【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間の我が国経済は、経済活動の正常化が更に進んだことから、個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向が続きました。海外経済は、米国では良好な雇用情勢を背景に個人消費が底堅く推移しましたが、欧州では金利上昇に伴う景気の下押し圧力が依然として強く、景気は足踏み状態が続いております。中国では金融緩和等により景気の押上げが図られているものの、不動産市場の低迷などにより国内需要は伸び悩んでおり、輸出の低迷と相まって景気回復ペースは一段と鈍化しております。
このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に掲げる「安定収益基盤の確立」に向けた重点施策を着実に実行するとともに、引き続きものづくり力の強化や販売価格の改善に努めてまいりました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比558億円増収の5,986億円となり、営業利益は、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴う鉄鋼メタルスプレッドの改善、機械での売上高の増加、電力での神戸発電所4号機の稼働や燃料費調整の時期ずれ影響の改善などにより、前年同期比259億円増益の340億円となりました。経常利益は建設機械における北米でのエンジン認証に関する補償金収入の剥落などもあり、前年同期比59億円増益の359億円に留まり、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比44億円増益の254億円となりました。
当第1四半期連結累計期間のセグメント毎の状況は次のとおりであります。
なお、従来、「その他」の区分に含めていたコベルコ科研は、所管の変更に伴い、当第1四半期連結会計期間より「機械」セグメントに含めております。以下の前年同四半期比較については、前年同四半期の数値を所管変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
[鉄鋼アルミ]
(鉄鋼)
鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が増加した一方、自動車向け以外の需要が減少したことから、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比4.0%増の2,186億円となりました。経常利益は、在庫評価益の剥落があったものの、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴う鉄鋼メタルスプレッドの改善により、前年同期比7億円増益の104億円となりました。
(アルミ板)
アルミ板の販売数量は、自動車向けが増加した一方、需要の調整局面にあるIT・半導体向けの大幅な減少により、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比2.7%増の498億円となりました。経常損益は、販売数量の減少や在庫評価益の縮小などにより、前年同期比56億円悪化の19億円の損失となりました。
鉄鋼アルミ全体では、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比3.7%増の2,684億円となり、経常利益は、前年同期比49億円減益の85億円となりました。
[素形材]
素形材の販売数量は、造船向け需要を取り込んだ鋳鍛鋼、一般産業向け需要が回復したチタン、自動車向け需要が回復したサスペンションで前年同期を上回りました。一方、IT・半導体向け需要の減少により、銅板、アルミ鋳鍛で前年同期を下回りました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比5.3%増の692億円となり、経常利益は、販売数量の増加や販売価格改善の進展があったものの、固定費を中心としたコストの増加、在庫評価益の縮小などにより、前年同期比12億円減益の8億円となりました。
[溶接]
溶接材料の販売数量は、東南アジアでの需要回復が遅れていることから、前年同期を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前年同期を上回りました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は前年同期比11.5%増の229億円となり、経常利益は、販売価格改善の進展などにより、前年同期比2億円増益の5億円となりました。
[機械]
当第1四半期連結累計期間の受注高は、石油化学やエネルギー分野を中心に堅調に推移した一方、樹脂機械で大型案件を受注した前年同期と比較すると10.0%減の514億円となり、当第1四半期連結会計期間末の受注残高は2,144億円となりました。
また、既受注案件の進捗により、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比29.7%増の500億円となり、経常利益は、前年同期比30億円増益の43億円となりました。
[エンジニアリング]
当第1四半期連結累計期間の受注高は、還元鉄関連事業での海外大型案件を受注したことや廃棄物処理関連事業での堅調な受注などにより、前年同期比89.2%増の843億円となり、当第1四半期連結会計期間末の受注残高は4,326億円となりました。
また、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比21.6%増の349億円となり、経常利益は、前年同期比5億円増益の15億円となりました。
[建設機械]
油圧ショベルの販売台数は、欧州でのエンジン認証問題により前年同期に比べて微減となり、クローラクレーンの販売台数は、欧州でのエンジン認証問題や生産・出荷のずれなどにより、前年同期を下回りました。
当第1四半期連結累計期間の売上高は、販売台数の減少があるものの、為替レートが円安に推移したことに伴う為替換算差などにより、前年同期並の883億円となり、経常利益は、円安による輸出採算の改善の一方、エンジン認証問題に関する補償金収入の剥落などにより、前年同期比77億円減益の14億円となりました。
[電力]
販売電力量は、神戸発電所4号機の稼働により、前年同期を上回りました。販売電力単価は発電用石炭価格が下落したものの、燃料費調整の時期ずれ影響により、前年同期を上回りました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比36.5%増の781億円となり、経常利益は、神戸発電所4号機の稼働や、神戸発電所3・4号機における燃料費調整の時期ずれ影響の改善などにより、前年同期比173億円増益の173億円となりました。
[その他]
当第1四半期連結累計期間の売上高は、前年同期比29.2%増の24億円となり、経常利益は、前年同期比3億円減益の13億円となりました。
②資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当第1四半期連結会計期間末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,376億円、返済期限が1年を超えるものが4,552億円となっております。
当第1四半期連結会計期間末現在の実績
(単位:億円)
前連結会計年度末
当四半期連結会計期間末
有利子負債 ※1
5,905
5,928
有利子負債 ※2
(プロジェクトファイナンスを含む)
8,618
8,641
株主資本
8,382
8,536
※1 当第1四半期連結会計期間末現在の有利子負債の内訳
(単位:億円)
合計
1年内
1年超
短期借入金
322
322
-
長期借入金
4,956
1,053
3,902
社債
650
-
650
合計
5,928
1,376
4,552
※2 当第1四半期連結会計期間末現在の有利子負債の内訳(プロジェクトファイナンスを含む)
(単位:億円)
合計
1年内
1年超
短期借入金
322
322
-
長期借入金
7,669
1,337
6,331
社債
650
-
650
合計
8,641
1,660
6,981
(2)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発費は、89億円であります。
また、当第1四半期連結累計期間における研究開発活動の状況の変更の内容は、次のとおりであります。
[素形材]
チタンでは、燃料電池セパレータ用チタン圧延材「NCチタン」が、トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ自動車)とともに「市村産業賞 功績賞」を受賞しました。NCチタンは、チタン表面の緻密な酸化皮膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有させており、プレス成形でも皮膜が剥離せず、燃料電池内部の腐食環境でも表面導電性を維持できます。これにより、従来セパレータ製造において、律速となっていたプレス成形後の表面処理を省略できるプレコート型セパレータの実用化を可能としました。またトヨタ自動車とともに、コイル状チタン材への連続表面処理技術を確立し、NCチタンの量産化を実現しました。NCチタンはトヨタ自動車の「MIRAI」に独占的に供給されています。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へと適用を拡大し、水素社会実現に貢献してまいります。
[溶接]
溶接システムでは、新たな立向溶接法SESLA™へ対応した新エレクトロスラグ溶接装置SG-3用の「リモートモニタリング機能」を開発しました。溶接装置から離れた場所で、溶接波形のモニタリングや溶接完了予定時間の表示が可能となります。SG-3は、SESLA™法に加え、以前より定評のあるエレクトロガスアーク溶接を用いるSEGARC™法も適用可能であり、トーチや水冷摺動銅板の動作をすべてデジタル制御することで、溶接品質の向上に加え、操作性向上による作業負荷軽減と技能レス化を実現しており、造船分野への採用決定や、エネルギー分野でも洋上風力発電への採用の検討が進んでいます。モニタリングデータの活用により施工管理・品質管理を効率化することで、お客様の製造現場での、更なる生産性向上に貢献してまいります。
[エンジニアリング]
(株)神鋼環境ソリューションでは、長崎県長崎市にDX推進の新たな拠点として「デジタルイノベーションLab長崎」を新設することを決定しました。技術系大学等から優秀なIT関連人材を多く輩出し、IT企業も充実している長崎県に新拠点を設置し、2024年7月より事業を開始する予定です。新拠点を設置することで、研究開発等におけるDX推進(データ分析による課題提起・ソリューション提供等)を加速するとともに、産学官での連携によるイノベーション創出や更なる変革へ挑戦していきます。
[建設機械]
ショベルでは、コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は、(株)安藤・間と、これまでの共同研究や現場実験を踏まえ、1人の作業管理者が2台の自動運転ショベルの運転管理を同時に行う実証実験を行いました。今回の実験では、ダンプトラックへの土砂積込みの作業時間について、有人運転(1人で1台)と自動運転で比較を行い、1人で2台の自動運転ショベルを管理することにより、1人あたりの土砂積込み量が有人運転時より約3割増加することを確認しました。このことで、建設現場での省人化と生産性の向上に寄与すると考えています。本件は、初期段階での結果であり、今後、お客様の現場毎に動作を最適化することで生産性をさらに向上できると考えています。
また、コベルコ建機は遠隔就労を実現するプラットフォーム「JIZAIPAD」の開発を手掛ける(株)ジザイエ(以下、ジザイエ)に対し、Human Augmentation(人間拡張)を投資テーマに掲げるベンチャーキャピタルである15th Rock Fund等とともに出資を行いました。今回の出資に合わせ、コベルコ建機はジザイエと遠隔技術分野における業務提携を行いました。本業務提携により、コベルコ建機は、自身が長年培ってきた遠隔技術分野に関する技術・ノウハウをジザイエに提供し、ジザイエが他業種展開も可能な知的財産・技術として発展させて活用することによって成長し、その技術を当社K-DIVE®等へ還元すること、さらには本取組みによって豊かな社会の建設に貢献していくことを期待しております。
クレーンでは、国土交通省が従前よりBIM/CIM※の活用を推奨しており、2022年度に「建築BIM加速化事業」を創設、更に2023年4月以降に入札を開始する小規模を除く、全ての公共工事へのBIM/CIM原則適用を開始しました。これらによりBIM活用の流れは加速しており、その潮流にこたえるべく、コベルコ建機は、安全性と生産性向上に貢献するためのツールとして、クレーン施工計画の策定支援ソフト『K-D2 PLANNER®』の一般販売を開始しました。開発にあたり多くのお客様のご意見を元に製品改良を重ね、直感的な操作性や現場へ施工計画を共有するためのプレゼンテーションに加え、クレーンブームのたわみ・接地圧等のシミュレーションや最適クラスのクレーン選定等、建機メーカならではの機能も実装しました。これらにより施工計画が容易に作成でき、運用経費の削減に繋がるとともに、現場の安全性と生産性の向上が期待できます。
※BIMはBuilding Information Modeling、CIMはConstruction Information Modelingの略を示します。