【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国の経済は、原材料や原油価格の上昇、急激な円安ドル高の進行等がみられたものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大の後に行動制限が緩和されたことを背景に、個人消費の緩やかな回復が続きました。世界経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進み持ち直しつつありますが、急激な物価上昇や供給面の制約等により景気の下振れリスクが高まり、回復ペースは鈍化しました。
このような状況の中、当社グループは、2020年2月に策定した「第7次中期経営計画(2020年12月期~2022年12 月期)」において3つの基本戦略(ブランド戦略、基幹商品戦略、地域戦略)を掲げており、その最終年としてこれらの基本戦略を軸とし、事業の成長はもちろん、私たちの存在意義である「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」を実現させるため、各施策の実行に取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間におきましては、売上高は、中国事業では期初から続いている新型コロナウイルス感染症の拡大および第2四半期に発生した上海ロックダウンなどのゼロコロナ政策の影響により厳しい状況が続いている一方、シンガポール事業およびランシノ事業は好調に推移したことに加え、為替の影響もあり、707億7百万円(前年同期比1.8%増)となりました。利益面におきましては、世界的な原材料費や輸送費の高騰等による原価率の悪化に加え、各国でのリオープン(経済活動の再開)が一層進んだことによる販管費の積極的な使用等もあり、営業利益は91億3百万円(前年同期比12.8%減)、経常利益は107億74百万円(前年同期比8.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は69億48百万円(前年同期比3.3%減)となりました。
当第3四半期連結累計期間の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは次のとおりです。
・米ドル:128.31円(108.54円)
・中国元: 19.38円( 16.77円)
注:( )内は前年同期の為替換算レート
当社グループの報告セグメントは、2020年12月期より「日本事業」、「中国事業」、「シンガポール事業」及び「ランシノ事業」の計4セグメントとしております。
各セグメントにおける概況は以下のとおりです。
① 日本事業
当事業は、「ベビーケア」、「子育て支援」、「ヘルスケア・介護」等で構成されております。当事業の全体の売上高は267億26百万円(前年同期比8.7%減)、セグメント利益は売上高の減少に伴う総利益の減少や調達価格の高騰等により、前年同期を下回る9億24百万円(前年同期比45.2%減)となりました。
ベビーケア(育児及び女性向け用品)につきましては、コロナ第7波による外出自粛や、物価高の進行による消費者の低価格志向等の影響もあり、売上高は前年同期を下回りました。当社の基幹商品である哺乳器やさく乳器に関しては、2月のリニューアル商品を中心に引き続き堅調に推移しています。一方、おしりふき等の一部の消耗品では、価格競争激化の影響等もあり前年同期を下回りました。スキンケアカテゴリにつきましても、海外からの需要が落ち込んだことなどもあり販売は苦戦しましたが、新たな商品価値の提案として、環境にやさしい紙製のキューブパックを採用したおしゃれなデザインパッケージの保湿ローションを発売するなど、ラインナップを拡充しています。その他、8月にはピジョン初となる赤ちゃんの防災用品シリーズ「sonaetta(ソナエッタ)」や、9月には全自動で除菌から乾燥まで行える哺乳びんスチーム除菌・乾燥器 「POCHItto(ポチット)」を全国のベビー用品専門店などで新発売しています。
また、ダイレクト・コミュニケーションの一環として、母乳育児について楽しく学べるピジョンのマタニティセミナー「おっぱいカレッジ」のライブ配信を行い、合計で2,400名以上の方にご視聴いただいた他、医療従事者向けセミナーもオンラインで開催し、1,100名を超える方にご参加いただいています。withコロナ時代のママやパパの不安を和らげるため、WEBやSNSを通じた双方向コミュニケーションの活用やサポートコンテンツの充実にも継続して取り組んでおり、妊娠・出産・育児シーンの女性を応援するサイト「ピジョンインフォ」の内容におきましても、お客様に寄り添った一層の充実を進めてまいります。
ヘルスケア・介護用品では、前期より総利益率の改善を目指した取扱商品の見直しに取り組んでおり、売上高は前年同期から減少していますが、利益率改善の効果が徐々に見られています。引き続き、小売店及び介護施設等への営業活動強化、介護サービスの品質向上など施策実行を徹底してまいります。
子育て支援におきましては、当第3四半期連結累計期間において事業所内保育施設等64箇所にてサービスを展開しており、今後もサービス内容の質的向上を図りながら事業を展開していきます。
② 中国事業
当事業の売上高は262億20百万円(前年同期比5.1%減)、セグメント利益は前年同期を下回る81億円(前年同期比11.6%減)となりました。期初より続いている中国国内の新型コロナウイルス感染症の拡大によって第2四半期には上海ロックダウンが発生しましたが、6月にロックダウンが解除され、7月以降は当社の製造・営業活動は回復しており、国内の物流混乱等はおおむね収束しています。一方で、中国では現在も厳しいゼロコロナ政策が継続されています。
中国本土においては、前年9月にリニューアル・先行発売を開始している哺乳器「自然実感」(日本における商品名:母乳実感®)シリーズのオンラインチャネルにおける新商品切り替えは完了しており、オフラインチャネルにおいては順次切り替えを進めています。スキンケアカテゴリにおいては、赤ちゃんの肌研究を活かして3才以上を対象としたキッズ向けスキンケア商品の販売を開始し、中国市場における展開カテゴリを拡張しました。
また、当事業におきましては、本年度より北米でのピジョンブランドによる育児用品販売事業も開始しており、オンラインを中心とした情報発信や専門家とのコミュニケーションを通して、認知度及びブランド価値の向上に努めています。
今後は、ECプラットフォームを活用した消費者との双方向コミュニケーション活動をより充実させると共に、病産院活動等の強化も引き続き実施し、お客様との接点を増やし、事業拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
③ シンガポール事業
当事業の売上高は107億72百万円(前年同期比17.5%増)、セグメント利益は19億78百万円(前年同期比46.1%増)となりました。
当事業が管轄するASEAN地域及びインドでは、コロナ禍からの回復傾向もあり、重点国であるインド、インドネシアをはじめ、シンガポールやマレーシア等において売上高及び利益を伸ばしています。哺乳器カテゴリでは、中国、日本に続き、8月より主要国において、当社の主力商品である哺乳器「SofTouch」(日本における商品名:母乳実感®)シリーズのリニューアル発売を開始した他、ガラスのような透明感を実現した新素材のプラスチック「T-Ester(ティーエスター)」を使用した哺乳器を順次発売しています。また、スキンケアカテゴリにおいては、新スキンケアシリーズ「ナチュラル・ボタニカル・ベビー」を15以上の国と地域で展開し、各国の主要小売において販売を伸ばしています。
今後も上位中間層以上をターゲットとした商品の開発・投入を推進するとともに、当社ブランドの市場浸透を目指して積極的な営業・マーケティング活動を展開してまいります。
④ ランシノ事業
当事業の売上高は123億84百万円(前年同期比29.5%増)、セグメント利益は4億76百万円(前年同期比33.7%減)となりました。
主力市場である北米、欧州では物流混乱による商品入荷及び出荷遅延傾向が継続しています。そのような中、北米では主力である乳首ケアクリームやさく乳器の販売が堅調に推移したことに加えて、昨年発売を開始した産前・産後ケアも売上を伸ばしており、売上高は現地通貨で前年同期を上回りました。一方、ドイツやイギリス等欧州の一部では、物価高騰による消費低迷がみられたことなどもあり、売上高は現地通貨で前年同期を下回りました。
利益につきましては、海上輸送費をはじめとした物流費高騰が続いており、原価や発送費用等に影響が出ている他、新商品開発や積極的なマーケティング費用投下もあり、前年同期を下回りました。
今後は一層の事業拡大に向け、商品ラインアップの拡充やEコマースの強化、各地域の消費者行動に合わせたマーケティング活動、ブランド強化等の取り組みを進めてまいります。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における資産の残高は、1,039億17百万円となり、前連結会計年度末と比べ58億74百万円の増加となりました。流動資産は25億64百万円の増加、固定資産は33億10百万円の増加となりました。
流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が22億円減少したものの、受取手形及び売掛金が16億29百万円、商品及び製品が18億62百万円それぞれ増加したことによるものです。
固定資産の増加の主な要因は、建物及び構築物が12億85百万円、有形固定資産のその他が17億5百万円それぞれ増加したことによるものです。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債の残高は228億85百万円となり、前連結会計年度末と比べ16億53百万円の増加となりました。流動負債は16億7百万円の増加、固定負債は46百万円の増加となりました。
流動負債の増加の主な要因は、支払手形及び買掛金が16億84百万円増加したことによるものです。
固定負債の増加の主な要因は、退職給付に係る負債が1億46百万円増加したことによるものです。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産の残高は810億31百万円となり、前連結会計年度末と比べ42億21百万円の増加となりました。
純資産の増加の主な要因は、利益剰余金が20億33百万円減少したものの、為替換算調整勘定が57億45百万円増加したことによるものです。
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3)経営方針・経営戦略等
当社グループは、2020年2月に「第7次中期経営企画(2020年12月期~2022年12月期)」を発表しており、以下の3つのテーマを掲げ、グループの事業拡大と経営品質向上を目指しております。
① Pigeon Wayをベースとしたブランド戦略と事業戦略の一体化を推進することで、経済価値の最大化と同時に、育児に関する社会課題の解決に向けた取組みを強化し、「商品を買ってもらう」から、「ビジネスに共感し、選んでもらう」ブランドへの進化を目指す。
② グローバルで自社の優位性を活かせる基幹商品カテゴリーでの成長を加速させ、競合他社との一層の差別化を図り、強固な収益基盤を構築する。
③ 4事業体制および各事業への権限移譲を推進し、現場での意思決定を迅速化することで、各地域の市場特性に合わせた「開発・生産・販売」サイクルを構築し、スピードを持った事業運営を行う。
第7次中期経営計画においては、上記3つのテーマおよび各事業戦略に基づく諸施策を確実に実行してまいります。
「日本事業」におきましては、既存カテゴリーの市場シェア向上及び新規商品カテゴリーの育成、また引き続き成長分野として位置付けております海外市場に関しましては、「中国事業本部」「シンガポール事業本部」「ランシノ事業本部」の3つの事業部体制を一層推進し、各事業運営上の迅速な意思決定を促すとともに、海外既存市場での事業拡大、深耕に加えて、新規市場への積極的参入を図ることで、業績のさらなる拡大を目指してまいります。
加えて、さらなる企業価値向上のため、当社グループ全体を統括するグローバルヘッドオフィス(GHO)の機能をさらに強化してまいります。これにより、地域別に事業の運営と成長を担う4つの事業部門(日本事業、中国事業、シンガポール事業及びランシノ事業)の役割と責任を明確にし、グローバルヘッドオフィスと連携することで、永続的な成長の実現を図ってまいります。
(4)優先的対応すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はなく、また、新たな発生もありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は27億64百万円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因
世界全体では新型コロナウイルス感染症の新規感染者数の減少や、ワクチン接種率の向上等を背景にリオープン(経済活動の再開)が進んでいる一方、外国為替市場の動向等の見通しは現時点においても不透明であり、当社グループの業績に与える影響額の算定は非常に困難な状況であります。2022年2月15日に発表いたしました当社グループの通期業績予想につきましては、第2四半期連結累計期間の業績を踏まえ、2022年8月9日付にて、売上高950億円(前回予想比3.7%減)、営業利益120億円(前回予想比15.5%減)、経常利益130億円(前回予想比9.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益85.5億円(前回予想比10.0%減)に修正しております。
#C7956JP #ピジョン #その他製品セクター