【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日(2023年5月11日)現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2023年1月1日から2023年3月31日)における世界経済は、インフレを抑制するための政策引き締め、最近見られる金融情勢の悪化、地政学的分断の拡大を反映した景気の減速が見られはじめています。
我が国においては、新型コロナウイルス感染対策の緩和を背景に経済活動は緩やかに持ち直しの動きが見られた一方で、資源・エネルギー価格の上昇などが製造業におけるコストアップの要因となるなど、依然として先行きが不透明な状況が続いています。
このような状況のなか、主力の合金鉄事業において前年同期と比べ国際製品市況は下落したものの、為替が円安傾向で推移したため、当第1四半期連結累計期間の売上高は、20,719百万円(前年同期比4.8%増)となりました。一方、利益面においては、燃料市況高騰による電力コストの上昇などが減益要因となり、営業利益は1,394百万円(同62.2%減)、経常利益は537百万円(同86.8%減)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は146百万円(同95.2%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(合金鉄事業)
当第1四半期連結累計期間における世界の粗鋼生産量は、中国では前年同期を上回ったものの、その他の国々においては下回ったことで4億5,930万トンとなり、前年同期と比べ0.1%減少しました。また、日本においては経済活動は緩やかに持ち直しの動きが見られたものの、粗鋼生産量は設備投資が足踏み状態にあることや半導体不足による自動車生産の低迷などが影響し2,162万トンとなり、前年同期と比べ6.0%減少しました。
このような状況のなか、主力製品である高炭素フェロマンガンは、需給が緩和基調で推移したため、前年同期と比べ国際製品市況は安値で推移しました。一方、期首在庫影響による原材料使用価格の上昇及び電力コストの上昇により、製造原価は上昇しました。
海外持分法適用会社においても、製品市況の下落の影響を受け業績は前年同期を下回りました。
以上の結果、合金鉄事業の業績は、売上高は為替が円安傾向で推移したことで前年同期を上回ったものの、経常利益は前年同期を下回りました。
(機能材料事業)
酸化ほう素は、ディスプレイ用ガラス基板向けの売上が堅調に推移し、水素吸蔵合金及びリチウムイオン電池正極材受託事業など車載用電池材料の販売数量は概ね前年同期並みで推移しました。一方、電動車の一部減産による車載用電子部品材料向け酸化ジルコニウムの販売数量の減少と電力コストの上昇が収益悪化要因となりました。
また、昨年11月に生産を再開したフェロボロンは、当第1四半期においては操業の立ち上げに遅れがあったものの、第2四半期以降は順調な操業を行うものと想定しています。
以上の結果、機能材料事業の業績は、売上高・経常利益ともに前年同期を下回りました。
(環境事業)
環境システム事業につきましては、イオン交換樹脂塔の再生需要が堅調に推移したことから、売上高・経常利益ともに前年同期を上回りました。
中央電気工業㈱の焼却灰溶融固化処理事業につきましては、焼却灰4号溶融炉(EM4)が稼働を開始したことから処理量が増加し、売上高は前年同期を上回りました。一方、電力コストの上昇により経常利益は前年同期を下回りました。
以上の結果、環境事業の業績は、売上高は前年同期を上回ったものの、経常利益は前年同期を下回りました。
(電力事業)
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を利用した売電事業につきましては、第1四半期は冬期渇水期であり例年流量の低下により発電量が減少するため経常損失となりますが、当期は比較的気象条件に恵まれたため、売電量は前年同期より増加しました。
以上の結果、電力事業の業績は前年同期を上回りました。
(2)財政状態の状況
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ4,591百万円減少し100,352百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末と比べ2,438百万円減少し54,502百万円、固定資産は前連結会計年度末と比べ2,152百万円減少し45,850百万円となりました。流動資産は、商品及び製品が900百万円増加した一方、受取手形及び売掛金が1,343百万円減少しました。固定資産は、投資有価証券の減少により、総じて減少しました。
当第1四半期連結会計期間末の負債合計は、支払手形及び買掛金の減少により、前連結会計年度末と比べ1,735百万円減少し33,983百万円となりました。なお、有利子負債(短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、リース債務(流動負債)、長期借入金、リース債務(固定負債))は、1,357百万円増加し22,409百万円となりました。
当第1四半期連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,855百万円減少し66,369百万円となりました。これは主に、利益剰余金の減少及び自己株式の増加(純資産の減少)によるものであります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第1四半期連結累計期間において、当社の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当社グループは、今日まで蓄積を重ねてまいりました製品・技術・サービスをもって合金鉄事業・機能材料事業・環境事業・電力事業における各種製品を改良・開発し、鉄鋼・電池材料・電子部品材料などの業界を始め、各方面の需要家の皆様の要請にお応えしてまいりました。
当社グループは2021年~2023年を実行期間とする「第8次中期経営計画」を策定し、その達成に向け取組んでおります。
「既存ビジネスの強化」では、合金鉄事業の安定化と合金鉄以外の生産能力増強に取組みました。
合金鉄事業では、徳島工場への生産集約と大手需要家との価格決定方式の変更のふたつの施策を実行することで、収益の安定化を実現させました。
合金鉄以外では生産能力拡充による事業拡大として、機能材料事業では、需要家からの供給要請に応え休止していたフェロボロン生産の再開、電子・電池材料では自動車の電動化や自動運転化、或いは、通信インフラの高度化関連の需要に応えるため生産能力を増強しました。また、環境事業では、パーフェクトリサイクルによる循環型社会への貢献を目指し、焼却灰4号溶融炉を新設し増強を行いました。
今後、安定稼働による安定生産を前提とし、新たに戦力となった生産能力を生かして新規顧客の開拓による販売増加に努め、成長のための基盤を一層強化してまいります。
「新規ビジネスへの挑戦」では、将来の収益源となる新たな技術・製品の創出のため研究開発への取組みを強化しております。更に研究開発のスピードを加速させるため、大学や優れた技術を持つ研究機関など社外パートナーとの共創にも注力し、共同研究を推進しております。また、今後は潜在的なパートナーとなりうる企業とのM&Aの検討やベンチャーキャピタルへの投資による当社グループ事業とのシナジー創出機会の探索も進めてまいります。加えて、これまで以上に事業探索や企業連携、人材確保などの施策を積極的に実行に移すことで、新規ビジネスの具体化を加速させてまいります。
「事業環境変化に適応する強い企業体質の構築」では、社会課題の解決と持続的成長の継続を両立させるため、地球温暖化対策に関しては、2022年3月に策定した「2050年カーボンニュートラル実現に向けた方針」に沿って、生産活動での省エネを積極的に進めるとともに、再生可能エネルギーの活用や革新的技術の開発・導入により、CO2排出量削減を図ってまいります。
また、DXでは基幹システムの更新、IT人材育成など基盤を強化しつつ、生産性や業務効率の飛躍的向上に加え、新しいビジネスモデルの構築に関する検討に積極的に取組み、更には人材育成、ダイバーシティ、サステナブル調達などへの対応も着実に進めてまいります。
第8次中期経営計画の最終年度(2023年)の目標である「連結売上高600億円、連結経常利益60億円」につきましては、足元の状況では達成が難しい状況ではありますが、各事業の諸施策を着実に実施することで、株主価値の最大化を追求してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは「特徴ある製品・技術・サービスを開発・提供し、持続的な成長を通じて、豊かな未来の創造に貢献する」という経営理念を掲げております。
この理念の下、当社グループはサステナビリティを重要な経営戦略と位置付け、サステナビリティ経営方針を策定いたしました。
この方針の元「事業活動を通じた社会課題の解決への貢献」と「持続的な成長を通じた企業価値向上」の両立を目指し、以下を重要課題と捉え取組んでまいります。
・2050年当社カーボンニュートラルへの挑戦
・持続可能な社会の実現に貢献する新たな事業機会の創出
・人的資本を重視した経営
・サステナブル調達
・ステークホルダーとのコミュニケーションを通じた中長期的な企業価値向上
TCFDに基づく気候変動関連の情報開示につきましては、2023年3月発行の統合報告書及び当社ウェブサイトにおいてその取り組みの概要を開示しております。
なお、会社法施行規則第118条第3号に定める「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」の概要は下記の通りです。
①会社の支配に関する基本方針
当社は、安定的かつ持続的な企業価値の向上が当社の経営にとって最優先の課題と考え、その実現に日々努めております。従いまして、当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の経営理念、企業価値のさまざまな源泉、当社を支えるステークホルダーとの信頼関係を十分に理解し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に確保、向上させる者でなければならないと考えております。
上場会社である当社の株式は、株式市場を通じて多数の株主、投資家の皆様による自由な取引に委ねられているため、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様のご意思に基づき決定されることを基本としており、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるか否かの判断も、最終的には株主の皆様全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。
しかしながら、当社株式の大規模な買付行為や買付提案の中には、明らかに濫用目的によるものや、株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれのあるもの等、その目的等からみて企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれをもたらすもの、対象会社の取締役会や株主が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な情報や時間を提供しないもの等、不適切なものも少なくありません。このような大規模な買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に反する大規模な買付等に対し、これを抑止するための枠組みが必要不可欠と考えます。
②会社の支配に関する基本方針の実現に資する取組み
当社では、多数の投資家の皆様に長期的に当社への投資を継続していただくため、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるための取組みとして、役員・社員一丸となって次の施策に取り組んでおります。これらの取組みは、上記①の会社の支配に関する基本方針の実現にも資するものと考えております。
経営基盤強化による企業価値向上への取組み
当社グループは、2021年~2023年を実行期間とする「第8次中期経営計画」を策定し、実行に移しております。
本中期経営計画は、様々なリスクに適切に対応し、あらゆるチャンスを成長機会につなげることで、当社グループの10年後の成長につなげるべく、「既存ビジネスの強化」「新規ビジネスへの挑戦」及び「事業環境変化に適応する強い企業体質の構築」の3つを柱として推進しております。
「既存ビジネスの強化」では、製品・原料市況の乱高下の影響を大きく受ける合金鉄事業の収益安定化のため、最適生産体制の確立や一部顧客との間で新たな価格スキームの締結を行うなどの諸施策を実行しております。結果として、当社収益の大幅悪化を回避できることとなり、今後はこれまで以上に多くの経営資源を「新規ビジネスへの挑戦」に投入してまいります。
また、「事業環境変化に適応する強い企業体質の構築」を図るためには、サステナビリティが重要な経営戦略であることを再確認し、2022年1月に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。本委員会では以下の5点を重要課題と捉え、課題へのグループ一丸となった取り組み通じて、「事業活動を通じた社会課題の解決への貢献」と「持続的な成長を通じた企業価値向上」の両立を目指してまいります。
重要課題
・2050年カーボンニュートラルへの挑戦
・持続可能な社会の実現に貢献する新たな事業機会の創出
・人的資本を重視した経営
・サステナブル調達
・ステークホルダーとのコミュニケーションを通じた中長期的な企業価値向上
③会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要
当社は、会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるための取組みとして、2023年2月24日開催の当社取締役会において、「当社株式の大規模買付行為への対応策」(以下「本プラン」といいます。)の継続を決議し、2023年3月30日開催の第123回定時株主総会において、本プランの継続について承認を得ております。
本プランの対象となる当社株式の大規模買付行為とは、特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする当社株券等の買付行為、または結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる当社株券等の買付行為をいい、かかる買付行為を行う者を「大規模買付者」といいます。
本プランにおける、大規模買付時における情報提供と検討時間の確保等に関する一定のルール(以下「大規模買付ルール」といいます。)は、(イ)事前に大規模買付者が当社取締役会に対して必要かつ十分な情報を提供し、(ロ)必要情報の提供完了後、対価を現金のみとする公開買付けによる当社全株式の買付けの場合は最長60日間、又はその他の大規模買付行為の場合は最長90日間を当社取締役会による評価・検討等の取締役会評価期間として設定し、取締役会評価期間、また株主検討期間を設ける場合は取締役会評価期間と株主検討期間が経過した後に大規模買付行為を開始する、というものです。
本プランにおいては、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守した場合には、原則として当該大規模買付行為に対する対抗措置は講じません。但し、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しなかった場合、遵守しても当該大規模買付行為が当社に回復し難い損害をもたらすなど、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく損なうと判断する場合には、必要かつ相当な範囲で新株予約権の無償割当等、会社法その他の法律および当社定款が認める検討可能な対抗措置を講じることがあります。
このように対抗措置を講じる場合、その判断の客観性及び合理性を担保するために、取締役会は対抗措置の発動に先立ち、当社の業務執行を行う経営陣から独立している社外取締役、社外監査役または社外有識者から選任された委員で構成する独立委員会に対して対抗措置の発動の是非について諮問し、独立委員会は対抗措置の発動の是非について、取締役会評価期間内に勧告を行うものとします。当社取締役会は、対抗措置を発動するか否かの判断に際して、独立委員会の勧告を最大限尊重するものとします。
なお、本プランの有効期限は2026年3月開催予定の当社第126回定時株主総会の終結の時までとなっております。本プランは、有効期間中であっても、
(イ)当社株主総会において本プランを廃止する旨の決議が行われた場合
(ロ)当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合
には、その時点で廃止されるものとします。
④本プランが会社の支配に関する基本方針に沿い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致し、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないことについて
本プランは、
(イ)買収防衛策に関する指針の要件を充足していること
(ロ)株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること
(ハ)株主意思を反映するものであること
(ニ)独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示
(ホ)デッドハンド型やスローハンド型ではないこと
等の理由から、会社の支配に関する基本方針に沿い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を損なうものではなく、かつ、当社経営陣の地位の維持を目的とするものではないと考えております。
(6)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は148百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7)生産、受注及び販売の状況
当第1四半期連結累計期間において、前年同期比で、機能材料セグメントにおける生産の実績に著しい増加がありました。これは、富山工場においてフェロボロンの生産を開始したことによるものです。