【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度より、報告セグメントの区分を一部変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.事業セグメント」の「報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況当社グループはMissionに「人材能力とコア技術の多様性」を成長の原動力として、高い競争力を有する特徴ある製品・サービスの創出によりお客さま価値を実現し、「人々の豊かな生活」の実現に寄与することを掲げています。このMissionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)とし、バックキャストして2023年に目指すべき中期ビジョンとそこに至るための戦略を第7次中期経営計画として定めています。第7次中期経営計画では、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤の確立を目指しています。当連結会計年度におけるグローバル経済情勢は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による災禍から景気は回復の動きを見せましたが、インフレやそれに対する欧米諸国での金利引き上げなどにより、その動きは鈍いものとなりました。アメリカでは景気の緩やかな回復が続いた一方で、ヨーロッパではロシアによるウクライナ侵攻などにより景気が停滞し、中国ではCOVID-19に対する政策などにより景気回復が滞りました。わが国の経済については、供給制約の緩和に伴い、景気は緩やかに持ち直しました。このような状況の下、産業資材事業ではサステナブル資材のコスト高騰を反映した値上げを実施したことに加え加飾の製品需要は堅調に推移しました。ディバイス事業のスマートフォン向けの製品需要が前期から縮小した一方で、メディカルテクノロジー事業の開発製造受託(CDMO)などで製品需要が力強く推移した結果、当連結会計年度の売上高は前期比で増収となりました。利益は、スマートフォン向けの製品需要の縮小や、インフレによるエネルギーコストや人件費などの増加が収益性を圧迫しました。加えて、産業資材事業のサステナブル資材を生産・販売する欧州子会社について、金利引き上げに伴う割引率の上昇を主因とするのれんの減損損失を計上し、前期比で減益となりました。これらの結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は1,939億63百万円(前期比2.5%増)、利益面では営業利益は95億20百万円(前期比45.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は101億40百万円(前期比36.1%減)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
産業資材産業資材事業は、さまざまな素材の表面に付加価値を与える独自技術を有するセグメントです。プラスチックの成形と同時に加飾や機能の付与を行うIMD、IMLおよびIMEは、グローバル市場でモビリティ、家電製品などに広く採用されています。また、金属光沢と印刷適性を兼ね備えた蒸着紙は、飲料品や食品向けのサステナブル資材としてグローバルベースで業界トップのマーケットシェアを有しています。当連結会計年度においては、サステナブル資材の値上げや加飾の堅調な製品需要により、売上高は前期比で伸長しました。値上げなどにより収益性の改善は進んだものの、サステナブル資材の欧州子会社にかかる割引率の上昇を主因とするのれんの減損損失の計上に加えインフレによるエネルギーコストや人件費などの増加により、営業利益は前期比で減少しました。その結果、当連結会計年度の連結売上高は735億58百万円(前期比21.4%増)となり、セグメント利益(営業利益)は33億90百万円(前期比34.2%減)となりました。
ディバイスディバイス事業は、精密で機能性を追求した部品・モジュール製品を提供するセグメントです。主力製品であるフィルムタッチセンサーはグローバル市場でタブレット、スマートフォン、携帯ゲーム機、産業用端末(物流関連)、モビリティなどに幅広く採用されています。このほか、気体の状態を検知するガスセンサーなどを提供しています。当連結会計年度においては、産業用端末向けやモビリティ向け、ガスセンサーなどの製品需要が拡大した一方で、スマートフォン向けの製品需要が大幅に縮小しました。これらにより、売上高および営業利益は前期比で減少しました。その結果、当連結会計年度の連結売上高は799億51百万円(前期比17.5%減)となり、セグメント利益(営業利益)は83億89百万円(前期比41.4%減)となりました。
メディカルテクノロジーメディカルテクノロジー事業は、医療機器やその関連市場において高品質で付加価値の高い製品を提供し、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目指すセグメントです。心疾患向けを中心に幅広い分野で使われる低侵襲医療用の手術機器や医療用ウェアラブルセンサーなどの製品を手がけており、現在は欧米中心に大手医療機器メーカー向けの開発製造受託(CDMO)を展開するとともに、医療機関向けに自社ブランド品を製造・販売しています。当連結会計年度においては、主力のCDMOの製品需要が活発な事業環境の下で堅調に推移し、売上高は前期比で伸長しました。一方で、原材料費や人件費の増加などが収益性を圧迫しました。下期には収益性の改善が進んだものの、営業利益は前期比で減少しました。その結果、当連結会計年度の連結売上高は324億57百万円(前期比34.3%増)となり、セグメント利益(営業利益)は4億90百万円(前期比36.9%減)となりました。
当連結会計年度末における総資産は2,302億12百万円となり、前連結会計年度末(2021年12月期末)に比べ209億37百万円増加しました。流動資産は1,254億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ218億56百万円増加しました。主な要因は、現金及び現金同等物が119億95百万円、営業債権及びその他の債権が29億91百万円、棚卸資産が56億66百万円増加したこと等によるものです。非流動資産は1,048億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億18百万円減少しました。主な要因は、有形固定資産が9億21百万円、のれんが12億23百万円、無形資産が3億67百万円増加した一方、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の変動および売却等により、その他の金融資産が36億72百万円減少したこと等によるものです。なお、のれんは減損損失を認識した一方で為替換算の影響により増加しています。当連結会計年度末における負債は1,186億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ76億82百万円増加しました。流動負債は576億31百万円となり、前連結会計年度末に比べ50億57百万円増加しました。主な要因は、営業債務及びその他の債務が33億13百万円、借入金が28億79百万円増加したこと等によるものです。非流動負債は610億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億25百万円増加しました。主な要因は、繰延税金負債が13億94百万円減少した一方、社債及び借入金が48億43百万円増加したこと等によるものです。当連結会計年度末における資本は1,115億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ132億54百万円増加しました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が102億12百万円、為替換算等の影響によりその他の資本の構成要素が37億35百万円増加したこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ119億95百万円増加し、543億25百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得られた資金は120億39百万円(前期比35.9%減)となりました。これは税引前利益123億73百万円の計上に対して、主に棚卸資産の増加額として37億75百万円、法人所得税の支払額として50億1百万円計上した一方、減価償却費及び償却費として94億87百万円計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は43億85百万円(前期比36.2%減)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入として21億60百万円計上した一方、有形固定資産の取得による支出として54億54百万円計上したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果得られた資金は10億82百万円(前期比58.5%減)となりました。これは主にリース負債の返済による支出として19億15百万円、親会社の所有者への配当金の支払として19億92百万円計上した一方、長期借入れによる収入として50億円計上したこと等によるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
産業資材
74,752
23.4
ディバイス
79,695
△17.9
メディカルテクノロジー
33,100
34.3
その他
8,354
8.9
合計
195,902
3.1
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。2. 金額は、販売価格によっています。
b. 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
産業資材
75,550
2.8
24,743
18.3
ディバイス
84,657
△11.3
26,063
22.0
メディカルテクノロジー
35,249
25.2
16,281
39.5
その他
8,030
7.1
598
8.1
合計
203,487
△0.5
67,687
24.2
(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
産業資材
73,558
21.4
ディバイス
79,951
△17.5
メディカルテクノロジー
32,457
34.3
その他
7,995
5.6
合計
193,963
2.5
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
APPLE OPERATIONS LIMITEDおよびそのグループ会社
75,214
39.7
53,832
27.8
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容当社グループの当連結会計年度における経営成績につきましては、売上高は、前連結会計年度に比べ2.5%増加し1,939億63百万円となりました。このうち、海外売上高は1,712億80百万円であり、連結売上高に占める割合は88.3%です。海外売上高は主として産業資材、ディバイスおよびメディカルテクノロジーによるものです。また、売上原価は前連結会計年度に比べ4.6%増加の1,515億40百万円、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ14.7%増加の311億47百万円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費、その他の費用に含まれる減価償却費及び償却費は前連結会計年度に比べ2.5%増加の94億87百万円となりました。その他の収益・費用については、前連結会計年度は為替差益などを主としたその他の収益を11億85百万円計上する一方で、遊休資産諸費用などを主としたその他の費用を10億86百万円計上したのに対して、当連結会計年度では為替差益などを主としたその他の収益を9億49百万円計上する一方で、のれんの減損損失などを主としたその他の費用を26億46百万円計上しました。これらの結果、営業利益は95億20百万円(前期比45.2%減)となりました。なお、セグメント別の経営成績につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。金融収益・費用については、前連結会計年度は為替差益などを主とした金融収益を31億83百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を10億47百万円計上しました。また、当連結会計年度においても、為替差益などを主とした金融収益を37億68百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を9億16百万円計上しました。その結果、税引前利益は123億73百万円(前期比36.5%減)となりました。法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ38.4%減少の22億53百万円を計上しました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は101億40百万円(前期比36.1%減)となりました。また、基本的1株当たり当期利益は203円65銭(前期は318円35銭の基本的1株当たり当期利益)となりました。
財政状態の分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 資本の財源および資金の流動性当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。当社グループの主な資金需要は、事業上必要な運転資金や設備投資、M&Aによる投資です。これらの資金需要については調達規模や調達市場環境に応じて自己資金および金融機関からの借入や社債の発行等により対応します。また、金融コストの最小化と資金効率の向上のため、日本国内のグループ会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、当社への資金フローの集約により一元的な管理を行っています。
③ 経営方針・経営戦略等または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社グループは2021年1月から運用を開始した第7次中期経営計画において、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤の確立を目指しています。当社が重点市場と定める医療機器、モビリティ、サステナブル資材などにおいては、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充による成長を目指しています。IT機器市場においては製品需要の減少局面に対応し、収益性・効率性を追求しています。第7次中期経営計画の骨子は以下のとおりです。
1. 中期ビジョン(定性的内容)「グローバルシナジーの最大化による成長基盤の確立」
2. 中期ビジョン(定量的内容)2023年12月期に目指す主要な連結業績のビジョンは以下のとおりです。
ROE
9%以上
営業キャッシュ・フロー (3年間累計)
530億円
売上高
1,950億円
営業利益
120億円
※ 上記ビジョンは第7次中期経営計画の最終年度である2023年のあるべき姿を示したものであり、業績予想とは異なります。
④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記
2.作成の基礎(4)重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しています。
#C7915JP #NISSHA #その他製品セクター