【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経営成績
当社グループは、現在5つの事業セグメントによる事業管理を行っておりますが、将来的なあるべき姿に向けた戦略面においては、第七次中期計画より掲げる“「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>4系列バリューチェーンへのチャレンジ”というテーマに則り、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのバリューチェーン毎に戦略を立案および遂行しております。
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症からの経済活動の再開に伴う需給ギャップの発生、国際情勢などを背景とした世界的なインフレの進行、各国通貨政策のギャップ、円安の進行など事業環境の変動は大きく、先行きの不透明な状況が続きました。
そのような状況のなか、当社グループの業績を5つの事業セグメントベースで総括いたしますと、世界的な原材料価格やエネルギーコスト、人件費などの上昇に対して国内外のグループ各社が価格改定や効率化を進めた結果、健康食品事業、海外食品事業および外食事業は増収増益となりましたが、香辛・調味加工食品事業において価格改定でコスト増を吸収しきれず減益となった影響が大きく、グループトータルでは増収減益という結果となりました。
なお、当社は2022年9月30日付で米国キーストーンナチュラルホールディングス社を子会社化しており、当第4四半期連結会計期間より、同社の連結業績を海外食品事業セグメントに計上しております。
これらの結果、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
2023年3月期
金額(百万円)
前期比(%)
売上高
275,060
108.6
営業利益
16,631
86.5
経常利益
18,253
86.4
親会社株主に帰属する当期純利益
13,703
98.2
当社が重視する経営指標は次のとおりとなりました。
2022年3月期
2023年3月期
ATO(総資産回転率)
0.67回
0.71回
ROS(売上高営業利益率)
7.6%
6.0%
ROA(総資産営業利益率)
5.1%
4.3%
ROE(自己資本当期純利益率)
5.3%
5.1%
セグメント別の経営成績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。
事業の種類別
セグメント
売上高
営業利益
(セグメント利益又は損失(△))
金額
(百万円)
前期比
(%)
金額
(百万円)
前期比
(%)
香辛・調味加工食品事業
119,802
102.0
7,915
62.7
健康食品事業
16,520
114.5
1,908
-
海外食品事業
48,875
125.0
5,368
102.3
外食事業
48,371
106.5
2,268
151.0
その他食品関連事業
50,699
111.3
1,234
83.4
小計
284,266
108.5
18,693
90.2
調整(消去)
△9,206
-
△2,062
-
合計
275,060
108.6
16,631
86.5
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
<香辛・調味加工食品事業>
当事業セグメントは、グループの収益を支えるコア事業としての役割を務めてきましたが、当連結会計年度は原材料価格やエネルギーコスト上昇の影響を大きく受けました。2022年8月に主力のルウ製品をはじめとした一部製品の価格改定を行いましたが、大幅なコスト増を吸収することができず、減益となりました。
以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,198億2百万円、前期比2.0%の増収、営業利益は79億15百万円、前期比37.3%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は6.6%となり、前期より4.1pt減少いたしました。
<健康食品事業>
当事業セグメントは、国内の構造改革の推進とともにグローバルな機能性素材系バリューチェーンの早期構築に取り組んでおります。当連結会計年度は、「1日分のビタミン」を中心とするゼリー製品に注力するほか、コロナ禍の影響で苦戦していた「ウコンの力」が回復基調にあることに加え、固定費削減などの構造改革の努力もあり、3年ぶりに営業黒字を確保いたしました。
以上の結果、健康食品事業の売上高は165億20百万円、前期比14.5%の増収、営業利益は19億8百万円、前期からは20億46百万円改善いたしました。結果、売上高営業利益率は11.5%となり、前期より12.5pt向上いたしました。
<海外食品事業> 連結対象期間:主として2022年1月~12月
米国豆腐事業は、原材料価格や人件費が急騰するなか2022年1月、11月と年2回の価格改定を実施し、コスト増の吸収に努めました。また2022年9月にはM&Aによりキーストーンナチュラルホールディングス社をグループ化しておりますが、M&Aに係るアドバイザリー費用やのれん償却の影響により、事業全体では増収減益となりました。
中国カレー事業は、ゼロコロナ政策の影響を受け業務用事業が苦戦するものの、家庭用事業は家庭内調理の増加や価格改定も寄与して好調に推移し、事業全体では増収増益となりました。
タイ機能性飲料事業は、コロナ収束に伴う経済活動再開により都市部に人流がシフトし、トラディショナルトレードを中心に苦戦しましたが、為替影響もあり増収増益となりました。
以上の結果、海外食品事業の売上高は488億75百万円、前期比25.0%の増収、営業利益は53億68百万円、前期比2.3%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は11.0%となり、前期より2.4pt減少いたしました。
<外食事業> 連結対象期間:㈱壱番屋は2022年3月~2023年2月、海外子会社は2022年1月~12月
当事業セグメントは、ウィズコロナへの環境変化や利便性向上に対応しながら、常にお客様の期待値を超える外食チェーンをめざし、国内外の事業拡大に取り組んでおります。
㈱壱番屋の国内既存店売上高は、コロナ時の行動制限が緩和され外食産業の需要が復活するなか、原材料価格やエネルギーコストの急騰を2022年6月、12月の2回の価格改定で吸収し、コロナ前の水準には至らないものの増収増益を確保しました。一方、海外事業に関しては中国のロックダウンの影響が大きく、海外事業全体では減益となりました。
以上の結果、外食事業の売上高は483億71百万円、前期比6.5%の増収、営業利益は22億68百万円、前期比51.0%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は4.7%となり、前期より1.4pt向上いたしました。
<その他食品関連事業>
㈱デリカシェフは、デザートや焼成パン類が堅調に推移し前期並みの売上は確保したものの、原材料価格の高騰や製造経費の増加により営業利益を大きく落としました。
㈱ヴォークス・トレーディングは、取引先への価格転嫁が進んだことに加え、外食需要の回復や輸出商材が好調に推移したこともあり増収増益となりました。
以上の結果、その他食品関連事業の売上高は506億99百万円、前期比11.3%の増収、営業利益は12億34百万円、前期比16.6%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は2.4%となり、前期より0.8pt減少いたしました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
香辛・調味加工食品事業
106,109
+2.4
健康食品事業
15,944
+10.0
海外食品事業
27,698
+33.5
外食事業
12,741
+8.3
その他食品関連事業
21,352
+0.2
合計
183,845
+6.9
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
② 受注状況
主要製品の受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
香辛・調味加工食品事業
119,802
+2.0
健康食品事業
16,520
+14.5
海外食品事業
48,875
+25.0
外食事業
48,371
+6.5
その他食品関連事業
50,699
+11.3
小計
284,266
+8.5
調整(消去)
△9,206
-
合計
275,060
+8.6
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
加藤産業㈱
31,467
12.4
32,639
11.9
三菱食品㈱
17,192
6.8
17,345
6.3
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて147億11百万円増加し3,967億32百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて21億83百万円減少し1,549億40百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて168億94百万円増加し2,417億91百万円となりました。
流動資産の減少の主な要因は、受取手形及び売掛金が39億18百万円、商品及び製品が27億14百万円、原材料及び貯蔵品が15億78百万円増加した一方で、キーストーンナチュラルホールディングス社のグループ化等により現金及び預金が102億52百万円減少したことなどによるものです。
固定資産の増加の主な要因は、投資有価証券が76億21百万円減少した一方で、キーストーンナチュラルホールディングス社のグループ化等によりのれんが122億19百万円増加したことや、建設仮勘定が66億71百万円、退職給付に係る資産が38億76百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて119億35百万円増加し953億89百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて50億45百万円増加し566億54百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて68億90百万円増加し387億35百万円となりました。
流動負債の増加の主な要因は、未払法人税等が11億31百万円減少した一方で、支払手形及び買掛金が22億42百万円、短期借入金が13億3百万円増加したことなどによるものです。
固定負債の増加の主な要因は、繰延税金負債が13億68百万円減少した一方で、退職給付に係る負債が40億76百万円、リース債務が31億17百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産は、自己株式の取得により自己株式が増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことや、為替換算調整勘定が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて27億76百万円増加の3,013億43百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の70.4%から68.6%となり、1株当たり純資産が2,700円99銭から2,791円64銭となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー194億83百万円に対し、「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得」「有形固定資産の取得」などの投資活動によるキャッシュ・フロー△214億67百万円、「短期借入金の返済」「自己株式の取得」などの財務活動によるキャッシュ・フロー△127億39百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は626億82百万円となり、期首残高より130億23百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は194億83百万円(前期比+33億43百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益212億73百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、退職給付に係る負債の増減額の増加(前期比+24億89百万円)、法人税等の支払額の減少(前期比+15億37百万円)、税金等調整前当期純利益の減少(前期比△20億96百万円)などが要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は214億67百万円(前期比△110億68百万円)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出160億56百万円、有形固定資産の取得による支出140億84百万円、有価証券の売却による収入78億80百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の増加(前期比△160億56百万円)、有形固定資産の取得による支出の増加(前期比△22億21百万円)、投資有価証券の取得による支出の減少(前期比+83億54百万円)などが要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は127億39百万円(前期比△26億72百万円)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出721億78百万円、自己株式の取得による支出60億3百万円、配当金の支払額45億33百万円、短期借入れによる収入733億81百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、短期借入金の返済による支出の増加(前期比△296億55百万円)、自己株式の取得による支出の増加(前期比△20億2百万円)、短期借入れによる収入の増加(前期比+304億16百万円)などが要因であります。
(4)資本の財源及び資金の流動性について
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、財務体質の健全性の維持と資金効率の向上を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。
財務体質の健全性の維持に関しては、「シングルA(安定的)」以上の信用格付の取得・維持を目指し、信用力および透明性の向上を図ります。
資金効率の向上に関しては、当社および国内子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、国内子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っております。
企業価値向上に関しては、第七次中期計画の期間中に、4系列バリューチェーンの成長領域へ400億円、既存領域へ200億円、デジタル変革・環境領域へ100億円の、計700億円の事業投資を計画しております。また、当社グループが保有する政策保有株式の一部売却を原資とした、120億円の自己株式取得を計画しております。
なお、コロナ出口における経済活動再開に伴う需給バランスの乱れやロシアによるウクライナ侵攻を背景にした原材料・エネルギーコストの高騰や世界的なインフレの進行および各国通貨の金利上昇など先行き不透明な状況が続いているなか、国内における人口減少や超高齢社会の進行、それに伴う労働力不足、海外における人口の増加、異常気象による天然資源・食糧・水の不足など社会問題はますます深刻化しております。
このような状況下で、当社グループにおいては、一部製品・サービスで価格改定を実施し、足元の急激な環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、今後も当社グループの企業価値向上に努めてまいります。
(経営資源の配分に関する考え方)
当社グループは、適正な手元資金の水準について、事業上の資金を回収するまでの運転資金調達期間(売上高の約1.8か月分)の観点と不測の事態に対応できる安全資産の額の観点から検証し、適正な水準を設定しております。適正な水準を超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上のために既存領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでまいります。
(資金需要の主な内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用などがあります。投資活動に係る資金支出では、香辛・調味加工食品事業において、国内業務用市場でのプレゼンス向上をめざしたハウスギャバン株式会社の立ち上げ(2023年4月)に伴う本社移転工事や
CO2削減に向けたレトルト製品レンジパウチ化のための設備更新があり、海外食品事業において、米国での健康志向や環境意識の高まりを背景に強い需要の続く豆腐製品の生産ライン拡張、中国での家庭用カレールウ事業拡大に向けた生産ライン拡張、インドネシアでの家庭用カレールウ進出を背景にした小型ルウの設備の設置などがあります。また、持続的な成長の実現のため、既存領域だけでなく、4系列バリューチェーンによる成長実現を目指し、成長領域や新規領域についても、投資を行ってまいります。
(資金調達)
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローを内部的な資金の源泉と考えており、設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金や社債の発行等により充当することとしております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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