【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの分断や資源価格の高騰、人件費や金利の上昇、為替の変動など、大きな影響を受けました。自動車業界においては、半導体不足による生産変動の正常化には、なお時間を要するものと思われます。機能製品事業に関連する業界においても、原材料価格の高騰が継続しているほか、官需では公共工事予算の制約、民需では投資マインドの低下が懸念され、先行き不透明な状況が続いております。
このような情勢のなかで当社グループは、可能な限りのリスク対応を講じると同時に、グループを挙げた品質管理の徹底とコスト低減活動の強化に取り組むとともに、収益や成長が見込まれる分野・地域への拡販を推進し、収益の確保に努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は65,624百万円と、前年度比12,109百万円の大幅な増収となりました。
損益面におきましても、営業利益2,152百万円と、前年度比1,616百万円の大幅な増益となり、業績は大きく改善しました。経常利益は外貨建債権や海外連結子会社に対する貸付金等に係る為替差益624百万円を計上した結果、2,796百万円と前年度比2,124百万円の大幅な増益となり、過去最高益を更新しました。
当期純損益につきましても、海外子会社のASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO, S.A. de C.V.において受注の低迷により営業赤字が継続していることから、同社固定資産の減損損失690百万円を特別損失に計上し、併せて繰延税金資産421百万円を取り崩しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,017百万円と、前年度比507百万円の増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、主に当座資産及び棚卸資産の増加により、前年度末比1,268百万円増加の51,552百万円となりました。また、負債は主に支払手形及び買掛金の増加、短期借入金の減少により、前年度比80百万円増加の33,100百万円となりました。
純資産は18,452百万円であり、自己資本比率は35.7%(前連結会計年度は34.3%)となりました。
当連結会計年度は「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」の初年度となりますが、順調な滑り出しとなりました。
以下、各事業セグメント別に概況をご報告申し上げます。
当社は、事業本部制を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」の2つを報告セグメントとしております。
a.自動車安全部品事業
中国ロックダウンや半導体不足の影響により、自動車生産台数への影響がありましたが、その後の受注回復と円安効果により、売上高は46,666百万円と前年度比10,948百万円の増収となりました。
損益面は、原材料価格の高騰、物流費の増加の影響がありましたが、営業利益は583百万円と前年度比1,857百万円
の大幅な改善となりました。
b.機能製品事業
パルテム関連は、ライフライン(下水道・上水道・ガス等)の管路更生分野で前年度からの繰越工事が順調に進捗したこともあり、売上・利益ともに大幅に増加しました。
防災関連は、防災関連資機材は順調に推移したものの、消火栓用ホース、災害対策用排水ホースは想定を下回り、売上は前年度比ほぼ横這い、利益については減少しました。
産業資材関連は、物流省力化分野がトラックの大幅減産の影響を受け低迷し、売上・利益ともに減少しました。
この結果、当事業の売上高は18,926百万円と前年度比1,161百万円の増収となりましたが、営業利益につきまして
は2,207百万円と前年度比61百万円の微減となりました。
c.その他
当事業の売上高は31百万円、営業利益は10百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は4,402百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,220百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は6,267百万円(前連結会計年度は1,021百万円の使用)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,110百万円、減価償却費1,885百万円、減損損失690百万円、仕入債務の増加1,393百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,463百万円(前連結会計年度は4,190百万円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,535百万円、有形固定資産の売却による収入201百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,700百万円(前連結会計年度は1,738百万円の獲得)となりました。主な内訳は、長期借入れによる収入2,788百万円、短期借入金の減少2,829百万円、長期借入金の返済による支出2,470百万円等であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
自動車安全部品事業(百万円)
46,495
129.2
機能製品事業(百万円)
17,267
105.7
合計(百万円)
63,763
121.8
(注)金額表示の基準は、販売価額によります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
機能製品事業
7,998
73.2
2,519
58.9
(注)機能製品事業のパルテム部門以外は主として見込生産を行っており、受注に基づく生産は、ほとんど行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
自動車安全部品事業(百万円)
46,666
130.7
機能製品事業(百万円)
18,926
106.5
その他(百万円)
31
96.7
合計(百万円)
65,624
122.6
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
マツダ(株)
19,954
37.3
25,268
38.5
スズキ(株)
4,932
9.2
5,804
8.8
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」の初年度となります。売上高は、自動車安全部品事業が大幅に改善し、機能製品事業におきましてもパルテム関連が通年で順調に推移した結果、前連結会計年度比12,109百万円と大幅に増加し、過去最高の65,624百万円となりました。
営業利益は、増収に伴い前連結会計年度比1,616百万円増加し、2,152百万円となりました。自動車安全部品事業では、原材料価格の高騰、物流費の増加の影響がありましたが、生産の回復や円安等により業績が大幅に改善、また機能製品事業においては、消火栓用ホースの需要減少やトラック生産の大幅な減少による物流省力化分野の苦戦が継続しましたが、前年度からの繰越工事が多かったパルテム関連が順調に推移し、前連結会計年度比増益となりました。
経常利益は、外貨建債権や海外連結子会社に対する貸付金等に係る為替差益等により、前連結会計年度比2,124百万円増加し、2,796百万円となり、過去最高益となりました。
海外子会社のASHIMORI INDUSTRIA de MEXICO, S.A. de C.V.において営業赤字が継続していることから、同社固定資産の減損損失690百万円を特別損失に計上し、併せて繰延税金資産421百万円を取り崩しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比507百万円増加し、1,017百万円となりました。
この結果、売上高、営業利益及び経常利益は中期経営計画の初年度計画数値を大きく上回り、親会社株主に帰属する当期純利益は計画のとおりとなりました。中期経営計画の2年目となる第124期(2024年3月期)は、連結売上高57,000百万円、営業利益2,000百万円の計画としていましたが、利益改善が順調に進んでいることから、これを上回る連結売上高65,000百万円、営業利益2,300百万円を目指してまいります。
当連結会計年度末の総資産は、増収に伴い51,552百万円と前連結会計年度末に比べ1,268百万円増加しましたが、上記海外子会社における減損損失等により有形固定資産が893百万円減少しています。また短期借入金及び長期借入金の圧縮に努めた結果、有利子負債は2,258百万円の減少となりました。
純資産は親会社株主に帰属する当期純利益1,017百万円の計上により利益剰余金が865百万円増加し18,452百万円と前連結会計年度末に比べ1,188百万円増加しました。自己資本比率は35.7%と、前連結会計年度末の34.3%から1.4ポイント上昇しました。
セグメントごとの経営成績の詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について
キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性について)
当連結会計年度では1,513百万円の設備投資を行っており、減価償却費1,885百万円の範囲内として財務体質の強化及び有利子負債の圧縮に努めております。設備投資のうち、自動車安全部品事業に1,082百万円を支出しております。生産拠点拡大のための工場建設といった大型投資は一巡しましたが、新規受注を目的とした金型投資や老朽化した生産設備の更新等は継続して行ってまいります。
なお、当連結会計年度末の有利子負債は長期短期合わせて14,299百万円と総資産51,552百万円の28%を占めており、個々の投資案件につきまして採算性を厳格に算定して選別し、新規の資金調達は行わない方針です。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しておりますが、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりであります。
(a)貸倒引当金
当社グループの保有する債権に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積り、引当金を計上しております。一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の評価は、将来の不確実な経済条件の変動などによる影響を受け、債務者の財務状況等が悪化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額の金額に影響を与える可能性があります。
(b)固定資産の減損
当社グループでは、固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合は、減損の要否を判定しております。この判定は、連結グループ個社単位で行うこととしており、事業用資産については、製品グループを考慮して資産グループを決定し、共用資産については、会社全体をグルーピングの単位として将来キャッシュ・フローの見積りを行い、この見積りに基づいて行っております。また、事業の用に供していない遊休資産については、個別物件ごとにグルーピングを行っており、個別に比較可能な正味売却価額に基づいて行っております。将来キャッシュ・フローの見積りについては、合理的に算定された事業計画及び回収可能価額に基づいて行っておりますが、将来の予測不能な予算策定上の前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
(c)繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税負担を軽減する効果を有するかどうかで判断しており、当該判断にあたっては、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性があるかどうかを判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたり、一時差異解消見込年度における課税所得を見積っておりますが、この課税所得は、過去の推移を基礎として、合理的に算定された事業計画に基づいて、見積りを行っております。
当該見積りについて、将来の予測不能な前提条件の変動等により見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
④ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
当社は、2022年から3ヵ年に亘る「第123~125期(2023年3月期~2025年3月期)中期経営計画」を策定いたしました。
前回の「第120~122期(2020年3月期~2022年3月期)中期経営計画」期間におきましては、自動車安全部品事業の低迷と新型コロナウイルス感染症の影響で業績が大きく悪化し、目標数値を取り下げることとなりました。今回の中期経営計画では、豊田合成(株)との協業により自動車安全部品事業を黒字化し、機能製品事業の収益を新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に戻すことにより、前中期経営計画の目標数値に再度チャレンジすることとしています。
また、当社は、東京証券取引所の新市場区分において「プライム市場」を選択しました。現時点におきましては、流通株式時価総額、一日平均売買代金が上場維持基準に適合しておりませんが、今回の中期経営計画の数値目標の達成により、これらを満たすことができると考えています。また、「プライム市場」上場会社としてガバナンスを一層充足させ、持続可能な社会への取組みをビジネスチャンスと捉えて、これを加速させます。
次期につきましては、売上高65,000百万円、営業利益2,300百万円、経常利益2,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,500百万円を見込んでおります。
(単位:百万円)
指標
2023年3月期
実績
2024年3月期
計画
増減
売上高
65,624
65,000
△624( 1.0%減)
営業利益
2,152
2,300
148( 6.9%増)
(営業利益率)
3.3%
3.5%
0.2ポイント増
経常利益
2,796
2,200
△596(21.3%減)
親会社株主に帰属する当期純利益
1,017
1,500
483(47.5%増)