【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
前連結会計年度
当連結会計年度
増減率
百万円
百万円
%
売上収益
936,039
1,098,664
17.4
タイヤ事業
795,045
939,941
18.2
スポーツ事業
101,429
116,597
15.0
産業品他事業
39,565
42,126
6.5
事業利益
51,975
21,963
△57.7
タイヤ事業
41,398
12,311
△70.3
スポーツ事業
8,604
8,943
3.9
産業品他事業
1,945
680
△65.0
調整額
28
29
-
営業利益
49,169
14,988
△69.5
親会社の所有者に
帰属する当期利益
29,470
9,415
△68.1
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
為替レートの前提
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
1米ドル当たり
110
円
132
円
22
円
1ユーロ当たり
130
円
138
円
8
円
当期の世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響からの回復傾向が見られるものの、地域によっては高水準のインフレとそれを抑えるための急激な金利上昇に加え、ウクライナ情勢による地政学的緊張など、経済成長への懸念が見られる状況が続いております。我が国においても、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ経済が回復していく期待があるものの、為替や物価の動向などで不確実性が高い状況です。
当社グループを取り巻く情勢につきましては、多くの市場で回復基調となるなど明るい兆しも見えたものの、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの高騰の影響を受けました。そのような中、当社グループは2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて経営基盤強化を目指す全社プロジェクトを強力に推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を目指して顧客ニーズに対応した高機能商品を開発、増販するなど、グローバル体制による競争力の強化に取り組みました。また、事業環境の急激な変化に対応すべく、2027年を目標年度とした中期計画の再編成を実施いたしました。
この結果、当社グループの連結業績は、売上収益は1,098,664百万円(前期比17.4%増)、事業利益は21,963百万円(前期比57.7%減)、営業利益は14,988百万円(前期比69.5%減)となり、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は9,415百万円(前期比68.1%減)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
(タイヤ事業)
タイヤ事業の売上収益は、939,941百万円(前期比18.2%増)、事業利益は12,311百万円(前期比70.3%減)となりました。
国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足等により自動車メーカーの減産が続いていることの影響を受け低調に推移しました。足元の販売状況は前期を上回るなどやや回復傾向がみられましたが、累計の販売は前期を若干下回りました。
国内市販用タイヤは、年初より好調に推移しておりましたが、年末にかけては降雪の遅れや物価上昇によるタイヤ消費マインド低下の影響がみられました。夏タイヤでは新商品のグローバルフラッグシップタイヤやプレミアム商品の販売に注力したほか、季節に左右されずに安全・安心を提供できる商品として好評を得ているオールシーズンタイヤは市場認知度が徐々に上がってきており販売を伸ばしました。冬タイヤの販売は年間ではほぼ前期並みとなりました。これらの結果、販売は前期とほぼ同等となりました。
海外新車用タイヤは、半導体不足影響による自動車メーカーの減産はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前期よりも販売が回復し、前期を上回りました。
海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では、中国でゼロコロナ政策の影響もあり販売が低調に推移し前期を下回りました。インドネシアやタイでは、前期に比べると新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されたこともあり回復傾向が見られ、下期、特に第4四半期に入りインフレや燃料価格上昇の影響などはあったものの通年の販売は前期を上回りました。欧州においては、インフレ進行の影響もありタイヤ需要が鈍化してきており、販売は前期を下回りました。米州地域においては、北米では積極的な値上げを行ったほか低採算品の販売を縮小したことなどにより販売数量は減少したものの製品構成を改善することができました。南米においては、上期は旺盛な需要を背景に販売を伸ばしましたが、下期に入り需要減退がみられたこともあり、ほぼ前期並みの販売となりました。
以上のほか、各市場で値上げを行ったことに加え、為替影響もあり、タイヤ事業の売上収益は前期を上回りましたが、海上輸送コスト、原材料価格およびエネルギーコストの高騰があり、事業利益については減益となりました。
(スポーツ事業)
スポーツ事業の売上収益は、116,597百万円(前期比15.0%増)、事業利益は8,943百万円(前期比3.9%増)となりました。
ゴルフ用品は世界的なゴルフ需要の高まりによる部材不足などはありましたが、北米、韓国中心に海外で大きく販売を伸ばし売上収益は前期を上回りました。また、テニス用品も同様に、売上収益は前期を上回りました。
ウェルネス事業では会員数が一定程度挽回したことなどから売上収益は前期を上回りました。
以上の結果、スポーツ事業の売上収益は前期を上回り、事業利益についても増益となりました。
(産業品他事業)
産業品他事業の売上収益は、42,126百万円(前期比6.5%増)、事業利益は680百万円(前期比65.0%減)となりました。
医療用ゴム製品事業は国内外ともに堅調に推移し、OA機器用ゴム部品事業は円安の影響もあり増収、制振事業やインフラ事業も増収となる一方で、生活用品事業は使い切り手袋の競争激化等により減収となりました。
以上の結果、産業品他事業の売上収益は前期を上回り、事業利益については減益となりました。
②財政状態の状況
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
百万円
百万円
百万円
資産合計
1,086,169
1,225,202
139,033
資本合計
513,543
563,863
50,320
親会社の所有者に
帰属する持分
501,540
546,200
44,660
親会社所有者帰属
持分比率(%)
46.2
44.6
△1.6
ROE(%)
6.2
1.8
△4.4
ROA(%)
5.0
1.9
△3.1
有利子負債
296,784
372,760
75,976
D/E レシオ(倍)
0.6
0.7
0.1
1株当たり親会社
所有者帰属持分
1,907円03銭
2,076円74銭
169円71銭
(注)ROAは連結ベースの事業利益に基づき算出しております。
当連結会計年度末の資産合計は、1,225,202百万円と前連結会計年度末に比べて139,033百万円増加しました。棚卸資産の増加などにより流動資産が90,818百万円増加しました。また、有形固定資産の取得及び為替換算影響などにより非流動資産は48,215百万円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、661,339百万円と前連結会計年度末に比べて88,713百万円増加し、有利子負債残高は、372,760百万円と前連結会計年度末に比べて75,976百万円増加しました。
当連結会計年度末の資本合計は563,863百万円と前連結会計年度末に比べて50,320百万円増加しました。うち親会社の所有者に帰属する持分は546,200百万円と前連結会計年度末に比べて44,660百万円増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は44.6%、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,076円74銭となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,247百万円減少し、当連結会計年度末には73,846百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、27,869百万円(前連結会計年度比35,221百万円の収入の減少)となりました。
これは主として、棚卸資産の増加51,758百万円、法人所得税の支払16,483百万円などの減少要因があったものの、税引前利益22,539百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上75,348百万円、営業債務及びその他の債務の増加10,205百万円などの増加要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、78,697百万円(前連結会計年度比24,674百万円の支出の増加)となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出67,324百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、41,556百万円(前連結会計年度は13,332百万円の資金の減少)となりました。
これは主として、短期借入金、長期借入金及び社債が純額で69,722百万円増加したほか、配当金の支払13,148百万円、リース負債の返済13,438百万円を行ったことなどによるものであります。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
タイヤ事業
754,464
113.6%
スポーツ事業
59,715
124.8%
産業品他事業
38,417
119.8%
合計
852,596
114.6%
(注)金額は、販売価格によっております。
②受注実績
当社グループの製品は、大部分が見込生産であり、ごく一部の製品(防舷材等)についてのみ受注生産を行っております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
タイヤ事業
939,941
118.2%
スポーツ事業
116,597
115.0%
産業品他事業
42,126
106.5%
合計
1,098,664
117.4%
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。
連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、会計上の見積りや前提が必要となりますが、当社グループは、過去の実績、又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しております。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。
また、新型コロナウイルス感染症による影響については、翌連結会計年度以降も一定程度継続するものの、各国の経済は緩やかに回復するものと想定しております。
当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの中期計画における数値目標は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載のとおりですが、当連結会計年度の経営成績に重要な影響を与えた主なものは、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増であります。
主力のタイヤ事業において、当連結会計年度においては、製品構成の良化及び販売価格への価格転嫁が増益要因となったものの、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増の影響があり、事業利益は前連結会計年度に比べ290億円の減益となりました。原材料面では、天然ゴム価格及び石油系原材料価格が上昇したことにより、減益要因となりました。販売面では、新車用タイヤでは世界的な半導体不足の影響があったものの、市販用タイヤ、新車用タイヤともにコロナ禍からの回復の中で販売を伸ばしたことや製品構成の良化により、数量・構成他は増益要因、原材料価格の上昇等に伴い価格改善を進めたことで価格も増益要因となりました。直接原価はエネルギーコスト上昇の影響が大きく減益要因となり、固定費及び経費も設備投資の増加や人件費の増加などにより減益要因となりました。為替については、円安傾向に推移したため、販売面では増益要因となったものの、米ドル建てコストが増加したことにより、減益要因となりました。
この結果、前連結会計年度に対し、販売価格で約689億円、数量・構成他で約137億円がそれぞれ増益要因となったものの、原材料価格で約688億円、海上運賃で約212億円、直接原価で約147億円、固定費で約19億円、為替で約27億円、経費で約23億円の減益要因となりました。高機能商品の更なる拡販、海外工場における生産性の改善など、収益力の向上を目指して様々な対策に取り組みましたが、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの負担増の影響が大きくタイヤ事業全体では前期の事業利益を下回りました。
スポーツ事業及び産業品他事業の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度 事業利益の増減要因
以上の結果、売上収益は1,098,664百万円と前連結会計年度に比べ162,625百万円(17.4%)の増収、事業利益は21,963百万円と前連結会計年度に比べ30,012百万円(△57.7%)の減益となり、売上収益事業利益率は前連結会計年度に比べ3.6ポイント低下し、2.0%となりました。
その他の収益及び費用では、減損損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ4,169百万円の減益となりました。
この結果、営業利益は14,988百万円と前連結会計年度に比べ34,181百万円(△69.5%)の減益となり、売上収益営業利益率は前連結会計年度に比べ3.9ポイント低下し、1.4%となりました。
金融収益及び費用では、為替差益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ11,970百万円の増益となりました。
以上の結果、税金費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は9,415百万円と前連結会計年度に比べ20,055百万円(△68.1%)の減益となりました。
中期計画における目標達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針及び経営戦略等」に記載の施策に取り組んでまいります。
③キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは50,828百万円のマイナスとなりましたが、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載の方針に基づき、配当金の支払13,148百万円を行いました。
今後、主に世界各地での増販に合わせた高機能タイヤの生産能力増強のための設備投資を行っていく方針でありますが、販売数量の増加と採算性の改善により営業活動によるキャッシュ・フローの拡大を実現しながら、必要に応じ金融市場や金融機関からの調達も活用するなど、「成長」と「流動性の確保並びに財務体質の向上」との両立を図りながら、2023年2月14日公表の中期計画で目標としているD/Eレシオ0.6の達成を目指してまいります。なお、当社と国内子会社、当社と一部の海外子会社との間でCMS(キャッシュマネジメントシステム)による資金融通を行っており、当社グループ内での資金効率向上を図っております。
また、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「A+(長期)、J-1(短期)」の信用格付を取得しております。