【経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態および経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、行動制限の緩和により、社会経済活動に回復の動きが見られましたが、円安の進行ならびにウクライナ情勢による物価上昇やエネルギー資源・原材料などの高騰が重なり、依然として先行きは不透明な状況が続いております。このような状況のなか、当社グループは世の中の変化を柔軟にとらえ、サステナブル社会に対応した経営環境、経営課題に積極的に取り組むため、中期経営計画「ISHIZUE 2023 ~SHINKA・変革~」における重点テーマ「イノベーション創出」「グローバル展開・拡大」「事業推進体制の見直しと収益改革」「AI・IoT積極活用」「持続的成長を担う人財育成」を実行し、「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」実現に向けて取り組んでまいりました。
①中長期成長エンジンの確立、イノベーション創出・BtoC開発マーケティング・BtoB現場提案による新製品上市実現、新領域・新製品カテゴリーでの事業探索・創出・コア技術の深化・進化と共有、オープンイノベーション・協業による新規事業の創出②グローバル市場へのスピーディーな展開・拡大・販売3拠点(日本本社、タイ販社、ドイツ販社)体制による事業拡大および支援強化、生産・物流を含めた体制拡充の推進・海外事業拡大に向けた戦略的パートナー探索(業務提携・M&A活用)③事業推進体制の見直しと収益改革・顧客を機軸とした事業推進体制での戦略遂行、業務プロセス・活動の効率化・サプライチェーンマネジメント最適化と品質管理強化・サステナブル経営とSDGs視点の事業戦略・開発の推進、CO2排出削減等の取り組み強化④事業戦略推進に向けたAI・IoTの積極活用・事業戦略を実現するためのIT基幹システム活用の実践・社内外データの見える化・活用の推進⑤将来の持続的成長を担う人財育成・行動指針を実践する人財育成、社員の健康とエンゲージメント向上策の強化・スキルマップ活用によるミドルマネジメント・専門分野のスキル強化・次世代経営層の育成
以上の取り組みを実施いたしました結果、売上高は、インバウンド需要回復への事前準備、海外の販売子会社を含めた海外需要拡大に向けた取り組み、為替の円安影響等により、前年同期比6.1%増の340億8千2百万円となりました。営業利益は、ナフサ価格の上昇等による原材料単価の上昇や電力費・燃料費等が増加したこと等による原価の上昇に加え、人員増に伴う人件費の増加、新基幹システムの稼働に伴う減価償却費の増加、行動制限の緩和に伴う旅費交通費の増加等による販売費及び一般管理費の増加等により、前年同期比31.0%減の14億4千4百万円となりました。
経常利益は、円安による為替差益があったものの、主に(株)飯洋化工の持分法による投資利益の減少および営業利益の減少により、前年同期比28.5%減の15億4千6百万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、これらの影響により、前年同期比29.1%減の10億7千7百万円となりました。 当社グループのセグメントの概要は次のとおりです。当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務諸表が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定および業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。当社は、顧客機軸をベースとした事業活動を強化するために、営業担当管掌を「国内事業本部」、「海外事業本部」とし、国内事業本部の傘下に、販路別に以下の営業統括部を設置しております。・顧客を機軸とした新たな営業推進体制の強化とブランド戦略の再構築のために、「コンシューマー営業本部」を設置し、傘下に「ヘルスケア営業統括部」、「オフィスホーム営業統括部」を置くとともに、越境EC含め積極的にEC営業の拡大を図るため、「EC営業統括部」を置いております。・より顧客に密着した営業活動を推進し、新規開発案件探索、顧客拡大のために、「工業品営業統括部」、「医療材営業統括部」を置いております。
また、当社グループは、以上の営業担当管掌に、各子会社を加えた事業フィールドとして、「ヘルスケアフィールド」、「ECフィールド」、「オフィスホームフィールド」、「工業品フィールド」、「医療材フィールド」および「海外フィールド」を設定しております。経営資源の配分の決定および業績の評価については、取り扱う製品、商品の性質や、市場、製造方法の類似性に基づき、「メディカル事業」、「テープ事業」の単位で行っていることから、当社グループの事業セグメントとしては、「メディカル事業」、「テープ事業」と認識し、これを報告セグメントとしております。
なお、EC事業の拡大に伴い事業管理体制を変更したため、当連結会計年度より、「ヘルスケアフィールド」、「ECフィールド」、「オフィスホームフィールド」の区分を見直しております。そのため、前第3四半期連結累計期間の金額については、当該変更後の金額に組替えて比較・分析しております。
「メディカル事業」、「テープ事業」セグメントと各事業フィールドとの関係は以下のとおりです。
事業フィールド
メディカル事業
テープ事業
国内
コンシューマー営業本部
ヘルスケアフィールド
〇
ECフィールド
〇
〇
オフィスホームフィールド
〇
医療材フィールド
〇
工業品フィールド
〇
海外
海外フィールド
〇
〇
事業の種類別セグメントの業績は次のとおりであります。メディカル事業(ヘルスケアフィールド)ドラッグストアを中心とした大衆薬市場におきましては、訪日外国人の増加に伴いインバウンド需要に回復の動きがみられましたが、新型コロナウイルス感染症の再拡大や物価上昇による消費者心理の冷え込みもあり、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。
このような状況のなか、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズについては、国内需要拡大に向けて、認知度向上のためにテレビCMやキャンペーンなどのPR活動を行うとともに、試供品配布を継続して行いました。あわせて、鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズについては、訪日外国人客数の増加に伴うインバウンド需要回復への事前準備とともに、国内需要拡大に向けた営業活動を継続して行いました。その結果、ともに売上は前年同期を上回り、フィールド全体としての売上高は93億4千1百万円(前年同期比8.9%増)となりました。
(医療材フィールド)医療機関向け医療材料市場におきましては、新型コロナウイルス感染症第8波の影響により、コロナ病床満床の医療施設や医療関係者の陽性による手術延期などが見られるなど、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。 このような状況のなか、止血製品シリーズ“セサブリックTM”の売上は、全国旅行支援などの影響による4・5回目のコロナワクチン接種の拡大があったものの、採血や献血用の一般用途はコロナ感染者拡大の影響で大きく落ち込み、前年同期を下回りました。その一方、術後ケアシリーズ“アスカブリックTM”やドレッシング材“カテリープラスTM”は、国内産による安定供給と品質の良さで認知度拡大が進んだことにより、ともに売上が前年同期を上回り、フィールド全体としての売上高は46億2千5百万円(前年同期比4.6%増)となりました。
((メディカル事業にかかる)ECフィールド)EC市場におきましては、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズが好調に推移し、カタログ通販とEコマースの売上においては、前年同期を上回りました。一方、越境ECの売上においては、“ケアリーヴTM”シリーズ育成に注力し、効果があったものの、鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズの落ち込みにより前年同期を下回り、メディカル事業にかかるECフィールドとしての売上高は4億5千6百万円(前年同期比1.2%減)となりました。
((メディカル事業にかかる)海外フィールド)海外市場におきましては、Withコロナへの移行が進むなか、急激な物価上昇や中国での新型コロナウイルス感染症拡大など、経済成長への負荷が高まり、依然として先行き不透明な状況が続きました。このような状況のなか、重点地域であるアジアおよび欧州にて、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズや止血製品“セサブリックTM”シリーズを中心に、販売代理店とともに現地に密着した営業活動を展開してまいりました。特に“ケアリーヴTM”シリーズは、主に韓国にて販路拡大が進み好調に推移し、アセアンおよび欧州における医療材製品も堅調に推移いたしました。これらに加えて為替の円安影響もあり、メディカル事業にかかる海外フィールドとしての売上高は12億9千5百万円(前年同期比23.2%増)となりました。
以上の結果、メディカル事業全体の売上高は157億1千8百万円(前年同期比8.3%増)となりました。また、原材料単価の上昇や電力費・燃料費等が増加したこと等による原価の上昇があったものの、ヘルスケアフィールドを中心とした売上高の増加により、営業利益は36億2千7百万円(前年同期比3.9%増)となりました。 テープ事業(オフィスホームフィールド)文具事務用品市場におきましては、原材料価格高騰および円安を起因とした物価上昇による消費者心理の冷え込みや大手流通によるプライベートブランド商品強化の流れなど、依然としてオフィス用品需要の低迷が続く厳しい販売環境が続きました。このような状況のなか、「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」については、価格改定を進めるとともに、新製品を含めたラインアップ拡大を進めてまいりましたが、需要低迷の影響は大きく、ともに売上は前年同期を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は37億9千5百万円(前年同期比3.4%減)となりました。
(工業品フィールド)産業用テープ市場におきましては、行動制限の緩和により消費に緩やかな回復傾向が見られましたが、部品供給不足による一部自動車メーカーの減産や原材料価格の高騰などもあり、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。このような状況のなか、原材料供給停止による廃番が重なり、車両用マスキングテープの売上は前年同期を大きく下回りましたが、「セロテープ®」については、天然素材を使用した環境配慮製品であることを特設ホームページを通じて啓蒙し、SDGsへの取り組みとして多くの自治体や企業にご賛同をいただきました。あわせて、主要製品の価格改定を進めた結果、フィールド全体としての売上高は100億円(前年同期比0.9%増)となりました。
((テープ事業にかかる)ECフィールド)EC市場におきましては、オフィス用品需要の低迷が続く厳しい販売環境のなか、価格改定を進めるとともに、オンライン購買に対するWEBマーケティングを強化してきたことにより、「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」など消耗品の需要が好調に推移いたしました。その結果、テープ事業にかかるECフィールドとしての売上高は25億1百万円(前年同期比7.1%増)となりました。
((テープ事業にかかる)海外フィールド)海外市場におきましては、中国での新型コロナウイルス感染症拡大によるビジネスの停滞など、依然として先行き不透明な状況が続きましたが、欧州市場においては、Withコロナへの移行によりイベント需要が大きく回復いたしました。このような状況のなか、重点地域であるアジアおよび欧州にて「Panfix TMセルローステープ」は香港やインドネシア市場への取り組みを強化し、塗装用和紙マスキングテープは欧州市場での取り組みを強化するなど、販売チャネルの構築と製品育成に注力いたしました。これらに加えて為替の円安影響もあり、テープ事業にかかる海外フィールドとしての売上高は20億6千6百万円(前年同期比43.6%増)となりました。 以上の結果、テープ事業全体の売上高は183億6千3百万円(前年同期比4.2%増)となりました。また、売上高の増加に伴い、テープ事業にかかる工場の生産は増加しているものの、ナフサ価格の上昇等による原材料単価の上昇や電力費・燃料費等が増加したこと等による原価の上昇により、営業利益は8億8千4百万円(前年同期比43.4%減)となりました。
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末と比べ6億1千4百万円増加し、650億4千1百万円となりました。流動資産は7億1百万円の増加、固定資産は8千7百万円の減少となりました。流動資産の増加は、設備投資、配当および未払法人税等にかかる支払い等により現金及び預金が21億9千4百万円減少した一方、前連結会計年度の第4四半期会計期間の売上高と比較して、当第3四半期連結会計期間の売上高が増加したことにより売上債権が19億3千8百万円、原材料単価の上昇により棚卸資産が11億1百万円増加したこと等によるものです。固定資産の減少は、当社の埼玉工場における粘着液製造設備および建屋の設備投資により増加した一方、減価償却費の計上により有形固定資産が1億3千万円減少したこと等によるものです。なお、前連結会計年度末に建設仮勘定に計上しておりましたニチバンメディカル(株)における新棟および医療機器製造設備は、当第3四半期連結累計期間において、すべて本勘定に振り替えられております。負債は、前連結会計年度末と比べ2億9千6百万円増加し、257億6千2百万円となりました。流動負債は、1億6千5百万円の増加、固定負債は、1億3千1百万円の増加となりました。流動負債の増加は、未払法人税等の支払いにより6億4百万円減少、未払金の支払いにより5億5千5百万円減少、設備関係支払手形の支払いにより4億8千1百万円減少した一方、生産増により仕入債務が18億8千3百万円増加したこと等によるものです。固定負債の増加は、役員退職慰労引当金が1千7百万円減少した一方、退職給付に係る負債が1億4千8百万円増加したこと等によるものです。
純資産は前連結会計年度末と比べ3億1千7百万円増加し、392億7千8百万円となりました。これは、利益剰余金が配当金の支払いにより6億2千1百万円減少した一方、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により10億7千7百万円増加したこと等によるものです。
(2) 会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項」(追加情報)に記載のとおりであります。
(3) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上および財務上の課題について重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、8億1千6百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 生産、受注および販売の実績当第3四半期連結累計期間において、前年同期比で、生産、受注および販売の実績に著しい増減はありません。
(6) 主要な設備当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の著しい変動および主要な設備の前連結会計年度末における計画の著しい変更はありません。なお、前連結会計年度末に建設仮勘定に計上しておりましたニチバンメディカル(株)における新棟および医療機器製造設備は、当第3四半期連結累計期間において、すべて本勘定に振り替えられております。