【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況当第1四半期連結累計期間におけるDNPグループを取り巻く状況は、今年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」となったことを受け、個人消費やインバウンド需要が増加するなど、景気の緩やかな回復が見られました。一方で、地政学リスクの長期化やグローバルサプライチェーンの不安定化などにより、世界的なエネルギー価格・食料価格等の上昇や、欧米各国の金融引き締めなどが続き、依然として先行きは不透明な状況となっています。このように環境・社会・経済が世界規模で急激に変化するなか、DNPグループは、独自の強みを掛け合わせるとともに、社外の多様なパートナーとの連携を強化して、自らが「より良い未来」を実現していく企業活動を進めています。今年5月には、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念に基づき、長期を見据えた新しい中期経営計画を発表しました。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、その事業活動を支える経営資本の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、長期的な成長を目指します。事業戦略では、中長期の強靭な事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、2023年度からの新しい三つの事業セグメントで、注力事業領域を中心とした価値の創出を加速していきます。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長と株主還元に適切に配分していきます。また、非財務戦略では、「人的資本の強化」「知的資本の強化」「環境への取り組み」の三つの施策を中心に、長期的な成長を支える経営基盤を強化していきます。
その結果、当第1四半期連結累計期間のDNPグループの売上高は3,450億円(前年同期比3.2%増)、営業利益は132億円(前年同期比21.5%減)、経常利益は193億円(前年同期比14.3%減)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、580億円(前年同期比268.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、部門(事業セグメント)別の名称については、事業領域とその戦略をより明確化し、具体策の実行を加速させるため、当第1四半期連結累計期間から、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更しました。これにともない、快適な人々の暮らしに一層寄与していくため、「飲料事業」を関連の深い「ライフ&ヘルスケア部門」に移行しました。当第1四半期連結累計期間の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。
(スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧州・アジア市場で堅調に推移し、写真の撮影サービスも米国市場で好調に推移しました。情報セキュア関連は、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件に加え、ICカードの中でも1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが特に堅調に推移し、収益に寄与しました。マーケティング関連は、紙媒体の市場の縮小に対応するとともに、長年培ったマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めることで、前年並みを確保しました。出版関連は、電子書籍等の流通事業に加え、電子図書館サービスや図書館運営業務が堅調に推移したものの、雑誌等の紙媒体の市場縮小にともない印刷受注が減少し、前年を下回りました。コンテンツ・XRコミュニケーション関連では、インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用して、自治体等が抱える課題の解決を支援するパッケージサービスの提供を開始しました。その結果、部門全体の売上高は1,800億円(前年同期比3.7%増)となりました。営業利益は、出版関連の減収のほか、原材料や人件費関連のコスト上昇の影響を受けましたが、情報セキュア関連の売上増加や業務効率改善活動がプラスに働き、49億円(前年同期比4.2%増)となりました。
(ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチがIT機器向け・車載向けともに好調に推移しました。太陽電池関連も、世界的な需要の高まりによって封止材が増加しました。そのほか、自動車用の部材として、内装用に加えて、外装用の加飾フィルムの販売を開始しました。包装関連は、付加価値の高い製品に注力したほか、電子レンジ用パウチ等の軟包装や紙カップ等の紙器で価格転嫁を進めたことや、プラスチック成型品が増加したことなどにより、前年を上回りました。生活空間関連は、国内の新設住宅着工数の減少にともない住宅用の内外装材が減少したほか、海外でもインフレによる消費の減退や市中在庫の増加の影響を受けて北米市場向けが減少し、前年を下回りました。飲料関連は、Webや飲食店での販売が伸長したほか、自動販売機・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等の主要な販売チャネルで価格改定の効果などがあり、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連では、新たな価値の創出を目指して、シミックホールディングス株式会社との戦略的業務提携を進めています。今年5月には、シミックグループで医薬品の製剤開発・製造支援事業を営むシミックCMO株式会社の子会社化(資本参加)を行い、6月からシミックグループと共同で原薬から製剤の一貫製造や、付加価値型医薬品の開発などを開始しました。その結果、部門全体の売上高は1,092億円(前年同期比5.3%増)となりました。営業利益は、原材料やエネルギー等のコスト上昇の影響を受けましたが、注力事業や収益性の高い製品が好調に推移し、15億円(前年同期比42.7%増)となりました。
(エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが一時的な調整によって減少しましたが、光学フィルムはサプライチェーン全体の前年度の在庫調整の影響が一巡したことで増加に転じ、前年を上回りました。半導体関連は、半導体製造用フォトマスクは顧客企業の製品開発向けの需要もありましたが、半導体市場の減速の影響を受け、半導体パッケージ用部材のリードフレーム等が減少し、前年を下回りました。また、ナノメートル(10億分の1メートル)単位の微細な型を押し付けて対象物にパターンを形成する「ナノインプリント」製品の量産に向けて、SCIVAX株式会社と資本業務提携を行い、今年4月に同社との合弁会社「ナノインプリントソリューションズ株式会社」を設立しました。DNPの最先端ナノインプリント用原版(マスターモールド)製造技術、量産・品質管理ノウハウなどの強みと、SCIVAX社の量産製造設備、装置設計技術などの強みを掛け合わせ、国内外のメーカーからのニーズに対応していきます。その結果、部門全体の売上高は562億円(前年同期比2.1%減)となりました。営業利益は、メタルマスクやリードフレームなどの売上の減少により、124億円(前年同期比23.1%減)となりました。
当第1四半期連結会計期間末の資産、負債、純資産については、総資産は、流動資産のその他に含まれる未収金の増加や、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ212億円増加し、1兆8,516億円となりました。負債は、長期借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ116億円増加し、6,938億円となりました。純資産は、四半期純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ95億円増加し、1兆1,578億円となりました。
なお、DNPグループは、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環として、約3万人のグループ社員が生成AI(Generative AI)を業務で利用できる環境と体制を構築し、今年5月に運用を開始しています。生成AIの活用によって経営基盤を一層強化するとともに、DNP独自の次世代コミュニケーション支援技術の開発などを通じて、生活者や企業・団体等に新しい価値を開発・提供していきます。
(2)研究開発活動当第1四半期連結累計期間におけるDNPグループ全体の研究開発費は8,882百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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