【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当第2四半期累計期間における事業環境は、新型コロナウイルス感染症の流行やロシア・ウクライナの政情不安などにより、引き続き、グローバル規模で経済活動に制約を伴う状況が続いております。新型コロナウイルス感染症の流行については、一部諸外国では沈静化の兆しが見られるものの、依然として先行きが不透明な状況が継続しております。当社が属する医療業界においても、国内では7月~8月にかけて新型コロナウイルス感染症が再拡大し、移動制限や患者の受診抑制などにより、治験などの研究開発活動に制約を伴う状況も散見されました。このような業界動向は、当社が現在実施中のパイプライン開発のための研究開発活動やライセンス活動の進捗に、少なからず影響を与えております。 上記事業環境の下、当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、人工知能(AI)ソリューション)を、医師と共に医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献し続けるべく、事業活動を行っております。
当第2四半期の経営成績、財政状態の状況及び研究開発活動は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の状況当第2四半期累計期間における事業収益は、RSAI02慢性透析システム支援における契約一時金の受領により20,000千円(前年同四半期31,061千円)となりました。また、営業損失は、RS8001月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PMDD)治療薬やRS5614慢性骨髄性白血病(CML)治療薬などに係る研究開発費59,897千円を含む事業費用172,845千円を計上したことにより152,845千円(前年同四半期営業損失91,482千円)、経常損失は受取利息9千円などを計上したことにより152,831千円(前年同四半期経常損失119,199千円)、四半期純損失は、法人税、住民税及び事業税978千円を計上したことにより153,809千円(前年同四半期純損失119,344千円)となりました。なお、当社の事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況(資産)当第2四半期会計期間末の流動資産は、前事業年度末の2,428,148千円と比べて34,963千円減少し、2,393,185千円となりました。これは主として研究開発費や人件費などの支払いにより、現金及び預金が42,016千円減少したことなどによるものです。また、当第2四半期会計期間末の固定資産は、前事業年度末の9,880千円と比べて873千円減少し、9,006千円となりました。これは主として有形固定資産に係る減価償却費の計上によるものです。この結果、資産合計は、前事業年度末の2,438,028千円と比べて35,836千円減少し、2,402,191千円となりました。
(負債) 当第2四半期会計期間末の流動負債は、前事業年度末の37,942千円と比べて19,735千円増加し、57,677千円となりました。これは主として、RS5614慢性骨髄性白血病(CML)治療薬、RS5614悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬及びRSAI03糖尿病治療支援システムに係るAMEDからの研究資金の受領により、前受金が21,233千円増加したことなどによるものです。また、当第2四半期会計期間末の固定負債は、前事業年度末の199,228千円と比べて98,237千円増加し、297,466千円となりました。これは、RS8001月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PMDD)治療薬に係るAMEDからの長期借入金の増加によるものです。この結果、負債合計は、前事業年度末の237,171千円と比べて117,972千円増加し、355,144千円となりました。
(純資産) 当第2四半期会計期間末の純資産は、前事業年度末の2,200,857千円と比べて153,809千円減少し、2,047,047千円となりました。これは四半期純損失153,809千円を計上したことによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況当第2四半期会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末の2,005,816千円に比べ42,016千円減少し、1,963,800千円となりました。当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況と主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期累計期間の営業活動資金の支出額は139,933千円(前年同四半期は25,591千円の支出)となりました。これは主として、税引前四半期純損失152,831千円の計上及び前受金増減額21,233千円の計上などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期累計期間の投資活動資金の支出額は320千円(前年同四半期は収支なし)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出320千円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期累計期間の財務活動資金の収入額は98,237千円(前年同四半期は1,663,586千円の収入)となりました。これは、長期借入れによる収入98,237千円を計上したことによるものです。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第2四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動当社は、医薬品・医療機器・人工知能(AI)を活用した医療ソリューションなど、多様なモダリティ(治療様式)にわたる複数パイプラインの研究開発を進めており、当第2四半期会計期間における主要パイプライン開発の進捗及びこれまでの開発実績は以下のとおりです。なお、当第2四半期累計期間における研究開発費は59,897千円であり、当第2四半期累計期間末日の当社研究開発従事者人員は5名(臨時雇用者を含む)です。
a.RS5614(PAI-1阻害薬)(a) 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬後期第Ⅱ相医師主導治験は、慢性期CML患者33例を対象にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とRS5614を併用し、RS5614投与開始後48週における累積の分子遺伝学的に深い奏効(DMR:がんの原因遺伝子が検出されない状態)達成率(※1)をヒストリカルコントロールに比較して有意に上昇させることを確認することと、RS5614及びTKIの長期併用時におけるRS5614の薬物動態及び安全性の確認を目的に実施しました(2019年8月開始、2021年3月治験総括報告書完成)。33例中DMRを達成した症例は11例で、48週時の累積DMR達成率は33.3%であり、TKI単独でのヒストリカルコントロール(8-12%)に比べて有意に上昇していることを確認しました(POC取得)。特に、TKI治療期間が3年以上5年以下の患者での累積DMR達成率は50.0%に達しました。また、RS5614の1年間の長期投与でも治療薬との因果関係のある重篤な有害事象は認められませんでした。本試験結果は、科学誌「Cancer Medicine」(2022年)に掲載されました。後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、慢性期CML患者を対象にTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検(※2)の第Ⅲ相医師主導治験を実施中です。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と2021年6月及び同年8月に事前相談を、2021年11月及び同年12月に対面助言を行い、2022年5月10日にPMDAに治験計画届を提出し、第Ⅲ相試験を開始しています。TKI治療期間が3年以上の慢性期CML患者60名を対象とし、TKI単独投与群よりも治験薬RS5614の併用群が2年間以上のDMR維持率を有意に上昇させることを検証します。本試験は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和4年度「革新的がん医療実用化研究事業(東北大学が研究代表機関であり、当社も分担研究機関として参画)」に採択されています。
(※1) DMR達成率:現在の慢性期CML治療では高額なTKIを生涯服用する必要がありますが、最も深い治療効果であるDMRを達成し、一定期間維持した一部の患者では、TKIを中止しても再発がないこと(無治療寛解維持;TFR)が近年明らかとなっています。これまでに既存TKIで公表されている1年間(48週)の累積DMR達成率は8-12%(ヒストリカルコントロール)です。なお、DMR維持とは、DMRを達成した状態が一定期間継続することです。(※2) 二重盲検:対象患者を無作為に、治験薬(今回はRS5614)を投与する群と対照薬(今回は効果がないプラセボ)を投与する群に分け、医師も患者もどちらが投与されるかを知らない条件で、両群同時に薬を投与する臨床試験方法。医師が効果の期待される患者に対して被験薬を投与するなどの故意が生じたり、効果があるはずといった先入観が評価に反映される可能性や、患者が知った場合もその処置への反応や評価に影響が生じることを避けるための試験方法です。それぞれの群で出た結果を比較評価することで、治験薬の効果があるかを判断します。
(b) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う急性呼吸窮迫症候群治療薬当社は、RS5614の肺微小血栓、線維化、肺気腫改善作用及び肺(上皮)保護作用に着目し、COVID-19に伴う間質性肺炎治療薬(経口薬)を開発しています。2020年秋から前期第Ⅱ相医師主導治験(非盲検)を実施し、2021年6月に治験総括報告書が完成しました。特筆すべき副作用は無く、肺傷害で入院し本治験薬を投与された26名全員が無事退院されました。現在、プラセボ対照の後期第Ⅱ相医師主導治験を実施中です。2021年3月にはAMEDの「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)」に採択され、同年4月に実施されたPMDA事前面談に基づき実施計画書を確定し、2021年6月から治験を開始しています。本治験は、新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、入院患者)を対象として、登録患者数100名を見込む医師主導治験であり、国内20の大学等の医療機関の多施設共同、プラセボ対照試験となります。2021年9月末で、目標の半数である50例を超える患者の登録を得ましたが、2021年10月以降、新型コロナウイルス感染者数が激減し治験の被験者登録が大幅に減少したため、治験期間を2022年末まで延長することを決定しました。2022年1月には第6波のために新型コロナウイルス感染患者は再び増加に転じましたが、オミクロン株の感染率は高いものの重症化率は低く、登録の対象となる新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、入院患者)登録は大きく増加しておりません(2022年9月末現在75例の登録終了)。そこで、2022年10月末で治験を終了することを決定いたしました。2023年3月に治験総括報告書が治験調整医師により報告される予定です。米国ではノースウェスタン大学で類似のプロトコールで第Ⅱ相医師主導治験を実施しています。米国における新型コロナウイルス感染症が重篤のため、比較対照としてプラセボを投与する本試験への被験者合意取得が難しく(入院患者の5%程度しか合意取得が難しい)患者登録が遅れていることから、ノースウェスタン大学での治験は一時中断し、先行する日本の治験成績を確認した上で再開を検討することとしました。なお、本試験は臨床試験情報のデータベース(Home – ClinicalTrials.gov)において「一時中断(suspended)」と記載されています(Study To antagOnize Plasminogen Activator Inhibitor-1 in Severe COVID-19 – Full Text View – ClinicalTrials.gov)。また、トルコ共和国メデニエット大学においては、安全性を確認するための前期第Ⅱ相医師主導治験(非盲検)を終了しました。新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、在宅患者)を対象として二重盲検試験を実施する準備を進めましたが、現在流行しているオミクロン株感染では重症化する例が少なく、設定した評価項目(入院率)では実施が難しいことから、米国と同様に、先行する日本の治験成績を確認した上で再開を検討することとしました。2020年12月25日、COVID-19肺炎及びその他肺傷害等の肺疾患治療用途について第一三共株式会社とオプション権付優先交渉権に関する契約を締結しました。本契約締結時は前期第Ⅱ相医師主導治験実施中(後期第Ⅱ相医師主導治験は未定)で、オプション期間を1年後の2021年12月31日としていましたが、後期第Ⅱ相医師主導治験の実施に合わせて、2022年6月にオプション期間を2022年12月まで延長する覚書を締結しました。
(c) 悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬国内のメラノーマ患者では、海外とは異なるサブタイプのメラノーマが多いことから、抗PD-1抗体(ニボルマブ)単剤療法による治療が奏効しづらいとされています。RS5614が免疫チェックポイント分子を制御しがん免疫系を活性化する作用に基づき、メラノーマ治療薬としての有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相医師主導治験を、2021年7月から実施しています(2024年3月終了予定)。本治験は、2021年5月にAMED「橋渡し研究プログラム」シーズC(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)の助成金で、NPO法人「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」を立ち上げてメラノーマの治療成績向上のために連携している東北大学、筑波大学、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の6大学との多施設共同で実施され、進行性悪性黒色腫(メラノーマ)患者40例を対象とした非盲検試験です。ニボルマブ併用のもと、RS5614を1日1回120-180mgで投与し、8週間投与後に有効性と安全性の評価を行います。2022年6月までに症例登録が順調に進み、目標の半数である20例に達したため、中間解析を行いました。現在、ニボルマブ無効群を優先して被験者登録を進めています。
(d) 抗がん剤による間質性肺疾患の予防・治療RS5614が間質性肺疾患(間質性肺炎・肺線維症)を改善することを示唆する非臨床試験の成績に基づき、抗がん剤の副作用である間質性肺疾患をRS5614が予防できるかどうかを京都大学と共同で研究する予定です。
(e) FGF23関連性低リン血症性くる病過剰産生された線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor23:FGF23)により尿中のリン排泄が亢進し、低リン血症から骨変形や成長障害など生じる希少疾患です。RS5614によりFGF23の分解が促進されることが報告され、FGF23関連性低リン血症性くる病の病態を改善できる可能性が示唆されました。2021年11月に東京医科歯科大学の認定臨床研究審査委員会(CRB)に申請し承認され、試験薬の製造など臨床試験の準備が整っています。2022年3月に東京医科歯科大学と共同研究契約を締結しました。2022年11月より臨床研究として試験を開始します。
(f) RS5441(PAI-1阻害薬)脱毛症治療薬導出先のEirion Therapeutics Inc(米国)で第Ⅰ相試験を準備中です(2023年度実施予定)。
(g) RS5614(PAI-1阻害薬)の新規適応RS5614が、がん免疫系を活性化する知見に基づいて、メラノーマ以外でのがん免疫療法の新たな適応についての検討を開始しました。具体的には、東北大学と共同で希少疾患の血管肉腫と皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)(※1)を対象として、非臨床研究に取り組む予定です。また、広島大学と共同で非小細胞性肺がん(※2)についても検討する予定です。さらに、東北大学と共同で全身性強皮症(※3)に伴う間質性肺疾患についても非臨床試験を進めています。
(※1) 血管肉腫と皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL):血管肉腫は皮膚がんの一種で、とりわけ頭皮の血管肉腫は100万人当たり2.5人程度とまれですが、極めて悪性度が高く、急速に進行し、5年の無病生存率は20%以下と報告され、標準的な治療法は確立されていません。皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、免疫担当細胞の一つであるT細胞に由来する皮膚に生じる悪性リンパ腫です。CTCLも国内総患者数2,500人、年間罹患数は170人と推定されるまれながんで、再発を繰り返し、特に進行期では原疾患の悪化に伴う腫瘍の浸潤・転移や感染により死に至るとされ、治療法は確立されていません。また、それらのがんではがん免疫療法の新たな治療法の可能性が示唆されています。(※2) 非小細胞性肺がん:肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がん(NSCLC)の2種類に分類され、NSCLCは肺がんの80~85%を占めています。肺がんは、日本では年間約13.8万人(世界全体で約220万人)が新たに診断され、肺がんによる死亡者数は、日本では年間約8.2万人(世界全体で約179万人)と推定されており、いずれもがんによる死亡原因の第1位となっています。NSCLCでは、ⅠA期からⅢA期で手術が可能であれば、手術による外科切除が考慮されますが、手術を行った場合でも、NSCLCの患者の30-55%が再発し、この疾患で亡くなっています。ⅢB期、ⅢC期、Ⅳ期では、化学療法、がん免疫療法、分子標的療法が行われています。(※3) 全身性強皮症:全身性強皮症は、皮膚の硬化に加えて多臓器の線維化が生じる原因不明の難治性の疾患で、国内の患者数は3万人以上といわれ、自己抗体陽性などの免疫の異常を伴います。その最も多い死因は、間質性肺疾患(間質性肺炎・肺線維症)で、患者の50~60%で認められ、生命予後に大きく影響することが分かっています。
b.RS8001(ピリドキサミン)(a) RS8001(自閉スペクトラム症治療薬)自閉スペクトラム症患者に対するピリドキサミンの有効性及び安全性を探索的に評価し、また、適切な対象患者集団や用法用量、評価指標を決定することを目的として、易刺激性を有する自閉スペクトラム症患者を対象として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。同試験は、2021年5月に終了し、同年6月に治験総括報告書が完成しました。安全性に大きな問題がなく、忍容性が良好であることが示されました。有効性に関しては、主要評価項目の「最終評価時点のABC-J興奮性サブスケールスコア平均変化量(※1)」において実薬高用量群が最も改善していましたが、用量反応関係並びにプラセボ群と統計的な有意差は確認できませんでした。本薬剤の有効性をより適切に評価するためには、対象患者の選定や、プラセボ効果を減少する治験計画の策定(予めプラセボ効果を見ておくプラセボリードイン方式(※2)の採用)など、特に精神科領域疾患で検討すべき課題が明らかになりました。プラセボ効果を減少し、有意差を出すための実証試験に必要な症例数や治験体制は大規模な治験となるため、導出先企業を確保できない限り、これ以上の開発を自社で進めることは困難と判断しております。
(※1) ABC-J興奮性サブスケールスコア平均変化量:自閉スペクトラム症において薬物治療効果をみるのに世界的標準法として使用されている有効性の評価尺度です。ABC-Jは異常行動チェックリスト(ABC)の日本語翻訳版です。(※2) プラセボリードイン方式:プラセボには有効成分は含まれていませんが、心理的な効果で病気の症状が改善することがあります(プラセボ効果)。そこで、実薬投与の前に一定期間プラセボを服用していただき、プラセボ効果の大きな被験者は試験に参加していただかない試験デザインを採用しています。
(b) RS8001(月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PMDD)治療薬)2019年度にAMEDの「医療研究開発革新基盤創生事業(CiCLE)」に採択され、AMEDから助成金を得て、近畿大学、東北大学、東京医科歯科大学、東京女子医科大学で第Ⅱ相医師主導治験(プラセボリードイン方式プラセボ対照二重盲検3群比較試験、目標症例数105例)を進めています(2020年11月開始、2023年12月終了予定)。当初予定の2021年2月より早い2020年11月から治験を開始できましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により患者来院数が減少したため、症例登録促進を目的として、2021年度に新たに2施設を追加したほか、院内ポスターや啓発用の冊子の作成、治験調整医師による薬剤師対象Webセミナーを実施しました。2021年9月にはAMEDによる中間評価の結果、本治験助成の継続が承認されました。また2022年7月には、AMEDによる第2回中間評価が行われ、治験継続の判断ともに、症例登録加速のための支援を受けられることが決定しました。これを受けて、更なる治験実施施設追加を積極的に取り進めるとともに、ボランティアパネル(※)の活用、治験責任医師等による公開講座の開催などの対応を継続して講じています。
(※)
ボランティアパネル:治験支援企業・団体が運営する治験参加希望者の登録システムです。
(c) RS8001(更年期障害)更年期障害の2大症状(ホットフラッシュ(※)とうつ)の治療薬としてRS8001の臨床研究(実薬25例、プラセボ25例)を実施する予定です。2021年11月に東京医科歯科大学の認定臨床研究審査委員会(CRB)の承認を受け、同年12月に東京医科歯科大学と共同研究契約を締結しました。試験薬の製造など臨床試験の準備が終了し、2022年度よりプラセボ対照二重盲検での臨床研究(プラセボリードイン方式、目標症例数50例)として試験を開始すべく準備を進めております。
(※)
ホットフラッシュ:更年期障害の代表的な症状として上半身ののぼせ、ほてり、発汗などが起こります。
c.RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)腹膜透析(※1)は透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入されていますが、当社は、この細いチューブを通して挿入し、開腹手術にも腹腔鏡にもよらず非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡(径1mm程度)を東北大学等複数の大学と共同開発しました。2020年5月に、大手医薬品及び医療機器会社であり腹膜透析医療におけるリーディングカンパニーである米国Baxter Healthcare Corporation(バクスター社)と共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結しました。先ずは、メインフレームであるファイバースコープ(※2)のみで薬事申請することをバクスター社と合意しました。2021年6月にファイバースコープ製造業者とバクスター社が供給契約を締結したことに伴い第1回目のマイルストーンを受領しました。2022年8月24日に、ファイバースコープはPMDAに薬事申請されました。付属品であるガイドカテーテル(※3)作成を含めた医療機器開発のために、2022年9月に株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルと共同研究を締結しました。ガイドカテーテルは、2023年度に薬事申請予定です。
(※1)
腹膜透析:透析の装置として、自分の体の腹膜(胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜)を使う方法です。腹腔内に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質、余分な水分などが透析液の中に移動し血液がきれいに浄化されます。(※2)
ファイバースコープ(使い捨て):ディスポーザブル極細内視鏡の本体です。先端部は径1mm程度で、腹部に留置されているチューブの中を通ります。(※3)
ガイドカテーテル(使い捨て):ファイバースコープと組み合わせて使用することでファイバースコープの先端部分を自由に動かすことができます。ガイドカテーテルを使用しなくても、ファイバースコープのみで腹膜の状態を観察することが可能ですが、使用することで操作性が向上します。
d.人工知能(AI)を活用した医療ソリューションの開発(a) RSAI01(呼吸機能検査診断システム)呼吸器疾患や呼吸機能の検査の中でスパイロメトリー(※)が最も重要ですが、その普及は進んでいません。被験者(患者)の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈することが非専門医には難しいためです。非専門医でも簡便に結果を解釈できるシステムの開発は、呼吸器疾患を診断し、早期治療を行う上で重要な医療課題と考えられます。フローボリューム曲線を解釈するAIを、京都大学及びNECソリューションイノベータ株式会社(NES)と開発中です。2020年7月にスパイロメトリーのリーディングカンパニーであるチェスト株式会社(チェスト社)と共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結し一時金を受領しました。呼吸器疾患の鑑別診断が可能な初期AIモデルが開発できたので、2021年10月にはチェスト社との契約に基づいてマイルストーンを受領しました。現在、約1,000症例(2,500データ)の医療データを取得、実用化へ向けた開発を進めております。
(※)
スパイロメトリー:呼吸機能生理検査で、被験者が吐き出す息の量と吐き出す時間を測定します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びその他の肺の病気の診断に重要な検査です。
(b) RSAI02(慢性透析システム支援)血液透析は慢性腎不全患者の生命維持に必要な腎代替医療です。透析中の血圧低下は5〜10%という高い頻度で発生しますが、血圧低下を予測する医療機器はありません。透析病院では数十名の患者に対して、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士の少ないスタッフで血液透析を行っており、一部の患者に血圧低下が発生するとスタッフは患者への昇圧処置や看護に追われることになり負担となります。当社は、透析中に発生する急激な血圧低下を予測するAIの開発を目指し、聖路加国際病院や民間の15透析医療施設からの3,000症例(透析回数80万件)の医療データ(患者情報、透析情報、検査情報)を取得し、ディープラーニングをベースにしたAIエンジン(DCCN: Dual-Channel Combiner Network)で取り組み、現時点でAUC0.91の精度で透析中血圧低下(20mmHg以下)を予測可能なAIを得ています。2021年5月に、グローバルな血液透析医療機器メーカーであるニプロ株式会社と共同研究契約を締結しました。2022年5月には、透析中血圧低下の発生有無に加えて透析中の安全な除水量を予測する機能の追加など、透析患者が最適かつ安全な透析治療を受けるための必要な情報を提供するAIの開発を目的に、ニプロ株式会社との共同研究契約を延長しました。現在、個々の患者で学習するAIへの改良(P-DCCN)、安全な除水量を予測するアルゴリズムの開発など、AIの精度と機能の向上を目指し開発を進めています。
(c) RSAI03(糖尿病治療支援システム)糖尿病の血糖値を厳格にコントロールし、糖尿病合併症を予防するためにはインスリン注射治療が必要です。しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。当社は、東北大学及び日本電気株式会社(NEC)と共同開発を行い、非糖尿病専門医にも専門医レベルのインスリン治療を実行できるよう支援するAIを開発しています。2022年1月には、東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく分析作業が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から数単位の誤差で予測するAIを開発しています。ディープラーニングをベースにしたスキル獲得学習AIアルゴリズムSAiL (Skill Acquisition Learning)を活用し、これまでに、インスリンの投与量2単位程度の誤差で予測できるAIが取得できています。現在、医療データの「量」と「質」の改善を進めており、更なる予測精度の向上を目指します。また、実用化のための許認可の方針を確定するため、2022年7月にはPMDAとの事前面談を完了し、10月に本相談を実施し、NECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で、本AIを医療機関で活用するためのシステム開発にも着手しました。2022年4月にAMEDの「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)」に採択され、2022年度から3年間、AMEDの支援を受けて本研究を実施します。
(d) RSAI04(発音・発語及び嚥下機能診断)高齢社会において摂食嚥下障害は増加し、死因とされる肺炎の約7割の原因が誤嚥です。誤嚥性肺炎の予防には嚥下機能低下の早期発見が重要ですが、現在では、嚥下内視鏡検査、嚥下透視検査方法など患者負担の大きい嚥下評価法しかありません。当社は、嚥下と会話で使用する器官は舌や口腔・咽頭など共通部分が多く、会話から嚥下機能を予測できる可能性に着目し、嚥下機能障害を会話時の音声データから評価可能な新しいAIの開発に取り組んでいます。東北大学の複数の診療科(耳鼻咽喉科、歯科、医工学部リハビリテーション科)及びNECと共同で、東北大学病院嚥下治療センターに受診する患者の話す音の全周波数を時系列データの分析に特化したAIエンジン(時系列モデルフリー分析)で解析することで、健常者の発音と患者の発音の違いを検出し、嚥下機能の低下を診断するAIを開発します。現在、150名の健常者データを用いた探索的分析を完了し、健常者の音声のベースライン(性差、年齢差、個人差、文字差など)を確認しました。今後、嚥下機能低下を有する高齢者データを用いて、実用化開発に取り組みます。
(e) RSAI06(小児発達障害(識字障害)音読診断)小児の学習障害の1つである識字障害(ディスレクシア)は音韻処理障害であり、学業不振や不登校に至る原因となりますが、早期に発見し、適切なトレーニングを受けることで一般生活が送れるようになる障害です。適切な早期での支援を提供するためにも、簡便で正確な診断方法の開発が急務ですが、現在は、良い診断法はありません。当社は、識字障害と小児の音読の間違いやスピードに相関性があるという事実に基づき、識字障害を診断するAIを開発しています。声を周波数として捉え、時系列データとして扱うことで、健常域から逸脱する異常値を検知するAIを活用し、東北大学病院など複数の医療機関で識字障害と診断された児童の音読データを使用します。音声データに基づく簡便な診断システムが開発できれば、定期検診などの短い時間で障害の有無を検知でき、該当者への早期からの支援に繋がります。
(f) AIを活用した医療ソリューション開発に関する新規適応当社は、重点領域の一つである女性特有疾患に関する取組として、乳がんの病理画像から病変等を検出する人工知能(AI)の研究を進めておりました。東北大学と共同で、1,361枚の顕微鏡画像から、乳がん診断するAIを開発しました。病理画像を用いた検証では、検出モデルを3クラス(良性、非浸潤がん、浸潤がん)または2クラス(良性、悪性)で分類し、それぞれ88.3%と90.5%での診断精度を達成しました。本研究成果は科学誌「Journal of Pathology Informatics」(2022年)に掲載されました。今後、乳がん領域では「術中迅速病理検体」を用いたAI診断にも取り組む予定です。
e.診断薬:血中フェニルアラニン測定キットフェニルケトン尿症は、適切な治療を行わないと知能発達遅延などの重篤な症状を出現します。1977年に生後マス・スクリーニング検査が実施され、ほぼ全ての患児が早期に発見されるようになりました。フェニルケトン尿症の治療には、フェニルアラニンを制限するための食事療法を正しく行う必要があり、定期的な医療機関での検査が必要ですが、数か月に1度の採血では、きめ細やかな食事管理ができません。当社は、自宅で簡便かつ正確に血中フェニルアラニン濃度を測定するシステムを、東北大学と共同で開発しています。この新規検査系をキット化し、自己管理の保険償還に繋げることを目的とします。糖尿病患者での自己血糖管理のように、家庭でいつでも自己測定が可能になれば、フェニルケトン尿症を有する患者のきめ細やかな食事管理が実現できます。2021年5月には診断薬に関する特許を東北大学と共同で出願し、同年6月にはPMDA相談を行いました。
