【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)
経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度の当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞が世界的に解消され、わが国でも、政府により行動制限の緩和等が進められ、経済活動の正常化が進んでいる一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、資源価格の高騰、サプライチェーンの混乱、さらに金融資本市場の変動等、先行き不透明な事業環境は依然として継続しております。このような状況の中、当社グループは、上海ロックダウン、半導体や自動車輸送船の不足等による生産・出荷台数の減少のほか、原材料価格や物流費の高騰など外部環境の悪化があったものの、設計変更等による半導体不足への対応、単価改善、販売費用の抑制、原価低減や固定費の効率化といった活動を全社で推進し、収益基盤の改善を着実に進めております。さらに、中期経営計画の足場固め期間(2020年3月期~2022年3月期)で築いてきた米国工場、マルチ電動化技術、ラージ商品群などの資産を最大限活用して、ビジネスを成長軌道に乗せ、財務基盤を強化する本格的成長期間の初年度として取り組みを進めてまいりました。昨年4月には、北米にて、新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-50」の販売を開始し、また、昨年8月には欧州、9月には日本にて、新世代ラージ商品群の第一弾となる新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-60」を導入しました。この「CX-60」では、新開発の縦置きプラットフォームと高出力パワートレインがもたらす滑らかでパワフルな走りに加え、意識喪失に対してドライバーの運転が継続できないと判断した場合にクルマが自動で減速停止し、緊急通報まで繋げる先進安全技術「ドライバー異常時対応システム」を初採用しています。また、自動ドライビングポジションガイドなどの機能をもつ「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」を採用しています。これらの技術は、「2022~2023 日本自動車殿堂 カーテクノロジーオブザイヤー」に選定されるなど、高く評価されています。当社は、「CX-60」に続き、2023年4月には、新世代ラージ商品群の第二弾となる新型ミッドサイズクロスオーバーSUV「MAZDA CX-90」を米国で導入しました。2023年中には、「MAZDA CX-70」、「MAZDA CX-80」と、更にラージ商品2車種を導入予定であり、各市場の特性や顧客ニーズに応えるSUVラインアップを拡充することにより、ビジネス及びブランドの更なる成長を図ってまいります。[グローバル販売]当連結会計年度のグローバル販売台数は、上期の半導体の供給不足による減産や輸送船不足の影響などにより、日本を除く各市場で販売が減少したことから、前期比11.3%減の1,110千台となりました。市場別の販売台数は、次のとおりであります。<日本>2022年9月に販売を開始した「CX-60」に加え、2022年10月に商品改良した「MAZDA CX-5」や「マツダ ロードスター」が増加したことにより、前期比10.8%増の165千台となりました。<北米>米国は、上期での減産影響などにより、前期比9.3%減の301千台となりましたが、2022年4月より販売を開始した「CX-50」に加え、「MAZDA CX-30」などSUV商品群が販売の増加に貢献し、第4四半期連結会計期間の販売台数は、前年同期比7.4%増の88千台となりました。北米全体では、メキシコでの「MAZDA2」や「CX-5」の増加などにより、前期比7.4%減の407千台となりました。<欧州>ロシアやウクライナでの販売の減少に加え、上期の減産影響などにより、前期比15.5%減の160千台となりました。なお、第4四半期連結会計期間としては、「MAZDA2 Hybrid」や「CX-60」のプラグインハイブリッドモデルを中心に増加し、前年同期比20.9%増の52千台となりました。<中国>主要モデルサイクルの一巡に加え、価格競争の激化などにより、前期比50.4%減の84千台となりました。<その他の市場>主要市場のオーストラリアでは、荷揚げ時の検疫強化に伴う物流遅延の影響などにより、前期比11.7%減の91千台となりました。その他の市場全体では、ベトナムなどで販売増加があったものの、ASEAN市場全体としては前年同水準となったことなどにより、前期比3.1%減の294千台となりました。
[財政状態及び経営成績]a. 経営成績当連結会計年度の当社グループの連結業績は、次のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
通期
通期
増減額
増減率
売上高
31,203
38,268
+7,065
+22.6%
営業利益
1,042
1,420
+378
+36.2%
経常利益
1,235
1,859
+624
+50.5%
親会社株主に帰属する当期純利益
816
1,428
+612
+75.1%
b. 財政状態当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より2,911億円増加し、3兆2,593億円となり、負債合計は、前連結会計年度末より1,510億円増加し、1兆8,025億円となりました。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益1,428億円等により、前連結会計年度末より1,401億円増加し、1兆4,568億円となりました。自己資本比率は、前連結会計年度末より0.4ポイント増加し、44.2%(劣後特約付ローンの資本性考慮後45.2%)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績当連結会計年度のセグメント別の連結業績は、次のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
前期比
通期
通期
増減額
増減率
売上高
日本
25,447
31,948
+6,501
+25.5%
北米
14,420
20,440
+6,020
+41.7%
欧州
5,603
6,659
+1,056
+18.8%
その他の地域
6,120
6,561
+440
+7.2%
営業利益
日本
857
713
△144
△16.8%
北米
△95
381
+475
-%
欧州
149
149
+0
+0.2%
その他の地域
165
267
+102
+61.6%
<日本>売上高は、3兆1,948億円(前期比6,501億円増、25.5%増)、営業利益は713億円(前期比144億円減、16.8%減)となりました。これは、主に国内の販売台数増加に加え、販売が好調な北米向けを中心に出荷台数が増加した一方で、原材料価格が高騰したことなどによります。セグメント資産は、前期比1,566億円増加の2兆5,523億円となりました。<北米>売上高は2兆440億円(前期比6,020億円増、41.7%増)、営業利益は381億円(前期は95億円の損失)となりました。これは、主に米国での新型SUVの販売台数増加やメキシコ工場での生産台数増加などによります。セグメント資産は、前期比1,458億円増加の6,715億円となりました。<欧州>売上高は6,659億円(前期比1,056億円増、18.8%増)、営業利益は149億円(前期比0.2%増)となりました。これは、主に新型SUVの導入や販売単価の改善など、販売の質的改善の取り組みが進んだことによるものです。セグメント資産は、前期比823億円増加の2,677億円となりました。<その他の地域>売上高は6,561億円(前期比440億円増、7.2%増)、営業利益は267億円(前期比102億円増、61.6%増)となりました。これは、主にオーストラリアやタイなどでの販売費用の抑制や為替の円安効果などによるものです。セグメント資産は、前期比83億円増加の3,722億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末において、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より233億円減少の7,171億円、有利子負債は、前連結会計年度末より653億円減少の6,155億円となりました。この結果、1,016億円のネット・キャッシュ・ポジションとなっております。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,700億円に対し、棚卸資産の増加等により、1,374億円の増加(前期は1,892億円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出798億円等により、994億円の減少(前期は1,362億円の減少)となりました。
以上により、連結フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、380億円の増加(前期は529億円の増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済等により、899億円の減少(前期は864億円の減少)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における車両生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
台数(千台)
前期比(%)
日本
764
9.8
北米
210
61.4
合計
974
17.9
(注) 北米は、メキシコ工場と米国工場との合計であります。
b. 受注実績当社グループは、主として販売会社の販売実績及び受注状況等を考慮して生産計画を立て、見込生産を行っております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
953,929
16.9
北米
1,636,023
35.6
欧州
635,349
17.8
その他の地域
601,451
7.8
合計
3,826,752
22.6
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。2.主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中の将来に関する事項は、本報告書提出日時点において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。なお、当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 」に記載しております。
<売上高>当連結会計年度における売上高は、出荷台数の増加と単価改善等により、3兆8,268億円(前期比7,065億円増、22.6%増)となりました。仕向地別では、国内は、販売台数増により、6,229億円(前期比534億円増、9.4%増)となり、海外は、主として北米市場向けの出荷台数の増加等により、3兆2,039億円(前期比6,530億円増、25.6%増)となりました。製品別では、出荷台数の増加や新型SUVの導入効果に加え、為替の円安などにより、車両売上高は3兆2,555億円(前期比6,743億円増、26.1%増)となり、海外生産用部品売上高は162億円(前期比250億円減、60.7%減)となりました。そのほか、部品売上高は3,204億円(前期比580億円増、22.1%増)、その他売上高は2,347億円(前期比10億円減、0.4%減)となりました。<営業利益>売上高増加に加え、販売の質的改善や為替の円安効果などが原材料価格高騰の影響をオフセットしたことにより、営業利益は1,420億円(前期比378億円増、36.2%増)、連結売上高営業利益率は3.7%(前期比0.4ポイント増)となりました。なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
(単位:億円)
通期
台数・構成
+1,034
為替
+1,192
コスト改善
△1,320
固定費他
△439
前期特別損失への振替
△89
計
+378
<経常利益>為替差益260億円や持分法による投資利益158億円の計上により、1,859億円(前期比624億円増、50.5%増)となりました。<親会社株主に帰属する当期純利益>ロシアでの関連会社持分の譲渡に伴う関係会社整理損110億円を特別損失に計上したことや税金費用257億円等により、1,428億円(前期比612億円増、75.1%増)となりました。
当連結会計年度の財政状態の分析、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
② 資本の財源、資金の流動性当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、キャッシュ・フローの創出に努めております。また、自動車及び同部品の製造販売事業を行うために必要となる設備投資等に充当することを目的として、銀行借入や社債発行などにより、必要な資金を調達しております。当社グループの資金の流動性管理にあたっては、資金繰り計画を作成し、適時に更新するなどによりリスク管理を行っているほか、急激な外部環境変化に対応できるよう、一定水準の手元流動性を確保する方針としております。また、当社はグループ全体の資金を一元管理し、グループ内での相互貸借機能を保有することで、流動性リスクに対し機動的に対応できる体制を構築しております。加えて、当社は国内金融機関とのコミットメントライン契約の締結により、十分な流動性を確保する手段を保有しております。当連結会計年度末において、現金及び現金同等物7,171億円に未使用のコミットメントライン2,000億円を加えた流動性は、月商比2.9ヶ月に相当する9,171億円となっております。株主還元につきましては、当期の業績及び経営環境並びに財務状況等を勘案して決定することを方針とし、安定的な配当の実現と着実な向上に努めることとしております。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を行うことが求められます。当期の連結財務諸表の作成において設定した様々な見積り及び仮定は、当社経営者がその内容について合理的であると判断したものであり、実際の業績は、これらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 貸倒引当金売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検証し、回収不能見込額を計上しておりますが、将来、取引先等の財務状況が悪化するなど支払能力が低下した場合は、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。b. 損害補償損失引当金将来の損害補償損失に備えるため、損失の発生可能性を検証し、その損失額を合理的に見積もることができるものについて、当該損失見込額を計上しておりますが、将来、損失の発生が増加した場合は、引当金の追加計上が発生する可能性があります。c. 環境規制関連引当金環境規制に対応する費用の発生に備えるため、各国の環境規制を検証し、当連結会計年度末における発生見込額を計上しておりますが、将来、各国での環境規制がより強化された場合は、引当金の追加計上が発生する可能性があります。d. 退職給付関係退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しておりますが、これらの前提条件が変動した場合、あるいは、運用環境の悪化等により年金資産が減少した場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があります。e. 固定資産の減損当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、原則として事業会社毎を1つの資産グループとし、遊休資産、賃貸用資産及び売却予定資産は、個々の物件ごとに資産グループとして、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っておりますが、経営状況の悪化等により帳簿価額を回収できないと判断された場合には、対象資産の帳簿価額に対する減損損失の計上が必要になる可能性があります。f. 繰延税金資産繰延税金資産は、将来減算一時差異等に対して、将来の課税所得に関する予想等に基づく回収可能性を評価することにより計上されていますが、経営状況の悪化により回収できないと判断された場合や、税率変更を含む税制改正等があった場合には、評価性引当額の計上などにより、繰延税金資産の額が減額され、税金費用が発生する可能性があります。g. 製品保証引当金「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) (製品保証引当金)」に記載しております。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2022年11月に「中期経営計画のアップデートおよび2030年の経営方針について」を公表いたしました。本経営計画に係る経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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