【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるDNPグループを取り巻く状況は、新型コロナウイルスの感染防止対策と経済活動の両立が進むなど、国内景気に緩やかな持ち直しの動きが見られました。一方で、原材料やエネルギーの価格、物流コストの上昇などによって景況感の悪化が続きました。また、海外の多くの地域でも、インフレとそれに対する金融引き締め等の影響を受け、景気の減速が見られるなど、国内外で事業環境は厳しさを増しました。今後についても、インフレや為替相場の変動、ウクライナ情勢等の地政学リスク、コロナ禍の継続等により、依然として不透明な状況となっています。DNPグループは、こうした変化に迅速かつ柔軟に対応することに加え、自らが変革を起こすことで、持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らしの実現に向けた取り組みを推進しています。事業ビジョンに「P&Iイノベーション」を掲げ、DNP独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多くのパートナーとの連携を深めることで、社会の課題を解決するとともに、新しい価値の創出に努めています。特に、高い収益性と市場成長性を見込んでいる「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」関連のビジネスを「注力事業」と定めて、財務資本および人材や知的財産等の非財務資本といった経営資源を重点的かつ最適に配分しました。また、引き続き競争力強化のための構造改革にも取り組み、強い事業ポートフォリオの構築を推進したほか、今年度策定した「人的資本ポリシー」を中心に「人への投資」を積極的かつ具体的に実行し、価値創出の要となる「人的資本」の強化にも努めました。
その結果、当第3四半期連結累計期間のDNPグループの売上高は1兆235億円(前年同期比2.2%増)、営業利益は445億円(前年同期比9.5%減)、経常利益は576億円(前年同期比2.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は644億円(前年同期比7.3%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
〔印刷事業〕
(情報コミュニケーション部門)情報イノベーション事業は、商業印刷やビジネスフォーム等の紙媒体が減少したものの、金融機関向けのICカードやマイナンバーカード、BPO(Business Process Outsourcing)事業が増加し、当事業全体で増収となりました。イメージングコミュニケーション事業は、主力の米国をはじめ欧州・アジア市場において、写真の撮影・プリント用の部材とサービスが好調に推移し、増収となりました。出版関連事業は、雑誌をはじめとした紙媒体の印刷受注の減少に加え、紙と電子の両方に対応したハイブリッド型総合書店「honto」でも前年の巣ごもり需要からの反動減などがあり、減収となりました。その結果、部門全体の売上高は5,330億円(前年同期比2.8%増)となりました。営業利益は、原材料やエネルギーの価格、物流コスト等の上昇の影響を受けたものの、注力事業の売上増に加え、為替のプラス効果もあり、179億円(前年同期比0.6%増)となりました。
(生活・産業部門)包装関連事業は、生活者の身近にある食品や日用品などのパッケージを展開してきた強みを活かし、より快適な人々の暮らしをデザインしていく取り組みを強化しました。また「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING」の開発・販売などに努めた結果、フィルムパッケージが堅調に推移し、増収となりました。
生活空間関連事業は、住宅用内外装材が欧米向けで減少したものの、国内向けは増加したほか、自動車用内装材の加飾フィルムや、北米向けの内外装用焼付印刷アルミパネルも増加し、当事業全体で前年並みを確保しました。産業用高機能材関連事業は、世界的な半導体不足による自動車メーカーの生産調整が一段落したことにより、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが車載向けで増加したものの、IT向けはインフレ基調を背景としたスマートフォンやノートPC等の需要低迷や、それにともなう顧客企業での在庫調整の影響などにより減少し、当事業全体で減収となりました。その結果、部門全体の売上高は3,001億円(前年同期比3.3%増)となりました。営業利益は、原材料やエネルギー等のコスト上昇分の販売価格への転嫁に努めたものの、その効果が出るまでのタイムラグの影響があったことに加え、さらなる値上がりも相次ぎ、また収益性の高い注力事業も伸び悩んだため、56億円(前年同期比51.8%減)となりました。
(エレクトロニクス部門)ディスプレイ関連製品事業は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクがスマートフォンの有機ELディスプレイ採用比率の上昇にともなって堅調に推移しました。一方、光学フィルムが、巣ごもり需要からの反動減や世界的な消費低迷にともなうサプライチェーン全体での在庫調整を受けて減少し、当事業全体で減収となりました。電子デバイス事業は、半導体市場の拡大が減速する中、半導体パッケージ用部材のリードフレームが一部で在庫調整の影響を受けたものの、半導体製造用フォトマスクは顧客企業の製品開発向けの需要が堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。その結果、部門全体の売上高は1,532億円(前年同期比2.4%減)となりましたが、営業利益は、注力事業の落ち込みをフォトマスクなどの事業が補ったことに加え、為替のプラス効果もあり、360億円(前年同期比1.6%増)となりました。
〔飲料事業〕
(飲料部門)原材料価格の高騰などによるコスト上昇の影響を受ける中、大型PETボトル商品の出荷価格改定を実施しました。また、SDGsに対する生活者の意識が高まる中で、環境にやさしいラベルレス商品の展開や、牛乳消費量の拡大を目的として、北海道産乳を使用した商品の特設売り場を構築するなど、生活者の需要に応える商品の提供活動に注力しました。部門全体の売上高は、コンビニエンスストアでの販売が回復したほか、飲食店、Web販売の伸長により販売数量が増加し、388億円(前年同期比3.8%増)となりました。営業利益は、コストダウンや生産性向上など収益改善に努めたものの、原材料やエネルギー等の価格高騰の影響が大きく、5億円(前年同期比32.5%減)となりました。
当第3四半期連結会計期間末の資産、負債、純資産については、総資産は、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べ312億円減少し、1兆8,453億円となりました。負債は、繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ447億円減少し、6,835億円となりました。純資産は、利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ134億円増加し、1兆1,618億円となりました。
なお、DNPグループは今年度、「社員を大切にし、大切にした社員によって企業が成長し、その社員が社会をより豊かにしていく」という従来からの信念を「人財に関する普遍的・基本的な考え方」と位置づけ、「人的資本ポリシー」として策定しました。このポリシーを、ここ数年集中的に取り組んできた「人事諸制度の再構築」や、「DNPグループ健康宣言」「DNPグループダイバーシティ宣言」「DNPグループ安全衛生憲章」等の最上位の概念に位置づけ、新しい価値の創出に向けた最大の強みである社員に対する「人への投資」を積極的かつ具体的に実行し、「人的資本」を強化していきます。
(2)研究開発活動当第3四半期連結累計期間におけるDNPグループ全体の研究開発費は24,456百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(3)主要な設備前連結会計年度末において実施中及び計画中であった主要な設備の新設、除却等の計画について、当第3四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
鶴瀬工場の産業用高機能材関連製造設備の新設は、完成予定を2022年9月から2023年10月に変更しております。
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