【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(経営成績等の状況の概要)当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(1) 経営成績の状況当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)における経済環境は、依然として新型コロナウイルスの影響が残り、また2月のロシアのウクライナ侵攻に端を発するウクライナ戦争の長期化が世界各地のエネルギーや資源価格高騰を引き起こしインフレ懸念を高め、加えて日本においては急激な為替の変動が各種産業に影響を及ぼし、先行き不透明な状況が続きました。当社グループにおきましても、コロナ禍の影響で日本国内や中国での行動制限が続いたため市場が停滞し、またその他の国や地域においてはコロナ禍からの回復傾向が見られたものの、世界的なインフレによる景気悪化の影響で販売が伸び悩む市場も多く、加えて世界的な物流等のサプライチェーンの混乱により経費が増加する等、思うに任せぬ状況となりました。このような状況の中、日本国内においては積極的に当社独自の“シナジーチップ”を採用した「ジュースアップ」シリーズや「フリクションポイントノック04」のキャンペーン等を実施し、また年末に発売した「フリクションボールノックゾーン」が大きな話題を集める等、販売の基盤固めが進みました。海外においては「フリクション」シリーズや「G-2(ジーツー)」、「ジュース」シリーズといった定番商品の各市場でのシェアをしっかりと維持し、来るべき回復期に備えております。2022年3月には新たにグループパーパス「人と創造力をつなぐ。」を定め、その理念に基づき「2030年ビジョン」、「2022-2024中期経営計画」を策定し、次世代に向けての更なる発展のために組織や体制を再構築するとともに、経営の効率化とガバナンスの向上に努めております。加えてサステナブルな社会の実現に向けての取組みも着実に進めており、事業の継続を盤石なものにしております。この結果、期初より急激に円安が進んだことによる為替の影響も大きく受け、当期間の連結売上高は1,128億50百万円(前期比109.5%)となりました。国内外別では、国内市場における連結売上高は266億49百万円(前期比106.3%)、海外市場における連結売上高は862億1百万円(前期比110.5%)となりました。また、損益につきましては連結営業利益が212億44百万円(前期比109.9%)、連結経常利益が226億33百万円(前期比111.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益は157億73百万円(前期比110.5%)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高が1億86百万円増加し、営業利益が61百万円減少しておりますが、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益に与える影響はありません。(参考URL 当社中期経営計画 www.pilot.co.jp/company/ir/management/plan.html)
各セグメント別の状況は以下のとおりです。
(日本セグメント)国内のステイショナリー用品事業においては、年初のコロナ対策の実施による個人消費の減退やインバウンド需要の喪失の影響が残り、各種制限が解除された後もなかなか消費者のマインドが戻らず、厳しい状況が続きました。年末からはインバウンド需要も徐々に復活し、またイベント等も増加傾向にある事から市場は徐々に活性化してきているものの、年間を通しては停滞した1年でした。ステイショナリー用品事業の輸出においては、東南アジア、中東、南米等各地でコロナ禍からの復調により、売上が伸長しました。玩具事業においては、主力商品である「メルちゃん」シリーズが、価格改定の影響を受けながらも堅調に推移しました。その他事業においては、産業装置向けのセラミックス部品が製造業の生産設備の需要拡大を受け、順調な推移を続けております。以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は350億51百万円(前期比112.1%)、セグメント利益は海外子会社向けの出荷の拡大の効果や為替の影響も受け225億91百万円(前期比129.2%)となりました。また、当セグメントにおける主要な事業の売上高に関して、ステイショナリー用品事業は285億88百万円(前期比111.0%)となり、玩具事業は42億33百万円(前期比100.7%)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、日本セグメントにおける売上高は1億86百万円増加し、セグメント利益は61百万円減少しております。
(米州セグメント)米州地域につきましては、米国市場で「G-2(ジーツー)」や「フリクション」シリーズの販売が、販売店の在庫削減等の影響もあり伸び悩みました。反面ブラジル市場については市場回復が顕著となっており、「Vボードマスター」等の販売が伸長しました。以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は為替の影響も受け、320億90百万円(前期比117.6%)、セグメント利益は6億5百万円(前期比56.6%)となりました。
(欧州セグメント)欧州地域につきましては、上期には各国で「フリクション」シリーズをはじめとした主力商品が堅調に推移しましたが、下期には景気後退の影響を受け苦戦しました。その中でも積極的に環境を意識した販売政策をとる等、ブランドイメージの向上に努めました。以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は為替の影響も受け、235億86百万円(前期比104.1%)、セグメント利益は16億88百万円(前期比79.8%)となりました。
(アジアセグメント)アジア地域につきましては、中国において長期化したゼロコロナ政策による都市封鎖等の影響を大きく受けましたが、台湾、シンガポール等その他の国と地域では「ジュース」シリーズ等の販売が堅調に推移しました。以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は為替の影響も受け、221億22百万円(前期比101.3%)、セグメント利益は10億81百万円(前期比93.6%)となりました。
(2) 財政状態の状況当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ133億87百万円増加し、1,565億42百万円(前期比109.4%)となりました。流動資産は前連結会計年度末に比べ76億90百万円増加し、1,066億6百万円(前期比107.8%)となりました。これは主に、棚卸資産(「商品及び製品」、「仕掛品」、「原材料及び貯蔵品」)が69億14百万円増加したことによるものです。固定資産は前連結会計年度末に比べ56億97百万円増加し、499億36百万円(前期比112.9%)となりました。これは主に、有形固定資産が28億6百万円、「投資有価証券」が17億63百万円、「繰延税金資産」が19億22百万円それぞれ増加したことによるものです。流動負債は前連結会計年度末に比べ23億34百万円減少し、367億92百万円(前期比94.0%)となりました。これは主に、「1年内返済予定の長期借入金」が66億42百万円減少した一方で、「短期借入金」が17億23百万円、「その他」が35億92百万円それぞれ増加したことによるものです。固定負債は前連結会計年度末に比べ80百万円増加し、17億60百万円(前期比104.8%)となりました。純資産は前連結会計年度末に比べ156億41百万円増加し、1,179億89百万円(前期比115.3%)となりました。これは主に、「利益剰余金」が130億11百万円、「為替換算調整勘定」が30億33百万円それぞれ増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ3億99百万円減少し、454億44百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動による資金の増加は、137億53百万円(前連結会計年度は198億15百万円の増加)となりました。収入の主な内訳は、「税金等調整前当期純利益」226億38百万円、「減価償却費」38億22百万円、「売上債権の減少額」14億3百万円であり、支出の主な内訳は、「棚卸資産の増加額」46億32百万円、「法人税等の支払額」89億50百万円であります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動による資金の減少は、53億50百万円(前連結会計年度は35億98百万円の減少)となりました。これは主に、「有形固定資産の取得による支出」43億16百万円、「投資有価証券の取得による支出」14億11百万円によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動による資金の減少は、83億70百万円(前連結会計年度は79億65百万円の減少)となりました。これは主に、「短期借入金の純増加額」13億50百万円、「長期借入金の返済による支出」66億67百万円、「配当金の支払額」27億60百万円によるものであります。
(生産、受注及び販売の実績)
(1) 生産実績当社グループにおきましては、「日本」セグメントが当社の生産活動の中心となっております。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
43,909
105.3
(注) 1 上記の金額は工場出荷価格によっております。2 上記の金額には外部への製造委託を含めております。3 当社グループの生産は、当社、連結子会社であるパイロットインキ㈱及び東海化学工業㈱でその大半を占めているため、上記の金額は3社の金額を表示しております。
(2) 受注実績見込生産を主体としており、受注生産は僅少であるため、記載を省略しております。
(3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
35,051
112.1
米州
32,090
117.6
欧州
23,586
104.1
アジア
22,122
101.3
合計
112,850
109.5
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はないため、記載を省略しております。3 「アジア」には、アフリカ、オセアニアを含んでおります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。連結財務諸表の作成におきましては、当社グループにおける過去の実績等を踏まえ合理的に見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載されているとおりであります。
①
棚卸資産の評価当社グループは、棚卸資産の評価基準として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価を下回っている場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。棚卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
②
固定資産の減損当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
③
繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
④
退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産退職給付に係る負債、退職給付に係る資産及び退職給付費用は、数理計算上使用される前提条件に基づいております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
①
売上高当連結会計年度の連結売上高は前期比9.5%増加し1,128億50百万円となり、過去最高であった2017年12月期を上回ることができました。主力のステイショナリー用品事業においては、ブラジル市場をはじめ南米、東南アジア、中東等各市場のコロナ禍からの回復に伴う需要が非常に強かったこと、また、前年に比べ為替が円安に推移したこと等が主に増収要因となりました。一方、中国及び香港において長期に及ぶゼロコロナ政策による都市封鎖等の影響、グローバルサプライチェーンの混乱による供給不足、また、下期にはインフレに伴う金融引き締めの影響により景気回復のペースが鈍化し、米マスマーケット顧客の在庫調整の動きがみられる等、これらは総じて減収要因として影響いたしました。これらの強弱要因が入り交じった結果、ステイショナリー用品事業の外部顧客への売上高は、日本セグメント、米州セグメント、欧州セグメント、アジアセグメントの報告セグメント全てにおいて前年を上回り、前期比9.0%増加し1,063億66百万円となりました。また、玩具事業及びその他事業の売上高は、前期比17.6%増加し64億83百万円となりました。玩具事業においては、価格改定の影響を受けながらも主力商品が堅調に推移したこと、また、その他事業においては、産業装置向けのセラミックス部品が製造業の生産設備の需要拡大を受け順調に推移したことによるものです。
②
営業利益当連結会計年度の連結営業利益は前期比9.9%増加し212億44百万円となり、連結売上高営業利益率は18.8%となりました。原材料・エネルギー価格の高騰、海上運賃価格の上昇等の減益要因があったものの、売上高の増加及び生産高の増加に伴う操業度の改善にて減益要因を補い、また、これらに加え為替円安の影響もあり前期同水準の営業利益率を維持することができております。
③
経常利益当連結会計年度の連結経常利益は前期比11.2%増加し226億33百万円となり、連結売上高経常利益率は前期より改善し20.1%となりました。これは主に、営業利益の増加に加えて、受取利息、受取配当金及び為替差益がそれぞれ増加したことによるものです。
④
親会社株主に帰属する当期純利益当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比10.5%増加し157億73百万円となりました。これは主に、連結経常利益の増加に加え、固定資産売却益、固定資産除却損、土壌対策に要する費用として環境対策費をそれぞれ計上したことによるものです。
(3) 当連結会計年度の財政状態の分析当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(2) 財政状態の状況」をご参照ください。なお、連結ベースの財政状態に関する主な指標のトレンドは下記のとおりであります。
2021年12月期
2022年12月期
流動比率(%)
252.8
289.8
固定比率(%)
43.8
42.8
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)(倍)
0.1
0.0
(注)流動比率
: 流動資産/流動負債固定比率
: 固定資産/自己資本有利子負債自己資本比率 : 有利子負債/自己資本・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。なお、連結ベースのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2021年12月期
2022年12月期
自己資本比率(%)
70.6
74.5
時価ベースの自己資本比率(%)
121.2
121.1
債務償還年数(年)
0.5
0.4
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
186.6
125.4
(注)自己資本比率 : 自己資本/総資産時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産債務償還年数 : 有利子負債/営業キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー/利払い・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。・株式時価総額は、期末株価数値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。・営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
②
財務政策当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び設備投資によるものであります。運転資金につきましては主に自己資金により充当しており、必要に応じて金融機関からの短期借入金による調達も行っております。設備投資資金につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入金による調達を基本としております。また、重要な設備投資の予定及びその資金の調達源につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」をご参照ください。なお、資金の流動性を維持するため、主要取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン)及び当座貸越契約を締結しております。
(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2030年ビジョンの実現に向け、2022-2024中期経営計画において掲げた5つの基本戦略に取り組んでおります。掲げた目標、経営指標及び財務指針を達成するため、迅速に取組みを進め、企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指してまいります。2022-2024中期経営計画において設定した目標に対する当年度の取組み内容、経営指標及び財務指針の結果は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3.中長期的な会社の経営戦略・目標とする経営指標」に記載しております。
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