【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
世界経済は、半導体等の部品需給逼迫、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰、各国の金融政策変更に伴う景気の減速見通しや不安定な為替相場など、依然として先行きが不透明な状況が続いております。一方で、脱炭素化に向けた世界的な流れは持続しており、各国政府による方針を受けて企業の設備投資の拡大が引き続き期待されております。今後、自動車の電動化が加速すると同時に電源の高性能化が求められるようになると見込まれており、バッテリー、デバイス、エネルギーといった市場においては、設備投資環境が堅調に推移すると予測しております。
当連結会計年度におきましては、脱炭素化に向けた世界各国の取り組みを受け、重点市場の計測器需要は引き続き高い状態で推移いたしました。また、海外市場における計測器需要は、幅広い地域で好調に推移いたしました。この結果、受注高は前連結会計年度比16.9%増と大きく伸長いたしました。中国上海市のロックダウンにより顧客への製品出荷ができない状況及びその影響は既に解消されております。しかし、一部の当社製品で部品欠品による出荷停止の状況が長期化いたしました。第3四半期連結会計期間末の受注残高85億円に対して当連結会計年度末の受注残高は69億円となりましたが、依然として高い水準で推移しております。
開発面では、重点市場の顧客へ試作品を貸出し、顧客の要望に柔軟に対応するアジャイル開発を進める一方で、部品需給の逼迫を踏まえ、引き続き代替部品での生産が可能となるよう既存製品の設計変更に取り組んでまいりました。新しい社会を顧客と協創する関係を構築するため、既存の研究棟内に協創ラボを新設することを決定し、顧客と協創できる空間と最新設備の導入に向けた準備を進めてまいりました(2023年3月末竣工予定)。
生産面では、生産量の増加に対応するため、本社工場における生産・物流の動線改善に向けた増床・増築工事を進め、当連結会計年度末に竣工いたしました。また、引き続き円滑な生産に向け、購買先との緊密なコミュニケーション等を通じて部品の確保に努めました。
販売面では、社内公募制度等も利用し海外販売子会社への人員配置を強化し、当該地域における業績伸長に向けた取り組みを進めてまいりました。
利益面では、部品価格の高騰に加え、顧客への供給責任を果たすことを最優先に様々なルートで市価を上回る部品を調達したことから売上原価を押し上げております。一方で、為替相場が当初の想定に比べ円安に推移し売上高が増加したことは、増益要因となりました。
以上により、当連結会計年度における業績は、売上高343億71百万円(前連結会計年度比17.2%増)、営業利益70億70百万円(同23.0%増)、経常利益72億87百万円(同21.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益53億30百万円(同17.9%増)になりました。
当社の目標とする経営指標のうち「売上高経常利益率20%」及び「自己資本当期純利益率(ROE)10%以上」につきましては、当連結会計年度において目標を達成いたしました。また、「海外売上高比率70%以上」につきましては、当連結会計年度の実績は63.9%と未達となりましたが、前連結会計年度から5.3ポイント上昇いたしました。
当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金が減少いたしましたが、原材料及び貯蔵品が増加したため、前連結会計年度末と比較して42億14百万円増加し、406億5百万円になりました。
負債は、買掛金及び未払費用が増加したため、前連結会計年度末と比較して8億89百万円増加し、78億26百万円になりました。
純資産は、利益剰余金が増加したため、前連結会計年度末と比較して33億25百万円増加し、327億79百万円になりました。 なお、当社グループは、電気測定器事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して24億円減少し、118億36百万円になりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、12億41百万円の収入(前連結会計年度比73.6%減)になりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益72億83百万円及び減価償却費11億52百万円であります。主な減少要因は、棚卸資産の増加額40億16百万円であります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、14億75百万円の支出(同78.5%増)になりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額等により、24億55百万円の支出(同71.1%増)になりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、電気測定器事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
よって、生産実績及び受注実績につきましては製品の分類別情報を、販売実績につきましては製品の分類別情報及び顧客の所在地別情報を記載しております。
a. 生産実績
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
自動試験装置
(千円)
3,332,156
100.2
記録装置
(千円)
4,956,716
111.1
電子測定器
(千円)
18,179,364
125.6
現場測定器
(千円)
6,743,741
113.4
周辺装置他
(千円)
1,702,712
114.6
合計
(千円)
34,914,691
117.6
(注)金額は売価換算価額で表示しております。
b. 受注実績
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
自動試験装置
3,247,950
89.6
1,397,780
101.8
記録装置
5,063,053
111.7
526,486
101.7
電子測定器
19,463,965
125.1
4,116,216
171.6
現場測定器
6,967,788
116.5
753,249
172.7
周辺装置他
1,700,941
116.3
155,039
103.0
合計
36,443,699
116.9
6,948,772
142.5
c. 販売実績
(a) 製品の分類別実績
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
自動試験装置
(千円)
3,223,586
98.0
記録装置
(千円)
5,054,450
117.6
電子測定器
(千円)
17,745,841
125.3
現場測定器
(千円)
6,650,739
110.8
周辺装置他
(千円)
1,696,492
108.0
合計
(千円)
34,371,110
117.2
(b) 顧客の所在地別実績
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
国内
(千円)
12,400,550
102.2
海外
アジア
(千円)
16,954,138
129.0
アメリカ
(千円)
2,619,452
117.2
ヨーロッパ
(千円)
1,859,027
131.2
その他の地域
(千円)
537,940
135.3
計
(千円)
21,970,560
127.8
合計
(千円)
34,371,110
117.2
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10に満たないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に当たり、連結会計年度末における資産、負債の金額、及び連結会計年度における収益、費用の金額に影響を与える重要な会計方針及び各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、見積り、判断につきましては、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等の状況
世界経済は、半導体等の部品需給逼迫、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰、各国の金融政策変更に伴う景気の減速見通しや不安定な為替相場など、依然として先行きが不透明な状況が続いております。一方で、脱炭素化に向けた世界的な流れは持続しており、各国政府による方針を受けて企業の設備投資の拡大が引き続き期待されております。今後、自動車の電動化が加速すると同時に電源の高性能化が求められるようになると見込まれており、バッテリー、デバイス、エネルギーといった市場においては、設備投資環境が堅調に推移すると予測しております。
当連結会計年度におきましては、脱炭素化に向けた世界各国の取り組みを受け、バッテリー、デバイス、エネルギーの重点市場の計測器需要は引き続き高い状態で推移いたしました。また、海外市場における計測器需要は、幅広い地域で好調に推移いたしました。
この結果、当社グループの売上高、営業利益、経常利益ともに前連結会計年度を上回り、2年連続で過去最高の結果になりました。
また、目標とする経営指標の一つであります売上高経常利益率につきましては、20%を目標に掲げております。当連結会計年度におきましては、脱炭素化に向けた世界各国の取り組みを受け、計測器需要が国内外で好調に推移し、人件費及び経費は増加したものの、売上高が大幅に増加したことにより、経常利益は前連結会計年度を上回り、売上高経常利益率は21.2%と2年連続で目標を達成することができました。なお、事業としての収益性を直接判断できることから、次期は「売上高経常利益率20%」の目標を「売上高営業利益率20%」に変更し、この目標達成に当社グループ一体となって取り組んでまいります。売上高営業利益率を改善させるため、開発面では、重点市場として捉えております、バッテリー、デバイス、エネルギーの各分野に向けて顧客密着で高付加価値製品の開発を進め、製品を販売してまいります。
目標とする経営指標の一つであります自己資本当期純利益率(ROE)につきましては、10%以上を目標に掲げております。当連結会計年度は売上高当期純利益率が高い状態を維持したことから、自己資本当期純利益率(ROE)は前連結会計年度から0.8ポイント上昇し、17.1%になりました。
また、もう一つの目標とする経営指標であります海外売上高比率につきましては、70%以上を目標に掲げております。当連結会計年度の実績は63.9%と未達となりましたが、前連結会計年度から5.3ポイント上昇いたしました。これはアジア、アメリカ、ヨーロッパ等の幅広い地域における計測器需要が引き続き堅調に推移したことに加え、同地域に対する拡販策が奏功し、売上高が伸長したことによるものであります。今後は、海外販売子会社及び中国における研究開発等を担う孫会社を中心にHIOKIブランドの浸透を図り、海外売上高の伸長を目指してまいります。
なお、当連結会計年度における製品区分別の状況は、次のとおりであります。
(自動試験装置)
ベアボード検査装置は高精細化が進む半導体市場、また実装基板検査装置は電子化が進む自動車市場の高度な要求に支えられ、売上高は高い水準で推移いたしました。それと同時に高付加価値製品へのシフトが進み、事業の採算性が大幅に向上いたしました。
この結果、売上高は32億23百万円(前連結会計年度比2.0%減)になりました。
(記録装置)
予兆保全等の既存分野に加え、世界の市場においてエネルギーを有効利用するための熱エネルギー管理の高度化が進んでいることから、高速で高精度なデータロガーの需要が拡大しております。また、これに加えてバッテリー評価向けの高耐圧多チャネルのデータロガーの売上高も、前連結会計年度に引き続き大幅に伸長いたしました。
この結果、売上高は50億54百万円(同17.6%増)になりました。
(電子測定器)
中国、韓国市場を中心としたバッテリー市場の設備投資は引き続き活発であり、その動きはヨーロッパやインド等の他の地域にも波及し始めております。当連結会計年度は引き続きこの市場に向け、EV用リチウムイオンバッテリーの安全性を高める検査装置や、材料の研究開発用途向けの製品等、集中的に新製品を投入いたしました。
また、脱炭素化への流れも引き続き活発であり、当社が競争優位性を有する電気エネルギー計測の分野においても高成長が続いていることから、より信頼性の高い測定を実現する新型電流センサシリーズを市場に投入いたしました。
この結果、売上高は177億45百万円(同25.3%増)になりました。
(現場測定器)
再生可能エネルギーの増加による電源の分散化が進み、データセンターや通信インフラ等、電気設備の保守メンテナンスの重要性が高まる中、現場における作業効率を向上させるためIoTに対応した現場測定器を拡充してまいりました。また、当連結会計年度はこうした現場測定器が世界中からクラウドへ接続できる機能をソフトウエア群に搭載し、グローバルに作業効率を向上させるサービスを提供いたしました。
この結果、売上高は66億50百万円(同10.8%増)になりました。
b. 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要のうち主なものは、材料費、人件費、新製品開発に必要な研究開発費、営業費用、管理費用及び設備投資資金であります。これらの資金需要につきましては、自己資金を充当しております。
当社グループの経営方針、経営戦略につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。