【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を適用したことに伴い、前連結会計年度と収益認識に関する会計処理が異なっておりますが、経営成績の状況については、「収益認識会計基準」を遡及適用していない前連結会計年度の実績値を記載しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)については、ゼロコロナ政策を続けた中国で経済活動の停滞への影響が長期化したものの、欧米諸国を中心に行動制限の緩和が進み景気は回復へと向かいました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻により、昨年から続く半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱に拍車がかかり、世界各国ではインフレが進行しました。このようななか、欧米諸国では物価安定のため金融引き締め政策への転換が進められました。
米国においては、新型コロナによる行動制限は大幅に緩和され、個人消費の回復を背景に景気は堅調に推移しましたが、半導体等部品の供給不足や雇用情勢の悪化に加えウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰など、インフレが深刻な問題となりました。また、インフレ抑制のため急激な金融引き締め策が進められることとなり、今後もその動向と世界経済への影響が注視されています。
欧州においては、新型コロナの影響は限定的なものとなり、半導体等部品の供給不足が続くものの、景気は回復に向かいましたが、ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア産エネルギーや資源に依存している各国では影響が大きく、安全保障のみならず、経済活動にも悪影響が及んでいます。
中国においては、ゼロコロナ政策によるロックダウンや厳しい行動制限により、個人消費は低迷し、生産活動も制限され、不動産価格の低迷や電力不足も加わり景気は減速しました。また、12月ではゼロコロナ政策が突如解除されたことで感染が急拡大し、景気は再び不透明なものとなりました。
アジアにおいては、新型コロナによる行動制限の緩和が進み、景気は概ね好調に推移しておりますが、中国経済と関係が深い各国において経済停滞の影響を受け、サプライチェーンの混乱や資源価格の上昇など、インフレの加速が懸念されています。
日本経済は、新型コロナの感染拡大を繰り返しながらも、行動制限の緩和が進みました。一方、引き続き、半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱は継続しており、経済回復への足かせとなっています。また、欧米諸国との金融政策の違いによる円安の進行は、総じて企業業績を後押しした反面、輸入企業の業績や個人消費の悪化をもたらしました。今後の金融政策と為替相場への影響に注目が集まっています。
当社グループの主要事業分野である日本自動車業界に関する状況は、次のとおりであります。
昨年から続く半導体等部品の供給不足や物流網の混乱に加え、ウクライナ侵攻に起因した資源高、中国でのロックダウンによるサプライチェーンの混乱により、引き続き生産調整を余儀なくされました。また、進行中の円安は、輸出においてメリットになった反面、原材料価格やエネルギー価格で大幅なコスト増をもたらしました。今後は、世界的に進むカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも期待されています。
この結果、当連結会計年度における国内乗用車メーカー8社の国内四輪車販売台数は、前年比4.6%減の383万台、四輪車輸出台数は、前年比1.0%減の353万台となり、国内四輪車生産台数は、前年比0.1%減の738万台となりました。また、海外生産台数は、前年比2.6%増の1,658万台となりました。
このような環境のなか、当連結会計年度の売上高は64,172百万円(前連結会計年度58,260百万円)、営業利益は7,678百万円(前連結会計年度6,841百万円)、経常利益は8,452百万円(前連結会計年度7,531百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,578百万円(前連結会計年度4,781百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
日本
半導体等部品の供給不足により顧客の生産調整が継続したものの、国内顧客は昨年減産分の挽回生産が一部実施されたことや、円安に伴う外貨建て売上高の増加もあり、売上高は32,487百万円(前連結会計年度30,545百万円)、営業利益は2,708百万円(前連結会計年度1,873百万円)となりました。
北米
北米市場は、半導体等部品の供給不足の影響や物流網の混乱により顧客の生産調整が継続し、現地通貨ベースでの売上高は7.1%減少したものの円安の影響により、売上高は10,673百万円(前連結会計年度9,587百万円)、NICHIRIN-FLEX U.S.A., INC.でのサイバー攻撃に伴う特別費用96百万円(物流費用、対策費用等)の計上により、営業利益は326百万円(前連結会計年度346百万円)となりました。
中国
ゼロコロナ政策によるロックダウンや厳しい行動制限により断続的な生産停止が続くなか、現地通貨ベースでの売上は2.4%減少したものの円安の影響により、売上高は13,401百万円(前連結会計年度11,995百万円)、売上減少に加え物流コスト等の増加により、営業利益は1,840百万円(前連結会計年度1,905百万円)となりました。
アジア
半導体等部品の供給不足により顧客の生産調整は続いているものの、二輪用ブレーキホースが堅調に推移したことに加えて円安の影響もあり、売上高は19,952百万円(前連結会計年度17,026百万円)、営業利益は3,169百万円(前連結会計年度3,092百万円)となりました。
なお、NICHIRIN IMPERIAL AUTOPARTS INDIA PVT., LTD.における収益性の低下により顧客関連資産126百万円の減損損失を計上することとしました。
欧州
昨年より複数の日系顧客が欧州工場を閉鎖したことに加え、半導体等部品の供給不足やウクライナ情勢による顧客の生産調整の影響を受け、現地通貨ベースでの売上は13.0%減少、売上高は4,720百万円(前連結会計年度5,104百万円)売上減少に加え原材料価格やエネルギー価格の高騰により、営業損失は290百万円(前連結会計年度は営業損失11百万円)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は45,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,431百万円増加しました。これは主に、現金及び預金1,293百万円の増加、売掛金916百万円増加、棚卸資産921百万円増加によるものであります。固定資産は26,947百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,147百万円増加いたしました。これは、建物及び構築物が155百万円増加、機械装置及び運搬具が700百万円増加したものであります。この結果、総資産は、72,540百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,579百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は13,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ151百万円減少いたしました。これは主に、買掛金が723百万円増加、電子記録債務が208百万円減少、短期借入金が201百万円減少、未払法人税等が609百万円減少したことによるものであります。固定負債は6,009百万円となり、前連結会計年度末に比べ932百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が626百万円減少、リース債務が170百万円減少、退職給付に係る負債が173百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は、19,601百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,083百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は52,938百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,662百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が3,405百万円増加し、為替換算調整勘定が2,499百万円増加、非支配株主持分が156百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は63.7%(前連結会計年度末は59.9%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,547百万円増加し、当連結会計年度末は17,836百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシユ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は6,770百万円の増加(前連結会計年度は6,352百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益8,421百万円(資金の増加)および、減価償却費2,577百万円(資金の増加)、投資有価証券売却損益189百万円(資金の減少)、売上債権の増加418百万円(資金の減少)、仕入債務の増加266百万円(資金の増加)、法人税等の支払額3,167百万円(資金の減少)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は942百万円の減少(前連結会計年度は591百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,018百万円、投資有価証券の取得による支出611百万円、投資有価証券の売却による収入322百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は4,205百万円の減少(前連結会計年度は2,602百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出679百万円、配当金の支払額1,172百万円、非支配株主への配当金の支払額1,521百万円等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年 1月 1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
日本 (百万円)
18,968
103.2
北米 (百万円)
11,096
112.2
中国 (百万円)
12,384
106.4
アジア(百万円)
17,526
116.5
欧州 (百万円)
4,745
92.1
合計 (百万円)
64,722
107.7
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループの主要製品である自動車用ホースは、基本的には販売先からの受注による受注生産であり、必要なものを必要な時に納入する「ジャスト・イン・タイム」の定時・定量納入方式を特徴としております。
しかし、販売先より提示を受ける納入内示と実際の納入は、時期、数量が異なるとともに確定受注から納期までは極めて短い期間であります。従って、現実的には販売先からの四半期および翌月の生産計画の内示を基に、過去の実績・当社の生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っております。
このような理由により、受注高および受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年 1月 1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
日本 (百万円)
18,936
104.3
北米 (百万円)
10,628
111.0
中国 (百万円)
12,385
111.8
アジア(百万円)
17,673
121.8
欧州 (百万円)
4,549
92.3
合計 (百万円)
64,172
110.1
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、2022年は中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan)の2年目で”コロナ禍からの着実な回復期”かつ2023年からの”ポストコロナ成長期”への転換点となる重要な年として経営課題に取り組みました。
世界経済は、欧米諸国を中心に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)からの行動制限の緩和が進み景気は回復へと向かいましたが、ロシアによるウクライナ侵攻により、昨年から続く半導体等部品の供給不足、エネルギー価格や原材料価格の高騰、物流網の混乱に拍車がかかりました。世界各国ではインフレが進行し、欧米諸国では物価安定のため金融引き締め政策への転換が進められました。
こうした外的環境要因による制約を受けながらも、グループとしてサプライチェーンの有効活用を図り、拠点間の連携強化に努め、最適な生産場所・生産体制の確立に向け取り組んだ結果、当期の経営成績は、新型コロナ前の水準まで回復しました。
当連結会計年度の売上高は64,172百万円、営業利益は7,678百万円、経常利益は8,452百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,578百万円となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標および当連結会計年度の達成・進捗状況は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
指標
2021年
(実績)
2022年度
(計画)
2022年度
(実績)
2022年度
(計画比)
2022年度
(前期比)
売上高
58,260
65,500
64,172
△1,328
△2.0%
+5,912
+10.1%
営業利益
6,841
7,300
7,678
+378
+5.2%
+837
+12.2%
経常利益
7,531
8,800
8,452
△348
△4.0%
+921
+12.2%
親会社株主に帰属する当期純利益
4,781
4,300
4,578
+278
+6.5%
△203
△4.2%
(注)2022年計画は、2022年11月11日の公表値を記載しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、自動車業界の動向、顧客企業の業績や調達方針の変更などにより、経営成績に重要な影響を受ける可能性があります。
その他の要因につきましては、「第2 事業の状況」の「2事業等のリスク」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末の現金及び預金は18,354百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,293百万円増加いたしました。これは営業活動の結果獲得した資金が6,770百万円と前連結会計年度に比べ418百万円増加し、投資活動の結果使用した資金が942百万円と前連結会計年度に比べ350百万円増加し、財務活動の結果使用した資金が4,205百万円と前連結会計年度に比べ1,602百万円増加したことによります。
上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金および金融機関からの借入金にて賄われております。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,513百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は17,836百万円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成においては、資産・負債および収益・費用の適正な開示を行うため、貸倒引当金、退職給付に係る負債、賞与引当金などに関する引当については、過去の実績や当該事象の状況に照らし合理的と考えられる見積りおよび判断を行い、また価値の下落した投資有価証券の評価や繰延税金資産の計上については、将来の回復可能性や回収可能性などを考慮して計上しております。但し、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、見積りと異なる場合があります。 当社グループが採用しております会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「重要な会計方針」に記載のとおりであります。
なお、今後の新型コロナの当社グループへの影響は、地域によって程度が異なるものの、当連結会計年度末から1年程度継続すると仮定し、会計上の見積りを行っております。
新型コロナの収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、上記の見積りの結果に影響し、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。