【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)の影響からの回復、行動制限の解除などにより正常化に向けた動きが活発となる一方で、ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレ進行及び急激な円安影響もあり、変動の大きな1年となりました。
国内石油製品販売量は、新型コロナによる行動制限が緩和されたことにより需要が回復し、ガソリン等主燃料及びジェット燃料を中心に増加しました。
原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻以来の需給タイト化及び各国の行動規制緩和による需要回復から一時上昇基調で推移しましたが、6月以降は海外の金融引き締め策による景気減退懸念や中国の新型コロナ再拡大を受けた都市封鎖の措置等により下落基調で推移しました。この結果、ドバイ原油価格は前期比14.4ドル/バレル上昇の92.5ドル/バレルとなりました。
円の対米ドルレートは、上半期は日米の金融政策の差を背景として円安ドル高が進行し、10月には150円を超える水準まで円安が進みましたが、年末にかけて米国連邦準備理事会による利上げペースの鈍化や日銀決定会合での長短金利操作の一部運用見直しの決定等により円高が進行しました。その結果、平均レートは前期比23.1円/ドル円安の135.5円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格の上昇等により、9兆4,563億円(前期比+41.4%)となりました。
売上原価は、8兆6,623億円(前期比+49.3%)となり、販売費及び一般管理費は、5,116億円(前期比+13.8%)となりました。
営業損益は、在庫評価影響が前年度の2,332億円の利益から大幅に減少し、557億円の利益となったことに加えて、燃料油セグメントにおける減益等により、2,824億円(前期比△35.0%)となりました。
営業外損益は、為替差益及び持分法投資損益の改善等により、391億円(前期比+57.5%)の利益となりました。その結果、経常損益は3,215億円(前期比△30.0%)となりました。
特別損益は、減損損失及び西部石油㈱の連結子会社化に伴い段階取得に係る差損が発生した一方、当社及び国内子会社の固定資産売却益等により、267億円(前期比+980億円)の利益となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、975億円(前期比△12.4%)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は29億円(前期比+6.4%)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,536億円(前期比△9.2%)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2022年1月~12月期、国内子会社は2022年4月~2023年3月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
(2022年3月期)
(2023年3月期)
増減額
増減率
燃料油
52,194
74,039
+21,844
+41.9%
基礎化学品
5,635
6,669
+1,034
+18.3%
高機能材
4,214
5,110
+896
+21.3%
電力・再生可能エネルギー
1,383
1,971
+588
+42.5%
資源
3,388
6,721
+3,333
+98.4%
その他・調整額
53
54
+1
+1.1%
合計
66,868
94,563
+27,695
+41.4%
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
(2022年3月期)
(2023年3月期)
増減額
増減率
燃料油
(在庫評価影響除き)
3,697
(1,365)
730
(173)
△2,967
(△1,192)
△80.2%
(△87.3%)
基礎化学品
82
101
+19
+23.2%
高機能材
171
170
△2
△1.0%
電力・再生可能エネルギー
△99
5
+104
-
資源
810
2,309
+1,499
+185.0%
その他
8
12
+4
+47.3%
調整額
△174
△242
△67
-
合計
(在庫評価影響除き)
4,495
(2,162)
3,084
(2,527)
△1,411
(364)
△31.4%
(+16.9%)
(注)セグメント利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向けた海外事業の強化と製油所・事業所のCNXセンター化に向けた取り組みを進めてきました。
国内製造供給においては、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みながら、燃料油の安定供給に努めました。
国内販売においては、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、2021年11月にリリースしたアプリ「Drive On」を積極展開しています。「Drive On」は、スマートよろずやのベースとなるアイテムであり、ここを起点にカーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus」、個人向けカーリース「オートフラット」、「らくらく安心車検」などに繋げていきます。また、2022年11月より決済機能「モバイルDrive Pay」を搭載し、お客様にとって「Drive On」一つで、メンテナンス予約、給油決済、クーポン利用等が可能となりました。
海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
以上の結果、原油価格の上昇等もあり、燃料油セグメントの売上高は7兆4,039億円(前期比+41.9%)となりました。セグメント損益は、製品輸出マージンが拡大する一方、在庫評価影響の大幅な減少及びナフサ、LPガスなどの主要製品以外のマージン縮小や自家燃コスト増加及び原油価格の下落に伴うタイムラグ等の減少要因により、730億円(前期比△80.2%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は557億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
既存事業における競争力強化の一環として、ENEOS(株)より譲受した愛知事業所のパラキシレン製造装置は、2022年度に稼働を開始しました。余剰ガソリン基材の活用によるケミカルシフトを更に推進していきます。
また2050年CN実現に向けて、「バイオ原料化によるバイオ化学品供給」と「資源循環システム確立」の取り組みを推進しています。
「バイオ原料化によるバイオ化学品の供給」については、バイオ化学品の認証システムである「ISCC Plus」を、徳山事業所(2022年3月)・千葉事業所(2023年3月)にて取得しました。外部調達したバイオナフサをベースに、マスバランス方式でのバイオ化学品の供給を開始しています。
「資源循環システム確立」に向けては、使用済みプラスチックの油化(ケミカルリサイクル)技術の開発に取り組んでおり、基本設計を完了しました。2025年度の商業運転を目指していきます。
以上の結果、ナフサ価格が上昇したことなどにより、基礎化学品セグメントの売上高は6,669億円(前期比+18.3%)となりました。セグメント損益は、パラキシレン及びミックスキシレンの需給がタイト化し製品マージンが回復したこと等により、101億円(前期比+23.2%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
国内では環境対応意識の高まりの中、業界初となる無リン無灰を実現したディーゼルエンジンオイルを上市しました。また、海外においては出光ブランド製品の拡販をすすめ、収益への貢献を果たしました。
(機能化学品事業)
ウクライナ情勢、コロナ禍による需要減、物流混乱があったものの、徹底した採算改善活動によって収益力強化に努めました。エンプラ・コンパウンド事業では、高付加価値分野での拡販に注力、マレーシアでSPS2号機の建設終了し試運転を開始、2023年度から商業運転を開始します。市況影響の強い汎用製品では、中国での大幅な能力増強により需給は悪化、中期的に厳しい事業環境が継続すると予想され、競争力が劣るアクリル酸事業から撤退、また水添石油樹脂事業では、日本の設備を停止し、競争力のある台湾の合弁事業へ生産集約を進めました。更に、想定よりも早く汎用化が進み事業性が見込めないLMPP事業からも撤退を決め、2023年度内に設備を停止するなど、大胆な事業の集中と選択を行い筋肉質な体質への変革を進めました。
(電子材料事業)
ディスプレイの高性能化及び多様な省資源・資源循環に繋がる有機EL材料、酸化物半導体の事業を展開しました。有機ELでは、蛍光型青色材料に関する新技術を開発しその顧客提供を本格化しました。また日本・韓国・中国の三つの製造拠点を通じた製品の安定供給を継続しています。
(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))
国内において、アスファルト需要は堅調に推移しており、社会インフラ資材の安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく製品開発や、低炭素・カーボンニュートラルに貢献する技術開発を行いました。海外事業においては、東南アジアの高速道路管理者と共同で行った試験施工結果を踏まえ、当社製品が舗装工事の発注仕様に追加されました。
(農薬・機能性飼料事業)
2022年7月のアグリバイオ事業部吸収分割による事業承継を完了し、㈱エス・ディー・エス バイオテックにおいて米国で畜産資材1剤の販売を開始、国内農薬登録の適用拡大を殺菌剤12件、生物農薬殺菌剤を1件、緑地管理用除草剤を1件実施し、製品の更なる普及拡大を進めて参りました。
以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、5,110億円(前期比+21.3%)となり、セグメント損益は、機能舗装材事業においてアスファルトの原料となる重油留分価格が低下したことよる増益の一方、機能化学品の一部製品において前年度の市況高の反動を受けた減益及び電子材料事業の販売数量減少に伴う減益等により、170億円(前期比△1.0%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
既存事業における安定的な収益基盤の確立に取り組むとともに、発電事業者として再生可能エネルギー電源の保有を促進します。また、蓄電池の活用等を通じたソリューション事業における実証と展開を進めています。国内においては、開発を進めていた徳山バイオマス発電所の営業運転が開始されました。また、「idemitsu CN支援サービス」の提供を開始し、自治体や企業の使用する電力のCN化やEV導入をサポートする取り組みを展開しています。海外においては、米国で、開発を進めていた大型太陽光発電所が無事完工を迎えました。また、経済成長に伴い需要が伸長する東南アジアにおいては、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置に積極的に取り組んでいます。
以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,971億円(前期比+42.5%)となりました。セグメント損益は、電力事業における自社電源での供給・販売を基本とした取り組みによる収益改善などにより5億円(前期比+104億円)となりました。
(オ)資源セグメント
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、安定生産を継続しました。欧州では持分法適用会社である㈱INPEXノルウェー及び現地法人を通じて、ノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱を行いました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域における新規発電所の建設を決定し、その他国内での新規案件の開発を進めました。
石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は、ノルウェー子会社の持分法適用会社への変更などの影響により434億円(前期比△42.4%)となりました。セグメント損益は、ベトナムガス田の生産数量増により増益となる一方、ノルウェー子会社の持分法適用会社化による減益等により、328億円(前期比△15.3%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
石炭事業では、構造改革の一環としてエンシャム鉱山の売却を決定し、競争力の高いボガブライ鉱山での安定供給継続に特化することとしました。
その他事業については、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラント建設をベトナムで開始するとともに、ボイラー排ガス中のCO₂を固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)を用いたCO₂再資源化(カーボンリサイクル)の事業化検討を進めました。また、石炭鉱山操業で培ってきた事業基盤を活かした、レアメタル鉱山事業への参入に加え、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討、グリーン水素・アンモニアプロジェクトにおける共同検討・調査の開始等、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
石炭事業・その他事業の売上高は、6,287億円(前期比+138.7%)となりました。セグメント損益は、石炭価格の上昇等により1,981億円(前期比+368.4%)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は6,721億円(前期比+98.4%)、セグメント損益は2,309億円(前期比+185.0%)となりました。
(カ)その他セグメント
その他セグメントの売上高は、54億円(前期比+1.1%)となり、セグメント損益は12億円(前期比+47.3%)となりました。
(キ)研究開発及び新ビジネス開発
(全固体電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体電池のキーマテリアルである固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、2021年11月に、商業生産に向けた小型実証設備の第1プラントを千葉事業所内に建設、稼働を開始しました。また、第2プラントも2023年度の稼働開始に向け建設中です。
②財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
前連結会計年度
(2022年3月期)
当連結会計年度
(2023年3月期)
増減
流動資産
23,681
27,321
+3,640
固定資産
22,331
21,333
△998
資産合計
46,012
48,654
+2,642
流動負債
20,613
21,640
+1,027
固定負債
11,034
10,721
△313
負債合計
31,647
32,361
+714
純資産合計
14,365
16,293
+1,928
負債純資産合計
46,012
48,654
+2,642
ア.資産の部
当期末における資産合計は、資産売却等による固定資産の減少の一方で、西部石油㈱の連結子会社化及び在庫単価の上昇による棚卸資産の増加等により、4兆8,654億円(前期末比+2,642億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、原油価格の下落により買掛債務が減少する一方、有利子負債の増加等により、3兆2,361億円(前期末比+714億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、配当金の支払いがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益等により、1兆6,293億円(前期末比+1,928億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の30.7%から当期末は33.2%(前期末比+2.5ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.9(前期末:0.9)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
前連結会計年度
(2022年3月期)
当連結会計年度
(2023年3月期)
営業活動によるキャッシュ・フロー
1,461
△328
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,116
701
財務活動によるキャッシュ・フロー
△300
△904
現金及び現金同等物に係る換算差額
31
172
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)
76
△360
現金及び現金同等物の期首残高
1,310
1,390
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の
増減額(△は減少)
5
-
現金及び現金同等物の期末残高
1,390
1,031
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,031億円となり、前期末に比べ、360億円減少しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
棚卸資産の増加に伴う必要運転資金の増加及び激変緩和措置に伴う支払消費税の増加等により、328億円の支出となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
製油所設備の維持更新投資等による有形固定資産の取得の一方、固定資産・投資有価証券の売却及び差入保証金の戻り等により、701億円の収入となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払いや子会社株式の取得等により、904億円の支出となりました。
④生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
燃料油
4,400,182
171.4
基礎化学品
586,487
108.6
高機能材
310,472
133.4
電力・再生可能エネルギー
2,160
26.3
資源
455,697
170.2
その他
-
-
合計
5,755,000
159.1
(注)上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
燃料油
7,403,861
141.9
基礎化学品
666,889
118.3
高機能材
511,006
121.3
電力・再生可能エネルギー
197,070
142.5
資源
672,077
198.4
その他
5,376
101.1
合計
9,456,281
141.4
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績の分析
経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。
設備投資資金については、エネルギー安定供給のための維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、一歩先のエネルギーや多様な省資源・資源循環ソリューション及びスマートよろずや等の成長分野への進出・事業拡大のための投資、石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債・コマーシャルペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様なリソースから効果的に組み合わせて調達しています。また、カーボンニュートラル・循環型社会への実現に向けた取り組みを推進するために、トランジションボンドを発行するなど、資金調達手段の多様化を図っています。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社4社と共同で、取引金融機関2行とマルチカレンシーによる特定融資枠契約360百万米ドルを締結しており、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現を達成するため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)の主な減少要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急落を受け、前年度に比較し在庫評価影響の大幅な減少
(イ)燃料油セグメントにおける製品マージンの縮小
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
2019年
3月期
2020年
3月期
2021年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
自己資本利益率(ROE)(%)
9.5
-
3.0
21.8
16.8
投下資本利益率(ROIC)(%)※
-
-
2.8
6.8
5.9
ネットD/Eレシオ(倍)
1.0
1.0
1.0
0.9
0.9
自己資本比率(%)
29.1
29.6
29.1
30.7
33.2
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
投下資本利益率(ROIC):(在庫影響除き税後営業利益+持分法投資損益)/(株主資本+有利子負債)
※2022年度より算定方法を変更しています。その結果、2021年3月期及び2022年3月期の数値も変更しています。
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。
4.2020年3月期以前の投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。
当社が2022年11月に公表した「中期経営計画(2023~2025年度)」における経営目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)中期経営計画(2023~2025年度)」に記載しています。
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