【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善傾向が続く中、個人消費も持ち直しの動きがみられるなど、緩やかな回復基調が持続いたしましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、足元の経済状況は急速に悪化しており、先行きは極めて厳しい状況が続くことが想定されております。
当社グループの主力市場であるパチンコ・パチスロ機市場は、レジャーの多様化や依存症対策を目的として改正された「風適法施行規則等」の影響等により、遊技ホールの新台購入意欲が低迷するなど厳しい市場環境が続いております。また、厳しい市場環境を背景にパチンコ・パチスロ機メーカーのコスト削減意識は高く、当社グループ製品を含む構成部材のリユース(再利用)が一層浸透するなど、当社グループを取り巻く事業環境は厳しさが増しております。さらには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、遊技ホールは一時的な営業自粛などの対策を講じており、先行きの不透明さから新台の購入意欲も低下するなど、同市場の見通しは極めて不透明な状況となっております。
かかる環境の中で当社グループは、市場動向は不透明ではあるものの市場規模の大きいパチンコ・パチスロ機市場での安定収益確保に向けた取り組みに加え、組み込み機器市場に向けたグラフィックスLSIの販売拡大、さらには新規事業と位置づけるミドルウェア、機械学習(AI)、ブロックチェーン、セキュリティの4領域における早期事業化に向けた活動にも注力いたしました。
また、新規事業の展開を加速させる観点から、組織再編やアライアンス、出資の検討等を積極的に実施しており、2019年5月22日には機械学習(AI)、ミドルウェア領域の事業を推進するax株式会社(出資比率90%)を設立いたしました。さらには同社の事業を加速させるため、bitcraft株式会社及びモーションポートレート株式会社をM&Aにより孫会社化いたしました。なお、bitcraft株式会社は当社グループの経営効率化を目的に2019年10月1日付でax株式会社が吸収合併しております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は9,265百万円、売上総利益は2,948百万円となりました。販売費及び一般管理費は2,555百万円、うち研究開発費は1,549百万円となりました。以上により、営業利益は393百万円、経常利益は535百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は468百万円となりました。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前年度との比較は行っておりません。
また、新規事業の進展によるセグメント情報の量的な重要性の増加に加え、プロジェクト管理体制の充実、組織再編に伴う経営管理体制の実態等を踏まえ、当連結会計年度よりセグメント別の記載を開始しております。セグメント別の経営成績は次の通りであります。
(1) LSI開発販売関連
LSI開発販売関連は既存事業であるパチンコ・パチスロ機向けと組み込み機器向け製品から構成されており、売上高9,068百万円、セグメント利益1,615百万円となりました。パチンコ・パチスロ機向け製品では、グラフィックスLSIが在庫調整の影響を受けた前期に対し、約10万個増加となる約39万個の販売となりました。さらには、メモリモジュール(注)製品は新規採用に加え、採用顧客の好調な販売動向に支えられ、大幅な販売増加となりました。一方、組み込み機器向け製品は、顧客の需要動向により前期を下回る販売となりました。
(注)「メモリモジュール」とは、パチンコ・パチスロ機の画像表示用基板に搭載される画像データを保持しておく部分の仕組みを意味しております。
(2) 新規事業関連
新規事業関連はミドルウェア、機械学習(AI)、ブロックチェーン、セキュリティ領域に向けたスタートアップ事業であり、ミドルウェア、機械学習(AI)領域での売上高を中心に、売上高196百万円、セグメント損失641百万円となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は11,146百万円となりました。このうち流動資産合計は10,103百万円となり、その主な内訳は現金及び預金8,071百万円、売掛金862百万円、商品及び製品1,080百万円となっております。固定資産合計は1,043百万円となっております。
当連結会計年度末の負債合計は1,310百万円となりました。このうち流動負債合計は1,272百万円となり、その主な内訳は買掛金662百万円、未払法人税等122百万円、未払消費税等203百万円となっております。固定負債合計は38百万円となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は9,836百万円となりました。その主な内訳は、資本金1,018百万円、資本剰余金861百万円、利益剰余金7,809百万円となっております。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は8,071百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下の通りとなっております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は1,530百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益(507百万円)、たな卸資産の減少(275百万円)、仕入債務の増加(428百万円)、未払又は未収消費税等の増減額(411百万円)に対し、売上債権の増加(425百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により支出した資金は25百万円となりました。これは主に投資事業組合からの分配による収入(126百万円)に対し、有形固定資産の取得による支出(52百万円)、無形固定資産の取得による支出(22百万円)、投資有価証券の取得による支出(40百万円)、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(35百万円)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により獲得した資金は29百万円となりました。これは主に非支配株主からの払込による収入(30百万円)によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年増減率(%)
(百万円)
LSI開発販売関連
8,313
-
新規事業関連
43
-
合計
8,357
-
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.上記の金額は、LSI製品及びLSI関連製品に対する金額を記載しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
受注高
(百万円)
前年増減率
(%)
受注残高
(百万円)
前年増減率
(%)
LSI開発販売関連
11,564
-
4,253
-
新規事業関連
120
-
1
-
合計
11,684
-
4,255
-
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.LSI開発販売関連セグメントでは、一部製品において需要予測に基づく見込み生産を行っております。上記数値は見込み生産も含めたLSI製品及びLSI関連製品に対する受注高を記載しております。また、新規事業関連セグメントは個別受注生産に対する数値を記載しており、IP製品等のロイヤリティは含めておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年増減率(%)
(百万円)
LSI開発販売関連
9,068
-
新規事業関連
196
-
合計
9,265
-
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
緑屋電気株式会社
5,187
56.0
富士通エレクトロニクス株式会社
2,280
24.6
加賀電子株式会社
1,005
10.8
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを行なっております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載の通りであります。
a.たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価基準を収益性の低下による簿価切下げの方法によっております。当事業年度におきましては、評価損の損益に与える影響は軽微なものとなっておりますが、将来、正味売却価額が低下した場合または滞留品が増加した場合、一定期間にわたり追加の評価減が必要となる可能性があります。
過年度までに製造した製品在庫の除却につきましても損益に与える影響は軽微なものとなっております。従いまして、現状においては将来のたな卸資産に係る除却見積額等の算定は実施しておりません。
b.固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、市場規模やシェア等の一定の仮定に基づき策定された事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、市場規模やシェア等の一定の仮定に基づき策定された事業計画を基礎に将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
d.のれんの減損
のれんの償却方法については、その効果が発現すると見積られる期間で均等償却を行っております。今後、のれん対象事業の収益力が低下し、減損損失の認識をした場合、のれんの減損処理が必要となる可能性があります。なお、のれんの資産性については、対象事業が創出する営業利益相当額や過去の実績等を基礎に将来予測を合理的に織り込んだ事業計画等を基に検討しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
上記の通り、現在の主力市場は「LSI開発販売関連」セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機市場であり、売上高の95%程度を同市場向けの製品で占めております。現在、同市場は遊技人口の減少傾向に加え、法改正の影響もあり先行き不透明な状況が続いております。今後安定的な収益を確保し持続的な成長を実現していくためには、同市場の規模が縮小した中でも安定的な収益を確保するためのビジネスモデルの再構築に加え、同市場以外の新規事業を早急に開拓していくことが重要であると考えております。
③財政状態、キャッシュ・フローの分析
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(資金需要)
当社グループは主にファブレスメーカーとして事業を展開しており、工場等の多額の設備投資を必要としないビジネスモデルを採用しております。現在の事業活動における資金需要の主なものは、販売費及び一般管理費に計上されるものであり、次世代製品の開発等にかかる研究開発費に加え、事業活動を支えるその他一般管理費等があります。当連結会計年度における販売費及び一般管理費の実績は2,555百万円となっております。また、新規事業の展開を加速させる観点からM&A等も積極的に検討しており、今後はそれに伴う資金需要の発生も見込まれます。
(財務政策)
現在の当社グループの収益構造はLSI開発販売関連セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機向け製品による収益が大半を占めており、当社グループの業績は当該市場環境の影響を強く受けるものと考えております。当社グループでは、事業ポートフォリオの多様化に取り組むなど、特定環境の影響を過度に受けないための施策に注力しておりますが、各期の業績のボラティリティが高くなる可能性も考慮し、全般として財務の健全性を保つことに比重を置いております。
当連結会計年度末における資金は、8,071百万円となっており、この資金は当連結会計年度末における貸借対照表上の現金及び預金残高であります。当連結会計年度末における現金及び預金に係る総資産構成比率は72%となっており、当連結会計年度末における資金残高は、財政状態の健全性を確保したうえで、機動的な経営活動及び積極的な研究開発活動を行うために当面必要と考えられる資金額として問題のない水準にあると分析しております。
⑤経営上の目標の達成状況について
当社グループは、「ROE10%の達成」を事業活動の指標として採用しております。当連結会計年度におきましては、厳しい市場環境の影響や新規事業関連セグメントにおける先行投資の負担等により、連結ROEは4.9%となっております。引き続き資本効率を意識した経営を推進すると同時に、早期にROE10%を回復することを目標にさまざまな経営戦略を実行してまいります。
なお、中長期的な会社の経営戦略は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載の通りであります。