【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種等の対策が進み、行動の制約や入国規制が撤廃されたことにより、経済活動が正常化に向かった一方で、中国のゼロコロナ政策やロシアのウクライナ侵攻等の地政学的リスクにより、先行きは不透明な状況で推移しました。国内経済においても、新型コロナウイルス感染症の懸念が後退し、行動制限が緩和され、景気は回復傾向となったものの、地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱や燃料エネルギー不足による原材料価格の高騰、また、世界的な金利上昇に伴う円安が急激に進行したことにより、予断を許さない状況が続きました。
当社グループの関連する業界におきましては、国内・海外とも設備投資意欲は回復基調であるものの、需要は期中から期末にかけてやや陰りが見られるようになりました。それに加えて、半導体をはじめとする電子制御部品の不安定な供給による納期の長期化、行き過ぎた円安進行による鉄鋼を中心とした海外からの調達部材価格の上昇が続いており、また、不均衡なコンテナ供給による物流の混乱やロシアのウクライナ侵攻の影響による燃料エネルギー価格の高騰等の影響もあり、非常に厳しい状況で推移しました。
このような市場環境のもと、当社グループは2024年3月期を最終年度とする第3期中期経営計画に基づいた事業活動を推進し、中長期的な視点から持続的な成長と安定した収益確保に取り組んでまいりました。また、当連結会計年度は、10月に3年に一度ドイツ・デュッセルドルフで開催される世界最大のプラスチック展示会「K2022」に出展しました。「K2022」のテーマである循環型経済(サーキュラーエコノミー)、気候変動対応及びデジタル化を体現するべく、リサイクル樹脂による成形やオンライン上での成形状態モニタリングの実演、脱炭素へ向けての低消費電力機をアピールしました。また、ダイカストマシンでは、11月に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により4年ぶりの開催となった「j-dec2022 日本ダイカスト会議・展示会」(横浜)に出展し、環境性能の充実とコンパクト化を実現した電動サーボダイカストマシンの展示に加え、会場に大型モニタを設置し、遠隔操作システム「T-Remote WEB」を用いて展示会場と本社の鋳造現場を繋ぎ、リモート操作による鋳造の実演を行い、デジタルを活用したお客様のモノづくり課題解決のための新技術・ソリューションを展開しました。
これらの結果、当連結会計年度の業績につきましては、受注高は31,211百万円(前年同期比13.6%減)、売上高は35,298百万円(同6.1%増)となり、過去最高の売上高を更新しました。このうち、国内売上高は9,471百万円(同8.3%増)、海外売上高は25,827百万円(同5.3%増)となり、海外比率は73.2%となりました。
利益につきましては、調達部材価格や燃料エネルギー価格の高騰によるコストの増加分を製品価格への転嫁や生産の効率化等で改善を図りましたが、全てを吸収するまでには至らず、営業利益は1,319百万円(同25.0%減)、経常利益は1,538百万円(同21.9%減)となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、海外連結子会社の従業員による不適切事案発生の影響で383百万円の特別損失を計上したことにより648百万円(同49.3%減)となりました。
また、当社グループにおける当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産は31,901百万円(前年同期比760百万円増)、負債は11,916百万円(同370百万円増)、純資産は19,985百万円(同390百万円増)となりました。
製品別の売上の状況は、次のとおりであります。
[射出成形機]
射出成形機につきましては、国内は、自動車関連、工業部品関連の売上が増加しました。海外におきましては、中国でのIT機器関連や医療機器関連の売上が減少しましたが、アジアでの生活用品・IT電子機器関連や米州や欧州における生活用品・自動車関連の売上が増加しました。この結果、受注高は24,438百万円(前年同期比8.3%減)、売上高は27,419百万円(同5.6%増)となりました。このうち、海外売上高は20,004百万円(同3.7%増)となり、海外比率は73.0%となりました。
[ダイカストマシン]
ダイカストマシンにつきましては、国内は自動車関連が減少しました。海外におきましては、中国、東アジアの自動車関連の売上が増加しました。この結果、受注高は6,772百万円(前年同期比28.6%減)、売上高は7,879百万円(同7.8%増)となりました。このうち、海外売上高は5,823百万円(同11.3%増)となり、海外比率は73.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は6,502百万円となり、前連結会計年度末と比べ641百万円の減少となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加、棚卸資産の増加及び法人税等の支払の支出要因があったものの、税金等調整前当期純利益の計上、減価償却費の計上、貸倒引当金の増加、仕入債務の増加、利息及び配当金の受取額が増加したこと等により256百万円の収入(前連結会計年度550百万円の支出)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得を行ったこと等により565百万円の支出(前連結会計年度315百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れによる収入400百万円があったものの、長期借入金の返済及び配当を行ったこと等により470百万円の支出(前連結会計年度540百万円の収入)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
区分
生産高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
35,565
5.6
(注)金額は、販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
区分
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
31,211
△13.6
8,964
△31.3
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
区分
販売高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
35,298
6.1
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
株式会社マルカ
2,861
8.60
3,820
10.8
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なる可能性があります。当社グループが採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。
a.貸倒引当金
債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.投資有価証券の減損
取引関係の維持・強化のために、特定の顧客・仕入先の株式を保有しております。市場価格のない株式等以外のものについては、期末における時価が取得価額に比べ50%以上下落した場合に時価まで減損処理を行い、30%以上50%未満下落した株式等の減損は、個別銘柄毎に回復可能性を検討し、回復する見込みがないものについて減損処理を行っております。また、市場価格のない株式等については、期末における実質価額が著しく低下した場合に減損処理を行っております。将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.繰延税金資産
繰延税金資産については、将来の課税所得の見込み及び事業計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。なお、すでに計上した繰延税金資産については、その実現可能性について毎期検討し、内容の見直しを行っておりますが、将来の課税所得の見込みの変化やその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性の評価が変更された場合、繰延税金資産の取崩又は追加計上により親会社株主に帰属する当期純利益が変動する可能性があります。
d.製品保証引当金
成形機のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、過去の実績を基礎にして、当連結会計年度における必要見込額を計上しております。予期せぬ不良の発生等により追加引当が必要になる可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種等の対策が進み、行動の制約や入国規制が撤廃されたことにより、経済活動が正常化に向かった一方で、中国のゼロコロナ政策やロシアのウクライナ侵攻等の地政学的リスクにより、先行きは不透明な状況で推移しました。国内経済においても、新型コロナウイルス感染症の懸念が後退し、行動制限が緩和され、景気は回復傾向となったものの、地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱や燃料エネルギー不足による原材料価格の高騰、また、世界的な金利上昇に伴う円安が急激に進行したことにより、予断を許さない状況が続きました。
当社グループの関連する業界におきましては、国内・海外とも設備投資意欲は回復基調であるものの、需要は期中から期末にかけてやや陰りが見られるようになりました。それに加えて、半導体をはじめとする電子制御部品の不安定な供給による納期の長期化、行き過ぎた円安進行による鉄鋼を中心とした海外からの調達部材価格の上昇が続いており、また、不均衡なコンテナ供給による物流の混乱やロシアのウクライナ侵攻の影響による燃料エネルギー価格の高騰等の影響もあり、非常に厳しい状況で推移しました。
(売上高)
国内は自動車関連や工業部品関連の売上が増加しました。また、海外は中国でのIT機器関連や医療機器関連の売上が減少したものの、米州や欧州における生活用品や自動車関連が、アジアにおける生活用品・IT電子機器関連・自動車関連の売上が増加したことから、売上高は35,298百万円(同6.1%増)となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費は、出荷増に伴い輸送費が増加したことに加え、海上運賃値上がりの影響を受けて物流費のコストが増加したことから前期比5.0%増の5,608百万円となりました。また、売上原価は長期化する部材供給不足に伴う生産遅延があったこと、調達部材価格や燃料エネルギー価格の高騰によるコスト増加分を製品価格への転嫁や生産効率化等の改善で吸収しきれなかったことで、原価率が1.7ポイント増加したことから、営業利益は1,319百万円(前年同期比25.0%減)となりました。
(経常利益)
営業外収益において固定資産賃貸収入や持分法による投資利益及び為替差益などがあったことから、経常利益は1,538百万円(前年同期比21.9%減)となりました。
(税金等調整前当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
税金等調整前当期純利益は、1,163百万円(前年同期比40.9%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等合計額484百万円、海外連結子会社の従業員による不適切事案発生の影響で383百万円の特別損失を計上したこと及び非支配株主に帰属する当期純利益30百万円を計上した結果、648百万円(前年同期比49.3%減)となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、23,731百万円となり前連結会計年度末に比べ1,076百万円増加しました。これは、主に現金及び預金の減少641百万円及びその他流動資産の減少55百万円があったものの、売上債権の増加1,005百万円、棚卸資産の増加770百万円があったことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、8,170百万円となり前連結会計年度末に比べ316百万円減少しました。これは、主に繰延税金資産の減少173百万円及び有形固定資産の減少157百万円があったことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、9,535百万円となり前連結会計年度末に比べ693百万円増加しました。これは、主に未払法人税等の減少89百万円及び未払費用の減少47百万円があったものの、仕入債務の増加463百万円及び短期借入金の増加400百万円があったことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、2,380百万円となり前連結会計年度末に比べ322百万円減少しました。これは、主に長期借入金から1年内返済予定の長期借入金への振替による減少200百万円及び退職給付に係る負債の減少118百万円があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、19,985百万円となり前連結会計年度末に比べ390百万円増加しました。これは、主に配当を行ったことによる利益剰余金の減少666百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加648百万円及び為替換算調整勘定の増加291百万円があったことによるものであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの事業活動における主な資金需要は、運転資金及び設備資金等であります。運転資金需要は、生産活動のための原材料費や労務費及び製造経費をはじめ、受注獲得に向けた販売手数料等の販売費、新製品開発のための研究開発費等であります。設備資金等の需要は、事業規模拡大及び生産性向上を目的とした生産設備等の取得であります。これらの資金需要については、営業キャッシュ・フローを源泉としつつ、必要に応じて、運転資金等の短期的な資金については金融機関からの短期借入、設備資金等の長期的な資金については、金融機関からの長期借入及び自己資本での資金調達にて対応していくこととしております。
資金の流動性については、事業活動に必要な資金の効率的な管理により流動性の確保を行っておりますが、ロシアによるウクライナ侵攻やロシアに対する各国政府の経済制裁に対する影響による資金繰り悪化に備え、金融機関と2,000百万円のコミットメントライン契約を行い、機動的かつ安定的な調達手段の確保を行っております。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年3月期を最終年度とする3ケ年の中期経営計画における“TOYO GO CHALLENGE 2023”において、売上高、売上高営業利益率、及び自己資本利益率(ROE)を重点指標として位置付けております。計画2年目となる当連結会計年度は、主要部材の調達先が新型コロナウイルス感染症による生産活動の制約を受けたこと及び世界的なコンテナ不足に伴う物流の停滞によってサプライチェーンが混乱したことなどにより、部材の調達が不安定となりましたが、業界の設備投資意欲は国内・海外共に回復し、需要は堅調に推移しました。このような市場環境のもと、当社グループは中期経営計画に基づいた事業活動を推進し、中長期的な視点からの持続的な成長と安定した収益確保に取り組んでまいりました。この結果、計画2年目となる当連結会計年度の計画値は、売上高325億円、営業利益率5%としておりましたが、売上高はこれを上回る結果となる一方、営業利益率は下回る結果となりました。当連結会計年度の結果は、下記のとおりであります。今後も引き続き、①顧客が抱えるモノづくりの領域の課題を解決し、顧客の付加価値向上に貢献する「Customers’ Value Up」の推進、②自社・顧客・社会が持続的に成長できる仕組みと体制を整備する「持続的成長に向けた新たな事業の取り組み」、③経営管理基盤と人財育成の仕組みを再構築し、コーポレート・ガバナンス体制の更なる強化を進める「経営基盤刷新と強化」、これらの経営基本方針の各種施策を全社一丸となって取り組み、中長期的な収益向上と企業の経済価値・社会価値向上に取り組んでまいります。
区分
当連結会計年度
中期経営計画
(2024年3月期計画値)
売上高 (百万円)
35,298
35,000
営業利益率
(%)
3.7
6.0
自己資本利益率(ROE)
(%)
3.3
8.0