【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。なお、本四半期報告書に記載の数値は国際会計基準(IFRS)ベースで表示しております。
(1)財政状態及び経営成績の状況
財政状態
当第3四半期連結会計期間末の財政状態は以下のとおりであります。
前連結会計年度末に比べ資産合計は73,395百万円増加し、1,167,864百万円となり、負債合計は1,878百万円減少し、270,485百万円となりました。また、資本合計は75,273百万円増加し、897,379百万円となりました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の75.0%から76.8%になりました。
主な増減は資産では、現金及び現金同等物が44,909百万円減少、売上債権及びその他の債権が1,853百万円増加、棚卸資産が18,542百万円増加、その他の流動資産が1,209百万円増加、売却目的で保有する資産が4,182百万円増加、有形固定資産が35,977百万円増加、のれんが60,440百万円増加、金融資産が3,209百万円減少しました。負債では、仕入債務及びその他の債務が4,680百万円増加、未払法人所得税等が6,082百万円増加、その他の金融負債(流動)が1,125百万円減少、その他の流動負債が15,372百万円減少、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が1,573百万円増加、確定給付負債が1,289百万円増加、繰延税金負債が1,011百万円増加しました。
経営成績
当第3四半期連結累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)における経済環境は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を契機とする原油価格の高騰により物価が大幅に上昇しました。欧米諸国ではインフレ抑制に向けた金融引締めにより、景気の減速懸念が高まりました。一方、中国ではゼロコロナ政策が見直され、これまで抑制されていた消費が回復に向かうことが想定されます。また、為替相場は、日銀が長期金利の許容変動幅を拡大したことにより、急激に進行した円安の流れに変化が生じました。
このような中、当社グループの主要な市場においては、当第3四半期連結会計期間に入り、エレクトロニクス向け製品にて、巣籠り需要の反動減の動きが顕著となりました。これまで好調に推移してきた半導体やデータセンター向け製品は顧客の在庫水準適正化の動きが見られ、需要が減少しました。一方、当社グループが注力するハイエンドのスマートフォンやノートパソコン向け製品は、需要が伸長しました。また、自動車材料はCOVID-19などの影響が緩和し、需要が緩やかに回復しました。
当社グループにおけるCOVID-19への対応においては、すべての人の健康と安全を最優先に、感染拡大の防止とともに、お客様への供給継続に向けて取り組んでおります。引き続き、お客様への製品・サービスの提供に支障が生じないよう、最大限努力いたします。
なお、当第3四半期連結累計期間の対米ドル為替レートは、前第3四半期連結累計期間と比較し22.0%円安の1ドル135.3円となり、円安による影響は、営業利益で595億円の増益要因となりました。
以上の結果、売上収益は前第3四半期連結累計期間と比較し14.3%増(以下の比較はこれに同じ)の738,979百万円となりました。また、営業利益は27.1%増の137,718百万円、税引前四半期利益は26.4%増の137,397百万円、四半期利益は22.9%増の95,838百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は22.9%増の95,766百万円となりました。
セグメント別の経営成績
① インダストリアルテープ
基盤機能材料は、前第3四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向けの組み立て用部材の需要が増加し、自動車材料が、前連結会計年度におけるCOVID-19などの影響による需要の低迷から回復しました。一方、電子機器に使用される半導体やセラミックコンデンサーなどが市況の悪化により需要が減少しました。また、原油価格の上昇を背景とした原材料や輸送コスト高騰の影響を受けました。なお、自動車材料において、NVH(Noise, Vibration, Harshness)事業の一部を株式会社パーカーコーポレーションへ譲渡することを同社と合意し、関連する資産の一部について減損損失を計上しました。
以上の結果、売上収益は262,265百万円(8.8%増)、営業利益は24,518百万円(18.0%減)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料は、前第3四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドノートパソコン向けに加え、次なる成長点として位置付ける車載向け光学フィルムの需要が増加しました。TV向け製品においては、協業先への技術供与によるロイヤリティ収益を計上しました。なお、2022年10月4日に発生した連結子会社の韓国オプティカルハイテック社での火災に関する費用を計上しました。
プリント回路は、前第3四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、搭載機種が増加したことにより業績が大きく伸長しました。一方、CIS(Circuit Integrated Suspension)はデータセンター向けなどHDD(ハードディスクドライブ)市場の調整により需要が減少しました。
以上の結果、売上収益は393,984百万円(12.9%増)、営業利益は114,508百万円(54.6%増)となりました。
③ ヒューマンライフ
ライフサイエンスは、前第3四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。核酸医薬市場の拡大を背景に、核酸受託製造と核酸医薬の製造に使用される合成材料(NittoPhaseTM)の需要が増加しました。一方、COVID-19の感染者急増とともに需要が拡大してきたCOVID-19ワクチン向け核酸アジュバントは、世界的なワクチン接種率の低下を受けて、第2四半期連結会計期間から新規受注がストップしました。医療関連材料は、経皮吸収薬や医療用テープなどがCOVID-19による需要の低迷から回復しました。核酸医薬の創薬においては、肺線維症及び難治性の癌治療薬の治験に、引き続き取り組んでおります。
メンブレンは、前第3四半期連結累計期間に対して売上収益が伸長しました。高分子分離膜は、産業用途において需要が増加しました。
パーソナルケア材料は、2022年7月より買収したMondi社のパーソナルケア事業と既存の衛生材料事業を統合した新組織(アドバンストフィルムソリューション事業部)にて事業を開始しました。主力製品である衛生材料等機能性フィルムは、ベビーケア、大人用おむつ、フェミニンケアなどの用途へ展開しております。
以上の結果、売上収益は102,772百万円(47.2%増)、営業利益は6,544百万円(38.6%減)となりました。
④ その他
当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。主なテーマとしては、プラスチック光ケーブル、パッチ型心電計の早期量産化に向けた開発に取り組んでおります。
以上の結果、売上収益は4百万円(前年同四半期は-百万円)、営業損失は4,232百万円(前年同四半期は営業損失4,746百万円)となりました。
第1四半期連結会計期間において、「ヒューマンライフ」を新設したため、報告セグメントの分類に一部変更があります。変更点は以下のとおりです。
1.「ヒューマンライフ」には、従来の「ライフサイエンス」と「その他」にあった「メンブレン」が含まれます。また、第2四半期連結会計期間において、第1四半期連結会計期間に買収が完了したMondi社のパーソナルケア事業を「ヒューマンライフ」の「パーソナルケア材料」として新設し、「インダストリアルテープ」から一部の関連事業を移管しました。
2.「その他」には、「新規事業」が含まれます。
当該変更を反映した組替後の数値で前第3四半期連結累計期間との比較を行っております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は317,137百万円となり、前連結会計年度末より44,909百万円減少(前年同四半期は30,517百万円の増加)しました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は133,216百万円(前年同四半期は103,341百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前四半期利益137,397百万円、減価償却費及び償却費42,231百万円、減損損失3,447百万円、確定給付負債の増減額1,621百万円、売上債権及びその他の債権の増減額12,777百万円による増加、棚卸資産の増減額9,762百万円、前受金の増減額15,342百万円、法人税等の支払額又は還付額35,394百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は142,529百万円(前年同四半期は41,406百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出50,653百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出95,411百万円による減少、投資有価証券の売却による収入2,566百万円による増加の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は38,368百万円(前年同四半期は35,550百万円の減少)となりました。
これは主に、リース負債の返済による支出4,324百万円、配当金の支払額34,046百万円による減少の結果であります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は30,718百万円であります。
また、当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況の重要な変更は、次のとおりであります。
2022年5月31日付でBend Labs, Inc.(以下「Bend」)をNittoグループに統合し、Nitto Bend Technologies(U.S.A.-Utah)として活動を開始いたしました。今後、Bend社が培ってきたセンサデバイス技術とNittoの強みを融合し、次世代技術や製品を開発するとともに、センサーより取得したデータを活用した新規事業の創出を目指します。