【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績の状況の概要
当連結会計年度(2019年4月~2020年3月)における当社グループを取りまく経営環境は、自動車業界において、国内では昨年10月の消費増税の影響等により新車販売は減少し、海外においては、米中貿易摩擦の長期化等により新車販売が減少しました。建設機械業界においては、上期の国内需要は堅調に推移したものの、下期には台風被害による建設機械メーカーの生産減に伴う販売減があり、また、東南アジアを中心とした需要の伸び悩みによる輸出の低迷等に伴う在庫調整がありました。産業機械・工作機械業界においても、内需・外需ともに需要が大幅に減少しております。 足元、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響によるメーカー各社の生産一時停止や需要の急減があり、現在も先行き不透明な状況が続いております。このような状況下、当社グループの連結売上高は、前期比122億3千2百万円(9.5%)減収の1,171億3千8百万円となりました。連結営業利益は、主に特殊鋼鋼材事業における建設機械需要の低迷とばね事業における海外子会社での販売減の影響があり、減損損失の計上に伴う償却負担減少があるものの、前期比6億1千8百万円(58.6%)減益の4億3千6百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は、第2四半期連結会計期間において海外子会社における減損損失として、特別損失150億4千9百万円を計上したため、140億7千万円の損失(前期は親会社株主に帰属する当期純利益2億8千万円)となりました。セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材事業につきましては、国内事業における建設機械向けをはじめとした需要低迷による販売数量減の影響が大きく、また海外事業では、インドネシア商用車需要の低迷により、売上高は、前期比88億6千4百万円(13.7%)減収の558億9千6百万円となりました。営業利益は、国内事業においては販売数量減が大きく影響し、売価の改善と2020年度の高炉改修に備えた在庫積上げ並びにこれを活用した能率向上によるコスト改善により補うも減益となりました。一方、海外事業においては、第1四半期から第3四半期には副資材高騰及び生産トラブルによるコスト増があったものの、第4四半期からは操業改善の成果があり、また固定資産の減損損失の計上による償却負担減少もあり赤字は大幅に縮小いたしました。これにより、前期比2千8百万円(2.3%)増益の12億4千6百万円となりました。
ばね事業につきましては、北米子会社をはじめとした海外子会社での自動車向け販売減や、国内建設機械向けでの需要低迷に加え、為替の影響を受けたことにより、売上高は、前期比44億2千1百万円(8.9%)減収の452億3千2百万円となりました。営業利益は、固定資産の減損損失の計上による償却負担の減少及び固定費・一般管理費等のコスト削減があったものの、国内外での売上減の影響が大きく、北米の新製品立ち上げ時の生産トラブルによるコスト増もあり、前期比4億8千6百万円損失が拡大し、14億2千万円の損失(前期は営業損失9億3千3百万円)となりました。 喫緊の課題である北米拠点の黒字化については、巻ばねに続きスタビライザもカナダ工場に集約し生産能力の適正化を図ることにより実現してまいります。
素形材事業につきましては、中国や台湾市場の低迷の影響を受けた特殊合金粉末と精密鋳造品の需要減及び合金原材料価格下落による特殊合金粉末の売価下落があり、売上高は、前期比17億4千6百万円(15.3%)減収の96億4千1百万円となりました。営業利益は、売上げの減少に加えマザー工場立ち上げ費用増加により、前期比2億8千5百万円(76.2%)減益の8千9百万円となりました。
機器装置事業につきましては、鍛圧機械の売上減があったものの、新分野の海洋機器関連製品等の売上増により、売上高は、前期比9億9千万円(10.7%)増収の102億4千3百万円となりました。営業利益は、売上げの増加及び前期に計上した電力機器製品の一過性在庫調整コストが無くなったことから、前期比1億5千8百万円(66.8%)増益の3億9千6百万円となりました。
その他の事業につきましては、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比6億円(14.4%)減収の35億7千万円、営業利益は、前期比7千9百万円(43.1%)減益の1億5百万円となりました。
(2) 財政状態
①資産当連結会計年度末の総資産は1,413億9千1百万円で、前連結会計年度末と比較し119億3千5百万円の減少となりました。その内訳は次のとおりであります。1 流動資産:7億2千4百万円増加現金及び預金の増加31億9千1百万円、売上債権の減少92億3千9百万円、たな卸資産の増加82億5千1百万円、投資有価証券の売却代金回収等による未収金の減少11億4千4百万円によるものであります。
2 有形固定資産:4億8百万円減少設備投資による増加71億2千8百万円、減価償却による減少31億4千6百万円、減損損失計上による減少116億4千8百万円、IFRS第16号適用による無形固定資産から有形固定資産への振替73億8千8百万円等によるものであります。
3 無形固定資産:104億9千1百万円減少設備投資による増加4億1千7百万円、償却による減少6億1千5百万円、減損損失計上による減少34億円、IFRS第16号適用による無形固定資産から有形固定資産への振替73億8千8百万円等によるものであります。
4 投資その他の資産:17億6千万円減少投資有価証券の時価評価による減少8億3千万円、退職給付に係る資産の減少7億9千1百万円等によるものであります。
②負債当連結会計年度末の負債総額は927億7千5百万円で、前連結会計年度末と比較し69億5千6百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。1 流動負債:6億2千8百万円増加仕入債務の減少39億2千1百万円、短期借入金の増加65億3千6百万円、未払法人税等の減少15億5千9百万円等によるものであります。
2 固定負債:63億2千7百万円増加長期借入金の増加63億5千5百万円等によるものであります。なお、当連結会計年度末の借入金残高は、短期・長期を合計して551億3千4百万円となり、前連結会計年度末と比較して128億9千1百万円増加いたしました。
③純資産当連結会計年度末の純資産は、486億1千5百万円となり、前連結会計年度末と比較して188億9千2百万円の減少となりました。これは資本剰余金の減少11億7百万円、利益剰余金の減少143億7千1百万円、非支配株主持分の減少26億5百万円等によるものであります。この結果、自己資本比率は30.4%となり、前連結会計年度末と比較して8.3%減少いたしました。また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の3,847円72銭から2,789円01銭となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による9億2千4百万円の支出、投資活動で75億4千6百万円の支出、財務活動では118億1千3百万円の収入となりました。この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に31億8千9百万円増加し、当連結会計年度末残高は292億8千1百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕税金等調整前当期純損失159億1千万円、減価償却費35億7千7百万円、減損損失150億4千9百万円、売上高減少による売上債権の減少90億3千4百万円があった一方、たな卸資産の増加83億8千9百万円、法人税の納付による26億8千万円等の支出がありましたので、営業活動全体として9億2千4百万円の支出となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕有形固定資産の取得による支出81億2千4百万円等により、投資活動全体として75億4千6百万円の支出となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕投資活動に充当するための長期借入金による収入が189億8千5百万円あった一方で、長期借入金の返済64億6千8百万円、リース債務の返済5億9千6百万円、配当金の支払い5億5千万円等により、財務活動全体として118億1千3百万円の収入となりました。
(4) 生産、受注及び販売の状況
(1)生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼鋼材事業
49,034
△14.2
ばね事業
37,038
△8.8
素形材事業
9,796
△17.9
機器装置事業
10,193
11.0
合計
106,063
△10.8
(注)金額は販売価格によっております。
(2)受注状況当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。
(3)販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼鋼材事業
55,896
△13.7
ばね事業
45,232
△8.9
素形材事業
9,641
△15.3
機器装置事業
10,243
10.7
その他の事業
3,570
△14.4
調整額
(△7,445)
(―)
合計
117,138
△9.5
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①
資本の財源及び資金の流動性
1 資金需要当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料や部品の購入、及び設備投資によるものであります。
2 財務政策当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積りおよび前提条件は、以下の事項及び「第5
経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
(a)繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(c)減損会計における将来キャッシュ・フロー当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能性価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。 当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※7減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(15,049百万円)を計上しており、回収可能価額は正味売却価額により算定しており、正味売却価額は不動産鑑定評価基準に基づいた金額及び売却見込額から処分費用見込額を控除した金額により評価しております。 当該評価について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。