【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
世界経済は、インフレや金利上昇によって米国ならびにユーロ圏において景気の減速傾向がみられるほか、中国でもゼロコロナ政策や不動産不況によって景気の減速が進んでいます。日本経済についても、海外経済の減速、円安や資源高の影響を反映し、景況感の先行きに対する不透明感が大きくなってきています。
このような事業環境の中で、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)は前年度より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の販売に注力して企業価値向上に努めております。
結果として当第3四半期連結累計期間の売上高は、372億15百万円(前年同期比13.1%増)となりました。損益については、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)や太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線に代表される高機能・独自製品に対する需要の強さが継続したものの、ステンレス鋼線の流通在庫の調整による販売量減少が操業度損増につながり減益を余儀なくされました。営業利益33億66百万円(同9.3%減)、経常利益34億88百万円(同8.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益24億29百万円(同9.0%減)となりました。
事業部門別の経営成績は次のとおりであります。
①ステンレス鋼線
ステンレス鋼線においては、コロナ禍からの受注急回復により2021年は建材用ビスや自動車用途ばね用材など幅広いアイテムが堅調に推移し、月当たり3,583トンと高水準の販売量となりました。2022年度第1四半期の販売量はニッケル価格上昇を見込んだ駆け込み需要が発生し月当たり3,555トンと高水準の推移を維持するも、第2四半期は仮需要の反動減によって月当たり3,269トンとなり、さらに第3四半期は自動車用途や建材用途の荷動き鈍化が鮮明となり月当たり3,023トン(第2四半期比7.5%減)となりました。一方、高合金線や、太陽光発電パネルや電子部品の製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線など高機能・独自製品の販売が堅調に推移しました。
なお、LMEニッケル価格については、2020年度第1四半期から右肩上がりの傾向が続きましたが、2022年7~9月の平均価格でポンド当たり10.00ドル(4~6月平均に比してポンド当たり3.17ドル下落)と落ち着いてきたものの、その後、10~12月平均価格でポンド当たり11.50ドルに上昇しました。さらに急激な円安進行によって(第3四半期平均142.6円/$、第2四半期平均比3.2円/$円安)、円貨ベースでは価格高止まりが継続しました。
結果として、当第3四半期連結累計期間におけるステンレス鋼線全体の販売数量は月当たり3,282トンに減少(前年同期比333トン減)したもののニッケル価格上昇に伴う単価値上げにより、売上高305億87百万円(同11.5%増)となりました。
海外現地法人であるTHAI SEISEN CO., LTD.及び大同不銹鋼(大連)有限公司についても、ステンレス鋼線の販売は前年同期比増収となりました。
②金属繊維
金属繊維においては、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要の強さは継続しています。その背景には、パソコンや家電に関する巣籠り需要は一巡するも、第5世代移動通信システム(5G)の立ち上がりやデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及によりデータセンター向けの半導体の需要が高水準で推移していることに加え、車載用半導体不足の状況が解消されていない点が挙げられます。また、経済安全保障上の重要性がクローズアップされ、半導体に対する大規模な投資が世界各地で進められています。さらに、社会のデジタル化に伴いデータ処理の高速化と機器の低発熱化・省電力化が必要となり、カーボンニュートラルに向けた高性能な半導体に対する需要が高まり、超精密ガスフィルター(NASclean®)の販売が伸びました。
ナスロン®フィルターについては、化合繊維用途や高機能フィルム用途のフィルターの販売を順調に伸ばした耐素龍精密濾機(常熟)有限公司が牽引するかたちで、前年同期比増収となりました。
結果として、当第3四半期連結累計期間における売上高が66億28百万円(前年同期比21.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高の相殺消去前の金額を記載しています。
①日本
主力のステンレス鋼線は第1四半期の販売量においてニッケル価格上昇を見込んだ駆け込み需要が発生し高水準を維持しましたが、第2四半期は仮需要の反動減が生じました。さらに第3四半期は自動車用途や建材用途の荷動き鈍化が鮮明となり、結果として、当第3四半期連結累計期間の販売量は、前年同期に比べ若干の減少となりました。損益については、太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線に代表される高機能・独自製品に対する需要の強さが継続したものの、ステンレス鋼線の流通在庫の調整による販売量減少が操業度損増につながり減益を余儀なくされました。金属繊維は半導体製造装置に組み込まれる超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要の強さが継続しました。この結果、売上高は332億63百万円(前年同期比12.5%増)、セグメント利益は29億19百万円(同13.1%減)となりました。
②タイ
ステンレス鋼線の販売数量は減少しましたが、ニッケル価格は高値水準を維持しており、売上高は43億2百万円(前年同期比7.4%増)、セグメント利益は3億12百万円(同0.1%減)となりました。
なお、THAI SEISEN CO.,LTD.の決算期を前年の2021年度より変更したため、前第3四半期連結累計期間は10カ月(3月~12月)となっております。
③中国・韓国
ナスロン®フィルターが堅調な需要に支えられ、売上高は14億63百万円(前年同期比65.1%増)、セグメント利益は1億69百万円(同95.9%増)となりました。
(2)財政状態の状況
当第3四半期連結会計期間末における総資産は521億12百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億81百万円増加しました。流動資産は棚卸資産や受取手形及び売掛金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ6億77百万円増加しました。固定資産は有形固定資産の増加などにより、2億3百万円増加しました。
負債は151億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億4百万円減少しました。流動負債は未払法人税等の減少などにより、前連結会計年度末に比べ7億69百万円減少しました。固定負債はその他(長期未払金)が増えたことなどにより1億65百万円増加しました。
純資産は369億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億86百万円増加しました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、4億41百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。