【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当第1四半期連結累計期間における当社グループ(当社および子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。また、文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績(業績管理指標「コア営業利益」について)当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額等です。
当第1四半期連結累計期間の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
前第1四半期連結累計期間(自 2022年4月1日至 2022年6月30日)
当第1四半期連結累計期間(自 2023年4月1日至 2023年6月30日)
増減
増減率(%)
売上収益
1,599
757
△842
△52.7
コア営業利益
134
△335
△469
-
営業利益
146
△516
△662
-
税引前四半期利益
466
△311
△777
-
四半期利益
281
△389
△670
-
親会社の所有者に帰属する四半期利益
311
△389
△700
-
■ 売上収益は757億円(前年同四半期比52.7%減)となりました。非定型抗精神病薬「ラツーダ」の米国での独占販売期間が終了した影響や、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことなどにより、減収となりました。
■ コア営業損益は335億円の損失(前年同四半期比469億円の減益)となりました。販売費及び一般管理費の減少に加え、住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡によるその他の収益の計上がありましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、コア営業損失となりました。
■ 営業損益は516億円の損失(前年同四半期比662億円の減益)となりました。コア営業損失に加え、北米グループ会社の再編に伴う事業構造改善費用を計上したことにより、営業損失となりました。
■ 税引前四半期損益は311億円の損失(前年同四半期比777億円の減益)となりました。円安による為替差益の計上がありましたが、営業損益の減益の影響が大きく、税引前四半期損失となりました。
■ 四半期損益は389億円の損失(前年同四半期比670億円の減益)となりました。税引前四半期損益が減益となったことにより、四半期損益についても減益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する四半期損益は389億円の損失(前年同四半期比700億円の減益)となりました。四半期損益の減益の影響が大きく、非支配持分に帰属する利益を控除した親会社の所有者に帰属する四半期損益も減益となりました。
(セグメント業績指標「コアセグメント利益」について)セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益等を除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。なお、当第1四半期連結会計期間より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、前第1四半期連結累計期間についても変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較を行っています。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 (5) 要約四半期連結財務諸表注記 4.事業セグメント (2) 報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。<日本>■ 売上収益は304億円(前年同四半期比41.7%減)となりました。「ラツーダ」や2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」など売上が伸長しましたが、2022年12月に2型糖尿病治療剤「トルリシティ」の販売提携が終了したことに加え、前年同四半期にはライセンス契約の契約一時金の売上収益計上があったことや、2023年3月末に住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことなどから、減収となりました。■ コアセグメント利益は28億円(前年同四半期比68.0%減)となりました。減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
<北米>■ 売上収益は355億円(前年同四半期比62.7%減)となりました。進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」の売上は伸長しましたが、「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年2月に終了した影響が大きく、減収となりました。■ コアセグメント損益は237億円の損失(前年同四半期比468億円の減益)となりました。ラツーダの独占販売期間終了等に伴い販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、減益となりました。
<アジア>■ 売上収益は99億円(前年同四半期比22.1%減)となりました。中国において、薬剤費抑制策の影響を受けたカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。■ コアセグメント利益は43億円(前年同四半期比26.0%減)となりました。減収による売上総利益の減少により、減益となりました。
(2) 財政状態資産については、非流動資産では、為替換算の影響によるのれんや無形資産の増加に加え、当社が保有する投資有価証券の公正価値評価の変動等によりその他の金融資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ670億円増加しました。流動資産は、現金及び現金同等物やその他の金融資産が減少した結果、前連結会計年度末に比べ611億円減少しました。これらの結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ60億円増加し、1兆1,407億円となりました。負債については、借入金等が増加しましたが、引当金や未払法人所得税等が減少した結果、前連結会計年度末に比べ43億円減少し、7,237億円となりました。資本合計は、利益剰余金が減少しましたが、円安等の影響もありその他の資本の構成要素が増加した結果、前連結会計年度末に比べ102億円増加し、4,170億円となりました。なお、当第1四半期連結会計期間末の親会社所有者帰属持分比率は36.6%となりました。
(3) キャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期損失となったことに加え、引当金が減少したことや法人所得税の支払額が増加したことなどにより、前年同四半期に比べ1,434億円収入が減少し、1,302億円の支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却や住友ファーマアニマルヘルス株式会社の株式譲渡に伴う子会社の支配喪失による増加等により、前年同四半期に比べ160億円収入が増加し、385億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加等により、前年同四半期に比べ402億円収入が増加し、336億円の収入となりました。上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額および売却目的で保有する資産への振替額を加えた結果、当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は945億円となり、前連結会計年度末に比べ490億円減少しました。
(4) 事業上および財務上の対処すべき課題当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上および財務上の対処すべき課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(5) 研究開発活動当第1四半期連結累計期間における研究開発費の総額は278億円(前年同四半期比14.0%増)です。なお、当該金額は、当第1四半期連結累計期間に計上した北米事業構造改善費用50億円を含んでいることから、これを除いたコアベースの研究開発費は、228億円(前年同四半期比6.6%減)となりました。また、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分していません。日本において、本年6月、株式会社ヘリオスと共同開発を進めている他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞(開発コード:HLCR011)について、網膜色素上皮裂孔を対象としたフェーズ1/2試験を開始しました。
当社グループにおける開発状況は以下のとおりです。
1.精神神経領域
(2023年7月31日現在)
製品/コード名(一般名)
予定適応症
地域
開発段階
低分子
SEP-363856(ulotaront)
統合失調症
米国
フェーズ3
日本・中国
フェーズ2/3
大うつ病補助療法(aMDD)
米国
フェーズ2/3
全般不安症(GAD)
米国・日本
フェーズ2/3
パーキンソン病に伴う精神病症状
米国
フェーズ2
SEP-4199
双極Ⅰ型障害うつ
米国・日本
フェーズ3
ラツーダ(ルラシドン塩酸塩)
(新用法:小児)統合失調症
日本
フェーズ3
EPI-589
パーキンソン病
米国
フェーズ2
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
米国
フェーズ2
日本
フェーズ2(医師主導治験)
DSP-3905
神経障害性疼痛
米国
フェーズ1
SEP-378614
未定
米国
フェーズ1
SEP-380135
未定
米国
フェーズ1
DSP-0038
アルツハイマー病に伴う精神病症状
米国
フェーズ1
DSP-9632P
パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア
日本
フェーズ1
DSP-0187
ナルコレプシー
日本
フェーズ1
DSP-3456
治療抵抗性うつ
米国
フェーズ1
DSP-0378
ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群
日本
フェーズ1
DSP-2342
未定
米国
フェーズ1
再生・細胞医薬
CT1-DAP001/DSP-1083(他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞)
パーキンソン病
日本
フェーズ1/2(医師主導治験)
米国
治験開始に向けて準備中
HLCR011(他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞)
網膜色素上皮裂孔(RPE tear)
日本
フェーズ1/2
2.がん領域
(2023年7月31日現在)
製品/コード名(一般名)
予定適応症
地域
開発段階
TP-3654
骨髄線維症
米国・日本
フェーズ1/2
DSP-5336
急性白血病
米国・日本
フェーズ1/2
DSP-0390
膠芽腫
米国・日本
フェーズ1
TP-1287
固形がん
米国
フェーズ1
TP-1454
固形がん
米国
フェーズ1
3.その他の領域
(2023年7月31日現在)
製品/コード名(一般名)
予定適応症
地域
開発段階
lefamulin
細菌性市中肺炎
中国
申請(2021/10)
ジェムテサ(ビベグロン)
(新効能)前立腺肥大症を伴う過活動膀胱
米国
フェーズ3
ビベグロン
過活動膀胱
中国
フェーズ3
SP-101
嚢胞性線維症
米国
フェーズ1/2
KSP-1007
複雑性尿路感染症および複雑性腹腔内感染症
米国
フェーズ1
4.フロンティア事業
(2023年7月31日現在)
領域
プログラム
概要
開発状況
連携先
精神神経
認知症行動・心理症状用機器
General Wellness品として「Aikomiケア、Aikomi DS」を試験販売中。非薬物療法をデジタルで実現し、個別最適化された五感刺激コンテンツを含むDTx品を研究開発中であり、承認機器としての保険償還を目指す。
日本臨床研究準備中(医療機器)
㈱Aikomi
社交不安障害向けVRコンテンツ(BVR-100)
暴露療法や認知再構築トレーニングなど認知行動療法(CBT)に即したモジュール等をVRコンテンツ化したDTx品を開発中。General Wellness品としてのメンタルヘルスVRコンテンツ「First Resort」を上市済み。
米国臨床試験準備中(医療機器)
BehaVR社
ウェアラブル脳波計
日常的にどこでも簡単に前頭2極から測定可能な簡易型脳波計。これにより、脳波トレンドを把握し精神疾患の早期検知を可能にするサービスを目指す。
日本製品開発中(医療機器)
㈱ニューロスカイ
うつ病検出・重症度評価支援プログラム
リストバンド型のウェアラブルデバイスの情報から機械学習を用いて、うつ病の早期発見や重症度評価を客観的、定量的かつ簡便に行えるソフトウェアを開発し、薬事承認を得て臨床現場に導入することを目指す。
日本製品開発中(医療機器)
慶應義塾大学、i2medical合同会社
バイオレットライト
40Hzに点滅するバイオレットライトによる視覚を介したニューロモジュレーション技術を開発し、精神疾患の治療・予防を目指す。
日本製品開発中(医療機器)
㈱坪田ラボ
運動機能障害
手指麻痺用ニューロリハビリテーション機器
認証機器「MELTz」として上市済み。手指麻痺等を対象に、筋電信号を利用したロボットニューロリハビリテーション装置について、承認機器としての保険償還を目指す。
日本製品開発中(医療機器)
㈱メルティンMMI
手指麻痺用トレーニング機器
「MELTz Potarble」として開発中。手指麻痺等を対象に、筋電信号を利用したロボットを用いてトレーニングを行う小型で簡易な装置を目指す。
日本製品開発中(非医療機器)
㈱メルティンMMI
代謝性疾患
自動採血・保存デバイス
代謝性疾患などの自己管理ツールとして、低疼痛・長期保存・簡易輸送を実現する採血デバイスを目指す※。
日本製品開発中(医療機器)
Drawbridge Health社
※ 国内事業に関する内容・権利については、現在Drawbridge Health社と協議中であり、同社と合意されたものではありません。
(6) 生産、受注及び販売の実績「ラツーダ」の米国での独占販売期間終了により、北米セグメントにおける生産実績及び販売実績が著しく減少しました。また、住友ファーマフード&ケミカル株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社が当社グループ傘下でなくなったことに加え、「トルリシティ」の販売提携が終了したことにより、日本セグメントにおける仕入実績及び販売実績が著しく減少しました。