【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間末日(2022年12月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 業績の状況 当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、企業収益や個人消費において緩やかな改善の動きが継続する一方、世界的に進んだ金融引き締めの影響からくる金融資本市場の変動、物価やエネルギー価格の上昇など、景気の下振れリスクも見られました。海外経済も緩やかな回復の動きが継続しましたが、金融引き締めの影響や、長期化するウクライナ情勢に起因する物価やエネルギー価格の上昇が見られるなど、景気減速への警戒感が高まっています。
このような状況の中、当社グループは、国内においては競技スポーツ品を中心に販売が改善、海外においても米州や韓国を中心にゴルフ事業の好調が続きました。材料費の高騰や為替変動による仕入れ価格の上昇等の影響を、売上高の増加と経費コントロールにより最小化したことで、当社グループの経営成績は、売上高は225億5千万円増収(前年同期比18.1%増)の1,474億2百万円、営業利益は20億8千7百万円増益(前年同期比25.9%増)の101億5千4百万円、経常利益は21億9千4百万円増益(前年同期比26.2%増)の105億7千9百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は17億2千4百万円増益(前年同期比28.3%増)の78億2千2百万円と、いずれも第3四半期連結累計期間として過去最高となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。① 日本日本は、新型コロナウイルス感染症対策での行動制限が敷かれた前年同期と比較し、事業環境が改善しました。コロナ下でも健闘した野球やゴルフ、サッカーなどのアウトドアスポーツの商品に加え、バレーボールやラケットスポーツなどのインドアスポーツの商品も好調に推移しました。加えて、非スポーツ事業であるワークビジネス事業も好調に推移しました。 この結果、売上高は102億2千2百万円増収(前年同期比12.9%増)の897億6千8百万円、営業利益は16億2千5百万円増益(前年同期比64.6%増)の41億4千万円となりました。
② 欧州欧州は、第1四半期に大きな影響を受けたサプライチェーンの状況が改善したものの、物流費の高騰や為替変動によるコスト高の影響を受けました。そのような環境においても、主要事業であるランニングシューズの販売が回復しました。また、ゴルフクラブの販売も引き続き堅調に推移しました。この結果、売上高は30億8千万円増収(前年同期比21.8%増)の172億8百万円となり第3四半期連結累計期間として過去最高となりました。営業利益は2億4百万円減益(前年同期比15.4%減)の11億2千8百万円となったものの、第3四半期連結累計期間として過去最高益だった前年同期に次ぐ結果となりました。なお、当第3四半期連結累計期間における欧州各通貨の換算レートは以下のとおりであります。 英ポンド:163.57円(前年同期153.10円)、ユーロ(欧州支店):140.45円(前年同期 130.88円)、 ユーロ(子会社):136.04円(前年同期 129.96円)、ノルウェークローネ:13.60円(前年同期 12.70円)
③ 米州米州では、コロナ下でアウトドアのパーソナルスポーツであるゴルフ市場の拡大が見られた前年同期に比べ、輸送コストや物価の上昇、金融引き締めに伴う景気の減速といったマイナス要因がありました。そのようななかでも、引き続きゴルフクラブの販売が好調を維持しており業績を牽引しました。また、野球やバレーボールなどの競技スポーツ品の販売も堅調に推移しました。この結果、売上高は43億1千8百万円増収(前年同期比23.3%増)の228億5千3百万円、営業利益は、2億9千3百万円減益(前年同期比10.9%減)の24億9百万円となり、第3四半期連結累計期間として過去最高益だった前年同期に次ぐ結果となりました。なお、当第3四半期連結累計期間における米州各通貨の換算レートは以下のとおりであります。 米ドル:128.03円(前年同期 108.57円)、カナダドル:99.34円(前年同期 86.57円)
④ アジア・オセアニアアジア・オセアニアは、一部地域では供給制約の影響が継続したものの、多くの地域で新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されるなど、事業環境が改善しました。特に韓国、東南アジア、オーストラリアなどでゴルフクラブ、台湾でランニングシューズの販売が好調に推移し、業績を押し上げました。この結果、売上高は49億2千8百万円増収(前年同期比39.0%増)の175億7千1百万円、営業利益は8億6千6百万円増益(前年同期比61.7%増)の22億7千2百万円となり、ともに第3四半期連結累計期間としては過去最高を記録しました。なお、当第3四半期連結累計期間におけるアジア・オセアニア各通貨の換算レートは以下のとおりであります。 台湾ドル:4.37円(前年同期 3.88円)、香港ドル:16.34円(前年同期 13.98円)、 中国元:19.33円(前年同期 16.78円)、豪ドル:90.01円(前年同期 82.05円)、 韓国ウォン(100ウォンあたり):10.07円(前年同期 9.60円)、 米ドル(シンガポール):128.03円(前年同期 108.57円)
財政状態の分析は、以下のとおりであります。当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ209億5千4百万円増加し、1,873億1千万円となりました。現金及び預金が37億3千2百万円減少した一方、受取手形が18億5千6百万円、売掛金が14億9千1百万円、商品及び製品が151億4千8百万円、建物及び構築物(純額)が33億3千2百万円それぞれ増加したことが主な要因です。 負債は、前連結会計年度末に比べ97億9千4百万円増加し、636億8千7百万円となりました。短期借入金が73億5千4百万円、長期借入金が17億1千8百万円それぞれ増加したことが主な要因です。 純資産は、前連結会計年度末に比べ111億5千9百万円増加し、1,236億2千3百万円となりました。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の67.3%から65.7%へと1.6ポイント減少しました。
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。なお、当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号イ)、この基本方針を実現するための特別の取り組み(同条第3号ロ)を以下のとおり決議しております。
イ.当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針当社取締役会は、公開会社である当社における「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者」としてのあり方は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましく、その判断は最終的には当社の株主の意思に委ねられるべきものと考えます。一方で、スポーツ品の製造・販売やスポーツ施設の運営などの事業をグローバルで展開する当社グループを統括する当社の経営にあたっては、専門的ノウハウと豊富な経験、並びに国内外の顧客・従業員及び取引先やスポーツ産業特有の選手・チーム・団体や連盟等のステークホルダーとの間に築かれた関係への理解が不可欠であり、「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者」にこれらに関する十分な理解がなくては、株主価値を毀損する可能性があると考えます。一段と激化する競争の中で、当社グループはスポーツ市場で「特徴あるブランド」として存在し続けていかなければなりません。当社のブランド価値の核となるものは、「テクノロジー」「クラフトマンシップ」「品質」といった商品への信頼感であります。その信頼感の醸成のために、商品開発は当社のブランド価値向上の最も重要な要素であります。スポーツ品の研究開発においては、素材の基礎研究から製品化に至るまで多くの開発プロセスを経ており、長期の年月をかけ、その技術やノウハウの蓄積や技術者の育成を行ってまいりました。また、海外と国内の事業を連動させ、競争優位のビジネスモデルの構築を目指すため、海外生産拠点の最適化を図り、継続的な製品コストの低減を行うとともに、コアとなる生産技術水準を維持・継承することにも努めております。加えて、当社グループは顧客との情緒的な繋がりを強める企業文化や社風(当社の個性)を生み出す努力を継続してまいりました。従業員教育に努め、フェアプレー、フレンドシップ、ファイティングスピリットを大切にし、アンフェアな行為を許さない企業風土を有しております。また、長年にわたり地域スポーツ団体へのサポートや、指導者育成をはじめとしたスポーツ振興活動を行うなど社会貢献にも積極的に努めております。これらの企業文化や社風は、取引先、消費者、各種競技団体において当社グループと<ミズノ>ブランドに対する信頼感を高めてまいりました。以上のように、信頼という無形の付加価値がグループの社員と企業文化によって築かれ、ブランド資産となり企業価値の向上に大きな役割を果たしております。 当社では、100年以上にわたり築いてきたこれらの有形無形の財産が、当社の財務及び事業の方針の決定を支配することとなる大規模買付行為を行う者の下においても保全され、中長期的にその価値を向上させられるものでなければ、当社の企業価値・株主共同の利益は大きく毀損されることになると判断いたします。従って、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれがあると認められる場合には、そのような大規模買付行為は不適切であると考えます。
ロ.基本方針を実現するための当社の取り組み当社は、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、下記の長期経営方針に沿って企業価値向上の具現化を図っております。・未来へ続くブランドの共創・世界企業ミズノの実現・誇りある企業文化の育成創業以来、商品の品質・機能の充実を通してユーザー満足度を高める努力を行ってまいりましたが、スポーツの力で持続可能な社会を実現することを原動力として、全社員の手で、すべての顧客やステークホルダーと共にミズノブランドを創り上げてまいります。そのためには、グループ全体での企業価値の最大化を目的に国境を越えた連携でグローバル企業を目指し、さらに公正な企業活動のもと、挑戦的で活力のある企業文化を醸成してまいります。また、中長期的に以下のような重点目標を設定し、目標達成に向け経営資源を有効活用して企業価値を向上させていくことといたしております。
<海外市場でのシェア向上>海外市場におけるマーケティング活動のさらなる強化推進により、すでに評価の高い技術や機能性を強く訴求することが重要と考えています。高いレベルのパフォーマンスを追求するエンドユーザーが対象顧客である「専門店チャネル」を中心に、欧州・米州・アジア・オセアニアをはじめとする海外市場でのブランド認知度の拡大とシェアアップを図ってまいります。
<商品開発力の強化>ブランド差別化の源泉として、研究開発への人材と資金の投資を積極的に行ってまいります。すぐれた技術力により裏打ちされたスポーツシューズや、新素材の開発・採用に加え多様な機能性を発揮できる縫製技術を駆使するスポーツアパレルの領域は、グローバルでの市場規模が極めて大きく、これからの拡販余地が一層見込まれると考えております。従って、これらのプロダクト領域の開発に経営資源の配分ウエイトを高めてまいります。
<健康関連事業への取組み強化>日本国内は、少子高齢化が加速するにともないシニア層の人口構成比が増大し、人々の健康への意識が高まり、そのための活動の機会が増えると想定されます。日常的なスポーツやトレーニングへの志向に対する需要をしっかり受けとめ、競技スポーツで培った技術やノウハウをベースに、そのような需要に応える商品とサービスを提供してまいります。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は20億円であります。 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 主要な設備当第3四半期連結累計期間に完了した主要な設備の新設は次のとおりであります。
会社名
設備内容
事業所名
所在地
完成年月
美津濃株式会社
研究開発設備
イノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」
日本大阪
2022年11月
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因及び経営戦略の現状と見通し当社グループにとって経営成績に重要な影響を与える事項として、品質とコストの安定が挙げられます。製品の品質保持は、技術と知恵に裏打ちされた生産管理ノウハウに拠るものであり、それを包含したプロダクション機能の強化が重要と考えております。 また、海外の製造拠点におけるコストの上昇は深刻な問題であり、原材料価格の変動や現地労働市場の動向への絶え間ない注視と迅速な対処が求められます。加えて、直接的に輸入仕入コストに影響する為替変動については、適宜ヘッジを実行してコストの平準化に努めております。 さらに、当社グループでは、同じカテゴリーの製品を複数の製造委託先に委託することや、複数の国にわたって製造の拠点を分散させるなど、リスク管理、品質安定及びコスト抑制を常に図っております。
(7) 資本の財源及び資金の流動性についての分析当社グループは、以下の施策により、今後の成長に必要な資金調達能力を保持しております。 短期的な運転資金は、金融機関からの借入により、多様な資金需要に対応しております。設備投資などの長期の資金需要については、調達コストの抑制を図りつつ、取引の安定性を重視して金融機関との間で長期借入契約を締結しております。 また、当社では、グループ各拠点の資金ポジション(過不足状況)を把握し、拠点間の需給の調整や、相互融通による資金マネジメントにより有効活用しております。さらに、主要取引銀行との間で締結している当座借越契約は、万一の資金不足の際の安全弁として、流動性の備えとしております。
(8) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、現状の認識に基づいて将来の予測を行い、最良最善と判断するマーケティング戦略を具現化し、製販はじめグループ総合力の強化を図っております。特に販売政策を推し進めるにあたっては、国内・海外を問わず、市場への商品供給に最適な生産体制を構築することが重要と考えております。加えて、収益性の高いチャネルやエリアに対して効果的な経営資源の集中を行うため、投資バランスについて精緻な検討を進めることを経営方針に含めて実践しております。
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