【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が世界的に緩和へ向かい、我が国におきましても感染症法上の位置付けが「2類相当」から「5類感染症」へ移行したことに伴い、長く続いた経済・社会活動に対する制限が緩和され、概ね正常化に至っております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ237,986千円増加し、3,465,019千円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ13,204千円減少し、986,110千円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ251,191千円増加し、2,478,908千円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高1,908,375千円(前連結会計年度比65.8%増)、営業利益306,672千円(前連結会計年度は営業損失71,221千円)、経常利益364,257千円(前連結会計年度は経常損失26,981千円)、親会社株主に帰属する当期純利益238,189千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失32,127千円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
オプティカル事業は、売上高は1,195,387千円(前連結会計年度比53.3%増)、セグメント利益は501,175千円(同104.2%増)となりました。
ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は324,885千円(前連結会計年度比23.7%増)、セグメント利益は1,533千円(同73.5%減)となりました。
その他事業は、売上高は388,102千円(前連結会計年度比257.6%増)、セグメント利益は86,696千円(前連結会計年度はセグメント損失60,973千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ50,803千円増加し、当連結会計年度末には783,128千円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は210,359千円(前連結会計年度は284,185千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益361,571千円に加え、のれん償却額42,382千円、仕入債務の増加55,686千円があった一方、売上債権の増加328,043千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は84,742千円(前連結会計年度は132,592千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出77,958千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は75,504千円(前連結会計年度は273,583千円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出75,456千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
生産高(千円)
前年同期比(%)
オプティカル事業
1,056,805
110.4
ライフサイエンス・機器開発事業
326,091
111.6
その他事業
497,795
321.7
合計
1,880,691
133.9
(注)金額は製造原価によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
オプティカル事業
1,150,223
104.1
874,472
95.0
ライフサイエンス・機器開発事業
453,347
248.5
131,077
5,009.4
その他事業
436,329
160.3
239,499
125.2
合計
2,039,900
130.8
1,245,050
111.8
(注)金額は販売価格によっております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
オプティカル事業
1,195,387
153.3
ライフサイエンス・機器開発事業
324,885
123.7
その他事業
388,102
357.6
合計
1,908,375
165.8
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
Advanced Photon Source Argonne National Laboratory
-
-
216,097
11.3
国立研究開発法人理化学研究所
230,565
20.0
209,631
11.0
(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,677,316千円となり、前連結会計年度末に比べ375,920千円増加いたしました。これは主に、売掛金が328,388千円増加したことによるものであります。固定資産は1,787,703千円となり、前連結会計年度末に比べ137,933千円減少いたしました。これは主に、のれんの償却が進んだことによって無形固定資産が45,943千円減少し、繰延税金資産が60,055千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は3,465,019千円となり、前連結会計年度末に比べ237,986千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は451,434千円となり、前連結会計年度末に比べ65,780千円増加いたしました。これは主に、契約負債が75,955千円減少した一方で、仕入債務である買掛金が55,686千円、未払費用が32,450千円、未払法人税等が47,204千円増加したことによるものであります。固定負債は534,676千円となり、前連結会計年度末に比べ78,985千円減少いたしました。これは主に、約定返済が進んだことにより長期借入金が75,456千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は986,110千円となり、前連結会計年度末に比べ13,204千円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は2,478,908千円となり、前連結会計年度末に比べ251,191千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を238,189千円計上したことによるものであります。
b. 経営成績
(売上高及び営業利益)
当連結会計年度における売上高は、1,908,375千円(前連結会計年度比65.8%増)となりました。これは主に、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーの売上が牽引するとともに、ライフサイエンス・機器開発事業及び子会社の電子科学株式会社の売上が寄与しております。この結果、売上総利益は1,164,868千円(前連結会計年度比66.4%増)となりました。また、販売費及び一般管理費は858,196千円(前連結会計年度比11.3%増)となり、当連結会計年度における営業利益は306,672千円(前連結会計年度は営業損失71,221千円)となりました。
(経常利益)
営業外収益では、経済産業省による戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)における補助金収入等を計上しました。また、営業外費用では、支払利息及び投資事業組合運用損等を計上しました。これらの結果、当連結会計年度における経常利益は364,257千円(前連結会計年度は経常損失26,981千円)となりました。
(当期純利益)
特別損失を2,986千円計上いたしましたが、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は238,189千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失32,127千円)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(オプティカル事業)
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による活動停滞が徐々に緩和され、期中の出荷が例年に増して順調に推移いたしました。第4四半期において、一部ユーザー向けの製品につきまして、高精度製品への仕様変更の要望に対応したことによる納入計画変更の影響があったものの、国内向け(施設:SPring-8、SACLA、NanoTerasu)、中国向け(施設:HEPS、SSRF)、アメリカ向け(施設:APS、LCLS)、EU向け(施設:ESRF、Eu-XFEL)の売上が中心となり、当連結会計年度の経営成績を牽引いたしました。
短期滞在ビザ免除措置の停止など、一部の国では日本からの渡航に制限が継続している状態ではあるものの、国内外の放射光施設やX線自由電子レーザー施設においては通常稼働の状態に至っており、国内の次世代放射光施設NanoTerasuの建設をはじめ、中国及び欧米の放射光施設のバージョンアップや新設の計画も順調に推移しております。
そのため受注環境も好転しており、特に中国では各主要都市において放射光施設及びX線自由電子レーザー施設の新設やバージョンアップが進められていることから、北京市の次世代放射光施設「HEPS」、上海のX線自由電子レーザー施設「SHINE」からは継続的に受注するとともに、立上げ計画中の合肥市や深圳市の関連施設から複数の問合せを受けております。また、欧州につきましては、エネルギー、半導体に関する最先端研究の活性化に伴い、スペイン、イタリア、フランスの中規模放射光施設においても高精度ミラーの需要が高まっており、現在進めている市場開拓の成果が順調に得られております。
営業活動につきましては、国内ユーザーはもとより、中国を除いた海外ユーザーについても渡航による対面での営業活動を再開しております。中国の各施設に対しては渡航しての営業活動が再開に至っていないものの、現地の研究者が来日されることによる商談機会が確保されており、多方面に対して積極的に営業活動を進めております。
オプティカル関連の学会についてもオンライン開催からリアル開催に移行しており、学会参加を通じて様々な大学や放射光施設の研究者に向けて当社のミラー事業をアピールする機会を確保しております。
また、これまで培ってきた表面創生技術を活かして、高精度レンズ加工などの非ミラー品への展開も開始しており、収益機会の確保に努めてまいりました。
この結果、売上高は1,195,387千円(前期比53.3%増)、セグメント利益は501,175千円(同104.2%増)となりました。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
当連結会計年度においては、ライフサイエンス・機器開発事業の重点新規事業分野として掲げる、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術である触媒基準エッチング法(CARE)、プラズマ援用研磨法(PAP)、プラズマ化学気相化加工法(PCVM)を搭載した装置の商品化、受注および販売活動を推進してまいりましたが、第4四半期におきまして、プラズマ化学気相加工法装置1台とプラズマ援用研磨法装置2台を受注し、いずれも検収に至り、売上を計上いたしました。当社は新たな事業の柱として独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化へと展開を図ってまいりましたが、当該受注と検収は当社技術を高くご評価いただいた結果であると考えております。
第2四半期末には「SEMICOM Japan 2022」へ出展をいたしましたが、その結果、複数企業からテスト加工の依頼を受けております。展示会への出展だけでなく、自社セミナーの開催やホームページの見直しと活用などによって営業の展開力を高め、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、各種半導体材料等の表面加工技術の実用化と高度化を図り、製品展開を推進してまいります。
一方、ライフサイエンス機器では「MakCell®」、「CellPet3D-iPS®」など当社が開発した機器の他、大手製薬企業から受託した特注機器の売上が寄与いたしました。
その他、SPring-8における光源高度化に必要となる開発品の検証試験受託業務、グラビア印刷試験機(GP-10)用制御基板、水冷式冷却器や単核球分離装置用の消耗品関連による売上を計上いたしました。
この結果、売上高は324,885千円(前期比23.7%増)、セグメント利益は1,533千円(同73.5%減)となりました。
(その他事業)
その他事業は子会社の電子科学株式会社であります。電子科学の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事、装置のメンテナンス業務、受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において5件(販売先:韓国、台湾、国内)の売上を計上したことにより昨年実績を大きく上回る結果となりました。装置販売につきましては設置・導入作業が必須となりますが、主なユーザー企業のある韓国及び台湾において、新型コロナウイルス感染症の影響による渡航制限が緩和されたため、現地での作業が可能となり、売上を計上するに至りました。
この結果、売上高は388,102千円(前期比257.6%増)、セグメント利益は86,696千円(前連結会計年度はセグメント損失60,973千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資やM&A投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。
一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。
運転資金、設備投資資金及びM&A投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金やM&A投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。
なお、当連結会計年度末における借入金である有利子負債残高は597,419千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑴ 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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