【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日(2023年6月30日)現在において判断したものです。以下の文中において、当第1四半期連結会計期間を当第1四半期、前年同四半期連結会計期間を前年同期、前連結会計年度を前年度と省略して記載しております。
なお、当第1四半期よりセグメントの一部変更を行っています。詳細は、「第4 経理の状況 1要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 5.セグメント情報」に記載のとおりです。
(1)経営成績の分析
①損益の状況
(単位:億円)
2022年度
第1四半期
2023年度
第1四半期
前年同期比
増減率(%)
売上収益
8,188
7,996
△192
△2.3
調整後営業利益(※)
280
26
△254
△90.7
(調整後営業利益率)
(3.4%)
(0.3%)
(△3.1%)
営業利益
256
△16
△272
–
調整後四半期利益
190
74
△115
△60.7
四半期利益(親会社所有者帰属)
172
43
△129
△74.8
※ 調整後営業利益: 営業利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益ならびに制度変更等による一過性の損益を控除した、本業での実質的な利益を示す指標
売上収益は7,996億円と、前年同期比192億円の減収です。前年度に実施したPFU事業の再編影響を除いた売上収益は40億円の増収です。成長の原動力であるサービスソリューションは国内ビジネスを中心に大きく伸長し、DXやモダナイゼーション関連商談が拡大し、Fujitsu Uvanceの売上は前年同期比で1.5倍に伸長しております。
調整後営業利益は26億円と、前年同期比254億円の減益です。サービスソリューションは前年同期比で119億円の増益です。増収効果に加えて、採算性の改善も計画通り進めています。前年度下期から低調なトレンドが続くデバイスソリューションは、物量減に工場の操業低下が加わったことから低水準の利益に留まり前年同期比で241億円の減益となりました。
調整後四半期利益は74億円と、前年同期比115億円の減益となりました。
②セグメント情報
(単位:億円)
2022年度
第1四半期
2023年度
第1四半期
前年同期比
増減率
(%)
サービスソリューション
売上収益
4,456
4,654
197
4.4
調整後営業利益
90
209
119
132.5
(調整後営業利益率)
(2.0%)
(4.5%)
(2.5%)
グローバルソリューション
売上収益
938
1,042
104
11.1
調整後営業利益
△82
△12
69
–
(調整後営業利益率)
(△8.8%)
(△1.2%)
(7.6%)
リージョンズ(Japan)
売上収益
2,654
2,620
△33
△1.3
調整後営業利益
191
258
67
35.1
(調整後営業利益率)
(7.2%)
(9.9%)
(2.7%)
リージョンズ(海外)
売上収益
1,300
1,410
109
8.4
調整後営業利益
△18
△36
△17
–
(調整後営業利益率)
(△1.4%)
(△2.6%)
(△1.2%)
セグメント内消去
売上収益
△437
△419
17
–
ハードウェアソリューション
売上収益
2,242
2,168
△73
△3.3
調整後営業利益
50
26
△23
△46.7
(調整後営業利益率)
(2.2%)
(1.2%)
(△1.0%)
システムプロダクト
売上収益
1,785
1,852
66
3.7
ネットワークプロダクト
売上収益
456
316
△140
△30.7
ユビキタスソリューション
売上収益
617
598
△19
△3.2
調整後営業利益
9
45
36
384.7
(調整後営業利益率)
(1.5%)
(7.6%)
(6.1%)
デバイスソリューション
売上収益
1,041
674
△367
△35.2
調整後営業利益
264
22
△241
△91.3
(調整後営業利益率)
(25.4%)
(3.4%)
(△22.0%)
消去・全社
売上収益
△169
△99
70
–
調整後営業利益
△133
△278
△144
–
連結
売上収益
8,188
7,996
△192
△2.3
調整後営業利益
280
26
△254
△90.7
(調整後営業利益率)
(3.4%)
(0.3%)
(△3.1%)
a サービスソリューション
サービスソリューションの売上収益は4,654億円と、前年同期比で4.4%の増収となりました。調整後営業利益は209億円と、前年同期比で119億円の増益です。増収効果に加え、グローバルデリバリーセンターの活用拡大や開発プロセスの標準化などの採算性が改善したためです。一方、Fujitsu Uvanceオファリング開発や人材育成への投資を積極的に実施しております。
グローバルソリューションの売上収益は1,042億円と、前年同期比で11.1%の増収となりました。Fujitsu Uvanceは着実に伸長し、モダナイゼーションを支えるソフトウェアの大型売上等がけん引しております。調整後営業利益は12億円の損失と、前年同期比で69億円の増益です。グローバルソリューションは当年度下期に多数のUvanceオファリングのリリースを計画しており現在は投資が先行しております。
リージョンズ(Japan)の売上収益は2,620億円と、前年同期比で1.3%の減収となりました。調整後営業利益は258億円と、前年同期比で67億円の増益です。事業再編影響により減収となりましたが、業界の広範囲からのDXビジネスや基幹システムの刷新案件が増加していることに加え、採算性の向上が増益に繋がっております。
リージョンズ(海外)の売上収益は1,410億円と、前年同期比で8.4%の増収となりました。為替の影響及び欧州での公共セクターも拡大し増収となりました。調整後営業利益は36億円の損失と、前年同期比で17億円の減益です。APACにおける高採算商談が終息したことによる採算低下等がございました。
b ハードウェアソリューション
ハードウェアソリューションの売上収益は2,168億円と、前年同期比で3.3%の減収となりました。システムプロダクトは部材調達影響が解消し前年度より増収となりました。一方、ネットワークプロダクトは前年度の北米向け需要の反動減により、モバイルシステム、フォトニクスともに減収となりました。調整後営業利益は26億円と、前年同期比で23億円の減益です。
c ユビキタスソリューション
ユビキタスソリューションの売上収益は598億円と、前年同期比で3.2%の減収となりました。調整後営業利益は45億円と、前年同期比で36億円の増益です。コストダウンや価格転嫁が進んだため増益となりました。
d デバイスソリューション
デバイスソリューションの売上収益は674億円と、前年同期比で35.2%の減収となりました。調整後営業利益は22億円と、前年同期比で241億円の減益です。
e 消去・全社
消去・全社の調整後営業利益は278億円の損失と、前年同期比で144億円の費用増となりました。AIや量子分野をはじめとする先進的先行研究の強化や経営基盤強化に向けたOneFujitsuプログラムの推進、グローバルセキュリティ強化等、中長期的な事業成長に資する投資を拡大致しました。
(2)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①資産、負債及び資本の状況
(単位:億円)
2022年度末
2023年度
第1四半期末
前年度末比
資産
32,655
32,400
△255
負債
15,287
14,442
△845
資本(純資産)
17,368
17,957
589
親会社所有者帰属持分(自己資本)
15,868
16,420
552
②キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
2022年度
第1四半期
2023年度
第1四半期
前年同期比
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー
1,246
1,682
436
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー
△584
△425
158
Ⅰ+Ⅱ フリー・キャッシュ・フロー
661
1,256
595
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー
△686
△248
437
(コア・フリー・キャッシュ・フロー* )
( 1,271)
( 1,828)
( 557)
Ⅳ 現金及び現金同等物の四半期末残高
4,904
4,659
△245
※ 事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う一過性の収支を控除した、経常的なFCF
フリー・キャッシュ・フローは1,256億円のプラスです。前年同期比で595億円の収入増となりました。前年度第4四半期に集中した売上の回収が進みました。
コア・フリー・キャッシュ・フローは1,828億円のプラスです。
(3)経営方針及び対処すべき課題等
①経営方針及び対処すべき課題
当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。すべての事業活動をこのパーパス実現のための活動として取り組んでおり、そのためには、健全な利益と成長を実現し、企業価値を持続的に向上させることが重要と考えております。
<市場環境>
当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのリプレイスメントやモダナイゼーションへの投資は今後も堅調に増えると予測されています。さらに、AI(人工知能)やデータ活用などデジタル化に向けた投資は、社会や企業の成長・発展へのニーズに加え社会システムや生活様式の変化に向けたニーズもあり、今後も拡大すると想定されています。
このような状況のもと、当社グループは、2030年及びそれ以降の目指す姿の実現に向けて、2023年度から2025年度までの3年間を持続的な成長と収益力向上のモデルを構築する期間と位置付け、新たな中期経営計画を策定し達成に向けた取り組みを開始しております。
<新たな中期経営計画について>
当社グループは、5月24日に新たな中期経営計画を発表しました。
まず、パーパス実現に向けて必要不可欠な貢献分野であるマテリアリティを、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上の3分野に定め、この3つの分野で、気候変動、情報セキュリティの確保、生活の質の向上に向けた医療ヘルスケアの推進など、重点的に取り組むべき11の課題を設定しました。全社でマテリアリティへの取り組みを推進し、富士通グループの企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指してまいります。
今回の中期経営計画では、2030年及びそれ以降のあるべき姿を見据えて、2025年における当社のあるべき姿と、ステークホルダーへの提供価値の最大化を実現するための4つの重点戦略を定めました。一つ目、事業モデル・ポートフォリオ戦略、二つ目、カスタマサクセス/地域戦略、三つ目、テクノロジー戦略、そして四つ目、リソース戦略です。
一つ目、事業モデル・ポートフォリオ戦略では、成長領域への投資や効果をより明確にし、事業ポートフォリオのマネジメントを強化するため、事業セグメントの変更を行います。従来のテクノロジーソリューションを、サービスソリューションとハードウェアソリューションの2つに分類します。サービスソリューションは、Fujitsu Uvanceを中心とするグローバル横断なOn Cloudのデジタルサービスと、各リージョンが提供するサービスビジネスや従来型のOn Premiseのサービスなどで構成されています。サービスソリューションは、当社の今後の成長を牽引する領域として、コンサルティング力の強化やパートナーとの戦略的アライアンスの強化、当社の先端テクノロジーの強化及びビジネスへの実装、そして、デジタルサービスを提供するための人材育成などに取り組み、成長を目指してまいります。一方ハードウェアソリューションは、ハードウェアの販売及びハードウェアの保守ビジネスで構成されます。
二つ目、カスタマサクセス/地域戦略では、引き続き、コンサルティングを強化してまいります。Fujitsu UvanceのHorizontal領域をはじめとするテクノロジー軸のコンサルティングと、 Fujitsu UvanceのVertical領域をはじめとする、事業、経営に関わるビジネス軸でのコンサルティングの両軸であるべき姿の実現に向けてお客様をご支援してまいります。リスキリングなどを実施し、2025年度までにコンサルティングスキルを持つ人員を、テクノロジーとビジネスで合わせて1万人に増強してまいります。
また、モダナイゼーションビジネスを強化します。お客様の既存資産をしっかりと受け継ぎながら、テクノロジーとビジネス両面でのコンサルティング力や長年培ってきたエンジニアリング力、モダナイゼーション専任の組織やグローバルでのデリバリー体制といった独自の強みを活かして、最適なソリューションをご提案してまいります。
地域戦略としては、日本においては、全業種のお客様のモダナイゼーションをサポートし、また、日本を起点にグローバルで事業を展開するお客様に、グローバル標準のサービスやサポートを提供する体制を強化してまいります。その他のリージョンでは、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバルなソリューションやサービスの提供を拡大してまいります。また、お客様への提供価値をグローバルで高めるため、戦略パートナーとのアライアンスも強化してまいります。
お客様事業の一層の安定化に向けては、全社のガバナンス強化、情報セキュリティ強化、そしてシステム品質改善の3点を柱に取り組んでまいります。スピード感をもって各施策を確実に実行し、効果を測定して改善するというマネジメントを恒久的に実行してまいります。体制強化のため、当社グループ全体の品質責任者として最高品質責任者(Chief Quality Officer:CQO)を6月1日付で任命いたしました。さらに、代表取締役社長(CEO)が委員長を務める当社リスク・コンプライアンス委員会の体制・機能を拡充し、恒常的・全社的な対応を実現する体制に強化しております。代表取締役社長(CEO)主導により全社的、組織横断的な対応を行い、リスクマネジメント経営を徹底してまいります。
三つ目、テクノロジー戦略では、Fujitsu Uvanceを支える5つのキーテクノロジーであるコンピューティング、ネットワーク、AI、データ&セキュリティ、そしてコンバージングテクノロジーに引き続きリソースを集中させ重点的に研究開発を行ってまいります。今後は、AIを核にキーテクノロジーを強化し、付加価値としてビジネスに実装してまいります。
四つ目、リソース戦略では、グローバル統一のJob Roleを定義し、人材ポートフォリオの見える化や事業と連動した人材の育成計画をグローバルで進めてまいります。リスキリングやアップスキリングを行い、成長領域のリソースを拡充するとともに、人的資本経営の強化として、より個人にフォーカスしたキャリア形成や、自律性、自主性を重視した施策を展開してまいります。
また、OneFujitsuプログラムを中心に、データドリブン経営の強化を進め、社内実践で得られた経験やノウハウを、価値としてお客様に提供してまいります。
以上4つの戦略の実行においては、成長に寄与する投資を継続して、最適なアロケーションを実施いたします。
財務面での経営目標として、2025年度は、連結で売上収益4兆2,000億円、調整後営業利益5,000億円、同利益率12%の達成を目指してまいります。
非財務の領域においても、環境、お客様、生産性、そして人材の4つの項目において2025年度のKPIを定め、達成に向けて取り組んでまいります。
環境でのKPIとしては、温室効果ガス削減量について、いずれも2020年度と比較しScope1・2では富士通グループで50%削減、Scope3ではサプライチェーンで12.5%の削減を目指してまいります。
お客様については、従来のKPIであるお客様NPSを継続し、2022年度比で20ポイント上昇を目指してまいります。
生産性については、従業員一人当たりの営業利益において、2022年度比40%の上昇を目指してまいります。
人材については、従来のKPIである従業員エンゲージメントを継続し、グローバルでのスコア75の達成を目指してまいります。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、まずグローバルでの女性幹部社員比率をKPIとし、2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としました。これは、2030年度で30%の達成を目指し、そこからバックキャストして定めております。また、引き続き非財務面での取り組みが財務面に対しどのように寄与するかについて、定量的な分析を進めてまいります。
今回新たに、2030年に向けて、クロスインダストリーでサステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供して、社会・お客様・株主・社員などのステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる、という当社のビジョンを定めました。このネットポジティブとは、社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにすること、と定義しております。
パーパスとビジョンを達成していくための活動によって創出されるアウトプット及びアウトカムとして、財務指標と3つのマテリアリティの項目ごとに2030年の指標を設定しました。財務資本、人的資本といった資本を投入し、4つの重点戦略に沿ってマテリアリティに取り組み、財務・非財務の両面でアウトプットやアウトカムを生み出し、それをまたインプットとして投じる、これを継続することでステークホルダーへの提供価値の向上を図ってまいります。
②財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第1四半期において、当社が定める当該基本方針について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当社グループでは、デジタルテクノロジーにより、「人」「企業」「システム」「プロセス」「データ」などが複雑かつ無限につながる社会において、あらゆる局面で求められる信頼「Trust」を確保することを重要な技術戦略に位置付けております。そして、このデジタル時代のTrustの実現と共に、デジタル技術とデータを駆使して革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらすデジタルイノベーションを創出し、サスティナビリティ・トランスフォーメーションの実現を目指します。
当社グループの事業は、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の各セグメントにより構成されており、上記の研究開発方針のもと、それぞれの分野ごとに研究開発活動を行っております。「サービスソリューション」及び「ハードウェアソリューション」では、次世代のサービス、サーバ、ネットワーク等に関する研究開発を行っております。「デバイスソリューション」では、電子部品などの各種デバイス製品及び関連技術に関する研究開発を行っております。また、当第1四半期における研究開発費の総額は、320億円です。