【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の日本経済は、原材料価格の高騰、円安の進行やウクライナ情勢等の地政学的な要因があったものの、回復基調で推移しました。
当社グループの主要事業である建設業界においては、政府建設投資が引き続き20兆円を上回る水準を維持し、民間建設投資も製造業を中心に一部回復傾向が見られたものの、企業の設備投資マインドは引き続き慎重化しました。
このような状況下、当社グループは、官庁工事は積算精度・技術提案力の強化による受注確保、民間工事は質の高い受注拡大に向け、グループ一体となってエリア環境に適合した積極的かつ戦略的営業を実行した結果、工事受注高は127,896百万円(前連結会計年度比6.3%増)、工事売上高は126,743百万円(同2.2%減)、製品等を含めた総売上高については155,353百万円(同0.7%減)となりました。
利益については、建設事業及び製造・販売事業における原材料価格やエネルギー価格の高騰等により、売上総利益は15,059百万円(同11.3%減)、営業利益は5,695百万円(同30.6%減)、経常利益は5,920百万円(同31.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、親会社株式及び政策保有株式を売却したことによる投資有価証券売却益を2,791百万円計上したこと等により5,704百万円(同0.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。(セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
(建設事業)
当社グループの主要部門であり、売上高は126,748百万円(同2.2%減)、営業利益は7,357百万円(同17.7%減)となりました。
(製造・販売事業)
売上高は31,917百万円(同9.1%増)、営業利益は1,232百万円(同35.6%減)となりました。
(賃貸事業)
売上高は6,404百万円(同0.8%増)、営業利益は523百万円(同25.4%増)となりました。
(その他)
売上高は1,291百万円(同9.6%減)、営業利益は287百万円(同5.0%減)となりました。
また、当連結会計年度の財政状態は、次のとおりです。
(資産の部)
当連結会計年度の資産合計は、151,850百万円(同344百万円減、0.2%減)、流動資産は112,989百万円(同2,846百万円増、2.6%増)、固定資産は38,860百万円(同3,190百万円減、7.6%減)となりました。
主な要因は、現金預金が8,000百万円、電子記録債権が1,242百万円、技術研究所及び研修施設等を集約した複合施設の建設により建設仮勘定が1,463百万円増加し、受取手形・完成工事未収入金等が6,815百万円、親会社株式及び政策保有株式を売却したこと等により投資有価証券が4,759百万円減少したことによります。
(負債の部)
当連結会計年度の負債合計は、54,941百万円(同2,246百万円減、3.9%減)、流動負債は47,146百万円(同3,956百万円減、7.7%減)、固定負債は7,794百万円(同1,710百万円増、28.1%増)となりました。
主な要因は、借入金の更新に伴い借入金が1,500百万円減少したことによります。
(純資産の部)
当連結会計年度の純資産合計は、96,909百万円(同1,902百万円増、2.0%増)となりました。
主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を5,704百万円計上し、株主配当金を1,845百万円支払ったことによります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローは、営業活動により10,918百万円、投資活動により307百万円それぞれ資金が増加し、財務活動により3,349百万円資金が減少しました。
その結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ7,970百万円増加し38,129百万円(前連結会計年度末は30,158百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益を8,635百万円計上し、売上債権の減少により5,767百万円資金が増加し、法人税等の支払いで3,018百万円資金が減少したこと等により10,918百万円の資金増加(前連結会計年度は2,360百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
親会社株式及び政策保有株式の売却に伴う投資有価証券の売却による収入で4,977百万円資金が増加し、製造・販売拠点の拡充更新、技術研究所及び研修施設等を集約した複合施設の建設等により有形固定資産の取得による支出で3,269百万円資金が減少したこと等により307百万円の資金増加(同5,140百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払で1,845百万円、借入金の更新に伴う返済で1,500百万円資金が減少した等により3,349百万円の資金減少(同3,788百万円の減少)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(a) 受注実績
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
建設事業(百万円)
120,340
(12.0%減)
127,896
(6.3%増)
(b) 売上実績
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
建設事業(百万円)
129,532
(0.4%増)
126,743
(2.2%減)
製造・販売事業(百万円)
20,217
(4.7%減)
22,076
(9.2%増)
賃貸事業(百万円)
5,311
(6.0%減)
5,350
(0.7%増)
その他(百万円)
1,319
(32.1%減)
1,182
(10.3%減)
合計(百万円)
156,379
(0.9%減)
155,353
(0.7%減)
(注)1.当社グループでは建設事業以外の受注実績はグループ各社の受注概念が異なるため記載しておりません。
2.当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3.セグメント間の取引については相殺消去しております。
4.( )内は、前連結会計年度比です。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別
工種別
前期繰越
工事高
(百万円)
当期受注
工事高
(百万円)
計(百万円)
当期完成
工事高
(百万円)
次期繰越
工事高
(百万円)
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
舗装工事
47,081
72,106
119,188
76,352
42,836
土木工事
22,880
32,999
55,879
36,042
19,836
建築工事
654
485
1,140
800
339
計
70,616
105,591
176,208
113,195
63,012
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
舗装工事
42,836
73,201
116,038
74,695
41,342
土木工事
19,836
38,426
58,262
35,910
22,352
建築工事
339
709
1,049
679
370
計
63,012
112,337
175,350
111,285
64,065
(注)1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.次期繰越工事高は、(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)です。
受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
期別
工種別
特命(%)
競争(%)
計(%)
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
舗装工事
71.5
28.5
100
土木工事
70.2
29.8
100
建築工事
100.0
-
100
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
舗装工事
66.8
33.2
100
土木工事
66.6
33.4
100
建築工事
100.0
-
100
(注)百分率は請負金額比です。
完成工事高
期別
工種別
官公庁(百万円)
民間(百万円)
計(百万円)
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
舗装工事
34,959
41,393
76,352
土木工事
7,348
28,694
36,042
建築工事
-
800
800
計
42,307
70,888
113,195
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
舗装工事
32,543
42,152
74,695
土木工事
5,801
30,109
35,910
建築工事
-
679
679
計
38,344
72,941
111,285
(注)1.完成工事のうち主なものは、次のとおりです。
前事業年度
発注者
工事名
国土交通省 北海道開発局
新千歳空港 誘導路新設外工事
東日本高速道路㈱
北陸自動車道 R2長岡管内舗装補修工事
松山市
坊っちゃんスタジアム内野グラウンド改修工事
学校法人順天堂
順天堂大学さくらキャンパステニスコート新設工事
学校法人花巻学院
花巻東高等学校グラウンド改修工事
当事業年度
発注者
工事名
国土交通省 北海道開発局
新千歳空港 北側末端誘導路新設外工事
中日本高速道路㈱
新東名高速道路 駿河湾沼津SA~新富士IC間6車線化工事
日本中央競馬会
京都競馬場整備工事(馬場工区)
(一財)日本自動車研究所
ADAS試験場新設工事
学校法人亜細亜学園
日の出キャンパス再開発計画第3期工事
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりです。
期別
相手先
金額(百万円)
完成工事高総額に対する割合(%)
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
清水建設㈱
13,144
11.6
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
清水建設㈱
14,577
13.1
次期繰越工事高(2023年3月31日現在)
工種別
官公庁(百万円)
民間(百万円)
計(百万円)
舗装工事
21,322
20,020
41,342
土木工事
6,713
15,639
22,352
建築工事
-
370
370
計
28,035
36,029
64,065
(注)次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりです。
発注者
工事名
完成予定年月
国土交通省 中国地方整備局
令和4年度静間仁摩道路大屋地区舗装工事
2024年2月
東日本高速道路㈱
東北自動車道 R5仙台管内舗装補修工事
2025年6月
防衛省 九州防衛局
築城(4)駐機場整備土木その他工事
2024年10月
トヨタモビリティサービス㈱
(仮称)トヨタレンタカー赤羽駅前店新築工事
2023年9月
清水建設㈱
東名菅ケ谷高架橋床版取替工事
2025年5月
製造・販売事業におけるアスファルト合材等製品の販売状況
期別
アスファルト合材
その他売上高
(百万円)
売上高合計
(百万円)
売上数量
(千t)
売上高
(百万円)
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
1,996
18,527
3,313
21,841
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
1,961
20,559
3,221
23,780
(注)その他売上高は、砕石等の販売、機械の賃貸等の売上高です。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、総売上高は155,353百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益は5,695百万円(同30.6%減)、経常利益は5,920百万円(同31.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,704百万円(同0.6%増)となりました。
(単位:百万円)
2021年度
実績
2022年度
実績
増減率
建設事業受注高
120,340
127,896
6.3%
建設事業売上高
129,532
126,743
△2.2%
製造・販売事業売上高
20,217
22,076
9.2%
賃貸事業等売上高
6,630
6,533
△1.5%
総売上高
156,379
155,353
△0.7%
営業利益
8,202
5,695
△30.6%
経常利益
8,582
5,920
△31.0%
親会社株主に帰属する当期純利益
5,667
5,704
0.6%
(建設事業)
「エリア環境に適合した戦略的営業を実行し、質の高い受注」を重点実施事項とし、スピードと攻めの姿勢に徹した提案型営業を展開し、特に、自動車関連、スポーツ関連、物流関連を重点3分野と位置付けて民間営業強化を行った結果、当社での民間受注高は73,445百万円(前事業年度比2.0%増)となりました。さらに、官庁受注を確保するため積算制度・技術提案力の強化等に注力したことで、官庁受注高は38,892百万円(同15.8%増)となりました。その結果、連結での工事受注高は127,896百万円(前連結会計年度比6.3%増)、工事売上高は126,743百万円(同2.2%減)となりました。
利益については、現場力(施工体制面+管理面)向上による収益力アップを目指しましたが、原油高の影響及び工事採算性の悪化により、セグメント利益は7,357百万円(同17.7%減)となりました。
(製造・販売事業)
競納得意先の数量アップと得意先数の拡大を図り、製品売上高は22,076百万円(同9.2%増)となりました。
利益については、主要材料であるアスファルト価格及びエネルギー価格の高騰等により、セグメント利益は1,232百万円(同35.6%減)となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2019年5月に「中期経営計画2019(2019~2023年度)」を策定しており、当社グループを取り巻く事業環境を認識し、重要課題とその施策を具体的に打ち出した企業価値向上に向けた取り組みとして、民間受注の拡大、営業利益率の向上等を挙げ、働き方改革にも対応し、「成長よりも安定的な経営基盤の構築」を重視した計画としております。
2年目である2020年度までの経営指針の進捗については概ね順調に推移しておりました。
3年目となった2021年度は、製造・販売事業において原油価格の高騰と価格転嫁の遅れにより、利益が大幅に計画を下回りました。
4年目の2022年度は、円安進行等による原材料価格やエネルギー価格の高騰の影響で営業利益は大幅に計画を下回りましたが、親会社株式及び政策保有株式を売却したことによる投資有価証券売却益を計上したことで最終利益は計画を上回りました。
2023年度は、原材料価格の高騰や海外情勢等、先行き不透明感はあるものの、建設事業においては採算性を向上させ、製品・販売事業ではアスファルト価格及びエネルギー価格の高騰を販売価格へ転嫁させることにより「中期経営計画2019」通りの計画としております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金需要の主なものとして、工事施工に係る工事原価、合材製造に係る製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用、設備投資等があります。設備投資については、建設事業における施工用機械、製造・販売事業におけるアスファルトプラント設備更新及び環境に配慮した設備新設、拠点増設による土地購入、賃貸事業における賃貸資産の購入等があります。
運転資金については、自己資金、金融機関からの借入による資金調達の他、取引銀行2行と43億円の貸出コミットメント契約(借入実行残高なし)及びコマーシャル・ペーパー発行のための格付を取得するなど、必要に応じた資金調達方法を確保しております。
また、資金の流動性を確保するために、グループ資金を当社に集中させ、当社の運転資金及び資金需要のある子会社に貸付を行っております。
当連結会計年度末の当社グループの借入金は6,700百万円、現金及び現金同等物は38,129百万円です。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を計上する方法の適用、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度等、会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、財務諸表等に反映されております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
これらの見積りについては、継続して評価、見直しを行っておりますが、自然災害、感染症の感染拡大等予期せぬ事態が発生し、国内外において経済活動に多大な影響を与える等の環境の変化により、実際の結果は見積りと異なることがあります。
新型コロナウイルス感染症及びウクライナ情勢の影響については、ウイズコロナでの経済活動、円安の進行及びウクライナ侵攻等により原材料及びエネルギ-価格高騰の影響を受けております。しかし、製造・販売事業においては利益確保に向けたコストに見合う価格改定を継続して実施しており、建設事業においては2023年度も政府建設投資が20兆円を上回る見通しで堅調に推移すると予想され、当連結会計年度末の手持工事量も十分確保できていることから、現時点では当社グループの経営成績等に与える影響は軽微と判断しており、それに基づき見積りをしております。
今後、ウクライナ情勢の悪化等により、原材料及びエネルギ-価格が想定以上に高騰し、当社グループの経営環境にも大きな変化が出る場合には、必要に応じて見積りを見直します。