【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。なお、本四半期報告書に記載の数値は国際会計基準(IFRS)ベースで表示しております。
(1)財政状態及び経営成績の状況
財政状態
当第1四半期連結会計期間末の財政状態は以下のとおりであります。
前連結会計年度末に比べ資産合計は7,100百万円増加し、1,160,748百万円となり、負債合計は3,565百万円増加し、254,018百万円となりました。また、資本合計は3,534百万円増加し、906,729百万円となりました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の78.2%から78.0%になりました。
主な増減は資産では、現金及び現金同等物が41,645百万円減少、売上債権及びその他の債権が18,188百万円増加、棚卸資産が2,303百万円増加、その他の流動資産が8,051百万円増加、売却目的で保有する資産が5,232百万円減少、有形固定資産が17,220百万円増加、使用権資産が1,646百万円増加、のれんが4,705百万円増加、繰延税金資産が1,147百万円増加しました。負債では、仕入債務及びその他の債務が7,026百万円増加、未払法人所得税等が10,715百万円減少、その他の金融負債(流動)が3,794百万円増加、その他の流動負債が3,445百万円増加、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が1,436百万円減少、その他の金融負債(非流動)が1,390百万円増加しました。
経営成績
当第1四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年6月30日)における経済環境は、欧米諸国でインフレ率が高水準で推移し、金融引締め政策が継続しました。米国では、労働需給の緩和など一部利上げの効果が見られましたが、連邦準備制度理事会(FRB)は年内2回の追加利上げを示唆するなど、経済の先行きの不透明感が高まっています。また、中国では、ゼロコロナ政策の解除によりサービス需要は回復しましたが、自動車、スマートフォンなどの耐久消費財の需要の伸び悩みや不動産市況の低迷などにより、景気回復のペースが想定を下回りました。一方、日本では、賃金のベースアップなどを背景に企業の価格転嫁が進みました。また、半導体不足の影響が緩和し、自動車を中心に国内の製造業は景況感が改善しました。なお、為替相場はさらなる日米金利差拡大の観測から円安が一段と進みました。
このような中、当社グループの主要な市場においては、次なる成長点として注力する車載及びバーチャルリアルティ(VR)向け光学フィルムの需要が増加しました。自動車材料は、自動車生産台数の回復とともに需要が増加しました。一方、データセンター向け製品及び半導体や電子機器の生産に使用される製品は市況の悪化により需要が減少しました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン向け核酸アジュバント(核酸免疫補強剤)は前第2四半期連結会計期間より新規受注が停止しております。
なお、当第1四半期連結累計期間の対米ドル為替レートは、前第1四半期連結累計期間と比較し7.2%円安の1ドル135.1円となり、円安による影響は、営業利益で45億円の増益要因となりました。
以上の結果、売上収益は前第1四半期連結累計期間と比較し3.7%減(以下の比較はこれに同じ)の208,455百万円となりました。また、営業利益は41.8%減の22,411百万円、税引前四半期利益は42.7%減の22,176百万円、四半期利益は42.6%減の15,191百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は42.6%減の15,168百万円となりました。
セグメント別の経営成績
① インダストリアルテープ
基盤機能材料は、売上収益が前第1四半期連結累計期間に及びませんでした。ハイエンドスマートフォン向け組み立て用部材は、前第1四半期連結累計期間に見られたサプライチェーンの混乱に備えた材料確保の動きが収束したため減収となりました。また、半導体メモリやセラミックコンデンサーの生産が低調に推移し、これらの製造に使用される工程用材料は需要が減少しました。自動車材料は、当第1四半期連結累計期間にNVH(Noise, Vibration, Harshness)事業を譲渡した影響を除くと、半導体不足の解消により国内を中心に自動車生産が回復し、需要が増加しました。
以上の結果、売上収益は80,693百万円(0.9%減)、営業利益は7,457百万円(10.5%減)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料は、前第1四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。成長拡大期にある車載ディスプレイ向け製品の需要が堅調に推移し、VRディスプレイ向け製品は新たな生産ラインの稼働を開始しました。また、ハイエンドスマートフォン向けには光学フィルムと透明粘着シートや工程保護フィルムをあわせたトータルソリューションで対応し、売上収益伸長に寄与しました。
回路材料は、売上収益が前第1四半期連結累計期間に及びませんでした。CIS(Circuit Integrated Suspension)は、データセンターでの高容量ハードディスクドライブ(HDD)の需要が減少し、稼働調整などによるコスト抑制を進めました。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、前第1四半期連結累計期間から搭載機種が増加しました。
以上の結果、売上収益は104,363百万円(6.3%減)、営業利益は20,032百万円(20.3%減)となりました。
③ ヒューマンライフ
ライフサイエンスは、売上収益が前第1四半期連結累計期間に及びませんでした。核酸受託製造は、COVID-19の収束に伴い、ワクチン向けの核酸アジュバントの需要が減少しました。一方、核酸医薬市場は、大型疾患向けの商用化が見込まれており、今後の需要拡大への対応として米国マサチューセッツ州の生産拠点で新工場が完成し、開所式を行いました。核酸医薬の創薬は、保有するパイプラインのライセンスアウトに向け、引き続き治験などの取組みを進めています。医療関連材料は、経皮吸収薬や医療用テープなどの市況が軟調に推移し、需要は減少しました。
メンブレン(高分子分離膜)は、前第1四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。半導体生産に使用される超純水精製設備向けが堅調に推移し、高分子分離膜の需要が増加しました。
パーソナルケア材料は、2022年6月にMondi社のパーソナルケア事業を買収したことにより、前第1四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。主力であるおむつ向け製品に加え、コア材料である機能性フィルムの特性を活かした新たな用途展開を進めるとともに、生分解性技術を用いた環境貢献型の新製品開発に取り組んでおります。
以上の結果、売上収益は29,278百万円(4.6%増)、営業損失は2,937百万円(前年同四半期は営業利益5,043百万円)となりました。
④ その他
当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。主なテーマとしてはパッチ型心電計に取り組んでおり、本格量産に向けたパイロット販売を行っております。
以上の結果、売上収益は3百万円(87.0%増)、営業損失は1,284百万円(前年同四半期は営業損失868百万円)となりました。
当第1四半期連結累計期間において、報告セグメントの分類に一部変更があります。変更点は以下のとおりです。
1.従来の「プリント回路」の名称を「回路材料」へ変更しました。
2.「その他」のプラスチック光ファイバー・ケーブル事業を「オプトロニクス」の「回路材料」へ移管しました。
3.「ヒューマンライフ」の「パーソナルケア材料」の一部関連事業を「インダストリアルテープ」へ移管しました。
4.「調整額」に含まれる一部事業を「その他」へ移管しました。
当該変更を反映した組替後の数値で前第1四半期連結累計期間との比較を行っております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は288,321百万円となり、前連結会計年度末より41,645百万円減少(前年同四半期は98,022百万円の減少)しました。当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は11,569百万円(前年同四半期は21,280百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前四半期利益22,176百万円、減価償却費及び償却費14,801百万円、棚卸資産の増減額2,449百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額4,690百万円、前受金の増減額1,192百万円による増加、売上債権及びその他の債権の増減額11,099百万円、法人税等の支払額又は還付額18,666百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は14,892百万円(前年同四半期は111,464百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出16,785百万円による減少、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,871百万円による増加の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は47,708百万円(前年同四半期は17,991百万円の減少)となりました。
これは主に、リース負債の返済による支出2,032百万円、自己株式の増減額28,115百万円、配当金の支払額17,510百万円による減少の結果であります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は10,864百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。