【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 当期の経営成績等の概況
当事業年度における当社を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症に対する制限緩和や経済活動の正常化が進みつつあるものの、依然として厳しい競争環境が続いております。
市場の動向については、原油価格は、下落傾向ではありますが、前事業年度と比較すると高水準となっております。また、為替相場も、円安の進行は一服したものの、期初と比較すると円安状態であり、前事業年度と比較しても円安となりました。
(就航路線の状況)
就航路線の状況につきましては、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)当社事業の概要 ① 航空運送事業」に記載しており、当事業年度末における路線便数は、国内定期便1日当たり5路線32往復64便、国際定期便1日当たり2路線2往復4便であります。
なお、2020年3月より国際定期便を運休しております。
(運航実績)
飛行時間につきましては、上半期を中心とした北九州-羽田線、福岡-羽田線などの一部減便、国際定期便2路線の通期運休を実施したものの、下半期における運航便の回復により、当事業年度の飛行時間は33,551時間(前期比23.4%増)となりました。
項目
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減率
運航回数(回)
17,216
21,001
+22.0%
飛行距離(千km)
15,040
18,647
+24.0%
飛行時間(時間)
27,199
33,551
+23.4%
(就航率、定時出発率)
就航率、定時出発率につきましては、社内で継続して就航率・定時性向上プロジェクト(ON TIME FLYER活動)を推進しておりますが、当事業年度の就航率、定時出発率は前事業年度を下回る結果となりました。
項目
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減
就航率(%)
99.5
98.8
△0.7pt
定時出発率(%)
98.1
95.3
△2.8pt
(注)就航率の算出において、新型コロナウイルス感染症の拡大による航空需要減退に伴う減便および運休を含めておりません。
(輸送実績)
旅客状況につきましては、需要の回復を見極めながら積極的に運航したことにより自社提供座席キロは1,628百万席・km(前期比32.7%増)となり、有償旅客数は116万人(前期比72.4%増)、座席利用率は68.2%(前期比15.6ポイント増)となりました。
項目
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減率
有償旅客数(千人)
677
1,167
+72.4%
有償旅客キロ(百万人・km)
645
1,110
+72.0%
提供座席キロ(百万席・km)
1,227
1,628
+32.7%
座席利用率(%)
52.6
68.2
+15.6pt
(注)1 上記輸送実績には、全日本空輸株式会社への座席販売分を含めておりません。
2 有償旅客キロは、路線区間の有償旅客数に区間距離を乗じたものであります。
3 提供座席キロは、路線区間の提供座席数に区間距離を乗じたものであります。
(販売実績)
前事業年度および当事業年度の営業実績の状況は、次のとおりであります。
なお、当社は航空運送事業を主な事業とする単一業種の事業活動を営んでおりますので、提供するサービス別に記載をしております。
科目
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
構成比(%)
金額(百万円)
構成比(%)
航空運送事業収入
定期旅客運送収入
20,876
98.8
31,897
98.8
貨物運送収入
150
0.7
160
0.5
不定期旅客運送収入
-
-
89
0.3
小計
21,026
99.5
32,147
99.6
附帯事業収入
105
0.5
127
0.4
合計
21,131
100.0
32,275
100.0
(注)1 定期旅客運送収入および貨物運送収入には、全日本空輸株式会社への座席販売および貨物輸送分を含めております。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。なお、当該取引の内容は、主にコードシェアによる座席販売および貨物輸送分であります。
相手先
前事業年度
当事業年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
全日本空輸株式会社
10,498
49.7
13,625
42.2
上記により、生産量(総提供座席キロ)および有償旅客数は前事業年度と比べ著しく増加し、航空運送事業収入は32,147百万円(前期比52.9%増)となりました。また、附帯事業収入は127百万円(前期比21.5%増)となり、これらの結果として、当事業年度の営業収入は32,275百万円(前期比52.7%増)となりました。
一方、費用面につきましては、前事業年度における機材の減少および全社一丸となったコスト削減などにより固定費が減少しましたが、前事業年度と比較して円安水準であったことにより外貨建ての機材費および整備費等が増加し、原油価格も高水準で推移したことにより燃油費も増加しました。その上で、生産量の増加に伴う変動費(燃油費など)が増加しました。さらに、航空機の将来の定期整備費用に備えるための定期整備引当金は米ドル建てで金額を見積もっていることにより、前事業年度末からの円安進行に伴い引当金の追加繰入額が大幅に増加しました。
結果として、事業費ならびに販売費及び一般管理費の合計額である営業費用は、33,593百万円(前期比21.7%増)となりました。
これらにより、当事業年度の営業損失は1,317百万円(前事業年度は営業損失6,465百万円)、経常損失は704百万円(前事業年度は経常損失6,054百万円)、当期純利益は73百万円(前事業年度は当期純損失4,986百万円)となりました。
② 当期の財政状態の概況
当事業年度末の資産合計は21,370百万円となり、前事業年度末に比べ1,280百万円増加しました。
流動資産合計は1,223百万円増加しましたが、これは主として、営業未収入金が723百万円増加、未収入金が994百万円増加したことによるものです。また、固定資産合計は57百万円増加しましたが、減価償却による減少の一方で、繰延税金資産を計上したことなどによるものです。
当事業年度末の負債合計は19,610百万円となり、前事業年度末に比べ878百万円増加しました。
これは主として、借入金(流動負債及び固定負債合計)およびリース債務(流動負債および固定負債合計)が約定返済などにより1,352百万円減少した一方で、前事業年度末からの円安進行に伴い定期整備引当金が1,240百万円増加、営業未払金が676百万円増加したことによるものです。なお、当事業年度末の有利子負債残高は3,583百万円となりました。
当事業年度末の純資産合計は1,759百万円となり、前事業年度末に比べ402百万円増加しました。
これは、デリバティブ取引に係る繰延ヘッジ損益が662百万円減少、新株予約権が7百万円減少した一方で、当期純利益の計上により73百万円の利益剰余金が増加、新株予約権の行使による株式の発行により資本金、資本準備金がそれぞれ499百万円増加したことによるものです。
③ 当期のキャッシュ・フローの概況
当事業年度末における現金及び現金同等物は5,388百万円となり、前事業年度末に比べ334百万円の減少(前事業年度は9,861百万円の減少)となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、122百万円のキャッシュ・インフロー(前事業年度は5,229百万円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
これは主として、売上債権の増加が723百万円(前期比76.6%増)、未収入金の増加が1,120百万円(前事業年度は149百万円の増加)あった一方で、減価償却費が820百万円(前期比30.3%減)、定期整備引当金の増加1,240百万円(前期比7.8%増)などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、159百万円のキャッシュ・アウトフロー(前事業年度は1,075百万円のキャッシュ・インフロー)となりました。
これは主として、差入保証金の返還による収入37百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出が58百万円(前事業年度は21百万円)および無形固定資産の取得による支出が138百万円(前事業年度は23百万円)あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、356百万円のキャッシュ・アウトフロー(前事業年度は5,722百万円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
これは主として、長期借入れによる収入300百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入991百万円(前事業年度は283百万円)があった一方で、長期借入金の返済による支出が1,512百万円、リース債務の返済による支出134百万円(前期比94.5%減)があったことによるものです。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に定期整備引当金は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(定期整備引当金)
航空機材の主要な定期整備費用の支出に備えるため、当事業年度末までに負担すべき将来の整備費用見積額を定期整備引当金として計上しております。
当社は、当事業年度末までの定期整備費用実績額を基礎として、個々の航空機材の整備計画や調達方法(購入またはリース)、リース会社との契約、当該機材の使用状況なども織り込んで将来の整備費用を見積り、定期整備引当金を計上しております。
整備計画は長期にわたることに加え、個々の航空機材の使用状況等により定期整備実施時に必要となる整備費用が変動する場合があり、定期整備引当金額を超過し追加の費用負担が生じる可能性があります。
(収益認識)
当社は、会員顧客向けのマイレージプログラム「STAR LINK」を運営しており、旅客輸送サービス等の利用に応じて付与するマイレージは、将来当社によるサービスを受けるために利用することができます。
付与したマイレージの内、将来顧客が行使することが見込まれる分を履行義務として認識し、顧客がマイレージの利用に際して選択するサービスの構成割合を考慮して独立販売価格を見積り、取引価格はこれらの履行義務に対して独立販売価格の比率に基づいて配分しております。マイレージプログラムの履行義務に配分された取引価格は契約負債として認識し、マイレージの利用に従い収益計上しております。
当該見積りの内容は不確実性が高く、選択するサービスの構成割合が大きく変化した場合は、翌事業年度以降の財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、将来減算一時差異の解消により、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲で繰延税金資産を認識しており、その回収可能性については、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号)で示されている会社分類、将来加算一時差異の解消スケジュール、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得及びタックス・プランニング等に基づいて判断しております。
当該見積りは、将来の事業計画を基礎としており、その主要な要素である売上高や利益の予測は、今後の市場動向や事業戦略等の影響を受け、また、不確実性を伴うことから、繰延税金資産の回収可能性の判断に重要な影響を及ぼします。
将来の不確実な経済状況及び当社の経営状況の変化により、当該見積りに重要な影響が生じた場合には、翌事業年度以降の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や当社を取り巻く環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社の財政状態および経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当事業年度の資金の主要な使途を含むキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ 当期のキャッシュ・フローの概況」に記載しております。
当社は、運転資金および設備資金につきましては、事業計画等に照らして、自己資本、銀行からの借入れまたはファイナンス・リース取引により調達しております。
なお、当事業年度末現在における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は3,583百万円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は5,388百万円であります。
なお、キャッシュ・フロー関連指標は、以下のとおりであります。
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
自己資本比率(%)
6.7
8.1
時価ベースの自己資本比率(%)
36.1
41.4
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
△0.9
29.4
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
△63.0
2.7
(注)1 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式総数により算出しています。
3 有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち、短期借入金、長期借入金(1年内返済予定を含む)及びリース債務を対象としています。
4 営業キャッシュ・フロー及び利払いは、キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いています。
④ 経営成績・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「中期経営戦略2025~国内線で経営基盤を確立し、次の飛躍へ~」に沿って、経営指標の改善・向上を目指してまいります。
目標とする経営指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載しております。