【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概況当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により国内外の経済活動が抑制され、急速に悪化しました。緊急事態宣言の解除後は、各種政策を背景に企業業績の向上や雇用・所得環境の改善がみられ、総じて緩やかな回復基調で推移しておりましたが、第二波、第三波の影響によって感染者数が増加しており、今後の世界経済の先行きは予断を許さない状況が続いております。医薬品の研究開発の現場では、新型コロナウイルス感染症の患者様に対する治療優先のため、新薬の臨床試験の遅れが生じており、新薬開発に大きな影響が出ています。
このような状況下、当社は「未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、経営の効率化及び積極的な研究・開発・ライセンス活動を展開いたしました。また、医薬品事業の研究開発活動を加速させることを目的として、2020年4月に当社100%子会社OPA社を設立しました。OPA社は米国カリフォルニア州を事業拠点とし、主として各パイプラインの非臨床試験並びにウイルス製造に関する業務を担当します。なお、OPA社の社長には、腫瘍溶解ウイルスの研究開発に30年以上の経験を持つFrank Tufaro博士(元DNAtrix Inc. 代表取締役社長)が就任しました。しかしながら、医療現場の新型コロナウイルス感染症の患者様に対する治療優先の影響は当社にも及んでおり、当社パイプラインの新薬開発は当初計画よりも遅れています。
医薬品事業では、がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301) や核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)、新型コロナウイルス感染症治療薬を中心に研究・開発・ライセンス活動を推進させました。また、検査事業では、テロメスキャンを中心に研究・開発を推進させました。当社活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態当事業年度末の資産合計は、現金及び預金の減少1,274,657千円、売掛金の減少98,710千円、前払費用の増加38,670千円、投資有価証券の減少328,874千円、長期前払費用の減少18,819千円等により、前事業年度末に比べ1,583,642千円減少し、2,796,413千円となりました。当事業年度末の負債合計は、短期借入金の増加22,232千円、未払金の減少46,665千円、長期借入金の減少22,232千円等により、前事業年度末に比べ132,919千円減少し、793,087千円となりました。当事業年度末の純資産合計は、資本金の増加315,263千円、資本剰余金の増加337,242千円、利益剰余金の減少2,095,087千円等により、前事業年度末に比べ1,450,722千円減少し、2,003.325千円となりました。
b.経営成績当事業年度の経営成績は、売上高314,179千円(前期は売上高1,303,844千円)、営業損失1,674,652千円(前期は営業損失511,463千円)を計上しました。また、営業外収益として受取利息565千円等を計上し、営業外費用として支払利息4,170千円、譲渡制限付株式報酬償却13,899千円、新株予約権発行費9,641千円、株式交付費4,152千円、為替差損17,556千円等を計上しました結果、経常損失1,723,537千円(前期は経常損失539,177千円)になりました。2018年2月に転換社債を引き受けたUnleash Immuno Oncolytics, Inc.(米国、以下「アンリーシュ社」)は、目的としている新規ウイルスの遺伝子構築やその特性解析は進んではいるものの、資金調達も含めた事業計画は転換社債引受時から遅延しています。これらの状況を勘案した結果、当社が引き受けたアンリーシュ社の転換社債を取得日為替レートで換算した321,000千円を投資有価証券評価損とし、本転換社債にかかる未収利息を2020年第3四半期末(2020年9月30日)時点の為替レートで換算した35,681千円を貸倒損失として総額367,821千円を、また、減損損失11,140千円を特別損失として計上いたしました。その結果、当期純損失2,095,087千円(前期は当期純損失912,346千円)を計上しました。当社はアンリーシュ社との連携をさらに強化し、投資時の目的であった「全身投与可能なウイルスを当社パイプラインに加えて、アデノウイルスのプラットフォームを拡充させること」を目指し、共同開発を続けてゆきます。
セグメントの経営成績は、次の通りです。
i) 医薬品事業医薬品事業では、Transposon社とのOBP-601の新規ライセンス契約の締結に伴う契約一時金収入、Medigen Biotechnology Corp.(台湾 以下「メディジェン社」)からのテロメライシンに関する開発協力金収入や岡山大学からの次世代テロメライシンOBP-702に関する業務請負収入等が発生しました。この結果、売上高313,569千円(前期は売上高1,292,363千円)、営業損失713,361千円(前期は営業利益373,069千円)となりました。
ii)検査事業検査事業では、肺がんの患者様のCTCによる治療の予後予測を検討する順天堂大学との臨床研究を進展させました。この結果、売上高610千円(前期は売上高11,481千円)、営業損失73,346千円(前期は営業損失151,655千円)となりました
② キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物は、1,822,850千円(前期比41.2%減)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりです
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,465,199千円の支出(前期は238,228千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失2,091,359千円、株式報酬費用376,608千円の計上、投資有価証券評価損321,000千円の計上、売上債権の減少98,710千円、未払金の減少60,895千円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは37,577千円の支出(前期は4,442千円の支出)となりました。これは、主に長期貸付金による支出21,762千円、関係会社出資金の払込による支出10,763千円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは242,261千円の収入(前期は1,123,312千円の収入)となりました。これは主に株式の発行による収入245,505千円等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績該当事項はありません。
(2) 受注実績該当事項はありません。
(3) 販売実績当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度(自 2020年1月1日至 2020年12月31日)
前年同期比(%)
医薬品事業(千円)
313,569
24.3
検査事業(千円)
610
5.3
合計(千円)
314,179
24.1
(注) 1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2019年1月1日至 2019年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
ア社
1,175,753
90.2
相手先
当事業年度(自 2020年1月1日至 2020年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
A社
90,831
28.9
B社
88,297
28.1
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。3.当社顧客との各種契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積もりを行なっておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。なお、新型コロナウイルス感染症による今後の影響等を含む仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
a.固定資産の減損 当社は固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定については将来キャッシュ・フロー等の前提条件をもとに実施しておりますが、市況の変動などにより、これらの前提条件に変更が生じた場合、減損処理が必要となり、当社の業績に影響を与える可能性があります。
b.投資の減損 投資価値の下落が著しく、かつ回復可能性がないと判断した場合に投資の減損を計上しております。将来の市況悪化等により現在の帳簿価額に反映されていない損失または投資簿価の回収不能が発生した場合、投資の減損が必要となる可能性があります。
なお、当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当事業年度の経営成績等の状況については、上記「(1)経営成績等の状況の概況」をご参照ください。当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、がんのウイルス療法テロメライシン、次世代テロメライシンOBP-702、がんの早期発見または再発予測を行うテロメスキャンを揃え、がんの発見から治療までを網羅するパイプラインを構築すると共に、当社の遺伝子改変アデノウイルスプラットフォームを拡充し、がん治療の新たな医療現場ニーズに貢献できるよう、更なる新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。当事業年度の医薬品事業は、テロメライシンのライセンス先である中外製薬による臨床試験の進展や、当社における米国でのテロメライシンの臨床試験を推進させました。一方、中国でのライセンス先であったハンルイ社とは双方合意により、中国・香港・マカオにおけるテロメライシンのライセンス契約を終了しました。また、主に神経疾患領域の治療薬開発を目的にOBP-601の全世界における独占的ライセンス契約を締結しました。さらに、テロメライシンに関して、厚生労働省の定める先駆け審査制度の指定に続き、2020年6月には、米国においてオーファンドラッグ指定を米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けました。この結果、FDAからの助言相談や,承認後に一定期間の市場独占権を得ることができるようになりました。また、次世代テロメライシンOBP-702については、前臨床試験及び毒性試験やGMP製造を推進させ、アデノウイルスプラットフォームの拡充に努めました。一方、検査事業では、テロメスキャンの臨床的有用性を探索するために、日米のアカデミアによる臨床試験を進めました。また、AI開発企業の株式会社CYBO(以下「CYBO社」)の技術を用いたテロメスキャン専用ソフトウェアの開発を推進させ、検査のスループットを大きく向上させることができるようになりました。当社の経営に影響を与える大きな要因としては、研究開発、ライセンス、市場動向、為替動向に関する個々の契約等が挙げられます。研究開発について、特に臨床試験では適格な症例を組み入れる事が、その試験を成功させる大きな要因となりますが、その為に症例の組み入れが大きく遅延することがあります。特に当社ではアウトソーシングを主眼としている事により、その経費が症例の組み入れを延長の分だけ増大するリスクがあります。その為にCROを充分にオペレーション出来るよう、定例会議の実施や、CROと共に臨床施設を訪問するなどの努力を最大限行うことにしています。ライセンス契約に関しては、研究開発失敗リスクや医療行政の変動や競合他社リスクに加え、ライセンス契約締結先の経営戦略の変更による契約中断リスクなどがあります。これらのリスクを回避・低減するため、契約締結する際の当社に有利となる様な条件を含めるべく努力するとともに、契約条件については事前検証を行っていきます。為替動向に関しては、当社の海外における臨床試験が主に外貨建てで行われていることから、経営成績に与える影響が大きく、為替変動リスクを最小限に抑える必要があります。今後は外貨建て収入を増加させることで、外貨建て債務に係る為替リスクの低減を図っていきます。市場動向については、当社の事業が関係する市場の多くにおいて、国内外の大手製薬会社やバイオベンチャー企業との熾烈な研究開発競争が今後も展開されると予測され、当社を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況で推移するものと認識しています。このような中で、当社はグローバル市場におけるリスクへの対応力を高め、アデノウイルスを用いた医薬品や液性生検(Liquid Biopsy)に繋がる検査薬の研究開発において名実共に存在感のある企業として成長していくために、収入増大による財務基盤の強化を図ると共に、企業統治を高度化していきます。
③ 資本の財源及び資金の流動性 a.資金需要当社の事業活動における運転資金需要の主なものは医薬品事業及び検査事業の研究開発に伴う研究開発費、各種ライセンス契約や戦略的アライアンス契約に伴う特許関連費、各事業についての一般管理費があります。また、設備・投資資金需要としては、各種機器や戦略的投資に伴う固定資産投資等があります。
b.財務政策当社は事業活動の維持拡大に必要な資金を、ライセンス契約による売上を軸とした事業収入によって確保することを第一に考え、事業収入に加えて、内部資金の活用及び資本市場からの資金調達を行っています。また、運転資金及び設備・投資資金は当社において一元管理しています。医薬品や検査薬の研究開発という成果実現まで相対的に時間を要する事業を行っているため、資本性の高い長期資金を得ることで、資金特性のバランスを考慮しています。
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