【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和される中で、景気は緩やかな持ち直しが続きました。しかしながら、ロシアのウクライナ侵攻長期化に伴うエネルギー等の価格高騰や欧米における金融引き締め等が景気を下押しする要因となりました。わが国経済は、急激な円安や資源高に起因する物価上昇の影響があったものの、コロナ禍における行動制限の緩和等により、個人消費や設備投資を中心に経済活動の正常化が進んだことから、景気は緩やかに持ち直しました。住宅市場に関しましては、国内では、物価上昇等の影響による消費マインドの低下から持家の着工戸数は前年より減少したものの、貸家需要が堅調に推移したこと等により、新設住宅着工戸数は増加しました。米国では、当期初まで市場は前期からの好調を維持しておりましたが、住宅ローン金利の大幅な上昇等により、購入意欲が低下し、下期以降は受注環境が悪化しました。豪州では、住宅ローン金利や建設コストの上昇を背景として、厳しい市場環境に直面しました。このような事業環境のもと、当社グループは、当期を初年度とする3年間の中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」をスタートさせ、最終年度となる2024年12月期に売上高1兆7,700億円、経常利益1,730億円(退職給付会計に係る数理計算上の差異を除く)、親会社株主に帰属する当期純利益1,160億円、ROE15%以上を目指すこととしました。また、本中期経営計画の基本方針として、「木材資源の活用による脱炭素化への挑戦」、「収益基盤の強靭化の推進」、「グローバル展開の加速」、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」、「事業とESGの更なる一体化」の5つのテーマを掲げ、目標達成に向けて取り組むこととしました。当期は、国内においてLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅を発売する等環境に配慮した住宅商品の受注拡大に注力するとともに、米国において戸建住宅事業や不動産開発事業をより一層推進する等、当社グループの更なる成長に向けた事業の推進に注力しました。
その結果、売上高は1兆6,697億7百万円(前期比20.5%増)、営業利益は1,582億53百万円(同39.2%増)、経常利益は1,949億94百万円(同41.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,086億72百万円(同24.7%増)となりました。なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス79億68百万円となり、数理計算上の差異を除いた経常利益は1,870億27百万円となりました。自己資本利益率(ROE)につきましては19.4%となり、目標に掲げていた15%以上を達成しております。
(事業セグメント別の経営成績)事業セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、各事業セグメントの売上高には、事業セグメント間の内部売上高を含めております。
<木材建材事業>流通事業におきましては、木材価格が高止まりしているなか、取引先との連携強化に注力することで安定供給に努めました。また、バイオマス発電用の木質燃料の取り扱い拡大や国産材の活用に引き続き注力したほか、持続可能な植林木を使用した合板や建材の拡販に取り組みました。その結果、業績は堅調に推移しました。製造事業におきましては、国内において、販売戦略の見直しや省人化ラインによるコストダウン効果等により、業績は堅調に推移しました。海外では、インドネシアの合板や建材事業において、主要な輸出先の景気減速を背景に販売数量が減少したことにより、業績は伸び悩みました。ニュージーランドでは、MDF(中密度繊維板)やLVL(単板積層材)の販売数量が増加したことから業績は堅調に推移しました。また、昨年8月に、建設にかかる原材料調達から加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量を算定できるソフトウェア「One Click LCA」の日本語版を発売し、建設業界の脱炭素化を支援する取り組みを進めました。
以上の結果、木材建材事業の売上高は2,737億33百万円(前期比26.2%増)、経常利益は148億78百万円(同49.0%増)となりました。
<住宅・建築事業>戸建注文住宅事業におきましては、WEBマーケティングの強化に引き続き注力したほか、昨年4月に、建設時、居住時及び解体時におけるCO2を削減し、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにするLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅を発売しました。また、エネルギー消費量が正味ゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様住宅の受注拡大に努めました。販売単価の上昇により、売上高は増加しましたが、資材価格の高騰に伴うコスト上昇により、減益となりました。賃貸住宅事業におきましては、当社が建設した賃貸住宅のオーナー様から借り上げた物件をモデルルームとして体感していただく、「タウンスクエア」による受注活動を推進したほか、賃貸集合住宅「フォレストメゾン」全棟で省エネルギー性能を高めたZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)化を推進しましたが、資材価格の高騰に伴うコスト上昇により、業績は伸び悩みました。分譲住宅事業におきましては、優良な土地の仕入れが奏功したこと等により、業績は堅調に推移しました。リフォーム事業におきましては、「住友林業の家」のオーナー様向けの需要の掘り起こしに注力し、業績は堅調に推移しました。また、中大規模木造建築事業では、昨年5月に、当社が設計・施工した木造3階建ての耐火構造である上智大学四谷キャンパス15号館が竣工したほか、昨年6月には、札幌市において株式会社熊谷組との共同企業体により地下1階地上10階建ての耐火木質ビルを着工する等、脱炭素社会の実現に貢献するべく、中大規模建築の木造化・木質化を推進しました。
以上の結果、住宅・建築事業の売上高は5,335億6百万円(前期比4.4%増)、経常利益は158億99百万円(同19.1%減)となりました。
<海外住宅・不動産事業>米国での戸建住宅事業におきましては、当社グループが事業活動を展開しているワシントン州、ユタ州、テキサス州及びメリーランド州等の地域において、住宅ローン金利の上昇等の影響により、販売戸数は前期より減少しましたが、販売単価の上昇により業績は好調に推移しました。不動産開発事業におきましては、販売価格の上昇及び一部の物件売却を早めたことから業績は堅調に推移しました。また、昨年12月に飯野海運株式会社及び株式会社熊谷組と、テキサス州ダラス近郊における木造7階建てESG配慮型オフィスの開発に参画する等、建築時のCO2排出量の削減や木材の炭素固定効果によって脱炭素化に寄与する開発事業を推進しました。豪州での戸建住宅事業におきましては、住宅ローン金利や建設コストの上昇を背景に、販売戸数が前期より減少し、業績は伸び悩みました。なお、当社は、昨年4月に商業・公共施設の外構や緑地帯・公園の設計・施工等を行うRegal Innovations Pty Ltd(本社:豪州ニューサウスウェールズ州)を連結子会社とし、海外における公共空間のランドスケープ事業に新たに進出しました。東南アジアにおいては、タイで高層分譲マンションが竣工したほか、ベトナムやインドネシアにおいても、戸建住宅及び分譲マンションの引き渡しが本格化しました。
以上の結果、海外住宅・不動産事業の売上高は8,487億24百万円(前期比31.7%増)、経常利益は1,613億17百万円(同54.6%増)となりました。
<資源環境事業>バイオマス発電事業におきましては、北海道紋別市をはじめ全国5か所で展開する木質バイオマス発電事業所が安定的に稼働しましたが、燃料調達コストの上昇により、業績は伸び悩みました。森林事業におきましては、ニュージーランドにおいて、主要な販売先である中国の原木需要の低迷により、販売数量が減少し、業績は伸び悩みました。なお、当社は、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一つとして循環型森林ビジネスを推進すべく、昨年10月に米国で、森林資産の運用を行う森林アセットマネジメント事業会社Eastwood Forests, LLC(本社:米国ノースカロライナ州)を設立しました。今後、同社を通じた環境型森林ファンドの組成を通じて、社会全体のカーボンオフセットに貢献してまいります。
以上の結果、資源環境事業の売上高は218億71百万円(同1.9%減)、経常利益は13億92百万円(同64.6%減)となりました。
<その他事業>当社グループは、上記事業のほか、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業等を行っております。また、株式会社熊谷組に係る持分法による投資利益も含まれます。
その他事業の売上高は245億53百万円(前期比2.5%増)、経常利益は19億38百万円(同35.7%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。
②受注実績 当連結会計年度における住宅・建築事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高 (百万円)
2021年12月期比 (%)
受注残高 (百万円)
2021年12月期比 (%)
住宅・建築事業(提出会社)
373,432
△0.9
336,070
+1.2
(注) 1 住宅・建築事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅、並びにその他請負の該当金額を記載しております。2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
③販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
2021年12月期比(%)
木材建材事業
273,733
+26.2
住宅・建築事業
533,506
+4.4
海外住宅・不動産事業
848,724
+31.7
資源環境事業
21,871
△1.9
報告セグメント計
1,677,833
+20.3
その他事業
24,553
+2.5
調整額
△32,678
―
合計
1,669,707
+20.5
(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
(2)財政状態当連結会計年度末における総資産は、米国住宅事業を中心とした棚卸資産の増加や、関連会社への出資等に伴う投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末より2,233億73百万円増加し、1兆5,375億98百万円となりました。負債は、米国住宅事業を中心とした棚卸資産の取得に伴う有利子負債の増加等により、前連結会計年度末より809億8百万円増加し、8,550億45百万円となりました。なお、純資産は6,825億54百万円、自己資本比率は40.8%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、国内流通事業における売上債権が増加したこと等により、前連結会計年度末より160億4百万円増加し、2,359億52百万円となりました。
<住宅・建築事業>当連結会計年度末における住宅・建築事業の資産は、分譲住宅事業における棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末より103億71百万円増加し、2,091億18百万円となりました。
<海外住宅・不動産事業>当連結会計年度末における海外住宅・不動産事業の資産は、円安による外貨建資産の円換算金額の増加や分譲住宅事業及び不動産開発事業の拡大に伴い、棚卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末より2,256億25百万円増加し、7,662億61百万円となりました。
<資源環境事業>当連結会計年度末における資源環境事業の資産は、業務提携目的で保有する上場株式の時価上昇に伴い、投資有価証券が増加したこと等により、前連結会計年度末より28億74百万円増加し、925億83百万円となりました。
<その他事業>当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法投資利益の発生に伴い、投資有価証券が増加した一方、有料老人ホームを売却したことに伴い、土地・建物が減少したこと等により、前連結会計年度末より44億39百万円減少し、742億83百万円となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より226億62百万円減少して1,473億73百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動により資金は552億76百万円増加しました(前連結会計年度は915億76百万円の増加)。これは、米国住宅事業を中心とした棚卸資産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,883億85百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動により資金は523億85百万円減少しました(前連結会計年度は402億54百万円の減少)。これは、米国での集合住宅及び商業複合施設等の開発等に資金を使用したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動により資金は329億98百万円減少しました(前連結会計年度は70億29百万円の減少)。これは、配当金の支払等により資金が減少したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散、複数の金融機関とのコミットメントライン(特定融資枠)の設定など、資金調達リスクを軽減するため様々な対応策をとっております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,483億23百万円となっております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。固定資産の減損及び繰延税金資産につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、棚卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りにあたっては、近隣地域における市場価格や直近の販売状況等を踏まえた販売計画に基づいて、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については移動平均法による原価法を採用しております。市場価格のない株式等について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められなければ、減損処理しております。市場価格のない株式等の実質価額の見積りにあたっては、投資先の直近の業績や事業計画等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③貸倒引当金売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の見積りにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。取引先の財政状態及び業況が見込以上に悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④固定資産の減損減損の兆候がある資産又は資産グループについて、そこから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が減損損失判定時点の帳簿価額の合計を下回る場合、減損損失判定時点の帳簿価額の合計と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、並びに減損損失の認識及び測定にあたっては、直近の取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画に基づいて、将来キャッシュ・フローを算定しております。これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤繰延税金資産繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。繰延税金資産の回収可能性の見積りにあたっては、直近の取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画のほか、将来減算一時差異のスケジューリングを考慮しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。