【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の概要及び分析当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、新型コロナウイルス感染再拡大に伴う中国のロックダウン、急激な為替変動など不安定要因が多く発生しました。加えて、後半からは米国の金利上昇により、世界的な景気減速懸念が広がりました。当社事業においては、アウトドアレジャー需要が引き続き堅調に推移する中、半導体をはじめとした部品不足の長期化、サプライチェーンの混乱などにより製品供給不足が生じました。さらに、これまでにないレベルで原材料価格、物流費、人件費などのコストが高騰しましたが、一方で円安は当社にとっては追い風となりました。このような経営環境の中、当社は開発・製造・販売が一体となり部品調達不足の影響最小化に努めるとともに、損益分岐点経営を念頭に、経費コントロールやコストダウンといった自助努力、加えて価格転嫁を進めました。この結果、当連結会計年度の売上高は2兆2,485億円(前期比4,360億円・24.1%増加)、営業利益は2,249億円(同425億円・23.3%増加)、経常利益は2,393億円(同499億円・26.3%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,744億円(同189億円・12.1%増加)となり、過去最高の売上高・各利益を達成しました。売上高が2兆円を、営業利益及び経常利益が2,000億円を超えたのは初めてとなります。なお、当連結会計年度の為替換算レートは、米ドル132円(前期比22円の円安)、ユーロ138円(同8円の円安)でした。売上高は、世界的なサプライチェーン混乱による供給不足の影響を受けたものの、先進国における船外機需要の堅調な推移、新興国の二輪車需要が回復したことで増収となりました。営業利益は、原材料や物流費をはじめ、コストが大幅に上昇しましたが、コストダウンの継続や、価格転嫁の効果顕在化、加えて円安によるプラスの効果により、増益となりました。財務体質については、ROEは18.7%(前期比1.0ポイント減少)、ROICは11.9%(同0.5ポイント減少)、ROAは11.2%(同0.7ポイント増加)となり、いずれも中期目標の水準を上回りました。自己資本は1兆31億円(前期末比1,438億円増加)、自己資本比率は45.9%(同0.9ポイント減少)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は32億円のマイナス(同935億円減少)となりました。
セグメント別の概況〔ランドモビリティ〕売上高1兆4,682億円(前期比2,885億円・24.5%増加)、営業利益874億円(同187億円・27.2%増加)となりました。部門別の経営成績の概要は、次の通りです。二輪車では、売上高1兆2,917億円(前期比2,751億円・27.1%増加)、営業利益847億円(同321億円・61.2%増加)となりました。先進国においては、需要が堅調に推移し、欧州・北米で販売台数が増加した結果、売上高3,229億円(前期比735億円・29.5%増加)となりました。新興国においては、各国で経済活動の回復が進んだことで需要が増加し、インドネシア・ベトナム・インドなどで販売台数が増加した結果、売上高9,688億円(前期比2,017億円・26.3%増加)となりました。半導体などの部品不足は想定よりも長期化していますが、代替部品の調達、生産管理の徹底により影響を最小化し、増収となりました。二輪車全体の営業利益は、原材料価格や物流費などの生産コスト高騰の逆風を受けましたが、価格転嫁の実施や円安によるプラスの効果もあり、増益となりました。二輪車全体の販売台数は、多くの地域での需要が堅調に推移し、477万台(前期比6.3%増加)となりました。RV(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)、スノーモビル)では、売上高1,233億円(前期比106億円・9.4%増加)、営業損失29億円(前期:営業利益84億円)となりました。アウトドアレジャー需要は引き続き旺盛ですが、部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が続きました。販売台数は減少しましたが、売上高は価格転嫁や円安によるプラスの効果もあり、増収となりました。営業利益は米国生産拠点における生産稼働率の低下や生産コスト高騰により、減益となりました。電動アシスト自転車では、売上高533億円(前期比28億円・5.5%増加)、営業利益56億円(同21億円・27.5%減少)となりました。第2四半期連結会計期間に上海ロックダウンに起因する部品不足や、コンテナ不足による物流遅延の影響を受け、大幅な生産遅れが発生しました。その後、状況は改善に向かっていますが、挽回には至らず販売台数が減少しました。売上高は円安のプラス効果もあり、微増となりました。営業利益は、コストアップに対して価格転嫁を進めましたが、第1四半期連結会計期間にバッテリーのリコールに伴う製品保証引当金を計上したこともあり、減益となりました。
〔マリン〕売上高5,170億円(前期比1,259億円・32.2%増加)、営業利益1,092億円(同324億円・42.2%増加)となりました。船外機では、先進国におけるアウトドアレジャーブームは依然継続しており、特に200馬力以上の大型船外機の需要が堅調に推移しました。コンテナ不足の影響や、米国の港湾混乱の影響がありましたが、徐々に改善し販売台数が増加しました。また新興国においても観光需要が回復しました。ウォータービークルでは、強い需要が継続しましたが、部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が続き、販売台数が減少しました。マリン事業全体では、第3四半期連結会計期間以降に価格転嫁が進んだことに加え、円安によるプラスの効果もあり、増収・増益となりました。
〔ロボティクス〕売上高1,159億円(前期比44億円・3.7%減少)、営業利益119億円(同57億円・32.6%減少)となりました。中国では上海ロックダウンの影響と景気回復の遅れにより設備投資需要が減少しましたが、欧米の車載向け投資やチャイナプラスワンの動き、自国生産移行に向けた設備投資が堅調に推移しました。当社は、サーフェスマウンターでは車載系の大型投資などで日本を中心に先進国の販売が安定的に増加しましたが、中国・台湾・韓国は需要の冷え込みにより減少しました。産業用ロボットと半導体製造装置でも中国・台湾などで販売が減少しました。その結果、ロボティクス事業全体では減収となりました。営業利益は、部品・物流費の高騰により減益となりました。
〔金融サービス〕売上高622億円(前期比135億円・27.8%増加)、営業利益175億円(同16億円・8.4%減少)となりました。全地域で販売金融債権が増加し、増収となりました。営業利益は、利上げ影響を受け調達金利が上昇したことに加え、リスクに鑑み貸倒引当金を計上したこと、一方で前年は一過性要因として貸倒引当費用が減少していたことから、減益となりました。
〔その他〕売上高851億円(前期比124億円・17.1%増加)、営業損失12億円(前期:営業利益0億円)となりました。ゴルフカーにおいて高価格帯の売上増加や価格転嫁実施により増収となりましたが、原材料価格高騰やサプライチェーン混乱に伴う固定費増加などにより、減益となりました。
なお、各セグメントの主要な製品及びサービスは以下のとおりです。
セグメント
主要な製品及びサービス
ランドモビリティ
二輪車、中間部品、海外生産用部品、四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、スノーモビル、電動アシスト自転車、電動車いす、自動車用エンジン、自動車用コンポーネント
マリン
船外機、ウォータービークル、ボート、プール、漁船・和船
ロボティクス
サーフェスマウンター、半導体製造装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプター
金融サービス
当社製品に関わる販売金融及びリース
その他
ゴルフカー、発電機、汎用エンジン、除雪機
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
製品
台数(台)
前期比(%)
ランドモビリティ
二輪車
4,788,286
109.4
四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル
59,550
91.2
電動アシスト自転車
855,701
104.2
マリン
船外機
367,211
107.8
ウォータービークル
42,376
101.1
ボート、漁船・和船
10,731
83.3
ロボティクス
サーフェスマウンター、産業用ロボット
37,558
74.5
その他
ゴルフカー
59,319
94.3
(注) 主要製品について記載しています。
② 受注実績当社グループは主に見込み生産をしています。
③ 販売実績
(a)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
ランドモビリティ
1,468,244
124.5
マリン
517,040
132.2
ロボティクス
115,869
96.3
金融サービス
62,178
127.8
報告セグメント計
2,163,333
124.3
その他
85,123
117.1
合計
2,248,456
124.1
(注) セグメント間取引については相殺消去しています。
(b)ランドモビリティの主要製品である二輪車の当連結会計年度における当社グループの販売実績は、次のとおりです。
地域
台数(台)
前期比(%)
日本
95,394
96.1
海外
4,678,848
106.6
地域別内訳
北米
67,574
101.5
欧州
199,344
105.5
アジア
3,826,238
107.0
その他
585,692
105.0
合計
4,774,242
106.3
(3) 財政状態の概要及び分析総資産は、前期末比3,504億円増加し、2兆1,833億円となりました。流動資産は、堅調な需要を背景とした売掛金や短期販売金融債権の増加や、部品調達難による生産遅延等で棚卸資産が増加したことなどにより同2,610億円増加しました。固定資産は、小売ファイナンスの増加に伴う長期販売金融債権の増加などにより同894億円の増加となりました。負債合計は、運転資金の増加等による有利子負債の増加などにより同1,967億円増加し、1兆1,290億円となりました。純資産合計は、配当金の支払419億円、自己株式の取得200億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,744億円、為替換算調整勘定の増加478億円などにより同1,536億円増加し、1兆543億円となりました。これらの結果、自己資本比率は45.9%(前期末:46.9%)、D/Eレシオ(ネット)は0.31倍(同:0.21倍)となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕税金等調整前当期純利益2,458億円(前期:1,997億円)や減価償却費598億円(同:511億円)などの収入に対して、棚卸資産の増加901億円(同:762億円の増加)、販売金融債権の増加708億円(同:50億円の減少)、法人税等の支払額538億円(同:301億円)、売上債権の増加129億円(同:86億円の増加)などの支出により、全体では709億円の収入(同:1,413億円の収入)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕投資有価証券の売却による収入225億円(前期:171億円の収入)などがありましたが、固定資産の取得による支出894億円(同:668億円の支出)、投資有価証券の取得による支出153億円(同:54億円の支出)などにより、742億円の支出(同:510億円の支出)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕配当金の支払や自己株式の取得などによる支出がありましたが、有利子負債の増加などにより231億円の収入(前期:935億円の支出)となりました。
これらの結果、当期のフリー・キャッシュ・フローは32億円のマイナス(前期:903億円のプラス)、現金及び現金同等物は2,968億円(前期末比:219億円の増加)となりました。当期末の有利子負債は6,027億円(同:1,442億円の増加)となりました。
(5) 金融サービス事業を区分した経営成績情報以下の表は金融サービス事業と金融サービス事業以外の事業を区分した要約連結貸借対照表、要約連結損益計算書及び要約連結キャッシュ・フロー計算書です。これらの要約連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準においては要求されていませんが、金融サービス事業はそれ以外の事業とは性質が異なるため、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の「金融サービス事業以外の事業及び消去」は連結計から金融サービス事業の数値を差し引いたものとしています。
要約連結貸借対照表
(単位:百万円)
金融サービス事業
金融サービス事業以外の事業及び消去
連結計
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
資産の部
現金及び預金
16,378
12,995
260,034
275,784
276,412
288,780
短期販売金融債権
154,599
230,131
–
–
154,599
230,131
受取手形、売掛金及び契約資産
199
325
161,427
187,085
161,626
187,410
棚卸資産
–
–
405,360
525,847
405,360
525,847
その他
39,518
92,685
21,981
△1,763
61,499
90,921
貸倒引当金
△11,027
△13,141
△3,772
△4,266
△14,799
△17,408
流動資産合計
199,669
322,996
845,029
982,686
1,044,698
1,305,683
有形及び無形固定資産
15,016
18,568
367,531
412,050
382,547
430,619
長期販売金融債権
208,209
256,382
–
–
208,209
256,382
その他
7,514
7,367
192,882
187,915
200,396
195,283
貸倒引当金
△2,745
△4,404
△189
△272
△2,934
△4,677
固定資産合計
227,994
277,914
560,224
599,693
788,218
877,607
資産合計
427,663
600,910
1,405,254
1,582,380
1,832,917
2,183,291
負債の部
短期借入金
58,564
113,976
4,390
59,009
62,954
172,985
1年内返済予定の長期借入金
32,185
118,065
44,947
34,903
77,132
152,969
1年内償還予定の社債
2,240
5,156
–
–
2,240
5,156
支払手形及び買掛金
1,251
1,725
139,273
146,408
140,524
148,133
その他
26,543
31,002
203,870
242,624
230,413
273,627
流動負債合計
120,784
269,927
392,481
482,946
513,265
752,873
長期借入金
183,171
162,138
125,463
87,863
308,634
250,002
社債
7,552
21,575
–
–
7,552
21,575
その他
1,576
1,491
101,218
103,049
102,794
104,541
固定負債合計
192,301
185,205
226,679
190,913
418,980
376,119
負債合計
313,085
455,132
619,160
673,859
932,246
1,128,992
純資産の部
資本金
31,806
35,093
54,294
51,007
86,100
86,100
資本剰余金
143
143
67,958
67,907
68,101
68,050
利益剰余金
82,513
93,629
678,969
800,419
761,483
894,049
自己株式
–
–
△11,722
△31,725
△11,722
△31,725
その他の包括利益累計額合計
114
16,911
△44,850
△30,313
△44,736
△13,401
非支配株主持分
–
–
41,444
51,225
41,444
51,225
純資産合計
114,577
145,778
786,093
908,520
900,670
1,054,298
負債純資産合計
427,663
600,910
1,405,252
1,582,380
1,832,917
2,183,291
要約連結損益計算書
(単位:百万円)
金融サービス事業
金融サービス事業以外の事業及び消去
連結計
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
売上高
48,643
62,178
1,763,853
2,186,278
1,812,496
2,248,456
売上原価
17,900
29,382
1,287,755
1,585,328
1,305,655
1,614,711
売上総利益
30,742
32,795
476,098
600,949
506,840
633,745
販売費及び一般管理費
11,595
15,251
312,903
393,629
324,498
408,880
営業利益
19,147
17,543
163,195
207,320
182,342
224,864
営業外収益
764
1,359
17,716
24,673
18,480
26,033
営業外費用
495
–
10,920
11,603
11,415
11,603
経常利益
19,417
18,903
169,990
220,390
189,407
239,293
特別利益
–
–
13,704
8,946
13,704
8,946
特別損失
–
–
3,407
2,441
3,407
2,441
税金等調整前当期純利益
19,417
18,903
180,287
226,895
199,704
245,798
法人税等合計
4,676
3,501
30,896
52,715
35,572
56,216
当期純利益
14,740
15,401
149,392
174,180
164,132
189,582
非支配株主に帰属する当期純利益
–
–
8,553
15,142
8,553
15,142
親会社株主に帰属する当期純利益
14,740
15,401
140,838
159,037
155,578
174,439
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:百万円)
金融サービス事業
金融サービス事業以外の事業及び消去
連結計
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
2021年12月期
2022年12月期
営業活動によるキャッシュ・フロー
税金等調整前当期純利益
19,417
18,903
180,287
226,895
199,704
245,798
減価償却費
2,837
3,388
48,292
56,436
51,129
59,824
販売金融債権の増減額(△は増加)
4,967
△70,825
–
–
4,967
△70,825
その他
△6,203
△8,747
△108,263
△155,128
△114,466
△163,876
営業活動によるキャッシュ・フロー
21,018
△57,281
120,318
128,203
141,336
70,921
投資活動によるキャッシュ・フロー
有形及び無形固定資産の取得による支出
△3,250
△8,651
△63,514
△80,737
△66,764
△89,388
その他
△24,528
△35,090
40,266
50,319
15,738
15,228
投資活動によるキャッシュ・フロー
△27,778
△43,741
△23,248
△30,418
△51,026
△74,160
財務活動によるキャッシュ・フロー
借入金の増減額(△は減少)
△29,259
78,393
△10,869
6,609
△40,128
85,003
社債の増減額(△は減少)
5,038
12,654
–
–
5,038
12,654
その他
–
3,287
△58,399
△77,841
△58,399
△74,554
財務活動によるキャッシュ・フロー
△24,220
94,335
△69,268
△71,232
△93,488
23,103
現金及び現金同等物に係る換算差額
3,523
3,305
7,341
△1,288
10,864
2,017
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)
△27,458
△3,382
35,143
25,265
7,685
21,882
現金及び現金同等物の期首残高
43,765
16,378
223,415
258,558
267,180
274,936
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額
70
–
–
–
70
–
現金及び現金同等物の期末残高
16,378
12,995
258,558
283,823
274,936
296,819
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。当連結会計年度においては、フリー・キャッシュ・フローはマイナスとなりましたが、各国での旺盛な需要や堅調な販売を背景に販売金融債権や棚卸資産などが増加したことや、設備投資などの投資活動が活発であったことによるものです。また、株主還元と資本効率の向上を図るために自己株式の取得を行いました。当社は株主の皆様の利益向上を重要な経営課題と位置付け、企業価値の向上に努めています。株主配当については期末配当1株当たり67.5円(2023年3月22日開催の第88期定時株主総会にて決議)、2023年は年間配当1株当たり130円、加えて300億円の自己株式の取得を予定しています。また、2023年の設備投資は1,000億円、研究開発費は1,210億円を計画しています。
(7) 重要な会計方針及び見積り当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。なお、当連結会計年度における重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
① 棚卸資産当社グループは、棚卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
② 貸倒引当金当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済指標の著しい悪化などの外部環境の変化により債権の信用リスクが増加した場合には、必要に応じて見積りに対し補正を加えています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 固定資産の減損当社グループは、減損の兆候のある資産または資産グループごとに将来キャッシュ・フローの見積りを行い、固定資産の減損要否の判定を行っています。資産または資産グループの減損が必要であると判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を超える部分について減損損失を認識します。将来、回収可能価額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
④ 投資有価証券当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関及びスタートアップ企業・ベンチャー企業等の株式を保有しています。これらの株式には価格変動性が高い上場株式と市場価格のない非上場株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しています。時価のある有価証券についての減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (有価証券関係)」に記載しています。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤ 繰延税金資産当社グループは、将来の一定期間における課税所得の見積りやタックスプランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を検討しています。これらの将来に係る見積りは、市場の動向や経済環境、また、当社グループの事業計画等の変動の影響を受けるため、回収可能性が大きく変動した場合、税金費用が大きく変動する可能性があります。
⑥ 製品保証引当金当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
⑦ 退職給付に係る負債従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。数理計算上の差異等の償却は退職給付費用の一部を構成していますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものです。また、前述の前提条件の変化により償却額は変動する可能性があります。
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