少するも、売上計画未達により、営業利益は107百万円(30.6%)の減少となりました。
(経常利益の状況)
当事業年度の実績値
比較年度
増減金額
増減率
244百万円
前事業年度実績対比
△106百万円
30.2%の減少
業績予想対比
△106百万円
30.3%の減少
前事業年度の実績対比につきましては、営業利益の減少に加えて営業外収益が減少したことなどにより106百万円(30.2%)の減少となりました。また、業績予想対比につきましても、営業利益の減少により業績予想を下回りました。
(当期純利益の状況)
当事業年度の実績値
比較年度
増減金額
増減率
174百万円
前事業年度実績対比
△73百万円
29.7%の減少
業績予想対比
△76百万円
30.4%の減少
前事業年度の実績対比につきましては、法人税等の税金費用は、37百万円減少しましたが、投資有価証券評価
損5百万円の特別損失の計上、経常利益の減少により、当期純利益は73百万円(29.7%)の減少となりました。
業績予想対比におきましては、税金費用の減少がありましたが、経常利益の減少により業績予想を下回りまし
た。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社を取り巻く事業環境は、主として企業のIT投資の動向によって影響を受け、とりわけ、金融業界への依存度が比較的高いため、規制当局の監査や指針による影響は無視できないものがあります。また、クラウド化の進展に伴ってデータセンター事業者の顧客情報保護のためのセキュリティ投資などが当社の経営成績に影響を及ぼす一因となります。その他当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、投資活動および財務活動に必要な資金を、営業活動によるキャッシュ・フローにて賄っており、銀行な
ど外部からの資金調達は行っておりません。その結果、自己資本比率は79%となっております。
事業展開に伴う資金については、機動的な対応を可能とする十分な現金及び現金同等物として保有しております。当該資金を用いてIT人材の確保に投資を行うとともに日々変化し続ける情報技術の進歩に対するIT投資及び研究開発投資、ならびにM&Aなどに充当し、事業基盤の安定と企業価値の向上に努めてまいります。
株主還元に関しましては、株主配当においては配当性向33.3%以上を目安とし、自己資金で対応する予定です。
なお、配当政策につきましては「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。また、自己株式の取
得については、キャッシュ・フローの状況を総合的に勘案し、機動的な資本政策の遂行を目的に、適切な時期に実
施いたします。
・当事業年度における各キャッシュ・フローの分析・検討内容
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,192,785千円(前事業年度末比343,651千円減)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、3,876千円(前事業年度は741,146千円の資金増)となりました。主な収入要因は、税引前当期純利益239,411千円、減価償却費106,551千円によるものであります。主な支出要因は、法人税等の支払122,520千円、賞与支給に伴う賞与引当金および役員賞与引当金の減少99,820千円、売掛金の増加39,434千円、未払消費税等・未払法人税等(外形標準課税)の支払に伴う減少48,244千円、未払金・未払費用の減少20,808千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、226,661千円となりました(前事業年度は164,490千円の資金減)。主な支出要因は、製品の拡張・改良の推進に伴う市場販売目的ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出215,537千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、配当金の支払額120,865千円によるものであります(前事業年度は120,865千円の資金減)。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッ
シュ・フローは222,785千円の資金減となりました。「ESS REC 6」の製品開発等に係る研究開発費の増加229,423千円および前事業年度の未払法人税・未払事業税(外形標準課税を含む)の支払134,760千円等による一過性の要因によるものです。
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