【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況当第2四半期連結累計期間におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の個人消費やインバウンド需要が増加傾向にあり、日銀による大企業の業況判断DIが製造業・非製造業ともに連続して改善するなど、景気の緩やかな回復が見られました。一方で、地政学リスクの長期化や世界各地域での金融政策等による景気減退懸念など、依然として先行きが不透明な状況が続いています。DNPグループは、こうした環境・社会・経済の大きな変動のなかでも、長期を見据え、自らが「より良い未来」をつくり出すため、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域を拡げています。現在は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」を推進しており、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。事業戦略では、中長期の強靭な事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心とした新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。また、非財務戦略では、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、長期的な成長を支える経営基盤を強化していきます。
その結果、当第2四半期連結累計期間のDNPグループの売上高は6,937億円(前年同期比3.8%増)、営業利益は275億円(前年同期比0.2%減)、経常利益は374億円(前年同期比2.1%増)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、762億円(前年同期比172.9%増)となりました。当第2四半期連結累計期間の営業利益は、デジタルインターフェース関連等の注力事業が第2四半期連結会計期間に入り好調に推移し、第1四半期連結会計期間での落ち込みを補い、前年並みを確保しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
なお、部門(事業セグメント)別の名称については、事業領域とその戦略をより明確化し、具体策の実行を加速させるため、第1四半期連結会計期間から、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更しました。これにともない、快適な人々の暮らしに一層寄与していくため、「飲料事業」を関連の深い「ライフ&ヘルスケア部門」に移行しました。当第2四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。
(スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧州・アジア市場を中心に好調に推移しました。情報セキュア関連は、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件が業績に寄与しました。10月には広島県広島市に、DNPの中国・四国エリア初のBPO運用拠点を新設し、BPO事業全体の需要拡大への対応力を強化するとともに、事業継続計画(BCP)対策として一層強固な体制を確立していきます。また、ICカードは、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが特に伸長しました。マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策等の知見とデジタルの強みを掛け合わせ、個々の顧客企業等への最適な価値の提供に努めた結果、紙媒体の市場縮小のなかでも前年並みを確保しました。出版関連は、図書館運営業務が伸長したことに加え、リアル店舗とネットのハイブリッドな流通販売事業も堅調に推移したものの、雑誌等の紙媒体の市場縮小の影響などにより、当事業全体で前年並みとなりました。コンテンツ・XRコミュニケーション関連では、リアルとバーチャルの空間の融合等によって人々の体験価値を高めるXRコミュニケーション事業の強化に努めました。また、関連する新規事業の創出に向けて、脳神経科学とITの融合等によるブレインテック事業とXR事業に強みを持つ株式会社ハコスコをグループ会社化しました。教育関連では、レノボ・ジャパン合同会社とともに、東京都の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム事業に係るプラットフォーム構築・運営組織」に採択されました。今後も、国が掲げる“誰一人取り残すことのない”多様な教育機会の提供により、全国の自治体や教育現場の活動を支援していきます。その結果、部門全体の売上高は3,505億円(前年同期比0.8%増)となりました。営業利益は、情報セキュア関連の売上増加や構造改革の推進、業務効率の改善活動などがプラスに働いたものの、紙媒体を中心とした減収のほか、原材料費や人件費等の上昇の影響を受け、85億円(前年同期比9.2%減)となりました。
(ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連は、自動車生産台数の回復もあり、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが車載向け・IT機器向けともに増加しました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりにより、封止材を中心に好調に推移しました。また、自動車用の部材として、内装用の加飾フィルムに加えて、塗装工程の短縮と環境負荷の低減を実現するデザイン性に優れた外装用の加飾フィルムの販売を開始しました。包装関連は、物価高騰による食料品・日用品等の買い控えの影響を受けたものの、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力したほか、プラスチック成型品の増加などにより、前年を上回りました。生活空間関連は、優れた表面性能とデザイン性を持つ内装材「WS(Woody Series)」が、マンション向けや非住宅関連で堅調に推移したものの、国内新設住宅着工戸数(持家)の減少によって住宅向けが減少し、海外ではインフレによる消費の減退などもあり、前年を下回りました。飲料事業は、Webサイトや飲食店での販売が伸長したほか、自動販売機・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等の主要な販売チャネルで価格改定の効果などがあり、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連では、第1四半期連結会計期間より、シミックCMO株式会社を連結子会社とし、6月からシミックグループと共同で原薬から製剤までの一貫製造や付加価値型医薬品の開発などを行っています。その結果、部門全体の売上高は2,317億円(前年同期比6.7%増)となりました。営業利益は、原材料費や物流費等の上昇の影響を受けたものの、注力事業や収益性の高い製品が好調に推移し、51億円(前年同期比78.7%増)となりました。
(エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって堅調に推移しました。加えて、光学フィルムも、サプライチェーン全体の前年度の在庫調整の影響が一巡したことで増加に転じ、当事業全体で前年を上回りました。半導体関連は、半導体製造用フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みを確保したものの、半導体市場の減速によって半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、当事業全体で前年を下回りました。また、ナノメートル(10億分の1メートル)単位の微細な型を対象物に押し付けてパターンを形成するナノインプリント製品の量産に向けて、SCIVAX株式会社と資本業務提携を行い、今年4月に同社との合弁会社「ナノインプリントソリューションズ株式会社」を設立しました。DNPの最先端ナノインプリント用原版(マスターモールド)製造技術や量産・品質管理ノウハウ等の強みと、SCIVAX社の量産製造設備や装置設計技術等の強みを掛け合わせ、国内外のメーカーのニーズに対応していきます。その結果、部門全体の売上高は1,126億円(前年同期比7.8%増)となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連が好調に推移したものの、半導体関連の売上の減少に加え、原材料費やエネルギー費等のコスト上昇の影響もあり、250億円(前年同期比2.7%減)となりました。
当第2四半期連結会計期間末の資産、負債、純資産については、総資産は、有形固定資産、現金及び預金の増加や、有価証券、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ329億円増加し、1兆8,633億円となりました。負債は、長期借入金の増加や短期借入金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ50億円増加し、6,872億円となりました。純資産は、四半期純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ279億円増加し、1兆1,761億円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて134億円増加し、2,717億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前四半期純利益964億円、減価償却費262億円などにより384億円の収入(前年同期は259億円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出320億円、投資有価証券の売却による収入642億円などにより357億円の収入(前年同期は296億円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減少額81億円、自己株式の取得による支出376億円、配当金の支払額83億円などにより645億円の支出(前年同期は293億円の支出)となりました。
(3)研究開発活動当第2四半期連結累計期間におけるDNPグループ全体の研究開発費は17,784百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4)主要な設備前連結会計年度末において実施中及び計画中であった主要な設備の新設、除却等の計画について、当第2四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
鶴瀬工場の産業用高機能材関連製造設備の新設は、完成予定を2023年10月から2024年5月に変更しております。
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