【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績
依然として出口の見えないロシア・ウクライナ情勢、それに伴う物流の混乱や、エネルギー価格の上昇、またこの数十年見られなかったレベルのインフレの広まり、それらを抑制するための急激な金利上昇、世界的な景気後退懸念など、当社を取り巻く環境は不確実性を増しております。このような経営環境の中、当社の業績は年末にかけて為替レートが円高で推移いたしましたが、引き続き販売の質あるいは手取り改善戦略を推進したことなどにより、前年同期比で大幅に改善いたしました。
この結果、当社グループの売上高は1兆8,053億円(前年同期比+3,892億円、同+27%)、営業利益は、地域ミックスや売価の改善等により、1,537億円(前年同期比+978億円、同+175%)となりました。更に、経常利益は1,547億円(前年同期比+936億円、同+153%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,308億円(前年同期比+861億円、同+193%)となりました。
また、当第3四半期連結累計期間におけるグローバル販売台数は630千台となりました。主な地域別の販売状況は次のとおりです。
・ アセアン : 196千台(前年同期比 +17千台)
・ 豪州・ニュージーランド : 68千台( 同上 +3千台)
・ 日本 : 64千台( 同上
+15千台)
・ 中国他 : 39千台( 同上 △26千台)
・ 北米 : 97千台( 同上 △19千台)
・ 欧州 : 52千台( 同上 △42千台)
・ 中南米、中東、アフリカ他: 114千台( 同上 △5千台)
主な地域の販売状況は以下のとおりです。
タイは、昨年10月より入国規制を完全撤廃し、観光客の受け入れも一層拡大しており市場の回復を期待しております。一方で、一部地域での洪水やインフレによる購買力の減退等により、全体需要の完全復活には至りませんでした。当社は、『エクスパンダー』、『パジェロスポーツ』等主力モデルで、前年同期比販売台数は拡大し、他社からの新商品投入による環境激化の中、ほぼ前年並みのシェアを確保しております。今後も販売の質改善に注力し、デジタルツールの導入や販売基盤強化を推進し、来年度以降の新型車攻勢の準備を進めます。
インドネシアは、9月以降の断続的な利上げや物価高騰、燃料補助金削減による燃料価格値上げなどから、消費者心理に陰りが見られ、主に乗用車セグメントの需要が鈍化いたしました。一方で、商用車セグメントの需要は、石炭価格、資源系価格が高止まりしており、堅調に推移いたしました。当社は、激化する価格競争には追随せず、得意とするイベントマーケティングを中心に、お客さまとのコミュニケーションを丁寧に行うことで、新型『エクスパンダークロス』とともに販売台数は徐々に増加傾向にあります。一方、商用車セグメントは、受注は堅調なものの、車両供給制約に加え、TPT輸入枠の認可が遅れたことで、小売販売が減少していますが、既に輸入枠問題は徐々に解消しており、2023年1~3月に小売に結び付く見込みです。不透明なマクロ環境を注視しつつ、引き続き、台数・損益・シェアのバランスを注視しながら、適切な販売施策を実行してまいります。
フィリピンは、14年ぶりの高水準のインフレに対し、政策金利の継続的な引き上げによる中銀の金融引き締めも行われる中、海外労働者からの送金増や失業率低下により消費者マインドは改善しており、自動車購買意欲を支えております。当社は、5月に発売を開始した新型『エクスパンダー』の受注が好調に推移したことに加え、銀行ローン審査が緩和され、『ミラージュ』、『ミラージュG4』も計画比を大きく上回りました。旺盛な需要の中、供給が安定せず、在庫の有無が販売パフォーマンスに影響する神経質な状況は続きますが、徐々に正常化している対面販売機会等を強化し、販売拡大に努めます。
ベトナムは、昨年4月~5月の駆け込み需要の反動により、やや低調に推移しておりますが、当社は、7月より市場投入した新型『エクスパンダー』が好調に推移し、販売台数・シェアいずれも拡大いたしました。引き続き、新型『エクスパンダー』を販売の核と据え、相対的に供給及び在庫が安定しており好調な『トライトン』や、年式切り替えを機に好調な『アウトランダー』の拡販に努め、計画の達成を目指します。
マレーシアは、引き続き堅調に推移しており、当社でも好調な販売が続いております。加えて、受注残も徐々に解消に向かっております。
豪州の全体需要は、新型コロナウイルス感染の影響が少なかった2019年度レベルまで改善いたしました。当社は、他社同様に供給制約影響を大きく受けましたが、車両輸送会社との交渉や、部品供給制限回避のための装備仕様変更などを通じ、車両供給のリカバリーに努めたことに加え、新型『アウトランダー』がたいへん好評を頂いていることで、前年同期比で販売を伸ばしました。なお、車両供給問題は継続しており、依然として多くのバックオーダーを抱えております。長期間お待たせしているお客様や大幅な納期遅延が生じたお客様へ、きめ細かいフォローを通じ、受注キャンセルの最小化に取り組んでまいります。
ニュージーランドの全体需要は、「Clean Car Discountプログラム」施策を背景とした、PHEV/EVモデルが全体需要を牽引いたしました。一方で、インフレ率上昇を背景とした消費者マインドの冷え込みや、CCD Fee制度導入の影響によるCO2排出量の多い商用車セグメントの需要の落ち込みから、総需要は前年を下回りました。当社は、期初よりCCDプログラムの補助金対象である『エクリプス クロス』PHEVモデル及び、『アウトランダー』PHEVモデルの販売を強化することにより、前年同期比でシェアを拡大いたしました。今後も引き続き高い需要のあるPHEVシリーズの供給に注力し、PHEV関連のプロモーションを実施することによって、“PHEV Leader”として、市場の拡大を牽引してまいります。
北米市場は、前年度来の半導体供給問題に起因する車両供給不足による需要減から、未だ挽回できておらず、累計では前年比マイナスで推移している一方で、9月~12月期での総需要は前年を上回っており、在庫不足による販売落ち込みからの回復の兆しが見られ始めました。
当社は、上期で限られた在庫をディーラー小売り販売に優先して供給していたため、前年度と比較してフリート販売比率は大幅に減少しており、その結果前年同期比での小売りも減少しております。主要販売モデルである『アウトランダー』も、在庫不足で販売台数が伸び悩んでいましたが、第3四半期以降在庫状況が改善し始めており、ガソリン・PHEVモデルセットでのマーケティング活動を行うことで販売を強化してまいります。
FRBによる急速な金融引き締めの経済への影響が懸念されていることに加え、在庫正常化を受け、一部メーカーではインセンティブの積み増しが確認されるなど、競争環境は徐々に激しくなってきております。当社は、新型『アウトランダー』をきっかけに改善した販売の質を維持し、身の丈にあった販売台数規模の確保に努めます。
日本国内の自動車総需要は、9月以降4か月連続で前年比100%超えとなり、少しずつではありますが、回復の兆しが確認されてまいりました。
当社は、新型『アウトランダー』PHEVモデル、『エクリプス クロス』PHEVモデルに加え、軽自動車『eKクロス EV』、更にはこの11月より一般販売を再開した『ミニキャブ・ミーブ』と、強みとしている電動車商品ラインナップを拡充し、いずれの受注も好調に推移いたしました。一方で、半導体不足による車両供給不足の影響で、お客様をお待たせしております。
この先も、資材費高騰や半導体不足の状況が短期的に収束するようには見えず、引き続き生産・販売台数に影響を及ぼすと想定しております。そのような環境下において当社は、PHEV・BEV等の電動車シリーズのロングセラー化に加え、“三菱自動車らしさ”を体現した商品を投入することにより、更なる販売伸長を目指すとともに、サービス品質・お客様接客品質向上に注力し、販売全体の質の向上に努めます。
新型コロナウイルス感染拡大が始まってから3年が経過しましたが、ワクチン接種率の向上などもあいまって、ようやく収束に向かいつつあるようです。日本を含む各国の行動制限も、順次緩和されてきました。一方で、解決の目途がたっていないロシア・ウクライナ情勢、それにより急速に上昇しているエネルギー価格、原材料価格高騰や、かつてない水準でのインフレと、これを抑制するための急激な金利上昇、将来の景気後退懸念など、我々を取り巻くマクロ環境の不透明感が増しています。
また、自動車業界を取り巻く環境も日々変化しております。引き続き楽観視はできませんが、半導体の供給体制も徐々に整備されつつある一方で、世界的な船腹不足は収束の兆しが見えておらず、車両供給不足解消には一定の時間がかかりそうです。
こういった環境下で、当社の業績は、昨年来進めてまいりました“手取り改善戦略”の成果が顕在化し、息の長い改善フェーズにあります。我々を取り巻く環境は日々変化し、かじ取りが難しい状況ではありますが、収益力の更なる向上を図り、現中期経営計画の最終年度となる今年度の収益目標計画を達成すべく引き続き全力を尽くしてまいります。
② セグメントごとの経営成績
(ⅰ)自動車
当第3四半期連結累計期間における自動車事業に係る売上高は1兆7,916億円(前年同期比+3,926億円)となり、営業利益は1,503億円(前年同期比+972億円)となりました。販売の質あるいは手取り改善活動を推進したことなどにより、前年同期比で好転しました。
(ⅱ)金融
当第3四半期連結累計期間における金融事業に係る売上高は260億円(前年同期比△31億円)となり、営業利益は37億円(前年同期比△1億円)となりました。
③ 財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産は2兆565億円(前年度末比+1,281億円)となりました。そのうち現金及び預金は5,768億円(前年度末比+653億円)となりました。負債合計は1兆2,646億円(前年度末比△335億円)となり、そのうち有利子負債残高は、4,313億円(前年度末比△492億円)となりました。純資産は7,919億円(前年度末比+1,616億円)となりました。
(2)経営方針・経営戦略等及び対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等、及び当社グループが対処すべき課題について、重要な変更はありません。
(3)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費(自動車事業)は、75,893百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当第3四半期連結累計期間における生産実績は次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間
数量(台)
前第3四半期連結累計期間比(%)
国 内
326,520
106.5
海 外
416,884
92.7
合計
743,404
98.3
② 販売実績
当第3四半期連結累計期間における販売実績は次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間
前第3四半期連結累計期間比(%)
数量(台)
金額(百万円)
数量
金額
国 内
172,846
390,088
133.4
148.1
海 外
571,783
1,415,232
95.6
122.7
合計
744,629
1,805,320
102.3
127.4
(注)販売実績は、外部顧客の所在地別の当社及び連結子会社の完成車及びKDパックの卸売り台数を示しております。
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